« 「ダークエイジ・ロマン 大聖堂」 第3回 利用される神々 | トップページ | 「美しい隣人」 第7回 主体と客体の遊離 »

2011年2月22日 (火)

「冬のサクラ」 第6回 …間違ってないよ…

 ちょっと蓄積されていたパソコンの学習機能その他がリセットされてしまって、文字変換機能も初期状態に戻ってしまったため、かなりいつもより手間がかかりつつの記事作成となってしまいました。
 それにつられて、というわけではないですが、ドラマを見ているかたなら必要のない説明もあえてちょっとだけしながら書きすすめました。

 萌奈美(今井美樹サン)の夫で脳医学の権威である石川総合病院院長の航一(高嶋政伸サン) が語った、「手術によって記憶がなくなる可能性は低い」、という診断。
 この診断によって萌奈美は手術を受ける決断をし、祐(草彅剛クン)は萌奈美と二度と会わない、と苦渋の決断をしています。
 ところがそれは航一が萌奈美を意のままにしようとするための嘘だった、ということが判明することで、ドラマは今回、大きく動き出すのです。

 まずそのことを知ったのが、祐の弟肇(佐藤健クン)。
 同時に兄が院長夫人である萌奈美にちょっかいを出しているということで、同じ病院内に研修医として勤務していた肇の立場は悪くなっていきます。

 今回のひとつの見どころは、この肇の葛藤。

 肇は兄祐の献身的なバックアップによって、ほとんど親がいない状態にもかかわらず研修医にまでなることができているのですが、性格的にはかなりとっぽい部分があります。
 だからこそ、病院内で立場が悪くなっていくことに、そのとっぽさからくる怒りを止めることができない。
 肇は萌奈美を諦めきれない兄に、オレの苦労を知ってるのかよ、とばかりつらく当たってしまうのですが、もともと彼は兄の献身的な世話に心から感謝しているために、そんなことで怒ってしまう自分自身も、同時に許せないのです。

 というよりも、そっちの罪悪感のほうがよほど大きい。

 兄貴が自分のことをすべて捨ててまで自分をここまでにしてくれたのに、どうしてこれっぽちのことでこんなに腹を立ててしまうんだ、なんて自分はちっぽけなんだ!というやるせない自分への怒りです。
 そこにはひょっとすると、医者のはしくれにまでなった自分にさえ、こんなごくごく普通である兄を、どうしても越えられない、という心理的なジレンマも、隠されている気がします。

 いずれにせよそこまでこちらに感じさせてしまう佐藤健クンの演技は、いつもながら感心します。

 そしてその肇をちゃんと理解し、口は悪いけど陰でしっかり支えているあまりにもできすぎた肇の恋人が、向井安奈(加藤ローサチャン)なのです。
 兄をなじったあといたたまれなくなって部屋を出て行ってしまった肇を、いったん追おうとして、祐にちょっと気遣いを見せる安奈チャン。
 「行ってやってくれ」、と祐に頼まれ、あらためて肇を追っていくのです。
 こんななにげないところで、彼女が肇だけでなく、しっかり祐の気持さえ考えていることが分かる。 おいしい役どころであります。

 肇を追っていった安奈チャンが 「風邪ひくよ」 と首にかけたのが、肇が憎んでいた、つい最近亡くなったばかりの母親が肇のために編んでいた、青いマフラー。
 この青いマフラー、何かと言うと肇は首に巻いているのですが、今回終盤で、また重要なアイテムとして登場します。
 マフラーと毛糸の上着を肇に着せて、後ろから肇を抱きしめる安奈チャン。

 「肇ちゃんの気持ちわかるよー。 今までどんだけ頑張ってきてるか知ってるからね。
 頑張ってー、いいお医者さんになることが、お兄さんへの恩返しだって、思ってんだよね」

 「けど結局オレも自分が大事なんだよ」

 「そんなの当たり前じゃん。 誰だってそうだよ」

 「みんなじゃねえよ…。
 …兄ちゃんは違う」

 「…そうだね」

 何ともできすぎた彼女じゃありませんか。 彼女の大きさに安心したかのように、どうしてよりによって院長夫人の奥さんなんかに兄貴は惚れちゃったんだろう、と素直な心情を吐露する肇に、安奈チャンはこう言うのです。

 「しょうがないよー出会っちゃったんだから。
 人との出会いってさー、すごいっていうか、怖いっていうか、自分の力じゃどうしようもないのに、人生変えちゃったりするからね。

 …私はー、肇ちゃんと出会えてよかったよ」

 肇の肩に頬を乗せる安奈チャン。
 できすぎてて腹が立ってきた(笑)。

 萌奈美の本当の病状が分かり、明日院長に直接会って確かめる、という決意を弟に語る兄。
 その昔、受験のために弟をおぶって奔走した兄の姿が思い出話として弟によって語られ、お前には立派な医者になってもらいたいけれど、やはり萌奈美さんのことはどうしてもほっておけないんだ、ごめん、と頭を下げる兄。
 それには答えず、風邪気味だった自分に生姜湯を出してくれた兄にただ感謝の言葉だけ言って、おやすみと隣の部屋へ戻る弟。

 翌日祐は弟に語った決意どおり、航一と直接会うのですが、一方的に話を打ち切られ、警備員を呼び出されてつまみだされます。
 祐はその時、心からの本音を航一にぶつけることになります。

 「萌奈美さんの命は、あなたのもんじゃない!」

 記憶をあえて除去し、妻をペットのように手なずけて意のままにしようとしていた航一にとってみれば、この祐の告発は紛れもない真実であるがゆえに、航一は怒りの形相を崩すことができない。
 その直後、航一は院内を歩いていた肇に正面から近づき、静かな口調ながらもありったけの悪意を込めた脅迫を行なうのです。

 「さっき君のお兄さんが院長室に乗り込んできたよ。
 彼に妙な入れ知恵をしたのは君かな?
 …美しい兄弟愛、か…。
 君も知ってのとおり、医療の世界は狭い。
 この病院を辞めても、すぐに他で働けるほど、甘いもんじゃない。
 下らん感傷で、自分の大切な道を、見失うなよ」

 そして兄が萌奈美に向けていったん書いてゴミ箱に捨てた手紙を安奈チャンから渡され、兄がどれだけ自分の気持ちを抑えつけ苦しみながら萌奈美に向き合っていたのかを思い知らされた弟。
 さらにダメ押し気味に、安奈チャンはその日病院の屋上で出会った萌奈美から、祐に感謝していることを伝えてほしい、と頼まれたことを肇に話します。

 「自分の思い通りの人生を送ってほしい」 と萌奈美に願っていた兄。

 それは肇自身が、まさに自分の思い通りに生きろ、と支援を受け続けてきたことと同じ、兄の気持ちなのです。

 そして本当の病状はなにも知らずに、祐への気持を振り切ろうとしている、萌奈美の感謝の言葉。

 自分の保身なんか、それに比べれば、本当にちっぽけだ。

 でも、やっぱり医療の世界でも、生きていたい。

 肇はその場で、どこにぶつけていいかわからない気持ちを、叫ぶのです。

 「あ~~、くそっ…。

 クソッ ! ! もう!」

 肇は何かを決意したように、安奈のほうに向き直ります。

 「安奈。
 オレに 『間違ってない』 って、言ってくれる?」

 安奈チャンはできすぎた彼女ですから(笑)、逆らうはずもありません(笑)。

 「肇ちゃんは間違ってないよ!」

 思わず、安奈を抱きしめてしまう肇。 そして小さく言います。

 「サンキュ」

 泣けました、ここ。

 迷いながら、みんな生きています。

 そんな自分に、慰めやいたわりではなく、本心から 「君は間違ってないよ!」 と言われることが、どんなに心強いか。

 そんな気持ちに、これまで頑張ってきた自分の心のタガが、ふっと緩んでしまう。

 だからこそこのシーンに泣けるんだと思うのです。

 ともあれ、肇は兄を全面バックアップすることを、この時決断したのです。

 セキュリティが厳しくなっている石川総合病院に入ろうとする兄。 警備員は、絶対に祐を病院に入れようとしません。
 そこに現れ、首に巻いていた青いマフラーを兄にかける弟。
 兄を先導し、萌奈美の病室を指さすのです。
 そこを離れようとする弟に、兄は巻いていた青いマフラーを、巻いて返す。

 「肇。 …ありがとう」

 「…おう」

 マフラーというのは、「冬のソナタ」 でもキーアイテムのひとつとなっていましたが、ここでは肇にとって憎んでいた母親の思いを感じることのできる受信機みたいな役割を果たしながら、この回では兄弟の絆を象徴するアイテムに昇華していった気がします。

 祐は萌奈美と再会し、本当の病状を萌奈美に知っている限り洗いざらいしゃべります。
 そしてここを今すぐ出ましょう、と萌奈美を促すのです。

 逃げようとするふたりの行く手に、まるでラスボスのように登場する(笑)航一。

 「明日になれば、すべて解決するんだよ」

 これは萌奈美の問題が解決する、という言葉ではありません。 問題が解決するのは、航一のほうだけなのです。
 萌奈美はそのことをもうすでに察知してしまっている。
 航一の言うことなど信用しない、と萌奈美はその場で断言するのです。

 「私がなぜ、自分の命をあきらめてまで、手術を受けないことを選んだのか、あなた、分かりますか?
 琴音(娘)を、忘れたくなかったからです!
 私にとって生きることは、いちばん大切なことは、あの子の母親でいることなんです!

 あなたは、私のいちばん大切なものを、勝手に奪い去ろうとしたんです…。

 結婚して、幸せな家庭を作ることが、私のたったひとつの夢でした。
 だけど、あなたは最後まで、私と心から向き合おうとしなかった…!

 私が何を思い、何を感じ、何を大切に生きてきたのか、何ひとつわかってくれようとしなかった…。

 だけど…、最後は…、

 私は、私でありたいんです…。

 自分の信じたように生きて、
 死んでいきたいんです」

 祐に守られながら、その場を去っていく萌奈美。
 ところがタクシーに乗り込もうとするふたりを、娘の琴音(森迫永衣チャン)が見てしまう。
 今回は、ここまでです。

 萌奈美のセリフやその決断に感情移入しながらも、「じゃあそんなに大事な娘のことはいいんだろうか?」 という思いがぬぐい去れなかった展開での、ラストの琴音の登場でした。

 人は何かに殉じようとするとき、犠牲にしなければならないものがどうしても生じてくる気がします。

 萌奈美が最も大切なものを自分の記憶、と位置付けたときに、自分の命の尊さは、つまりもう、二の次になっている。

 自分の記憶がいちばん大事、という結論に達してしまった萌奈美の考えは、そのことによって裏切ってしまう人たちが発生することを直接意味しています。

 自分がいちばんいい、と思えることが、ほかの人を傷つけていく。 正しいと思ったことが、まわりから見れば間違っている。

 程度はさまざまですが、人生って、そんなことの繰り返しのような気がします。

 人を傷つけながら、人生というものは回り、転がり、めぐっていくものなのかもしれません。

「冬のサクラ」 に関する当ブログほかの記事

第1回 …大丈夫…
http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2011/01/1-1d6a.html
第2回 「逢いに行こう」、「なんのために?」 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2011/01/2-96f6.html
第3回 折れた翼で飛び続けることhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2011/01/3-cff9.html
第4回 自分の納得する生き方をhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2011/02/4-5b32.html
第5回 冷たく乾いた罠http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2011/02/5-906b.html

« 「ダークエイジ・ロマン 大聖堂」 第3回 利用される神々 | トップページ | 「美しい隣人」 第7回 主体と客体の遊離 »

テレビ」カテゴリの記事

コメント

病院を脱出する際、また絶妙なタイミングで現れたダンナ。
あそこを突破できたのは、まさに「命がけ」だからですね。
お嬢さんに見られたのは残念でしたが
いずれ母親の行動を理解してくれる時がくるでしょう。

姑も強敵です。
そこに擦り寄る料理研究家(?)の友人は、
どうしても院長夫人の座が欲しいのですね。
(院長自身がちょっと壊れてるのは彼女も知っているのにw)
あの人が後妻になったほうが、娘さん以外の利益と欲望が合致するような気もします…。

まだ問題は山積みでしょうし、次週予告で萌奈美が倒れてました。
しかも、もう最期のセリフのようなナレーションも…
彼女が残された時間をどう生きるかよりも、その後の兄ちゃんの人生を描くドラマなんでしょうかね。


佐藤健くんとローサちゃんのふたりは
ホントにほほえましくてイイですねー。

こんばんは、リウ様。今回は(今回も?)まんまと泣かされた、って感じです。肇ちゃんの「間違ってないって言ってくれ」には号泣してしまいました。肇ちゃんと安奈は本当に素敵な二人ですね。肇ちゃんは今後、更に陰湿な仕打ちを航一から受けるかもしれないけれど、どんな状況になったとしても、安奈さえ側にいてくれたらこの二人は絶対に大丈夫!って思えました。

思いやりとか愛情とか、そんな、あたたかなものを知っている人間が一番強い。このドラマを観ていると、そんなことを思ったりします。演じている高嶋さんが嫌いになるほど(笑)航一には怒りを感じますが、もしもグループ分けをするなら、私は間違いなく航一グループの人間なので、そう思って見ると、なんだか航一が哀れに思えてきます。

今後もドラマとリウ様のレビューが楽しみです。どうかご無理をなさらずに、ゆるりと続けて下さい。ご自分の持つ刀で誰かを傷つけたなら、切腹をする覚悟で書かれているリウ様が私は好きです。

Kiyoka

マイティ様
コメント、ありがとうございます。 お仕事、順調ですか? お疲れ様です

娘さん、きっと将来母親の気持ちが分かってもらえるって、私も思います~。
けどその前に、やっぱり誤解をしなきゃならない段階は踏むだろうと…
子供は親の気持ちを、まず最初に、誤解するもんですから(笑)。

姑の江波杏子サンも、あんまり出てこなくて描写不足かな、なんて感じたりしますが、愛人サンもキャラ的に、もっと深みがあると面白いんだけどな、なんて思ったりします。 あんな家庭なのは百も承知なのに、マイティサンのおっしゃる通り金と権威目当てくらいにしか思えない。 ダークサイドはほぼ全部高嶋サンが請け負っているような感じかな。

ホントこのドラマ、このまま萌奈美が死んでしまうと、虚しさばかりが残ってしまうようにしか思えないですよね。
いったいどんなラストを用意して、視聴者サイドを納得させるつもりなんでしょうか…。

健クンとローサチャン、おいしいとこ総取り、って感じです、まさしく(笑)。

希代加様
コメント、ありがとうございます。 お気遣いくださり、痛み入ります。

切腹、までとは参りませんが、書いたものを世間一般にさらけ出している以上、言いっぱなしというのはいけない、責任はなくちゃいけない、というのが私の考えです。 ごく一般人として発言しているつもりでも、読み手のかたがたは 「なんだエラそうに」 と考えているかもしれない。 ブログって、そんなものかな~。 掲示板に匿名で書かれている発言とは、やっぱり質が違いますよね。

肇ちゃんは予告だと、まだまだ石川総合病院に勤務している様子。 希代加様のおっしゃる通り、ますますクラーイ嫌がらせを受けそうですが、頑張れ肇ちゃん!という感じです。 ホント、こんな時によくできた彼女がそばにいる、というのは心強い。

希代加様、航一グループに入るんですか?(笑)
希代加様のコメントには、私はとても励まされております。 やさしい心がないなんて、言わせませんよ!(笑)
航一に同情してしまうあたりなど、私よりもよほど広い心をお持ちだとお察し申し上げます。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「冬のサクラ」 第6回 …間違ってないよ…:

« 「ダークエイジ・ロマン 大聖堂」 第3回 利用される神々 | トップページ | 「美しい隣人」 第7回 主体と客体の遊離 »

2019年8月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

BOOKS

  • マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下

    マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下
     1600ページも費やして、この上下巻はまだ彼らのデビューまでしか書かれていない。 3部作計6巻のうち2巻に過ぎないのだ。 なんと気の遠くなるような作業なのだろう。  本書はビートルズを語るうえで孤高の一作となるはずだ。 虚飾をすっかり剥ぎ取った、20世紀最大の奇跡に潜む真実が、これを読めば理解されるはずである(当ブログ紹介記事より抜粋)。 本書下巻では、1962年のレコードデビューまでが書かれています。

  • マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 上

    マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 上
     1600ページも費やして、この上下巻はまだ彼らのデビューまでしか書かれていない。 3部作計6巻のうち2巻に過ぎないのだ。 なんと気の遠くなるような作業なのだろう。  本書はビートルズを語るうえで孤高の一作となるはずだ。 虚飾をすっかり剥ぎ取った、20世紀最大の奇跡に潜む真実が、これを読めば理解されるはずである(当ブログ記事より抜粋)。 この上巻ではビートルズの祖先から遡ってリバプールで人気に火が付き始めたところまでが書いてあります。

  • ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白

    ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白
    まず驚かされるのが、表紙のポールの写真です。 よくこんなのが採用されたな、というくらい、刻まれた年輪が顕著に分かる 「年老いたポール」。 飾り気のないその写真に、「素のポール」 をあぶり出そう、という心意気が見える。 そして実際、著者のその目論見は、成功しているように思えます。 何より大きいのは、「NME」「Q」「MOJO」 など音楽メディアで長年記者を務めてきた著者がポールと同じリバプールの出身者である、ということ。 さらにポールと同じファースト・ネームであること。 だからポールはまるで自分の分身に話しかけるかのように、時折同郷人にしか分からない言葉で気さくに著者に話しかける。 この本を読む者は、まずその 「不思議なリラックス感」 に包まれるはずです。  本の構成は大きく二つに分かれます。 前半ではビートルズからウィングス、ソロに至るポールのたどってきた長い長い歴史、後半ではポールの人格に迫る試みがなされていく。 そのインタビューは、一気に行なわれたものではありません。 著者がNMEの記者だった1979年のものから、明示はされていないがおそらく2013年、「NEW」 の発売前後が最新のものではないか、と思われます。 実際読んだ感覚では 「キス・オン・ザ・ボトム」 あたりが最新のような気もする。 その30年以上にわたる膨大なポールへのインタビューを、項目によって構成し直しているようです。 ですから、今年(2016年)亡くなったジョージ・マーティンについてのポールの見解であるとか、最新の情報が提示されているわけではない。 ポールの情報というのはこの歳になってもなお日々更新型ですから、その点については物足りなさが確実にあります。 さらに、30年以上というとポールのものの考え方にも変化変遷があってしかるべきだと思うのですが、30年以上をリミックスにかけているからその変化というものがつかめてこないもどかしさがある。 表紙を飾ったポールの 「老い」 という問題にも、この本はきちんと答えてくれているわけではない。 さらに言えば、ジョン・レノンの死について多くが割かれているのとは対照的に、2001年に亡くなったジョージ・ハリソンの死についての記述はない。 正直なところ、このような本を読み漁ってきた身としては、衝撃に値するような情報が書かれているわけではありません。 しかし前述したような、リラックスしたムードのなかでポールと語らっているような疑似体験を共有できる強みが、この本にはある。 この本全体に貫かれているのが、この心地よさなのだ、と思うのです。 その心地よさが乱れるパートがあります。 自身の失敗作、どうでもいい作品について語るときのポールは多分に感情的になりがちであり、イライラした様子を隠しません。 特に 「シークレット・フレンド」 を語るポールのくだりはポールファンなら一読に値する部分でしょう。 しかしそのイライラも、ポールの人間性が垣間見える瞬間としてこの本にとっては必要なパートなのです。 3000円以上と、この本は決して安くはない部類の本です。 ただその値段に見合うパフォーマンスは兼ね備えています。 この本と付き合った1か月足らずの間、心地よい体験をすることができました(アマゾンの自身のカスタマーレビューより)。

  • : レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]

    レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]
    全200ページ程度のボリュームのなかで、キャンディーズに関する特集記事は50ページ。 ただし、これが濃い。 全シングル曲、ほぼほとんどのアルバムの解説は当然として、彼女たちの芸能界における歴史から見た考察、コメディエンヌとしての彼女たち、DVD解説など多岐にわたり、キャンディーズが分析されています。 特に圧巻は、レア音源に関する記述。 ここまで調べている読み物には、個人的にはお目にかかったことはありません。 700円。

MUSIC

  • ザ・ビートルズ -

    ザ・ビートルズ: サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(スーパー・デラックス・エディション)(4CD+DVD+BD)
    ロック界、いや、すべてのポップミュージックにおけるアルバムの中で史上最高と称され、すでに世界文化遺産の域にまで達しているこのアルバム。 そのアルバムの発売50周年を記念して、スペシャルエディションがリリースされます。 なかでもブッ飛ぶのがこのスーパースペシャルボックスセット。 CD4枚組であらたなリミックスのステレオ盤1枚、モノ盤1枚、初期テイク集が2枚、さらにブルーレイ1枚とDVD1枚で5.1サラウンド、ハイレゾ音源、ドキュメント映像 「メイキングオブサージェントペパーズ」 のデジタルリマスター等々、卒倒するようなラインナップです。 18、000円プラス税と値は張りますが、史上最高の名盤だからこそこれは買い。 5月26日の発売までに予約をしておけば、アマゾンならば値下がりした時に値段がそのあと高騰しても最安値で購入できます。 ビーファンならずとも、これは注目ですぞ!

  • 山口 百恵 -

    山口 百恵: ゴールデン☆アイドル 山口百恵(完全生産限定盤)
    全シングルA・B面プラスボーナストラック(「あなたへの子守歌」)を、山口百恵名義としては初のブルースペックCDとしてリリース。 音はいわゆるドンシャリ系ではなく、アナログ盤に準拠した原音に忠実な印象です。 パッケージングはアナログシングル盤サイズで中袋、CDを納めるケースが完全にドーナツ盤をイメージしています(よく言えば斬新…笑、悪く言えばチャッチイ…笑)。 しかしその発想は買える(笑)。 ほぼ原寸大のシングルジャケットと裏の歌詞カードの複製ブックレット。 ただスキャニングは欲を言えばもう一歩。 当時シングル盤を中心に聴いていたかたなら、この編集盤はかなりの 「買い」 です。 しかしこのジャケット表紙の写真、スッピン風で個人的にはすごく好き。

  • デイヴ・グルーシン&リー・リトナー -

    デイヴ・グルーシン&リー・リトナー: Two Worlds / Grusin & Ritenour
    NHK朝ドラ 「花子とアン」 で美人のスコット先生が夜な夜な歌い、チビはなチャンがすっかり覚えてしまったイギリス民謡、「ザ・ウォーター・イズ・ワイド(流れは広く)」。 このアルバムでルネ・フレミングが歌っていたのを思い出しました。 ルネのソプラノはけっして大袈裟でなく上品で、私のとてもお気に入りのソプラノ歌手ですね。 このアルバム自体は全体的にクラシックにギターのリー・リトナーが絡むフュージョンぽいものなのですが、故・黒田恭一サン評するところの、「大人が聴く音楽」。 胸を締め付けるような哀しみと、すべてを包み込むようないたわりに満ちていて、私の人生のなかでも最上位に位置する愛聴盤です。

  • 桜田淳子 -

    桜田淳子: ゴールデン☆ベスト 桜田淳子~シングル・コレクション
    彼女の活動期に発売されたシングルをすべて網羅したベスト盤。 確かに後年のものほど馴染みがありませんが、選曲漏れがないので、彼女の存在とは何だったのか自体に思いが至るベスト盤です。 音も楽器の音像がよくてなかなかいいマスタリングをしている気がします。 2600円程度で推移しています。

  • ザ・ビートルズ -

    ザ・ビートルズ: ザ・ビートルズBOX(限定生産品)(USBメモリ)
    パソコンにUSB端子があり(たいていついてると思います)、パソコンで音楽が聴ける環境をお持ちの人ならば、聴くことができます。 現在のテクノロジーで最もいい音質で聴ける、ビートルズの音楽です。 ただし国内版にもかかわらず、訳詞とか一切なし。 ジャケットもブックレットもパソコンデータ。 純粋に音楽だけ楽しみたい人向けです。 また、曲間にコンマ何秒かのブランクが入ります。 「アビイ・ロード」 のメドレーも同様です。 しかし、音はさすがに、すごい。 大きな音量であればある程、目の前にビートルズが迫ってくる勢いです。 ツヤが違います。

  • The Beatles -

    The Beatles: The Beatles [USB]
    こちら上記の海外版。 内容的には国内版とほぼ一緒なので、値段が安いこちらのほうがいいでしょう。

無料ブログはココログ