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2011年3月 1日 (火)

「冬のサクラ」 第7回 翼があることを信じて

 石川萌奈美(今井美樹サン)の象徴であるかのような、石川家で飼われている籠のなかの黄色い鳥。
 萌奈美の飛び立ちたい心の象徴であるかのような、稲葉祐(草彅剛クン)の作った、翼を広げた鳥の、ガラスのオブジェ。

 誰もが自分に翼があると思いたがります。

 夢に向かって、大きく自由に羽ばたいていけるものだと考えたがる。

 確かに、自らが持つ 「夢」 の力は偉大です。

 けれども。




 天上を目指すには、自分がその力を信じなければなりません。
 自由に羽ばたける、ということは、なにも願いが簡単に、急に叶う、ということではない。
 自分がその羽ばたける力を信じ、苦しみながら努力を重ねていった末に、人は羽ばたけるのではないでしょうか。




 今回萌奈美は、夫航一(高嶋政伸サン)からこう責め立てられます。

 「稲葉祐の弟(佐藤健クン)が病院を辞めたよ!
 きみとあの男(祐)が、みんなの人生を狂わせてるんだ!
 これ以上あの男に頼っても、苦しめるだけだぞ!」

 夫の手術を拒絶して病院から抜け出していた萌奈美。 祐の力を借りながら、娘の琴音(森迫永衣チャン)に、自らの思いを綴った料理レシピを書き進めていたのですが、航一の愛人理恵(白羽ゆりサン)に騙されて、航一とまた対峙することになったのです。
 そのときの航一の言葉は、萌奈美の気持ちを一気にネガティヴな方向に向けさせることとなるのです。

 この、夫が来る前の理恵との会話で、萌奈美は興味深いことを話していました。

 「(「病気も抱えてるのにすごい勇気だね」、と理恵に言われ)逆かな…。

 病気になったから、一日一日の大切さが身にしみて、もう自分をごまかしたくないって思ったのかも」

 勇気じゃない。 憶病なんだ。
 心を煩わされるような夫との生活から逃げているだけなんだ。
 自分をごまかしたくない、自分の思い通りに人生を全うしたい、というのは、つまり現実の生活から逃げているための、もっともらしい口実なのかも…。

 そんな萌奈美は、その直後に夫から浴びせられる先ほどの言葉に、自分のしていることは結局自分勝手なんだ、そのために周囲が苦しんでいるのは事実だ、と、考え直してしまう。

 そんなシーンが展開していく中で、繰り返し映し出されたのが、籠のなかの黄色い鳥と、翼を広げた鳥の、ガラスのオブジェでした。

 いったい自分は、飛び立てることが出来るんだろうか?

 いや、そもそも自分に、翼なんかあるのだろうか?

 航一の言葉によって周りに迷惑をかけるのをやめようと考えた萌奈美は、泊っているホテルまで会いに来た祐に、「もう会わない」 という決心を胸に秘めながら、「大丈夫…」 と弱々しくも平気なふりを装います。
 でもこのドラマのなかで繰り返し使われてきた魔法の言葉、その 「大丈夫」 の言葉にも、効力が消えかけている。

 なぜなら、「大丈夫」 という言葉を信じなければ、本当に大丈夫にはなっていかないからです。

 確かに 「大丈夫」 という言葉は人に勇気を与えます。

 けれども、そんな有り難い言葉でも、それが通り一遍のスタンダードに陥ってしまって、それさえ言っていれば何とかなる、みたいに、日常的な言葉に堕してしまうと、言葉の持つ力は途端に、意味のないものに帰してしまうのです。

 萌奈美は今回冒頭、出たとばかり思われた自分の家に、いきなり戻ってきて夫の母親(江波杏子サン)や琴音に自分の正直な気持ちを打ち明けようとしていました。
 それはいっぽうで姑の胸にまで届く。

 手術で自分の記憶がなくなってしまうよりは、死を選んでも娘のことを忘れたくない。
 この理屈に姑が理解を示す、という展開は、ちょっと今までのドラマにはないパターンだな、と思いました。 江波サン、なかなか話が分かるじゃありませんか。 まあ嫁をどーでもいいと思っている故の理解、かもしれませんけどね。
 それに姑の気持ちとしては、それまで本当の顔を見せてこなかった自分の息子が初めてその異常な感情を露わにしたことへの戸惑いも、あったんでしょうね。

 いっぽう娘の琴音は、萌奈美の話をきちんと最後まで聞かず、別の場面で航一が萌奈美に異様な執着を示すのを見ることで 「パパもママもダイッキライ」、となってしまうのですが、「余命がもうない」「もうすぐ死んでしまう」  という母親の本当の病状を知り、さらに萌奈美が残したレシピを発見して読むことで、その誤解が完全に氷解する。

 「美味しいお料理で
 あなたが幸せな笑顔に
 なってくれることを祈って」

 そのレシピ本の最初に書かれた言葉です。

 「誕生日によく作った
 琴ちゃんが大好きなビーフシチュー!
 あなたを授けてくれた
 神サマに感謝。」

 「クリスマス
 苺いっぱいのショートケーキ
 一緒に作ったね!
 生クリームを鼻につけた
 琴ちゃんの笑顔が
 忘れられません。」

 「ひな祭りの
 ちらし寿司
 琴ちゃんの成長が
 ママには一番の
 喜びでした。」

 ママの本当の気持ちを知って、レシピを読みながら大粒の涙を流す琴音。

 泣けました。
 ダメだなあ、こういう親子の愛情物は。
 「冬のサクラ」 で、いちばん泣けた。

 そしてレシピ本の最後に書かれた言葉。

 「琴ちゃんをいつも見守っている
 ママより」

 「ママ…」

 それはまるで、天国から届いた母親の声、のようです。
 そして確かに娘は、まだ生きている母親の、自分への本当の愛情を、知ることが出来たのです。
 あ~もうダメ(笑)。
 号泣しました。

 そしてホテルからいなくなった萌奈美。

 祐のもとに、山形の駐在の次郎ちゃん(山崎樹範サン)から、「萌奈美を見かけた」、という電話が届きます。
 あの一本桜のところへ行ったんだ、と確信した祐は、琴音と会ってそのことを告げる。
 そのときに、ちょっとためらいながらも、祐は 「手術をすると記憶がなくなって寝たきりになる可能性がある」 という萌奈美の病状の真実を、琴音に打ち明けます。

 このドラマで特殊なように感じるのは、草彅クン演じるこの稲葉祐という青年が、自分の恋愛感情よりも先に萌奈美にとっていちばんの宝物である琴音を大事に考えている、という側面です。
 それはとりもなおさず萌奈美自身を大切に考えていることの表れなのですが、いみじくも弟の肇から 「まだ告白してないのか」 と呆れられていたように、それは極めてストイックな行為であります。

 これはドラマにとって、ある意味では、とてもリスクの伴う展開の仕方のように思えます。

 なぜなら、ちょっと油断してしまうと、草彅クンのこの役は、なんだかとても地味に思えてきてしまうからです。
 彼が恋愛に傾倒するところを見たいファンのかたにとっては、とても物足りなく思えてくるような危険性を伴っている。
 ややもすれば、熱演している今井美樹サンと高嶋政伸サンのせいで、霞んでしまう印象も持たれかねない。

 けれども私は、こんなバカがつくほど生真面目な青年を草彅クンが演じることの今日的な意義を、もっともっと重要に思いたい。

 確かに何の得にもなりゃしませんよ、こんな生き方。
 自分の好きな人は死ぬという決断をしているし、その好きな人の家庭はぶっ壊しまくってるし。
 弟は失業に追い込むし、自分も根なし草みたいな生活になってしまうし。

 けれどもそんな損得勘定なんか、純粋な恋愛感情の前には何の意味も持たぬのです。

 私はそう、信じたい。

 それをとやかく考えてしまうことの精神の貧困さを、このドラマは気づかせてくれるのです。



 雪に覆われた、一本桜の近くまでやって来た祐。
 果たして、その道の途中でうずくまっている萌奈美を発見します。
 萌奈美を呼ぶ祐。
 それに気付いたときの、萌奈美の嬉しそうな顔。
 またまたウルウルです。

 桜の木の場所まで、萌奈美をおぶっていく祐。

 「あの桜の木を、もう一度見たくて…。

 すみません…。

 私…結局…祐さんに迷惑を…。

 娘にも…つらい思いをさせてしまって…。

 だけど…。

 どうしても…。

 私の思いだけは…伝えたかった…」

 「きっと伝わりますよ…。

 萌奈美さんと琴音ちゃんには、今まで一緒に生きてきた絆があるじゃないですか。
 
 …大丈夫です…」

 琴音の幼い時から今までの記憶をたどっていく萌奈美。

 「…大丈夫…」

 萌奈美は、その言葉を、かみしめます。
 自分のなかで、新鮮味を失い、ただの言葉に堕していた 「大丈夫」 という言葉が、再び力をもった瞬間です。

 「…そうですよね…」

 祐を見つめてほほ笑む萌奈美。

 そこに、大雪に足を取られながら、琴音が息せき切ってやって来ます。
 抱き合うふたり。

 「ママ、ごめんね、ひどいこと言って…。

 病気のことも、ママの気持ちも知らないで…。

 ママのこと、嫌いなんかじゃないよ…。

 大好きだよ…!

 死なないで…!」

 「…琴ちゃん…!」

 それを見ながら、安心したようにほほ笑む祐。
 ここはママにとって、大切な場所…そう琴音に語りかける萌奈美。

 「琴ちゃん…。

 ママは、あと少ししか、あなたのそばにいてあげられない。

 だけど、

 ずっとどこかで見守ってるからね。

 自分の信じた通りに、まっすぐに、生きていってね…。

 それが…。

 ママの、たったひとつの願いだよ…」

 けれどもその矢先に、萌奈美は意識を失ってしまいます。

 病院に運び込まれる萌奈美。

 航一のもとに、その情報が飛び込んできます。

 萌奈美は、自分の人生を、自分の思い通りに全うすることが出来るのでしょうか?

 蛇足ですが、この母娘が抱き合うシーンで、地震情報がありました。
 けれども心をざわつかせるような警告音とかなくて、なんかいつもなら気分が損なわれるのですが、あまり気にならなかったです。
 ニュージーランドも新燃岳も、このところ地球の地殻が騒がしいことも一因かもしれないのですが。
 被災に遭われたかたがたへ、お見舞いを申し上げつつ。

「冬のサクラ」 に関する当ブログほかの記事

第1回 …大丈夫…
http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2011/01/1-1d6a.html
第2回 「逢いに行こう」、「なんのために?」 http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2011/01/2-96f6.html
第3回 折れた翼で飛び続けることhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2011/01/3-cff9.html
第4回 自分の納得する生き方をhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2011/02/4-5b32.html
第5回 冷たく乾いた罠http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2011/02/5-906b.html
第6回 …間違ってないよ… http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2011/02/6-7950.html

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コメント

娘と姑が理解してくれて良かった。
姑に関しては意外なほどスンナリでした。
後に理恵さんと息子がデキてて、理恵さんが嫁をいじめてたことがバレれば
お義母さんはお怒りになることでしょう。

>バカがつくほど生真面目な青年
この役を韓流ドラマで、性別が違えどチェジウさんあたりが演じ、
健気につくして日陰で号泣してたりすれば
視聴者もグッと来るんでしょうけどねw
男性だとキープさせるのが困難です。


ホント、ここのところ国内でもあちこちで地震が起こってます。
よく言われることですが、毎日を大切に生きないといけませんね。

マイティ様
コメント、ありがとうございます。 取り急ぎではございますが、お見逃しになった 「TAROの塔」 第1回、3月5日17時から、NHK総合で再放送されるようです。 よろしければご覧になってみて下さい。

ところが私も、大チョンボしてしまいました。 「美しい隣人」 の予約録画忘れで、昨日の放送見逃し、です(集中再放送があるようなので、そっちを見ます)。

姑さんは意外に話の分かるかたでしたよね。 これでますます、夫の異常性が浮き彫りに…。

見ていて地味ーな役だなあ、と思いますよ、今回の草彅クン。 チェ・ジウサンはホントに、あのときだけでしたねー、そう言えば

なかなか自分の身に降りかからないと大変さが実感できない災害です。 心して生きなければなりませんね。

昨日の「美しい隣人」は仲間さんの異常性がやたらと描かれた、
「もうこの人に正気は残ってないんじゃないか?」という
ちょっとおかしな回でした。

裏の49レシピも良かったです。

こんばんは。

雪の中の二人の再開
美しい景色でしたね。

じっと 萌奈美を見つめる祐に
今、キスしそう。。。と思った瞬間

「ママ~!!」と琴ちゃんの声が。

ああ、やっぱりまだまだそういう展開にはならないのね。。。とちょっとがっくり。

すみません、下世話で・苦笑

でもあの時の祐の表情は
本当に萌奈美が愛しそうだったんです。


そう、姑さん
なかなか常識人でしたね。
萌奈美の娘への想いを素直に受け止めてくれて
彼女の体を心配すべき、と
医者として、夫としての高嶋夫の態度にも
一言ありましたし。

もっと姑からも、娘からも理解のないまま
ジレンマの続くようなドラマかと思ってしまってましたが
ホッとしました。


マイティ様
番組情報お教えくださり感謝です。 う~む、早く見てみたい…。

「四十九日のレシピ」 のほうは昨日レビューを書いたのですが、いかんせん浮気相手の批判みたいな方向性が強く出てしまったのでアップせず、本日大幅書き直しです(余力が残っていればの話ですが…)。

…バテバテでご迷惑おかけいたします。

あおぞら様
コメント下さり、ありがとうございます。

やっとやっと、圧倒的な雪景色を見られた、と思ったのですが、なかなか恋のほうは進展いたしませんね、祐と萌奈美。

このドラマ、私はあんまり恋愛ドラマの部分は重要視していないのですが、やはり女性のかたは気になるんでしょうか。 私は萌奈美と琴ちゃんのシーンのほうが感情移入しまくりました。 恋愛関係よりも親子関係のほうに涙腺がもろいようであります。

そんな私は、祐と萌奈美が見つめ合うシーンで琴ちゃんがやってきたとき、あ~~よかったぁ~っ、萌奈美の生きている間に琴ちゃんが誤解を解くことが出来て!と思ったのですが、キスの邪魔が入った(…)という見方もできるんだなー、と申しますか…(笑)。

このドラマを見ていると、萌奈美の病状が頭痛とか意識を失う、ということばかりで、あまり重篤な感じがしてこないのですが、考えてみればもう7回目。 何話予定か分かりませんが、終盤であることは確かなんですよね。 姑さんも娘さんも、誤解が解ける時期なんだなー、とちょっと寂しくもあります。

こんにちは。
レスありがとうございます。

わたしもあまり恋愛を重視しているわけでもなく
ただ、あのシーンでは
草なぎさんの表情が
すごく自然に「いとしい」を表現しているように見えて
このままキスしそうな、と思えただけだったんです。

子供に対しての母親の気持ちのほうが
もちろん、このドラマの沁みてくるところです。

あの場面で、もしキスシーンがあったとして
そこに琴ちゃんが来たりしたら
絶対ダメです!!


あおぞら様
再コメ、ありがとうございます。

「オレはただこの人が幸せであればそれでいいんだ」、というスタンスなんですよね、このドラマの草彅クン。

だから萌奈美を見る目がとてもおおらかで優しい。 好きだから、ではなくて守りたいから、という感覚なんでしょうね。

私もこんな、欲得のない人間になりたいものですが、それじゃ人生ツマラン気もするし…

俗な人間には、まぶしすぎます、稲葉祐は。

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    レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]
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    こちら上記の海外版。 内容的には国内版とほぼ一緒なので、値段が安いこちらのほうがいいでしょう。

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