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2011年3月18日 (金)

「外交官 黒田康作」 最終回 真の国益とは何か

 3.11後に放送された 「外交官 黒田康作」 最終回は、まさしく震災を経たあとの見る側にとって、別角度からとらえざるを得ない側面に満ちていた気がします。

 いわく、国民にとって、真の国益とは何なのか。

 私はこれまで、あんまりのめり込んでこのドラマを見ていませんでした。
 確か第2回でのレビューを最後に当ブログで取り上げることがなかった。

 それはつまり、霜村(香川照之サン)の行動について謎を深めさせ、それを追っていく黒田(織田裕二サン)、というこのドラマの構図自体に、魅力をあまり感じなかったことによります。
 こうした大掛かりな話の裏にはだいたい国のトップに近い人物が何らかのカギを握っていることは分かりますし、薬害訴訟が謎の鍵を握っているだろう、というのはうすうす読めていた気がします。 後出しジャンケンみたいなことを申しておりますけどね。

 柴咲コウサンの上司や萩原聖人クンもドラマ開始当初からあからさまに怪しくて、この人なんかを隠してるな、というのが分かったり、見ていてなんとなく怪しそうな人が特定されてしまう、というのは、「謎を深めさせて見る側を引っ張る」 というドラマの作りかたとしては、ちょっと物足りなさが残ったのです。 霜村自体も悪い人じゃなさそうだったし。
 ここで霜村以外にもどうしたって悪役に見えてこなかったのは、柴咲コウサンや外務副大臣の草刈民代サン、捜査一課の田中哲司サン、外務省職員の田中圭サン。
 謎がどんどん深まっていくわりには、なんか次の展開が読めていくような感覚。

 それでも物語的に読めなかったのは、西島隆弘クン。
 彼の行動がいちばん読めなかった。
 彼をストーキングして殺されてしまう柏田というアンチャンの下りも読めなかったし。
 でもなんだか、それで話が複雑さを増していくのも、かえって見る気を削ぐ、と申しますか(失礼)。

 このように謎解きをメインに展開した結果、最終回の前の回では、黒田と霜村との謎解き会話が延々と続きました。
 ただそこに向かう霜村や萩原聖人クンたちの拳銃片手の過激な行動には、とても性急なものを感じました。 片瀬那奈サンも拳銃を手にしながら、結構躊躇していたようですし。
 構図的に、ドラマを無理に盛り上げようとしているスタッフに、当の登場人物たち(役者ではない)が戸惑っている、という感じを受けたんですよ。 結構躊躇なくやってたのは、萩原クン演じる悠木圭一だけだったかな。
 おそらく、どれだけこの片瀬サンや萩原クンなどの薬害問題の被害者たちが怒りを持っているかが、事前に描写されていれば、ここまで性急な展開に見えなかったはずであります。

 説得を試みる黒田と、元首相の平泉成サンに拳銃を突きつけたままの霜村との間で延々と交わされた謎解き説明シーンが終わった瞬間、霜村はSWATによって射殺されてしまう。

 そしてこれを容認した外務大臣の近藤正臣サンが、真の黒幕、という展開になっていくのです。

 そうなると最終回で黒田がやろうとしていることが、だいたい分かってしまう。

 こうしたドラマの場合、ワルモノの側にも納得するに足る 「一分の理」 が必要だ、と私は考えています。
 最終回で黒田に追い詰められた近藤サンは、薬害による副作用で一部の国民が被害を受けても、アメリカとの間に山積していた外交上の問題をこれでクリアできたのだ、という言い訳に終始していました。
 ところがそれが、具体的に提示されない。 国民の生活(イコール命)がそれでどれほど保障されたのかが、提示されないのです。
 私はドラマを深いものにするために、ここできちんとした具体的な理由を提示すべきだった、と考えます。
 それが抽象的なために、話は深遠さに向かう術を失い、ただ 「正義の味方」 黒田と、「既得権益に走るワルモノ政治家」 近藤サン、という構図ばかりが浮き彫りにされてしまう。
 まあ、ドラマの作り手はこのドラマを 「社会派」 にする気はなかったのでしょう。

 近藤サンはその後、政治家としての自分を恥じる演説をした草刈サンに 「自分が正しいと思うことをやったのだからそれでいい。 それは自分も同じだったが」 という趣旨のことを話すのですが、こうすることでドラマは 「自分が正しいと信じたことを行なう」、という庶民レヴェルの教訓で完結してしまうのです。

 しかしここで行なわれていることは、高度な政治的判断。

 これを日米外交上の駆け引きという天秤にかけ、ただ単に 「日本国民の国益」、というお決まりの文句によってくくろうとするとき、「じゃあ日本国民の国益って何なの?」 と問いたださずにはおれません。
 ドラマはそのところまで切り込まないため、「日本の政治家ってみんなこうだよな、結局選挙に勝って自分の立場を安定することしか考えていない、国民の利益を考えるって言っても、それは口先だけなんだよな」、という感想しか、見る側から引き出すことが出来なくなるのです。

 けれどもそのことによって、私などはかえって 「じゃあ日本国民の本当の利益ってなんなんだろう?」 と考える機会を得た気がするんですよ。

 スーパー堤防の是非は別として、今回のような大災害で、一挙に万人単位の国民が亡くなってしまう、ということに対する防災って、出来ないものなのか。

 今回の大災害では、人命ばかりでなくすべてのものが流され、破壊し尽くされました。
 そのすべてが 「国の財産」 と呼べるものです。
 それを守る手立てというものは、ないものなのか。

 これは 「外交上の観点から国益を守る」 仕事に従事している黒田康作には答えの出せない問題です。
 政治家が私利私欲を捨てて国益を考え抜かなければ、このことに対する根本的な解決はまず無理でしょう。 政治家の仕事の根本は、まさにそこにある。

 いみじくも最終回のドラマのなかで草刈民代サンが述べていたように、そのうちやる、では、100年たってもそれは実現しない。
 大震災への一連の対応が済んだ後すぐにでも、着手しなければならない問題のはずであります。

 ドラマとしては、結局映画のためのつなぎ役にしかなっていなかった気もしてくるのですが、そう考えれば、黒田康作という人物を限りなく謎めいた人物とした演出の意図も読めてきます。 織田裕二サンは、こういう面白みのなさそうな男の役もこなせるんだなあ、と感じました。 個人的にはもっと柴咲コウサンのボケっぷりに呆れ顔になるとかいう場面も欲しかったのですが、結構徹底してニヒルでしたよね。

 それにしても。

 このドラマを含めて、いろんなドラマの最終回を見ることの叶わなかったかたがたにたいしては、こうしてのうのうとドラマを見続けることはとても申し訳ない気持ちになります。
 特に4月から始まる 「JIN完結編」。
 もっと早くに続編が放送されていれば…と思うことしきりです。
 確か当ブログでも以前、「そんな先に続編が放送されるなんて、そのときまで生きていられるかどうか…」 などと冗談めかして書いてしまっていたのですが(追記 「坂の上の雲」 関係の記事でした)、そんな冗談が現実になってしまうかたがたが続出してしまうなんて…。
 とても申し訳なく感じるのです。

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コメント

織田裕二さんはとても苦手な俳優さんですが、おもしろみのなさそうな男の役を、気障にならずに淡々とこなすこの演技はよかったと、ちょっと見直しました。

薫子様
コメント、ありがとうございます。

今回の織田サンは、口がずっとへの字でしたよネ(笑)。 これから中年役者として、味のある役者サンになりそうな予感がいたしました。

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  • : レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]

    レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]
    全200ページ程度のボリュームのなかで、キャンディーズに関する特集記事は50ページ。 ただし、これが濃い。 全シングル曲、ほぼほとんどのアルバムの解説は当然として、彼女たちの芸能界における歴史から見た考察、コメディエンヌとしての彼女たち、DVD解説など多岐にわたり、キャンディーズが分析されています。 特に圧巻は、レア音源に関する記述。 ここまで調べている読み物には、個人的にはお目にかかったことはありません。 700円。

MUSIC

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  • デイヴ・グルーシン&リー・リトナー -

    デイヴ・グルーシン&リー・リトナー: Two Worlds / Grusin & Ritenour
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