« スーちゃんのこと | トップページ | 「新選組血風録」 第3回 ちょっと感想をリタイアします…と思ったけど撤回 »

2011年4月23日 (土)

「江~姫たちの戦国~」 第14回 過去の大河ドラマとの絶縁

 いま、NHKBSプレミアムで、大河ドラマ50作記念的な特集として 「よみがえる大河ドラマ デジタルリマスター版」 という番組を、ここ数週にわたって放送しています。
 画像が鮮明になり、ノイズも除去された感じでとても見やすくなったこれらのドラマ。 1作につき1話、みたいなペースで時代を追っています。

 この番組が開始されたとき、「江~姫たちの戦国~」 の代わりにこっちを放送すりゃいいだろう、というネタフリのために見出したのですが、

 かなり退屈で。
 睡魔と闘うのが精いっぱい。

 これってどうしてなんだろう、と考えたわけですよ。

 まずやはり感じるのは、いくら画像が鮮明になっても、いまのハイビジョンに慣らされた身としては、画像にかなりの見劣りがする、ということ。
 これは大昔の映画(黒澤映画みたいな)と比べても画質の悪さは際立っています。 解像度が低すぎる。

 そして役者たちの表情がその画像の悪さのせいで見づらく、なかなか感情移入させてくれない。
 さらに1話だけしか放送されないせいもあるのですが、物語に入って行けない(今日放送された 「樅の木は残った」 は総集編でしたが)。
 見続けているのであれば、互いの登場人物がどのような共通言語(つまり結びつきの質)で繋がっているかが把握できているために、物語にスッと入っていけるのですが。

 この、共通言語、という点においては、もうひとつ当時と現代との表現方法の違い、ということも如実に感じさせてしまいます。
 なんかドラマが冗漫に見えてしまうんですが、それって重厚さの裏返しに存在する弱点のように思える。

 そして役者たちに、同時代性がない。

 ドラマを見る側の心理として、その役者の今が見たい、という同時進行性を求める傾向って、どこかしらにあると思うんですよ。 自分たちと同じ時代を生きている俳優たちの今を見て、一緒に生きていると共感したがる部分、と言いますか。

 だから大昔の映画を見るとき、役者に思い入れがあるとかそんな部分から入っていくことは難しい。
 まず、作品の質、という部分からのめり込めるかどうかが決まる、と思うのです。

 それらの点で、大昔の大河ドラマを見るとき、そのハードルは非常に高くなる。
 退屈で途中で寝てしまう、というのには、そんな原因があると思われます。

 「江」 には、そのようなハードルが全くない。

 つまり同時代性という点でも、上野樹里チャンら出演者が、「今頑張っている」 というのが見えますし、続けて見てるから登場人物たちの結びつきの質も把握している。

 なにより内容が、非常に理解しやすい。 寝ちゃうことなくす~っと見ることが出来るんですよ。

 なのに、どうしてこうもドラマが浅いのか、と思わざるを得ないのです。

 ハイビジョンになって、俳優たちはちょっとした些細な表情でも、ちゃんと視聴者に分かってもらえる、とても恵まれた環境にあることは自明です。

 なのに、どうして物語に奥行きが生まれてこないのか。

 そりゃ脚本でしょう、というのは簡単に言うことが出来るのですが、この脚本は、これまで49作の大河ドラマの大河ドラマたる言語を完全に遺棄しにかかっているように思われてならないのです。

 それはアクビものの重厚さをきっぱり否定している、という点。

 登場人物たちの思惑には、あまり複雑さがありません。 動機は常に、ひとつかふたつ。
 そしてコントに、かなりの神経が使われている点。
 そのコントの埒外に存在しているのは、茶々と千宗易のみ。
 それ以外の出演者は、このドラマをいかに滑稽に見せるかに、心を砕いている。

 これは過去の重苦しい大河ドラマを真っ向から否定する所業であります。 ケンカを売っている、と言ってもいい。
 その点において、このドラマは凄い。

 14回目の内容ですが、江を佐治に嫁がせたはいいものの、結局秀吉は佐治の主君的な立場である織田信雄に戦を仕掛ける。 さらに秀吉は自分の思い通りにならない江が恋しくなり、あっという間に佐治と離縁させ出戻らせた、というそれだけの話。
 これを45分(正確には42分半)やるんですから、コントを大部分導入しなければ成立しないのでしょうが、それを強引に敢行してしまうのだから凄い。

 そのなかでホロっときたのは、江が初からの手紙を読むシーン。 互いに敵味方となってしまい、敵方に届くかどうか分からない、というのに初が書いた文が、江に届いたのです。
 こより状に折られた手紙の先端を初が誤って破いてしまったために、手紙の上部はギザギザ。 なのにあの意地っ張りの初から身の安全を心配する手紙が届いたことに、江は涙するのです。 このシーンには、心が少しばかり動かされました。

 ところが初から、もう一度手紙が届く。
 江が読んでみると、茶々が重い病気にかかった、という内容。
 とるものもとりあえず佐治が江を戻らせるのですが、その手紙は、実は秀吉が書いたニセモノ。 江はまんまと秀吉のもとへと戻らされたうえに、秀吉の養女になってしまったために秀吉から横柄な口をきかれるようになってしまうのです。

 ここで疑問なのは、初からのニセモノの手紙を、どうして江が簡単に信用してしまったのか、という点です。 だいたい本物の初からの手紙を見たばかりというのに、何で江は区別がつかないのか。

 しかしそれは、「敵方に簡単に届くかどうか分からない」 とされていた初の手紙が、簡単に江のもとへ届いてしまっていた、ということがある種のヒントになっている気がします。
 つまり秀吉の力によって、初の手紙は江へと届くことが可能になった、ということです。
 だからこそ秀吉は初の手紙を初が書いたようにそっくりに書くこともできただろうし、初がしたようにこより状に文を折り曲げることもできた。

 侍女(江の乳母らしいのですが、もうどっちゃでもよろしい)がそれの片棒を担いでいた、という見方もできる。
 この侍女、茶々が病気だというのに出来たばかりの大阪城に登城してその威容、豪華絢爛さにただただ感心するばかり。 「なに考えてんだ」 と思ったけど、そう考えれば侍女の心なさも理解できる。

 でもその種明かしは、いちいちドラマのなかでしたほうがいいと思われるんですよ。
 でなきゃ、「江って姉からの手紙の判別もできないかなりのマヌケ者」「侍女は茶々の病状なんかどうだっていいかなりのうつけ者」 で終わってしまう。

 まあ視聴者がどう思おうと、作り手はあまり気になさらないらしいですな。

 おそらく今から50年後、「よみがえる大河ドラマ」 みたいな今回の番組がもし作られたとしたら、同時性も俳優に対する思い入れもない後世の人々はこの 「大河ドラマ」 を見て、「なんじゃコリャ」 としか思わないんでしょうな。
 それとも今後大河ドラマはこんな軽い路線になっていって、エポックメイキングの作品だった、と評価されることになるんでしょうかね。

|

« スーちゃんのこと | トップページ | 「新選組血風録」 第3回 ちょっと感想をリタイアします…と思ったけど撤回 »

テレビ」カテゴリの記事

コメント

「樅の木は残った」が子供の頃大好きでした。でも今見たらきっと、あの時ほど感動しないのでしょうね。江ちゃんはバブル的価値観の終焉の象徴として、残るかも。あと、NHKの無駄遣いをなくす仕分けとかの時に槍玉になるとか。でも視聴率は龍馬伝より、腹がたつことにいいのじゃないかしら。JINと今週はたいして視聴率に差がなかったし。多分JINを見る助走として、ちょうどいいのかも。つまらなくなったら、お風呂に入ったり、食事したりできるし、予告の前をちょこっと見ればだいたい内容わかるし。江ちゃんがんばれ。イケメン投入までもちこたえてほしいけど、どうでしょうか。大河ドラマの終焉の象徴にならないことを祈っています。

投稿: ささ | 2011年4月26日 (火) 20時13分

橋本さん、お久しぶりです!
お元気そうで何よりです!

「江」は第1回は観たんですけど、僕は子役の女の子の演技と、脚本っていうか演出っていうか、、生理的に受け付けなかったものでずっと観てなかったんですよ。
でも、橋本さんの記事は「江」に関わらず読んでたんで、最近の「江」はコメディとして独自路線を歩み始めたのかな?と興味が湧いて今回観たんですよ。

結果やっぱり自分には受付けられませんでした。。
コメディとしても、センスが悪過ぎるというか。
何かあざとく感じられてしまうんですよね。
橋本さんの記事は面白いんですけどね!

投稿: アキラ | 2011年4月26日 (火) 23時09分

ささ様
コメント下さり、ありがとうございます。 相変わらず、何かしら書きたくなる、「江」 であります。

「樅の木は残った」 の放送時期は確か私は小学1年くらいだった?ので、見ておりませんでした。 7時半からの 「ムーミン」 を見たら8時には寝る時間、だったかも(笑)。

去年テレ朝で田村正和サンが原田甲斐をやった 「樅の木」 を見たんですが、山本周五郎先生の解釈ってやっぱり無理っぽい、ということは感じました。 NHKアーカイヴの 「樅の木」 は最初の部分だけ見たのですが、いきなり歌舞伎舞台での原田甲斐の解釈。 思えば初期の大河ドラマは、歌舞伎や能に影響を受けたような深遠な表現が多い気がします。

「江」 のほうは、いやはや月日が流れると、大河ドラマもこんなになるのか、という体たらくでありますね。 この記事ではその一点だけを書きたかったのです。 いやはや…(笑)。

投稿: リウ | 2011年4月27日 (水) 06時04分

アキラ様
お久しぶりでございます。 元気そうに見えますか?

「江」 ってとても中途半端。
大河ドラマとしてもコメディドラマとしても。
でもこのところ、コメディドラマとしての振幅が大きくなってきた気がするんですよ(あ~あ、秀吉の天下のせいだ…)。

まあでもコメディの質は、「ハハハ、ふにゃあ…」、という感じですね(私もかなり辛辣であります)。 毎週こんな調子でズッコケまくっているのでこのところそれに慣れちゃって笑ってますけど、「シラ~っ」 という笑いですよ、要するに。

だからここまで開き直って駄作を作っているNHKの姿勢に、とてもアナーキーなものを感じる今日この頃なのです。

投稿: リウ | 2011年4月27日 (水) 06時14分

先月、震災がありましたよね。
自分はあんまりネットでの繋がりって無いんですけど、
一方的にブログを見させていただいたりしてるんですよ。
震災以来、更新されてなかったりすると、やっぱり心配ですよね。
無事でいるのかどうか知る術もないわけだから。

なので、橋本さんが更新されてるのを読んで無事で嬉しかったんですよ。
お元気そうでっていうか、ご無事で何より!ですかね。
無事である自分達が復興のために力出さなきゃですよね!
社会人2年目の23歳の若造ですけど、結構腹括ってやるつもりです。

投稿: アキラ | 2011年4月27日 (水) 13時54分

アキラ様
再コメント下さり、ありがとうございます。

23歳でいらっしゃるんですか! フレッシュマンだhappy01。 このブログには、私より2、3歳かそれ以上年上のかたが比較的多いので、ちょっとした驚きです。 先輩面を吹かせてしまいますが、人生この先、いろ~いろありますよ。 腹をくくった以上はやり抜きましょう!

震災後の更新が滞ったのは、やはり自粛でしたが、最近滞ったのは、一身上の都合でして…。
ご心配くださり、痛み入ります。
ご無事です(笑)。
オッサン世代なのでスーちゃんのことではダメージを受けましたが、落ち込んでばかりもいられません。 ひたすら前を向いて、お互いに頑張りましょう!

投稿: リウ | 2011年4月27日 (水) 16時15分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/521783/51473956

この記事へのトラックバック一覧です: 「江~姫たちの戦国~」 第14回 過去の大河ドラマとの絶縁:

« スーちゃんのこと | トップページ | 「新選組血風録」 第3回 ちょっと感想をリタイアします…と思ったけど撤回 »