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2011年4月25日 (月)

「JIN-仁-」(完結編) 第2回 自分の願いとの闘い!

 今回の 「JIN」 は、話が1話で完結せず、謎が深まっていくような構造みたいですね。
 そのスタンスを理解しておかないと、「ちょっと第1部とは違う」 なんて違和感をもちながら見てしまうことになりそうです。
 歴史上の人物は大挙して登場するし、話が大きくなりすぎて 「いいのかな~西郷さんや和宮さまをこんなふうに治しちゃって」 みたいに感じないこともない。
 そんな大物の話に飲み込まれて、第1部並みの細かい心理描写が出来ていないようにも感じます(それでも、フツーのドラマに比べればぜんぜんOK)。
 まあでも、物語が第1部とまったく同じではつまらないし、だいいち話が完結しませんからね。
 「ER」 並みにシーズン14とか15とか、それくらい見ていたいことは確かなんですが、ここはスケール感がアップした 「JIN」 を堪能していきたいと思うのです。

 「仁術」 を地で行く南方の 「仁友堂」 経営。 財政は、火の車であります。
 咲(綾瀬はるかチャン)がその逼迫状況を、自らの着物やかんざしを質に入れることでなんとか補っている。 「ゲゲゲの女房」 の布美枝ばりです。 南方も、咲のやりくりを心苦しく考えている。
 そんななか、皇女和宮(黒川智花チャン)の脚気治療のために、アンドーナツを献上せよ、という話が西洋医学館の松本良順(奥田達士サン)からもたらされる。 それがなれば仁友堂の経営状態もかなり良くなるのですが、和宮、という名前の大きさに、またしても南方は躊躇してしまうのです。

 しかし南方をここで動かすのは、皇室から幕府へと嫁いだ和宮の、「別世界に来た者同士」 の共感、そして偶然出会った野風(中谷美紀サン)も同じ、花魁の世界から別世界に舞い降り、自分には両親も故郷もない、というその境遇への共感でした。
 そしてその背後には、野風がどうしても、未来(ミキ、中谷美紀サン、二役)とダブってしまう、という南方の断ち切れぬ思いがある。

 それにしてもこの野風。

 身寄りがないところを南方が仁友堂へと誘ったのですが、やはり佐分利(桐谷健太サン)たちにも奇異な目で見られるし、なかなか普通の市井の生活をするわけにはいかないようです。 野風が本当に、心を落ち着かすことのできる場所は、いったいどこにあるのでしょうか。

 アンドーナツ献上を南方が決めたことで、南方をこころよく思わない医学館の多紀(相島一之サン)は福田(佐藤二朗サン)にそれを阻止するよう命じます。
 果たして和宮は、アンドーナツを食べてその場に倒れ、毒を盛ったとして南方らは捕えられ、牢獄に入れられることとなる。

 ここが今回の謎のツボなんですが。

 ドラマを見る限り、福田がアンドーナツに細工をしている直接的な描写がない。
 そして和宮は、アンドーナツと一緒にお茶を飲んでいるから、もしかするとそっちにも原因がある可能性も捨て切れない。
 つまり真犯人が誰であるか、この時点で断定できないのです。
 医学館の多紀は、第1部では西洋医学館の松本良順と対立していました。 ここらへんの力関係も怪しいのですが、その抗争のために将軍の御台所の命を危険にさらすことまでするのかどうか。

 いずれにしてもこの、ヒ素を盛られた和宮の緊急手術が、第2回のもっとも面白かった部分でした。
 当時の常識では考えられない腸内洗浄、という方法(胃洗浄、ですね、「通りすがり様、ご指摘ありがとうございます)。 これを南方ではなく大奥の医師である松本良順が行なっていくのですが、皇族で御台所の胃のなかのものを吐き出させていくその描写、恐れ多い気もしますが相変わらず容赦がない。

 しかしその洗浄が成功したにもかかわらず、「わざわざこんな状態にしてそれを治し自分の名を上げようとしている」 とした和宮お付きの年寄(伊藤かずえサン)によって、南方と咲は牢屋行き。 咲はまともな場所のようですが、南方が放り込まれたのは、大牢という、およそ医師が入れられる牢獄とはほど遠いもの。

 そこに待っていたのは宇梶剛士サン。 「あしたのジョー」 のマンモス西よろしく、ふんぞり返って 「つる」 と呼ばれる賄賂を要求してきます。 もちろん財政的に逼迫している南方に手持ちの金などあるはずもなく、咲の苦労も知っているから、持っていてもやるもんか、というスタンス。
 南方は半殺しの憂き目にあうのですが、半殺しどころではなく、この牢にいる連中は南方を本当に殺そうとしている。 

 ここで南方(大沢たかおサン)が現代に戻りそうになる描写がなされます。

 それは咲が、南方を未来(みらい)に戻してくださいと神仏に頼んだゆえの効果であるようです。

 第2回冒頭で咲は、南方が 「ひょっとして急にいなくなるかもしれないし」 と自分の存在の危うさを口走ってしまうと、神社にお参りして、南方がずっとこの時代にとどまってくれるように祈っていました。

 けれど南方の運命が危機にさらされたとき、咲はそんな自分の願いを捨て去ろうとするのです。

 「口では分かっているようなことを言いながら、わたくしはずっと、心の底では望んでおりました。
 先生がお戻りになる日など、来なければよい。
 出来るなら、ずっとここにいてほしい。

 もしや、そんなわたくしを哀れと思い、願いをお聞き届けくださったのでしょうか。

 なれば、どうか、もう一度だけ、哀れと思うてくださいませ。

 どうか、先生をお助け下さい!

 今すぐに、…今すぐに、先生を未来にお戻しくださいませ!」

 いっぽう南方も、元の世界の家族や友人に会うこともなく、未来(ミキ)がどうなったのかも分からないまま、「ここ(江戸時代)で死んでもいいかと訊かれれば、『いい』 とは言い切ることはできない」 と考えていました。 「『それでもいい』 と言い切れる日など、来るのだろうか? そんな日はたぶん、永遠に来ない」――と。

 しかし大牢に入れられ、囚人たちに口をふさがれて、意識が薄れていく中で見たその現代の風景の幻覚を、南方は拒絶するのです。 「現代に戻らない」、と。

 それは南方が和宮と接見するのに、咲が質屋から買ってきた着物を、宇梶サンにぶんどられたことが大きい。

 「でも、ここで戻ってしまったら、どうなるんだろう?

 咲さんがどうなったかを未来(みらい)から知ることは、…きっとできない。

 あの不器用な優しさに応えることはできない。

 あの笑顔を見ることはできない。

 それでもいつか、新しい日々のなかで、…『それでよかった』 と言い切れる日が、来るんだろうか?

 そんな日など…

 そんな日など…。

 絶対に来ないと思うんなら…」

 南方は自分の口をふさぐ囚人の手を、思い切り噛むのです。

 自分の願うことよりも、相手にとって大事なものがある。 大切なものがある。 相手のことを思うことが、自分にとっていちばん大事なことだったりする。
 この第2回は、そんな自らの思いとの葛藤が、描かれていた気がします。

 それにしても、第1回で現代に戻っている南方を映したようなシーンがあったことを見ても、江戸時代と現代との間に微妙な 「揺らぎ」 が生じつつある気がします。 完結編では、この 「揺らぎ」 が物語を左右していくような気がする。

 南方を吟味するのは、どうも医学館側の人間らしい。 状況は、いまだ絶望的であります。

当ブログ 「JIN」 についてのほかの記事
第1部

第1回 荒唐無稽との闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/10/jin---1-e9ae.html
第2回 建前との闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/10/jin---2-f3b1.html
第3回 自分の病との闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/10/jin---3-3290.html
第4回 女としての闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/11/---4-542b.html
第5回 梅毒との闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/11/jin---5-9dba.html
第6回 リアルとの闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/11/jin---6-25d6.html
第7回 明日のための闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/11/jin---7-87b0.html
第8回 自分の器との闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/11/jin---8-e9a7.html
第9回 心意気どうしの闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/12/jin---9-8cf0.html
第10回 ああもう、どうなっちゃうの?との闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/12/jin---10-670a.html
第11回(最終回)続編あるかどうかとの闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/12/jin---7290.html
番外 続編の可能性を、もう一度考えるhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/12/jin---a138.html

完結編
第1回 いますべきこととの闘い!① http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2011/04/jin---1-577a.html
第1回 いますべきこととの闘い!② http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2011/04/jin---1-7d0d.html
第1回 いますべきこととの闘い!③ http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2011/04/jin---1-c8e9.html
第1回 いますべきこととの闘い!④ http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2011/04/jin---1-6f3f.html

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コメント

胃洗浄ですな。

通りすがり様
ご指摘、かたじけのう存じます。 さっそく訂正いたしました。

和宮様、現代の胃カメラでも苦しいのに
あんなチューブをノドから入れられて大変でしたね。
鶴の一声で「あの者がわらわの命を救ったのじゃ。すぐ牢から出せ」と言ってくれれば
JINたちが解放されるのではないでしょうか。

福田さんはドーナツの材料に毒を混入しようとして、心情的に(医師としても)出来なかったんですよね。
いい人なんですよ。

マイティ様
コメント下さり、ありがとうございます。

第1回は 「さすがだ」 と感じたのですが、第2回はなんか心に響いてこないなあ?という感じで見ていました。 再度見直すと 「ああそうだったのか」 と分かったりするんですけどね。
話がくどかったり、状況がにわかにつかめなかったりする。 作り手の気負いが先に立っている感じ、なのです。

福田サン、あれだけガマの油並みに汗かいてれば、誰だって気付いちゃうでしょうね(笑)。

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