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2011年5月 7日 (土)

「おひさま」 第5週 「深刻」 のスルー

 「おひさま」 第5週のメインは週ごとの副題の通り陽子(井上真央チャン)の失恋話なのですが、それと同時に家族や、女学校時代の結びつきがほどけていく、新しい世界への扉が見え始めた週でもありました。

 その先鞭を切ったのが幼馴染のユキ(橋本真実サン)との再会。 陽子もユキもふたりとも幼い日の面影が全くないのですが(笑)陽子が教科書が新しくなるたびにそれを書き写してユキに送り続けていた、というくだりから、このふたりの固く結ばれた友情は 「白紙同盟」 のふたりとはまた異質の長い歳月を感じます。
 だから再会を喜び合うふたりが幼い時と別人でも(笑)何の違和感もなく感情移入して、泣けてしまう。 物語がとても自然であるからこそ、泣けてしまうのだと思うのです。

 ユキは陽子が書き写してきた教科書を勉強したことによって奉公先で認められ、正社員として神戸で働くことになったのです。 よかったよかった。
 そして幼い時からのこの地道な友情の踏み固めが、「ユキにとって陽子は先生も同じ」 という構図を作り出している。
 そこにおばあさま(渡辺美佐子サン)から自分の母親(原田知世サン)が教師になりたがっていた、ということを聞いていたことも併せて、「自分は教師になろう」 という決意が陽子に芽生えるのです。
 陽子の生きる道を決める要因が、さまざまな事象から形成されているのが、なんかとても自然で感心します。
 しかも現在の陽子(若尾文子サン)は、激しくもったいぶりながら(笑)ユキとの関係がこの先復活するであろうことを匂わせている。
 布石を置きまくっている、という感がとてもするのです。

 「おひさま」 現代編の大いなる特徴は、房子(斉藤由貴サン)のウザいテンションもさることながら(笑)物語に布石を置きまくる、という役割もいっぽうでは果たしているように感じます。

 そのひとつが、昭和編の登場人物たちのその後の消息。
 タケオクン(柄本時生クン)のその後に犬塚弘サンを配し(このふたりあまりにも似てるので大笑いしました)いまだに陽子を思っているタケオクン、という構図を作り出していたし、今週は育子がガラパゴス諸島を旅している、というブッ飛び老女ぶりも披露されました。
 気になるのは真知子(マイコサン)のその後。
 なんか薄幸そうな気がする。

 陽子が失恋をしてしまう初恋の相手、川原(金子ノブアキサン)も、結婚を宣言した相手のタエ(中村ゆりサン)を満州で失ってしまうことになるらしい。
 今週前半の話は、目の前でその結婚の申し込みを見せられてしまった陽子の決壊しそうになる思いが繊細に描かれていて、秀逸でした。

 まず陽子の兄茂樹(永山絢人サン)が陽子の川原への思いに気付いてしまい、それを父良平(寺脇康文サン)兄春樹(田中圭サン)に打ち明ける。
 そのことで大いに狼狽する3人のニブさ、見当違いの気の回しかた、もうすべてが可笑しくて笑いまくったのですが、実はそれが陽子に与えられたショックを効果的に見せるためのいわばお膳立てであったのです。
 そして自らの家族に話しても全く取り合ってもらえなかったことから、川原は須藤家のこの4人に対して、「自分はタエさんと一緒になって満州へ行きたい」「このことを祝福して下さい」、と切り出します。
 陽子の思いを知っている須藤家の男3人は、川原の、家庭の事情から須藤家を頼ってきた思いにもこたえなければならないのですが、いかんせん陽子の川原への思いに気付いてしまっている。 判断に迷う気まずい沈黙が流れます。
 その沈黙を破ったのが陽子。
 失恋の涙を 「話を聞いて感動してしまった」 という涙へとごまかして、自ら率先して、川原とタエの仲を祝福するのです。
 陽子がどんな思いでこの行動に出ているのかがじゅうぶん分かっている父親と兄ふたり。 陽子に促される格好で、川原たちを祝福します。
 いいですなあ。 この、「相手を思う気持ち」 の交差しまくりの構図は。

 陽子がタエと会話をし出すとすぐに、見る側はタエが結構方言出しまくりの女性であることに気付くと思います。
 案の定、その夜陽子の部屋で休むことになったタエから、陽子は彼女が幸薄い境遇であったことを聞かされるのです。

 「川原さん、『君が、ぼくにとって必要な人なんだ』 って言ってくれて。
 あたし、生まれてから、ずっとじゃまにされてて。
 『オメエなんか預かりたくなかった』 とか、『食わせる飯はねえ』 とか言われて育ったし、いろんな仕事したんだけど、どこでも、『お前の代わりなんかいっくらでもいるんだぞ』 って言われてて。

 生まれて初めてだったから…。
 『必要なんだ』 って言われたの。

 うれしくてうれしくて。

 だから、ちいとでも一緒にいたいなと思って。
 『お前が必要なんだ』 って言われる女でいたいなって、それだけでいいって思ったの」

 そんな会話をつづけるふたりの耳に、川原の吹く 「月の砂漠」 のハーモニカの音が流れてきます。
 陽子にとってそれは、川原とのとても大切な思い出の曲。
 うう、泣ける。

 この人は、川原さんに愛される資格のある人なんだ――。
 陽子にとってそう思わなければならないのは、つらいことです。
 陽子は川原とタエを須藤家の玄関先で見送るまで、気丈に過ごします。
 見送ったあと、父親と兄ふたりは、陽子の頭を優しくポンポンとなでる。
 陽子は彼らが陽子の本当の気持ちを知っていることに、たぶん気付いていません。
 でも父と兄たちの 「よく取り乱さずに頑張ったな」、という思いがそこには凝縮されている。

 けれども陽子は緊張の糸が途切れたのか、そのあと数日、寝込んでしまいます。
 しばらくして女学校に登校してきた陽子。
 授業中だったにもかかわらず、真知子と育子(満島ひかりチャン)の顔を見た途端、今までたまりにたまっていた思いが、決壊してしまう。

 父も兄もじゅうぶん優しいにもかかわらず、やはり自分の本当の気持ちを打ち明けられるのは、家にいる男どもではなく、親友なのです。
 ここは泣けた~。
 英語の教師(近藤芳生サン)が 「だから女は」 と苦虫を噛み潰すのに 「シャラップ!」 とくぎを刺す育子にも拍手。

 馴染みのアメ屋で陽子を慰める真知子と育子。

 「大変だったね」
 「よく頑張った」

 「ウン…私よく頑張った」

 「エライよ」

 「ウン…えらい」

 泣きじゃくりながら自分をほめる陽子に、こっちももらい泣きしながら笑ってしまうのですが、このドラマの特異な点はここにあると思う。
 本当に深刻な方向に、ドラマが流れていかないんですよ。
 心から同情しながらも、育子は 「でも、目の前で求婚を見せられるなんて、なんだか笑っちゃう」 と陽子の一世一代の失恋を笑い始めてしまうのです。
 まさにそれは、木っ端微塵の失恋(笑)。
 それを笑い飛ばすことで、3人とも落ち込んでしまうというネガティヴなベクトルを、ドラマは拒絶するのです。

 現代編の斉藤由貴サンの役割も、部分的にはそんなところにもあると思う。
 なんかウザいなーと思いながら、見る側は深刻さから救われているのです。

 そして物語は、女学校後、に向けて歩き出します。
 まずは茂樹の予科練合格、そして育子のトンジョ合格(こっちには裏があるみたいですが)。
 個人的な話ですが、来週もおとなしく、1週間分1時間半を、見られますでしょうか。
 乞うご期待、であります。

「おひさま」 に関する当ブログほかの記事

第1回 情緒に訴える形のドラマ
http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2011/04/1-4227.html
第1週 まっとうに生きるということhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2011/04/1-f504.html
第2-4週 現代の価値観で昔を見ることの愚かさhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2011/05/2-4-b6a4.html

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コメント

飴屋さんで泣く陽子、店の主人にいろんな菓子を口に放り込まれるのも面白かったですね。
食わしときゃ泣き止むべ、と。
井上真央ちゃんは「いじられキャラ」が上手いです。

これから陽子たちが家を出て
お父さんひとりになってしまうんですねえ。
女子校生活ももう少し見ていたかった気がします。

マイティ様
コメント連投、ありがとうございます(返信の順番が逆になってしまいました、ホントは 「高校生レストラン」 のほうが連投、ですよね)。

お父さんの寺脇サンが 「自分ひとりでもなんとかやっていける」 と言うのに陽子が 「じゃ私の存在っていったい?」 っていうところ、クスッと笑ってしまうのですが、「おひさま」 にはこんな、クスッと笑うところがとても多い気がします。 井上真央チャンによると台本に 「ちびまる子ちゃんの顔が引きつって顔に縦線が入っているような感じ」 とかト書きがあるらしいのですが、まさにそんな感じです。

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BOOKS

  • マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下

    マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下
     1600ページも費やして、この上下巻はまだ彼らのデビューまでしか書かれていない。 3部作計6巻のうち2巻に過ぎないのだ。 なんと気の遠くなるような作業なのだろう。  本書はビートルズを語るうえで孤高の一作となるはずだ。 虚飾をすっかり剥ぎ取った、20世紀最大の奇跡に潜む真実が、これを読めば理解されるはずである(当ブログ紹介記事より抜粋)。 本書下巻では、1962年のレコードデビューまでが書かれています。

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     1600ページも費やして、この上下巻はまだ彼らのデビューまでしか書かれていない。 3部作計6巻のうち2巻に過ぎないのだ。 なんと気の遠くなるような作業なのだろう。  本書はビートルズを語るうえで孤高の一作となるはずだ。 虚飾をすっかり剥ぎ取った、20世紀最大の奇跡に潜む真実が、これを読めば理解されるはずである(当ブログ記事より抜粋)。 この上巻ではビートルズの祖先から遡ってリバプールで人気に火が付き始めたところまでが書いてあります。

  • ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白

    ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白
    まず驚かされるのが、表紙のポールの写真です。 よくこんなのが採用されたな、というくらい、刻まれた年輪が顕著に分かる 「年老いたポール」。 飾り気のないその写真に、「素のポール」 をあぶり出そう、という心意気が見える。 そして実際、著者のその目論見は、成功しているように思えます。 何より大きいのは、「NME」「Q」「MOJO」 など音楽メディアで長年記者を務めてきた著者がポールと同じリバプールの出身者である、ということ。 さらにポールと同じファースト・ネームであること。 だからポールはまるで自分の分身に話しかけるかのように、時折同郷人にしか分からない言葉で気さくに著者に話しかける。 この本を読む者は、まずその 「不思議なリラックス感」 に包まれるはずです。  本の構成は大きく二つに分かれます。 前半ではビートルズからウィングス、ソロに至るポールのたどってきた長い長い歴史、後半ではポールの人格に迫る試みがなされていく。 そのインタビューは、一気に行なわれたものではありません。 著者がNMEの記者だった1979年のものから、明示はされていないがおそらく2013年、「NEW」 の発売前後が最新のものではないか、と思われます。 実際読んだ感覚では 「キス・オン・ザ・ボトム」 あたりが最新のような気もする。 その30年以上にわたる膨大なポールへのインタビューを、項目によって構成し直しているようです。 ですから、今年(2016年)亡くなったジョージ・マーティンについてのポールの見解であるとか、最新の情報が提示されているわけではない。 ポールの情報というのはこの歳になってもなお日々更新型ですから、その点については物足りなさが確実にあります。 さらに、30年以上というとポールのものの考え方にも変化変遷があってしかるべきだと思うのですが、30年以上をリミックスにかけているからその変化というものがつかめてこないもどかしさがある。 表紙を飾ったポールの 「老い」 という問題にも、この本はきちんと答えてくれているわけではない。 さらに言えば、ジョン・レノンの死について多くが割かれているのとは対照的に、2001年に亡くなったジョージ・ハリソンの死についての記述はない。 正直なところ、このような本を読み漁ってきた身としては、衝撃に値するような情報が書かれているわけではありません。 しかし前述したような、リラックスしたムードのなかでポールと語らっているような疑似体験を共有できる強みが、この本にはある。 この本全体に貫かれているのが、この心地よさなのだ、と思うのです。 その心地よさが乱れるパートがあります。 自身の失敗作、どうでもいい作品について語るときのポールは多分に感情的になりがちであり、イライラした様子を隠しません。 特に 「シークレット・フレンド」 を語るポールのくだりはポールファンなら一読に値する部分でしょう。 しかしそのイライラも、ポールの人間性が垣間見える瞬間としてこの本にとっては必要なパートなのです。 3000円以上と、この本は決して安くはない部類の本です。 ただその値段に見合うパフォーマンスは兼ね備えています。 この本と付き合った1か月足らずの間、心地よい体験をすることができました(アマゾンの自身のカスタマーレビューより)。

  • : レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]

    レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]
    全200ページ程度のボリュームのなかで、キャンディーズに関する特集記事は50ページ。 ただし、これが濃い。 全シングル曲、ほぼほとんどのアルバムの解説は当然として、彼女たちの芸能界における歴史から見た考察、コメディエンヌとしての彼女たち、DVD解説など多岐にわたり、キャンディーズが分析されています。 特に圧巻は、レア音源に関する記述。 ここまで調べている読み物には、個人的にはお目にかかったことはありません。 700円。

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  • ザ・ビートルズ -

    ザ・ビートルズ: サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(スーパー・デラックス・エディション)(4CD+DVD+BD)
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    山口 百恵: ゴールデン☆アイドル 山口百恵(完全生産限定盤)
    全シングルA・B面プラスボーナストラック(「あなたへの子守歌」)を、山口百恵名義としては初のブルースペックCDとしてリリース。 音はいわゆるドンシャリ系ではなく、アナログ盤に準拠した原音に忠実な印象です。 パッケージングはアナログシングル盤サイズで中袋、CDを納めるケースが完全にドーナツ盤をイメージしています(よく言えば斬新…笑、悪く言えばチャッチイ…笑)。 しかしその発想は買える(笑)。 ほぼ原寸大のシングルジャケットと裏の歌詞カードの複製ブックレット。 ただスキャニングは欲を言えばもう一歩。 当時シングル盤を中心に聴いていたかたなら、この編集盤はかなりの 「買い」 です。 しかしこのジャケット表紙の写真、スッピン風で個人的にはすごく好き。

  • デイヴ・グルーシン&リー・リトナー -

    デイヴ・グルーシン&リー・リトナー: Two Worlds / Grusin & Ritenour
    NHK朝ドラ 「花子とアン」 で美人のスコット先生が夜な夜な歌い、チビはなチャンがすっかり覚えてしまったイギリス民謡、「ザ・ウォーター・イズ・ワイド(流れは広く)」。 このアルバムでルネ・フレミングが歌っていたのを思い出しました。 ルネのソプラノはけっして大袈裟でなく上品で、私のとてもお気に入りのソプラノ歌手ですね。 このアルバム自体は全体的にクラシックにギターのリー・リトナーが絡むフュージョンぽいものなのですが、故・黒田恭一サン評するところの、「大人が聴く音楽」。 胸を締め付けるような哀しみと、すべてを包み込むようないたわりに満ちていて、私の人生のなかでも最上位に位置する愛聴盤です。

  • 桜田淳子 -

    桜田淳子: ゴールデン☆ベスト 桜田淳子~シングル・コレクション
    彼女の活動期に発売されたシングルをすべて網羅したベスト盤。 確かに後年のものほど馴染みがありませんが、選曲漏れがないので、彼女の存在とは何だったのか自体に思いが至るベスト盤です。 音も楽器の音像がよくてなかなかいいマスタリングをしている気がします。 2600円程度で推移しています。

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    ザ・ビートルズ: ザ・ビートルズBOX(限定生産品)(USBメモリ)
    パソコンにUSB端子があり(たいていついてると思います)、パソコンで音楽が聴ける環境をお持ちの人ならば、聴くことができます。 現在のテクノロジーで最もいい音質で聴ける、ビートルズの音楽です。 ただし国内版にもかかわらず、訳詞とか一切なし。 ジャケットもブックレットもパソコンデータ。 純粋に音楽だけ楽しみたい人向けです。 また、曲間にコンマ何秒かのブランクが入ります。 「アビイ・ロード」 のメドレーも同様です。 しかし、音はさすがに、すごい。 大きな音量であればある程、目の前にビートルズが迫ってくる勢いです。 ツヤが違います。

  • The Beatles -

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    こちら上記の海外版。 内容的には国内版とほぼ一緒なので、値段が安いこちらのほうがいいでしょう。

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