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2011年5月 2日 (月)

「JIN-仁-」(完結編) 第3回 人を思う気持ちとの闘い!

 「JIN-仁-」 完結編は、やはり前作からその特徴を大きく転換しているように思えます。
 その表現手法が違うために見る側には、ちょっとした戸惑いが生じることになる。

 完結編で顕著なのは、物語の展開が速いこと。
 そのため、前作で評価の高かった、南方(大沢たかおサン)をはじめとする登場人物たちの微細な心理描写と、くどいくらいの動機づけ、そしてそれが現実問題と鮮やかに合致していた構成の妙が、今回は少しばかりなりをひそめているのです。
 物語はどんどん進行し、ちょっと見ただけでは理解できない部分も、それによって生じてくる。

 これはどうしてか、と受け手が考えるとき、原作のマンガとの兼ね合いに原因があるのではないか、と結論づけたくなってくる。
 今回の完結編では、前作で原作本が到達していた部分の3倍くらいの量を詰め込まなければ終わらない計算になるらしいです。 だからいろんなことを矢継ぎ早にこなしていかなければならないんじゃないか、と。

 もしそうだとすれば脚本家のかたには、原作にあえて忠実である必要なんかありませんよ、ドラマではオリジナルの部分も加えているわけだし、そこがこのドラマのいいところなんだから、と助言してあげたくもなってきます。 お節介ですけどね。

 でも 「続編では前作の表現方法を転換した」、と見る側が気持ちを切り替えれば、そのスピーディさのなかで南方や咲(綾瀬はるかチャン)、龍馬(内野聖陽サン)がどのように時代を見据え、幕末という混乱の時代をいかに生きていくのかに心を奪われるのではないか、そう感じます。

 そしてなにより、南方は現代に戻れるのか――。

 その成否はドラマにとって、大きなカギを握っていると思われるのです。

 ここで重要なのは、この続編が、きっちり前作から2年後、という時点から始まっていることだと思います。
 2年という月日は、南方にとって 「もう元の世界に戻るのは無理だ」 とあきらめざるを得ない過程だった、とは言えないでしょうか。
 2年もそのままだったらなあ。

 そして橘から勘当状態になり、南方のもとに身を寄せている咲は、この2年を、どう受け止めてきたのか。

 それは南方とは全く逆で、「この人はいずれは元の世界に戻ってしまう」、という漠然とした、でも確信に満ちた思いを募らせた過程があったのではないでしょうか。

 前回で大牢に繋がれてしまった南方は、だからこそ自分が死ぬかもしれない、という絶体絶命の状況のなかで、もはや不確定な未来(ミライ)よりも、咲の行く末を見よう、という選択をしたんだと思うのです。
 なにしろ自分が江戸時代で活躍していくことによって、未来(ミキ、中谷美紀サン)の未来(ミライ)を翻弄し続けているんですからね。 もうここまで来ちゃうと、あれこれ悩んでもしょーがねえや~という気分になるもんじゃ、ないでしょうか。

 だったらいま自分が生きている時代を生き抜くことのほうが重要だ。

 だからこそ、南方は咲に求婚をしたんだと思うんですよ。
 牢獄でリンチに遭い、拷問を受けて瀕死状態になったからこそ、南方はそのとき、今の自分にとっていちばん大切な人と一緒になりたい、と感じたと思うんですよ。

 その後押しに一役買っているのは、牢獄での 「つる」 と呼ばれる賄賂を自分が見受けすることで用立てた野風(中谷美紀サン、二役)の言葉。

 「あちきはこれより、おなごの幸せはすべて手に入れるつもりでありんす。
 先生は、我が身のお幸せだけを、お考えくだされ」

 2年も南方の前に姿を現さなかった野風でしたが、前作では南方に、ほのかな思いも寄せていました。 それをあらためて振り切ったうえでの、この野風の決別の言葉には、悲しい決意が秘められています。 その秘めた思いを沈め、牢獄から生還した南方に、野風は 「これより先のご心配は御無用でありんす」 と、冷たく言い放つのです。

 牢獄から戻って再び未来(ミキ)の写真を確認した南方は、相変わらず写真が復活していないことを見届ける。
 南方は消えてしまった未来(ミキ)の写真に向かって、「ごめんな、ミキ…」 と謝ります。
 そして南方は、咲に求婚する。

 けれども咲は南方からの求婚を、きっぱり断ります。

 それは咲が先ほども申した通り(同音異義語ばかりで混乱いたします…笑)「南方先生はいずれは元の世界に戻る」 という確信を持っているからこその拒絶なのです。
 咲は未来(ミキ)の存在が、南方にとって自分なんかよりよっぽど影響力があるという無力感を抱いています。 その思いが原動力となって、「南方先生は南方先生の元いた時代に戻ることが、いちばんの幸せなのだ」 という思いに至っている。

 「お断り申し上げます。

 わたくしの幸せは、先生と一緒になることではございません。
 わたくしの幸せは、のちの世に、仁友堂を残すことでございます。

 わたくしは、先生が、いつかお戻りなるようなことを考えていらっしゃるのが、情けなく感じる時がございました。
 それはなにゆえかと、心に問うてみますれば、先生がお戻りになる未来に、わたくしがいないからなのでございます。

 ならば、残せばよいと思いました。

 わたくしが…わたくしたちが、つかの間、先生と生きた日々を…」

 「戻らないかもしれませんよ…」

 「いいえ。

 きっと、お戻りになります」

 自分はいついなくなるか分からないような人と夫婦になることはできない、と咲は南方を振り切りその場を去るのですが、兄の恭太郎(小出恵介サン)に出くわした咲は、募らせた思いが一気にあふれ出てしまう。

 「わたくしだけ…わたくしだけ幸せになど、なれるわけがないではごさいませぬか…」

 咲は兄の肩に顔をうずめ、さめざめと泣くのです。

 咲は 「南方とお幸せに」 と言って去っていった野風の、南方への思いも気付いている。 そんなに簡単に、割り切れるわけがないですよね。 そんな咲の思い。

 牢獄での悲惨さから南方の求婚と咲の拒絶に至るまで、これを1回でやってしまうことには、確かに性急さも感じないことはないです。
 何しろ話は、江戸と京都の間を往ったり来たりしている。
 それも考慮に入れれば、また 「どこでもドア」 が出現か?と揚げ足をとりたくもなってきます。

 でも物語に没入すれば、そんなことは仔細なことなのだと思えてきます。
 振り返って考えれば、くどいくらいの動機付けはなされているし、そこから 「前だけを見据えて生きていこう」 という力強いメッセージも感じることが出来るはず。
 話がめまぐるしすぎ、などと考えずにそのスピードに没入することがベストなのではないか?と思われてなりません。

当ブログ 「JIN」 についてのほかの記事
第1部
第1回 荒唐無稽との闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/10/jin---1-e9ae.html
第2回 建前との闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/10/jin---2-f3b1.html
第3回 自分の病との闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/10/jin---3-3290.html
第4回 女としての闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/11/---4-542b.html
第5回 梅毒との闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/11/jin---5-9dba.html
第6回 リアルとの闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/11/jin---6-25d6.html
第7回 明日のための闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/11/jin---7-87b0.html
第8回 自分の器との闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/11/jin---8-e9a7.html
第9回 心意気どうしの闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/12/jin---9-8cf0.html
第10回 ああもう、どうなっちゃうの?との闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/12/jin---10-670a.html
第11回(最終回)続編あるかどうかとの闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/12/jin---7290.html
番外 続編の可能性を、もう一度考えるhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/12/jin---a138.html

完結編
第1回 いますべきこととの闘い!① http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2011/04/jin---1-577a.html
第1回 いますべきこととの闘い!② http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2011/04/jin---1-7d0d.html
第1回 いますべきこととの闘い!③ http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2011/04/jin---1-c8e9.html
第1回 いますべきこととの闘い!④ http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2011/04/jin---1-6f3f.html
第2回 自分の願いとの闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2011/04/jin---2-4ed0.html

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BOOKS

  • マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下

    マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下
     1600ページも費やして、この上下巻はまだ彼らのデビューまでしか書かれていない。 3部作計6巻のうち2巻に過ぎないのだ。 なんと気の遠くなるような作業なのだろう。  本書はビートルズを語るうえで孤高の一作となるはずだ。 虚飾をすっかり剥ぎ取った、20世紀最大の奇跡に潜む真実が、これを読めば理解されるはずである(当ブログ紹介記事より抜粋)。 本書下巻では、1962年のレコードデビューまでが書かれています。

  • マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 上

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     1600ページも費やして、この上下巻はまだ彼らのデビューまでしか書かれていない。 3部作計6巻のうち2巻に過ぎないのだ。 なんと気の遠くなるような作業なのだろう。  本書はビートルズを語るうえで孤高の一作となるはずだ。 虚飾をすっかり剥ぎ取った、20世紀最大の奇跡に潜む真実が、これを読めば理解されるはずである(当ブログ記事より抜粋)。 この上巻ではビートルズの祖先から遡ってリバプールで人気に火が付き始めたところまでが書いてあります。

  • ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白

    ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白
    まず驚かされるのが、表紙のポールの写真です。 よくこんなのが採用されたな、というくらい、刻まれた年輪が顕著に分かる 「年老いたポール」。 飾り気のないその写真に、「素のポール」 をあぶり出そう、という心意気が見える。 そして実際、著者のその目論見は、成功しているように思えます。 何より大きいのは、「NME」「Q」「MOJO」 など音楽メディアで長年記者を務めてきた著者がポールと同じリバプールの出身者である、ということ。 さらにポールと同じファースト・ネームであること。 だからポールはまるで自分の分身に話しかけるかのように、時折同郷人にしか分からない言葉で気さくに著者に話しかける。 この本を読む者は、まずその 「不思議なリラックス感」 に包まれるはずです。  本の構成は大きく二つに分かれます。 前半ではビートルズからウィングス、ソロに至るポールのたどってきた長い長い歴史、後半ではポールの人格に迫る試みがなされていく。 そのインタビューは、一気に行なわれたものではありません。 著者がNMEの記者だった1979年のものから、明示はされていないがおそらく2013年、「NEW」 の発売前後が最新のものではないか、と思われます。 実際読んだ感覚では 「キス・オン・ザ・ボトム」 あたりが最新のような気もする。 その30年以上にわたる膨大なポールへのインタビューを、項目によって構成し直しているようです。 ですから、今年(2016年)亡くなったジョージ・マーティンについてのポールの見解であるとか、最新の情報が提示されているわけではない。 ポールの情報というのはこの歳になってもなお日々更新型ですから、その点については物足りなさが確実にあります。 さらに、30年以上というとポールのものの考え方にも変化変遷があってしかるべきだと思うのですが、30年以上をリミックスにかけているからその変化というものがつかめてこないもどかしさがある。 表紙を飾ったポールの 「老い」 という問題にも、この本はきちんと答えてくれているわけではない。 さらに言えば、ジョン・レノンの死について多くが割かれているのとは対照的に、2001年に亡くなったジョージ・ハリソンの死についての記述はない。 正直なところ、このような本を読み漁ってきた身としては、衝撃に値するような情報が書かれているわけではありません。 しかし前述したような、リラックスしたムードのなかでポールと語らっているような疑似体験を共有できる強みが、この本にはある。 この本全体に貫かれているのが、この心地よさなのだ、と思うのです。 その心地よさが乱れるパートがあります。 自身の失敗作、どうでもいい作品について語るときのポールは多分に感情的になりがちであり、イライラした様子を隠しません。 特に 「シークレット・フレンド」 を語るポールのくだりはポールファンなら一読に値する部分でしょう。 しかしそのイライラも、ポールの人間性が垣間見える瞬間としてこの本にとっては必要なパートなのです。 3000円以上と、この本は決して安くはない部類の本です。 ただその値段に見合うパフォーマンスは兼ね備えています。 この本と付き合った1か月足らずの間、心地よい体験をすることができました(アマゾンの自身のカスタマーレビューより)。

  • : レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]

    レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]
    全200ページ程度のボリュームのなかで、キャンディーズに関する特集記事は50ページ。 ただし、これが濃い。 全シングル曲、ほぼほとんどのアルバムの解説は当然として、彼女たちの芸能界における歴史から見た考察、コメディエンヌとしての彼女たち、DVD解説など多岐にわたり、キャンディーズが分析されています。 特に圧巻は、レア音源に関する記述。 ここまで調べている読み物には、個人的にはお目にかかったことはありません。 700円。

MUSIC

  • ザ・ビートルズ -

    ザ・ビートルズ: サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(スーパー・デラックス・エディション)(4CD+DVD+BD)
    ロック界、いや、すべてのポップミュージックにおけるアルバムの中で史上最高と称され、すでに世界文化遺産の域にまで達しているこのアルバム。 そのアルバムの発売50周年を記念して、スペシャルエディションがリリースされます。 なかでもブッ飛ぶのがこのスーパースペシャルボックスセット。 CD4枚組であらたなリミックスのステレオ盤1枚、モノ盤1枚、初期テイク集が2枚、さらにブルーレイ1枚とDVD1枚で5.1サラウンド、ハイレゾ音源、ドキュメント映像 「メイキングオブサージェントペパーズ」 のデジタルリマスター等々、卒倒するようなラインナップです。 18、000円プラス税と値は張りますが、史上最高の名盤だからこそこれは買い。 5月26日の発売までに予約をしておけば、アマゾンならば値下がりした時に値段がそのあと高騰しても最安値で購入できます。 ビーファンならずとも、これは注目ですぞ!

  • 山口 百恵 -

    山口 百恵: ゴールデン☆アイドル 山口百恵(完全生産限定盤)
    全シングルA・B面プラスボーナストラック(「あなたへの子守歌」)を、山口百恵名義としては初のブルースペックCDとしてリリース。 音はいわゆるドンシャリ系ではなく、アナログ盤に準拠した原音に忠実な印象です。 パッケージングはアナログシングル盤サイズで中袋、CDを納めるケースが完全にドーナツ盤をイメージしています(よく言えば斬新…笑、悪く言えばチャッチイ…笑)。 しかしその発想は買える(笑)。 ほぼ原寸大のシングルジャケットと裏の歌詞カードの複製ブックレット。 ただスキャニングは欲を言えばもう一歩。 当時シングル盤を中心に聴いていたかたなら、この編集盤はかなりの 「買い」 です。 しかしこのジャケット表紙の写真、スッピン風で個人的にはすごく好き。

  • デイヴ・グルーシン&リー・リトナー -

    デイヴ・グルーシン&リー・リトナー: Two Worlds / Grusin & Ritenour
    NHK朝ドラ 「花子とアン」 で美人のスコット先生が夜な夜な歌い、チビはなチャンがすっかり覚えてしまったイギリス民謡、「ザ・ウォーター・イズ・ワイド(流れは広く)」。 このアルバムでルネ・フレミングが歌っていたのを思い出しました。 ルネのソプラノはけっして大袈裟でなく上品で、私のとてもお気に入りのソプラノ歌手ですね。 このアルバム自体は全体的にクラシックにギターのリー・リトナーが絡むフュージョンぽいものなのですが、故・黒田恭一サン評するところの、「大人が聴く音楽」。 胸を締め付けるような哀しみと、すべてを包み込むようないたわりに満ちていて、私の人生のなかでも最上位に位置する愛聴盤です。

  • 桜田淳子 -

    桜田淳子: ゴールデン☆ベスト 桜田淳子~シングル・コレクション
    彼女の活動期に発売されたシングルをすべて網羅したベスト盤。 確かに後年のものほど馴染みがありませんが、選曲漏れがないので、彼女の存在とは何だったのか自体に思いが至るベスト盤です。 音も楽器の音像がよくてなかなかいいマスタリングをしている気がします。 2600円程度で推移しています。

  • ザ・ビートルズ -

    ザ・ビートルズ: ザ・ビートルズBOX(限定生産品)(USBメモリ)
    パソコンにUSB端子があり(たいていついてると思います)、パソコンで音楽が聴ける環境をお持ちの人ならば、聴くことができます。 現在のテクノロジーで最もいい音質で聴ける、ビートルズの音楽です。 ただし国内版にもかかわらず、訳詞とか一切なし。 ジャケットもブックレットもパソコンデータ。 純粋に音楽だけ楽しみたい人向けです。 また、曲間にコンマ何秒かのブランクが入ります。 「アビイ・ロード」 のメドレーも同様です。 しかし、音はさすがに、すごい。 大きな音量であればある程、目の前にビートルズが迫ってくる勢いです。 ツヤが違います。

  • The Beatles -

    The Beatles: The Beatles [USB]
    こちら上記の海外版。 内容的には国内版とほぼ一緒なので、値段が安いこちらのほうがいいでしょう。

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