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2011年6月18日 (土)

「リバウンド」 第8回 「自分らしさ」 に傷つきながら生きてゆく

 前回友情と愛情の連鎖崩壊を起こしてしまったこのドラマ、今回信子(相武紗季チャン)瞳(栗山千明サン)太一(速水もこみちクン)は崩壊後の常として、本来の自分を見失うカオス(混沌)の時期を通り過ぎるのですが、そんななかでどうするのがいちばんいいことなのか、互いに模索をしていきます。

 鬼の編集長(若村麻由美サン)の動向も併せて、今回どことなく話が滞り気味で展開に求心力を失ったかに見えた 「リバウンド」 でしたが、悩む主人公たちのああでもないこうでもない、という姿を見ていくうちに、個人的にはなんかとても切なさが募っていきました。

 さんざん自分を変えようと努力した結果、信子は結局、「自分らしいこと」 がいちばんなのだ、という結論に至るのですが。

 「自分らしくあること」。

 別にドラマでいちいち大げさに悩まなくたって、そうするのがいちばんいいって、フツー簡単に考えてしまいがちですよね。

 でも。

 信子にとってそれは、全方位外交でみんなにいい顔をしようとし、その場を取り繕おうと見苦しく(暑苦しく?)動き回り、ガニ股で歩く(笑)ことなのです。

 そして究極的には、「太ったままの自分でいること」。

 太一と付き合っていったんリバウンドしていたのは、「本当の自分」 に戻っていただけなんだ、という認識に、信子は至ります。
 今回終盤、信子はほかのケーキ屋でケーキを大量に買い込み、泣きながらそれをむさぼるように食べ続けます。
 なぜなら 「自分らしく太一にも素直に愛を告白しよう」 と考えてアンジュに行ったのに、「瞳から告白されてしまった」 という太一を前にして、全方位外交的に瞳に太一を譲るような格好で、太一との仲を今度は本当にあきらめてしまったからです。
 それが、切ない。

 「自分らしくあること」。

 ここでは信子にとってそれは、「傷つきながら生きていく」、ということと、同義になっています。
 自分らしく太っていることで、全方位外交であることで、まわりから暑がられて蔑まれて悪口も言われて。
 その結果恋をあきらめ友情を優先してしまうし。

 でも誰もが、自分らしく生きることで、それがかえって自分を傷つけている。

 瞳にしても絵を描くことが自分らしく生きることなんですが、そのことでヤラシイオッサンに 「個展を出してあげる」 と言い寄られ、断ると 「お前の絵なんか誰が認めるっていうんだ」 みたいなひどいことまで言われるし。
 自分らしく生きるということは、どうしてこうも残酷なんでしょう。

 だからこそ瞳の絵を心からいいと言ってくれる太一に、頑なな瞳の心がほぐれてしまうのが、またこれが切ない。
 瞳が太一に自分の思いを告白するシーン、ひたすら泣けました。
 ケンカ別れしている最中だけど、自分の親友が好きな相手。
 しかもふたりが相思相愛だということも分かっている。
 それでもなお、自分の才能を認めてくれる、たったひとりの男性。
 そんな男に、「私、やっぱりあんたのこと好きだわ」 と言わずにいられない、この恋の切なさ。

 どうしてこんなに恋って、切ないんだろう。
 泣けますよ。
 瞳にとって、正直に太一に告白してしまうことは、やっぱり自分も親友も傷つけてしまう行為なのです。

 自分らしくあることで、ほかならぬ自分が傷ついていく。

 編集長が創刊以来重用してきたモデルの有希(西山茉希サン)を降板させることで、編集部内での求心力も失い、周囲の反感も募らせ、果ては上層部から 「会社の方針に従わなければ辞めろ」 とまで言われているのも、「自分らしさを追求することで自分が傷ついていく」、という構図ですよね。
 私は編集長をめぐる今回の話、「いったい信子は編集長とどうしたいのかな?」「有希を復帰させたいのか編集長の思う通りにさせたいのか」 と考えていたのですが、作り手が考えていたのは、「編集長が自分のしたいことをどれだけやりとおすことができるのか」、ということだったようですね。 有希を再び採用するか別のモデルを使うか、ということに話の重点はなかったみたい。

 信子はケーキ嫌いな編集長のために(ケーキが嫌いな理由は、編集長がもともと太っていた、という理由ではなかったですね)(そっちの理由で太っている特殊メイクの若村サン、見てみたかった~…笑)「ケーキが嫌いな人でも食べれるケーキを作って」、と太一に依頼するのですが、太一はそれにこたえて 「EDEN」 の名前の由来になったリンゴを素材にしたアップルパイを完成させ、編集長に食べさせて、編集長にまたデスクに戻ってもらう決意の後押しをします。
 ここらへんの話もよかったなあ。

 つまり 「自分らしさ」 を貫くことの大変さというテーマで、今回のドラマは統一されているのです。 そこから 「切なさ」 というものも引き出している遊川サンの実力には、ただただ脱帽であります。
 ただのおデブドラマが、ここまで深遠なテーマに肉薄することになろうとは。
 うれしい誤算なのであります。

 ところでラスト、別のケーキ屋さんで買ったケーキを泣きながら大量に食べている信子のそばで、「パパ(石塚英彦サン)が仮病でなくて本当に倒れてしまった」、と狼狽しながらかけてくる、信子の母親(伊藤かずえサン)の留守電が、むなしく鳴り響きます。
 それは信子が 「自分らしい」 自分のダメな部分を治そうとしていたとき、「その場を取り繕」 わずストレートにパパにキツイ本音の話をしてしまったことが、遠因としてあるのです。

 もろもろも併せ、どうなってしまうのでしょうか。

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コメント

リウ様

たしかに、先週の展開で崩れ去った関係の修復
ということになるので、
自分ももういままでのようなワクワクするストーリーではなくなるんだろうなと予断で入ってしまいました。

でも、躱されました。
太一も、瞳ちゃんに行かなかったし。

ケーキもアートも雑誌も
強い「思い」がないときっと埋もれちゃって
その他のたくさんのになっちゃうわけで、
そうならない為に自分に課している負う物は
他の誰も背負ってくれない、背負えないもの。

苦しんだ末に手に入れる何かは
きっと本人にだけ聞こえる「幸せの鐘の音」?

この全体に流れる微妙な緊張感。癖になってます。

投稿: みり | 2011年6月20日 (月) 09時07分

みり様
コメント下さり、ありがとうございます。

太一が瞳チャンのほうになびかないのは、彼女が信子の親友だということを太一が自分への足かせにしているんでしょうね。 どんなにオレ様キャラでも、彼は自分が太っていた時代にないがしろにされていた記憶が、いまだに残っている。 だから女をとっかえひっかえして見返してやろう、という発想になってませんよね、ポーズでは見せたりするけど。 他人の痛みを知ることができているからこそ、いくらオレ様キャラでもちっともイヤミがない。

「他の誰も背負ってくれない」、つくづくそう思います。
「自分はこう生きたいんだ」 という目標って、なかなか茨の道ですよね。 そんなに肩肘張らず自然体で自分らしくあっても、なにかしら周囲との間にいろいろ摩擦が起こったりもします。
それを押し通したり迎合したりしながら生きていくわけですけど、これはホント、「自分で解決していくしかない」。

ハァ~なんだってこんな深いんだ、このドラマ?(笑)

投稿: リウ | 2011年6月20日 (月) 13時17分

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