« 「リバウンド」 第8回 「自分らしさ」 に傷つきながら生きてゆく | トップページ | 「JIN-仁-」(完結編) 第10回 闘い続けることの闘い!② »

2011年6月20日 (月)

「JIN-仁-」(完結編) 第10回 闘い続けることの闘い!①

 最終回目前の 「JIN」 を今見終わったのですが、結構、徒労感が自分のなかを支配しています。
 のっけからネタバレご容赦ですが、それは結局、坂本龍馬(内野聖陽サン)の命を救えなかったことが大きな原因であります。
 ドラマではしかしそのことをきちんと意味のあるものに仕立て上げていたのですが、やはりあのものすごい牽引力のある男がこの世を去ってしまう、ということの喪失感、というものは、あまりに大きい。

 「龍馬伝」 の最終回以降にも同じような喪失感に見舞われたのですが、「JIN」 ではこの男の魅力を大河ドラマ並みの長期間で描写してこなかったにもかかわらず、それと同じ、もしくはそれ以上の喪失感を見る側に強要してくる。 ここに作り手の実力も強く感じることができるのです。
 やはり龍馬という男は、人を魅了してやまない魅力にあふれている。
 それはどんな荒唐無稽のドラマであっても、そのことは変わらない。
 いやしかし、ちゃんとその魅力を残すことができた作り手の手腕を、やはり褒め称えるべきでしょう。

 だから 「徒労感」、といってもそれは否定的な意味ではないのです。

 かなりの見応えを感じるからこそ、生まれくる徒労感、なのです。

 まず前回大きな謎を呼んだ東(佐藤隆太サン)の行動ですが、「あんまり見る側が考えすぎると、かえって肩透かしを食らうかもしれない」 という危惧は、木っ端微塵に粉砕されました(笑)。
 このドラマが 「JIN」 であることを忘れていました、ワタシ(笑)。
 そう、「JIN」 というドラマは、登場人物の動機付けを、これでもか、これでもかと執拗に繰り返す手法をこれまでもとってきていたのです。

 冒頭、「あなたは私の兄の仇で、初めからそのつもりで近づいた」 と告白する東に 「ほいたらどういてわしをここまで守った、これもわしを守るためじゃろうが」 と龍馬はうめきながら東の真意を見透かします。
 東はその場から逃げ去っていくのですが、その後遺書を残し、自刃し果てる。
 その直前に東は自分が助かった禁門の変での緊急救護所を訪れ、「拾ってはいけない命だったのかもしれませんね、坂本さん…」 とつぶやきます。
 このシーンとかぶさるようにして、龍馬が回復の兆しを見せるシーンが続いたので、「それって龍馬の命?」 とも思ったのですが、この 「拾ってはいけない命」 というのは、やはり東自身の命だととらえるべきでしょうね。

 いずれにしても最後まで真意をひた隠しにする東という男、とてももののふらしさというものを感じたのですが、その口数少ない言動から東の真意を引き出すには、脚本上これがぎりぎりだった気がします。 ただ感心…。

 そしてその東の遺書の内容が、大久保(眞島秀和サン)によってつまびらかにされるのですが、「誰かに仇を討たれる前に自分が本懐を遂げた」 というその内容に、それを聞いていた西郷(藤本隆宏サン)は、「東さぁは、坂本さぁの作ったもんを守ったのかもしれん」 と感想を漏らします。
 つまり大政奉還を陰で支えた坂本を、恭太郎(小出恵介サン)に 「殺せ」 と命じたのが徳川だったことが公になれば、大政奉還が徳川の本意ではなかったことになる。 となると、坂本の成し遂げた仕事が水の泡になる、という理屈です。
 これは東がその混乱した場面で一瞬にしてそこまでのことを考えたのか?という意味で結構考えすぎ、の域にまで到達している理屈であります。
 しかし冒頭で龍馬が 「これもわしを守るためじゃろうが」 ということを言っていたと考えれば、ことこのドラマとしての体裁上、そこまでの意味づけは、けっして 「考えすぎ」 ということはない、私はそう考えるのです(あ~分かりにくい文章)。

 「じゃっどん、ただの仇討ちじゃれば、だいも文句は言えん。

 …ただの、推量じゃっどん…」

 西郷はここで、「これは推測にすぎない」 ということを明確に語っています。
 だからこそ、ドラマが生きてくる。
 さらに西郷は 「あげな生きかたは、坂本さぁしかできん、おいは、おいのやり方しか知らん」 と坂本の生き方とは別の生き方を自分は選ぶ、とここで決意を語っている。
 これが今回後半での西郷の行動へとつながっていくわけですが、いちいちどのシーンも濃密に絡みまくってますなあ。 濃密すぎて何回も見ることを強要されているようであります(笑)。

 そしてダメ押し、「これもわしを守るためじゃろうが」 という龍馬の言葉について南方が思いを巡らし、咲(綾瀬はるかチャン)と語り合うことで、さらにドラマの作り手は東の真意を推しはかろうとするのです。

 「龍馬さんに重傷を負わせれば、恭太郎さんたちは去る。
 そのあと、私が治すことを(東さんは)願ってたのかな?って…」

 そんな南方に、咲はこう答えます。

 「かようなお考えなら、あそこまでの傷を負わすことはなかったのではないでしょうか?

 東さまのお守りしようとしたのは、坂本さまの、生きかたのようなものだったのではないかと…」

 前回のレビューにいただいたコメント返信での私の考えと南方の考えは、だいたい一緒のようです(笑)。
 しかし咲も、西郷と同じように 「東はそうすることでしか、坂本を守れなかった」、というまるで逆説のようなことを話すのです。
 これは武家の間にある共通した思想なんでしょうかね。
 いずれにせよ、後追いで推測、という形でしか表現できなかった 「東の真意」、なのでありますが、ここまでしつこくやっていただければ(笑)見る側としてはじゅうぶん納得なのであります。
 やっぱり 「JIN」 は 「JIN」 だった。

 以上前回ラストの謎について書き進めましたが、実際のところもっともっと感動した場面はほかにあるので、また日をあらためて物語を追っていきたいと思います。 ちょっと今日は、疲れました…。

当ブログ 「JIN」 についてのほかの記事
第1部

第1回 荒唐無稽との闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/10/jin---1-e9ae.html
第2回 建前との闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/10/jin---2-f3b1.html
第3回 自分の病との闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/10/jin---3-3290.html
第4回 女としての闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/11/---4-542b.html
第5回 梅毒との闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/11/jin---5-9dba.html
第6回 リアルとの闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/11/jin---6-25d6.html
第7回 明日のための闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/11/jin---7-87b0.html
第8回 自分の器との闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/11/jin---8-e9a7.html
第9回 心意気どうしの闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/12/jin---9-8cf0.html
第10回 ああもう、どうなっちゃうの?との闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/12/jin---10-670a.html
第11回(最終回)続編あるかどうかとの闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/12/jin---7290.html
番外 続編の可能性を、もう一度考えるhttp://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2009/12/jin---a138.html

完結編
第1回 いますべきこととの闘い!① http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2011/04/jin---1-577a.html
第1回 いますべきこととの闘い!② http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2011/04/jin---1-7d0d.html
第1回 いますべきこととの闘い!③ http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2011/04/jin---1-c8e9.html
第1回 いますべきこととの闘い!④ http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2011/04/jin---1-6f3f.html
第2回 自分の願いとの闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2011/04/jin---2-4ed0.html
第3回 人を思う気持ちとの闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2011/05/jin---3-ab26.html
第4回 自分の血との闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2011/05/jin---4-5d43.html
第5回 無力感との闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2011/05/jin-5-f4e1.html
第6回 坂本龍馬との闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2011/05/jin---6-619d.html
第7回 永遠に生きるための闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2011/06/jin---7-16d1.html
第8回 産みの苦しみとの闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2011/06/jin---8-b4b9.html
第9回 歴史の必然との闘い!http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2011/06/jin---9-0cc9.html

|

« 「リバウンド」 第8回 「自分らしさ」 に傷つきながら生きてゆく | トップページ | 「JIN-仁-」(完結編) 第10回 闘い続けることの闘い!② »

テレビ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/521783/51995193

この記事へのトラックバック一覧です: 「JIN-仁-」(完結編) 第10回 闘い続けることの闘い!①:

« 「リバウンド」 第8回 「自分らしさ」 に傷つきながら生きてゆく | トップページ | 「JIN-仁-」(完結編) 第10回 闘い続けることの闘い!② »