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2011年7月17日 (日)

「それでも、生きてゆく」 第2回 本当のあれが、あれだから

 女児殺害犯人である兄(風間俊介クン)をかばって被害者の兄(瑛太クン)のナイフを阻止した加害者の妹、双葉(満島ひかりチャン)。

 彼女はどういうわけか自分のケータイの連絡先を瑛太クンに強引に手渡し、さらに瑛太クンのところにもう一度やってきます。

 いったい彼女にそうさせるものって何なのかな、と考えながら、今回のドラマを見ていました。

 実に浅いレベルで考えれば、満島チャンが瑛太クンのことが好きになっちゃったから、という単純明快な理由が思いつきます。
 おそらくドラマ的な 「つかみ」 としては、加害者家族の女性と被害者家族の青年の恋愛、というのは宣伝文句になり得る。
 となると今後ドラマの行きつく先には、ふたりの複雑かつ悲しい恋愛模様が待ち受けているのでしょうが、そこに行きつくにはこのドラマは、もっと動機を積み重ねなければならない。

 このドラマの登場人物は、「アレがアレして」 だの 「アレだから」 だの 「ああいうの」 だの、単語がすっと出てこない傾向がとても強い気がします。
 それは、彼らが自分たちにもよく分からない、「本当はどうしたいのか」 という 「行きつく先」 を探しあぐねているがゆえなのではないでしょうか。

 満島チャンは、加害者家族の自分たちのことを分かってもらいたい。
 瑛太クンは、被害者家族の自分たちのことを分かってもらいたい。

 彼らがお互いにシンパシーを感じていき、やがて恋愛感情に発展する(であろう)動機は、まずここから始まっている気がするのです。

 たまたまこのふたりが再び出会った時点で発生していた女児失踪事件。 ふたりがいる場所の、ごく近くで発生しています。
 その失踪事件が今回、ふたりを共通の心情へと引き込む。
 被害者も加害者も、その家族にまで、こうした事件は計り知れないほどの影響をこうむるものです。
 象徴的な効果音として、事件現場の上空をとてもうるさく飛び交う、報道ヘリのローターの音が、満島チャンを、精神的外傷を負った昔に引き戻します。

 あれはホントうるさいですよ、報道ヘリコプター。

 以前私の住んでいる地域を流れる多摩川で溺死事故が起きたのですが、何が起きたんだというほどの異様な爆音が上空からしてくる。 スゲーうるさい。 人のメーワク顧みずの報道姿勢であります。
 まあでも、戦闘機の爆撃音よりはナンボかましです。
 米軍基地周辺のかたがたは、ホント大変だな、と思います。
 そういう迷惑っていうのが、その地域じゃない人には、まるで他人事なんですよね。

 話はそれました。

 満島チャンが再び瑛太クンのもとを訪れた動機のひとつが、「お兄ちゃんはそんなことをする人じゃない」「この事件は冤罪かもしれない」 という弁明であったのですが、瑛太クンはそんな満島チャンの憶測に、心の底から憤ります。

 「なに言ってんの?
 アンタ、何言ってんの?!」

 瑛太クンは弟(田中圭クン)から、事件が起きた年のクリスマスに、加害者家族がクリスマスケーキを買っているのを見た、と聴き及んでいたのです。

 「でしょうね?

 やられたほうは忘れられないけど、やったほうは忘れるんですよね?!

 そしたらさ。
 そしたら、アンタも同じ目に遭わせてやろうか?

 亜季と同じ目に遭わせてやろうか?!」

 瑛太クンは満島チャンの首を思いきり締めにかかる。
 激しく咳き込む満島チャン。
 瑛太クンは、自分が何をしているのかに気付く。
 呆然と首から手を離す瑛太クン。

 でも、満島チャンは殺される覚悟を決めています。
 瑛太クンが満島チャンに向けた殺気など、日本中から浴びせられてきたんだ、と、彼女も自分の傷口を隠すことに、ためらいがない。

 「死にたいって思ったことはないけど、生きたいって思ったこともないし。

 妹とかにも言われるんですよ。
 お姉ちゃん自分で人生選んでないねーって。

 でも私、全然そんなことないんです。

 私、選んだんです。

 自分で選んだ結果が、こういう感じなんです。

 後悔なんかしてません。
 こういう人間の、こういう人生なんです」

 兄の起こした殺人事件によって、自分の人生のハシゴまで外された妹。
 「自分で選んだ人生」 と言いながら、彼女にはそれしか選べる道がなかったのです。

 クリスマスケーキにしても、実はケーキ屋さんの厚情でいただいていたものを、父親(時任三郎サン)に言われて返しに行っていたことが判明。
 表面上のことでは分からないことで、みんな勝手な敵意を作りすぎてるのではないか、そんな作り手の声も聞こえる設定であります。
 そしてその勝手な敵意は、ローター音を迷惑承知で鳴らし続ける報道によって、果てしなく増幅し続ける。

 今回時任サンはいみじくも語っていました、「加害者家族の言葉は、何も伝わらない」――。

 そんな加害者家族の心情が伝わった、被害者家族の瑛太クン。

 怨嗟に憑かれた叫び声をあげ、やり場のない怒りを、地面を殴ることによってしか、晴らすことができません。

 その瑛太クン、かねてから起きていた女児失踪事件が、べつだん大したことない解決を見たことを、ニュースで知ります。
 それを受け取っていた番号から満島チャンのケータイに知らせようとするのですが、満島チャンはそのとき、「もしかして兄が犯人ではないのでは」 としていた自分のかすかな願望が打ち砕かれている最中でした。

 事件現場に咲いていた、毒々しいまでに紅い花。

 それは兄が事件当時持っていた、ひなげしの花の種と、同じ花だったのです。

 その事件現場へとやってきた瑛太クン。

 満島チャンから、「実は自分も、兄に殺されかけたことがある」 と衝撃的な事実を打ち明けられます。

 こりゃ冤罪なし確定か?

 それにしても、兄からそんな目に遭っていながらも、ひたすら兄を信じ、届かない手紙に自分たち家族のことを虚飾して 「帰ってくるのを心待ちにしています。 なんにも心配なんかしなくていいから、まっすぐおうちに帰ってきてください。 待ってるよ。 双葉はちゃんと。 ちゃんと今でも、お兄ちゃんの無実を信じています」 と書き綴る妹。

 ここは泣けました。

 「追伸。

 そこに窓はありますか?

 困った時は 朝日を見ると 良いですよ。

 双葉は いつも そうしています。

 朝日を見ると 生きる希望が 湧いてくるのです。」

 どんなに苦しくても、希望の光さえあればいい。

 その光がなくなった瞬間、双葉は雨に打たれながら、ひなげしの波のなかで、泣き続けるしかないのです。

 そんな彼女を、瑛太クンは夏祭りに誘います。

 事件のせいで、夏祭りでさえキャンセルせざるを得なかった双葉。
 瑛太クンは彼女に、去年のワールドカップ見ながらガッツポーズをしたか?とトートツな質問をします(笑)。

 日本中が歓喜に沸いている瞬間でさえ、それを派手に喜ぶことができない。

 被害者家族も加害者家族も、時がたてばそのうちに笑うことはあるでしょうが、歓喜を爆発させることなど、人生じたいから締め出されてしまうのです。

 「ぼくら…」

 「『ぼくら』…?」

 「このさき、ああいうのって、あるんすかね?」

 「『ああいうの』?」

 「『やった!』 って思って、…こう…、ガッツポーズしたり…」

 「ぼくら」 と瑛太クンが言うのは、満島チャンと自分は本当は同じ思いをしてきた仲間なんだ、ということを受け入れたから。
 ここに流れる、小田和正サンの 「東京の空」。
 わけもなく泣けてくる。

 「♪自分の生きかたで 自分を生きて
 多くの間違いを 繰り返してきた

 がんばっても がんばっても
 うまくいかない

 でも気付かないところで
 だれかがきっと見てる」

 小田サン、どうしてこういう詞が書けるかなあ。
 とてもシンプルなのに、それが歌に乗ると、とてつもない説得力を帯びてくる。
 小田サンの歌声が、やさしく瑛太クンと満島チャンを包み込み始めたとき。

 そんなときにふたりの目の前に現れた、瑛太クンの母親、大竹しのぶサン。

 夏祭りに、何しに来たんでしょうか。
 不気味です(笑)。

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コメント

被害者家族も娘(妹)を救えなかった自分たちを責めてますが
加害者家族にも、人並みに何かを求めてはいけないという気持ちがあり…。
キツイですね。

私が加害者の身内だったとしたら、被害者の遺族に近づこうなんて絶対に思いませんが
その点、双葉ちゃんは理解(許し?)を求めてぶつかって行ってますね。
お兄さんとの思い出話も、周囲の人にはできなかったんでしょうけど
被害者の兄(お兄ちゃんの友達でもありますが)をつかまえて、あそこまで喋るのは饒舌すぎてちょっとヤバかった。
普通に生きられなかったんだから仕方ないですけど。

次回、双葉と被害者母(大竹さん)との接近、気になります。

投稿: マイティ | 2011年7月20日 (水) 00時45分

マイティ様
コメント下さり、ありがとうございます。

まさか大竹サン、夏祭りにリンゴ飴を買いに来たわけでもなかろうと思うのですが(笑)、満島チャン一家を苦しめる密告者が実は大竹サンなのでは?と当方軽い憶測をしているために、なんかザワザワします。 このドラマの大竹サン、やたらと怖い(笑)。 別のダンナ(段田サン)と子供たちとフツーの生活をしているはずなのに、なんか心がホロウ(うつろな、空洞)状態、というか。

小田サンの歌声が後押しをしているようにも思うのですが、このドラマはとても、透明度が高いような気がしています。 満島チャンが雨に打たれながら号泣する、ひなげしの波のシーン。 画面全体がシアンがかってるから、余計にひなげしの赤がどぎつく見える。 まるで水中のなかにいるような感じ。

満島チャンも瑛太クンも、事件のもたらす大きな波のなかで、どこかで純粋だったときの少年、少女時代の心を、そのまま持ち続けてしまっている、そんな気がするんですよ。

だから満島チャンも、息せき切ったようにいろんな話を瑛太クンにしてしまうのかもしれないですね。

投稿: リウ | 2011年7月20日 (水) 07時20分

リウさま

ちょっと気になったので・・・

段田さんは、瑛太くんの弟(大竹さんの次男)の妻のお父さんで、大竹さんのダンナさんではないのでは?
(大竹さんは次男の家に身を寄せているという状態なのではないでしょうか)

段田さんの妻が出てこないので、状況把握が難しいですよね。

フジTVのHPでは段田さんの妻は「死亡」ってなってましたが、ドラマの中ではわからなかったような気がします。(何か見落としてるかもしれないですけど)

投稿: rabi | 2011年7月20日 (水) 16時05分

 このドラマを見ていて月9の「流れ星」を思い出していました。 演出が同じ宮本理恵子さんと並木道子さんです。

 丁寧な作りや俳優さんの表情をきちんと撮って行く感じがまたまた「流れ星」を思い出させます。

 半年以上経っている最近「流れ星」のHPのスタッフブログ「海月通信」が更新されて宮本監督がメッセージを寄せていらっしゃいます。未だに多くの人に愛されてメッセージが寄せられている事に対するお礼の言葉と同時に「それでも~」を見て欲しいと書いていらっしゃいます。決して軽くないテーマを取り上げて見るものに考えさせる作品ですね。

 

投稿: ゆみ | 2011年7月20日 (水) 22時29分

rabi様
コメント連投下さり、ありがとうございます。

ゲゲッ!coldsweats02そーだったのか…(笑)。 そう言えば田中圭クンの家に妻の父親である段田サンが同居して、段田サンの妻が大竹サンってのはよく考えてみるとスッゴク不自然(爆)。 確かに段田サンの妻が出てこないですね。 んー、きちんと見てないとワケ分からなくなるなあ。

実は第1話でも、瑛太クンが葬式に行ったのは自分の父親である柄本明サンの葬式だって最初は思いながら見ていたので、スッゴク混乱してました(笑)。 よく考えてみたら、柄本サンが今わの際に 「あいつの保護司だった男が死んだ、そこにあいつも現れるはずだ、あいつを殺すチャンスだ」 と言っていたのを忘れてた(笑)。

それにしてもrabi様、コメント欄もつぶさにチェックしておいでですねぇ…coldsweats01

投稿: リウ | 2011年7月21日 (木) 08時24分

ゆみ様
コメント下さり、ありがとうございます。 東京地方は結構涼しくて、爆睡して返信遅れました、ゴメンナサイ。

そうか、この透明感って、「流れ星」 に似ているんだ…。 「流れ星」、よかったですよねぇ。 ネットで月9をいっしょくたにしてクサされると腹が立ってくるんですよ(笑)、「ちゃんと見てモノ言ってるのか」、って。 番組HPも、いまだに更新されるのですか。 ちょっとのぞいて見ようっと。

こうした、きちんと丁寧に作られているドラマは、もっと真剣に見られるべきですね。 重たいものを見たくない、という視聴者の傾向だとも思うのですが、瑛太クンと満島チャンのやり取りって、結構見ていてコミカルですよね。 そこが救いになっている。

憎しみ合うことではなく、相手に共感していこう、という姿勢も感じさせる、このドラマなのです。

投稿: リウ | 2011年7月21日 (木) 16時07分

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