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2011年8月12日 (金)

「それでも、生きてゆく」 第6回 逃げること、立ち向かうこと

初めにお断り ちょっと文章を、直しました。 さらに最後にいろいろ書きくわえました。

 老人ホームのおばあちゃんのところに来ていた双葉(満島ひかりチャン)の前に再び現れた、文哉(風間俊介クン)。
 「双葉いるなら買ってくればよかったよ」 と、彼は双葉が子供のころ好きだったリンゴ飴の話をします。 「好きだったっけ?」 と答えながら、涙ぐんでしまう双葉。

 この涙。
 自分が好きだったかどうかも思い出せないことをしっかり覚えている兄の優しさと、そんな昔のことを忘れてしまった自分、忘れざるを得なかった自分の悲しさとが、ないまぜになった涙のように思えます。

 双葉は涙を振り払って、笑顔で言うのです。
 「お兄ちゃん、お帰り」。
 でも文哉は凍りついたようにその笑顔を見ている。

 双葉は兄が、自分の犯した罪と向き合おうとしてここにやってきたのだ、と思っている。
 でも文哉の頭には、そんな考えはない。
 逆光のなかで凍りつく文哉の表情は、この回の暗雲を予感させる導入となるのです。

 双葉は再会した兄に、根掘り葉掘りいろんなことを訊くのですが、文哉は答えようとしません。 彼はただ、リンゴ飴が好きだった昔のままの妹を、双葉に見ようとしているにすぎない。 自分とお兄ちゃんが違う母親から生まれたことを最近知った、と話す双葉。 文哉はおそらく何かに幻滅して、「もう帰るわ」 とその場を立ち去ろうとします。
 「双葉も、一緒に行く!」
 悲しそうに兄を追いかける双葉。
 彼女にも、行き場がないのです。
 小田サンのテーマ曲が、またもやその悲しみに追い打ちをかけるように、流れる。 どうもイカンなあ。 この曲は。 泣ける。

 彼は自分たちの本当の母親が生まれた瀬戸内海の因島(いんのしま)の近くで生きていきたい、という話を妹にします。 彼はお母さんのお墓のある場所も知っているし、お墓も移したいと考えているらしい。 たぶん因島に移そう、というのでしょう。 「双葉も来るか?」 と言い出す文哉。 そのためにお金も貯めているようなのですが、そのお金に、手をつけようとしている者がいる。 前回文哉にさんざん脅された、紗歩(安藤サクラサン)です。

 紗歩はボーイフレンドのためにその金を下ろそうと画策するのですが、文哉は誕生日をそのまま通帳の暗証番号に、してなかった。 それはそれとして、暗証番号がおそらく違っていたためにその金が下せなかったのは分かるのですが、どういうわけかそれで簡単に、彼女は警察につかまってしまう。 話が早すぎるって気がしましたけど(そこんとこ分かるかた、いらっしゃいませんか?)。

 話は前後します。

 響子(大竹しのぶサン)と洋貴(瑛太クン)の前に姿を現した、隆美(風吹ジュンサン)。
 隆美がそこにやってきた理由は、双葉が失踪してしまったから。 表向き、謝罪をしに来たというスタンスではありませんでした。
 ただどうなのかなあ。
 やってきた以上は、どうあったってちゃんと話をしなければならないわけだし。
 ただ隆美にとって誤算だったのは、響子がそこで洋貴と一緒に暮らし始めていることを知らなかったことなのかもしれない。

 突然の再会で、隆美も響子もとてもぎこちないやり取りが続きます。
 話さなきゃならない、話したくない。
 出来るならやり過ごしたい、でもきちっと済ませておきたい。
 どう接したらいいのか分からない相手に、その会話は逆に、とてもコミカルさを帯びたものになっていく。

 響子は熱いお茶を出したらいいのか麦茶にしたらいいのかで混乱し、お茶菓子に以前駿輔(時任三郎サン)が持ってきたものをそのまま出してしまう洋貴のチョー無神経さに怒り(そうとも知らずに 「もっといいのないの?」 とか関係者の前で話すとか…笑)、楽しみにしているドラマの再放送についてべらべらしゃべり、結局洋貴の常備食である(笑)そうめんをゆでるというワケの分からない対応に終始します。
 ネギを切ろうとして、包丁をじっと見つめてしまう響子。
 物騒なオーラを感じて、「オレが切るよ」 と包丁を取り上げる洋貴。
 笑ってはいけない、被害者家族の殺意というものを描写していながら、なんとなく可笑しい。

 結局その場にやってきた駿輔ともども、一同はそうめんをすすることになるのですが、この構図も、なんとなく妙な可笑しみがある。 これらの、響子の一連の可笑しみを伴った強引な行動は、「話なんかあらためて聞きたくないのよ」 という強い意志と、なんとか平静にその場を取り繕いたい意志とのぶつかり合いが生み出す喜劇なのです。
 響子は三崎夫妻が話を切り出そうとするたびに、話をはぐらかそうとするのですが、その会話はいつの間にか、響子の元夫だった柄本明サンの話へとシフトしていきます。
 響子の三崎駿輔に対する憎悪の原点とも呼べる、自分の元夫が絡んだ話題。
 それが響子を、ますます変な言動へと走らせるのです。

 ただし、「その話題」 から、逃げ出せるはずもない。
 駿輔が 「息子が、娘さんの命を奪った事件…」 と言った途端、響子は亀の話を始めます。
 娘が死んで誰も世話をしなくなった亀が、風邪をひいた。
 その亀を川に放しに行ったとき、川の水が冷たくて、娘が死んだときの手も冷たかったことを、思い出した。

 「冷たくて、冷たくて…」

 包丁でなくとも深見夫妻を切り刻む(笑…っていいのかな)、響子の言葉のナイフ。
 三崎夫妻はたまらず、何度もひたすらに謝り続けます。

 「だからっ! そうじゃなくってっっ!」

 響子はそれまでの完全に常軌を逸していた一連の行動の結論を出したかのような、狂ったような叫びをあげてこぶしを振り上げます。
 でもそのこぶしは、加害者家族に振り下ろされることがない。

 「スイカ切りましょうか…」

 何事もなかったかのように話題をすりかえる響子。
 その切り替えの強引さに、三崎夫妻は翻弄される。 気まずさは、頂点に達します。

 厨房で、スイカを静かに乱暴に切る響子。
 やり場のない怒りを、スイカにぶつければ、スイカはたぶん理性のない切られ方をしたことでしょう。
 でもそういうみっともないことは、出来ない。
 怒りをマックスまで振り切ってしまうには、邪魔な理性というものが、人間には、存在しているのです。

 三崎夫妻が帰ったあと、厨房で響子は洋貴に、どうして叩かなかったのかを打ち明けます。
 夫が昔、三崎家を通った時に店屋物の丼が置かれていたことがあって、「あっちはあっちで、いろんなことがあるんだなあ」 としゃべっていたことを思い出したから、と母親は息子に話します。
 向こうの事情なんかどうだっていいじゃん、というスタンスの洋貴。 自分も双葉の首を締めにかかってましたからね。
 ただその双葉がいなくなったことを、洋貴は気にかかって仕方がない。
 洋貴は双葉に電話をかけるのですが、ちっともつながりません。
 その矢先に、五月(倉科カナチャン)から電話が来る。
 文哉と少年院時代付き合っていたのでは、という看護師の東雪恵(酒井若菜チャン)(カナチャンと若菜チャンは 「Mother」 では姉妹役でしたね)の写真を入手した、メールで送る、とのこと。
 そこに写っていたのは、伏し目がちで暗そうな女性の姿です。

 洋貴と五月は雪恵の手がかりを求めて、雪恵の母親のもとへと向かうのですが、かなり強引にその母親から、洋貴は雪恵の居場所を聞くことに成功します。
 いきなり洋貴が強引になったのは、自分の母親の気持ちに触れたからでしょうね。
 五月はそんな洋貴の強引さに感心し、さらに行動を共にしようとするのですが、彼はそれをよしとしません。

 「私、おんなじ境遇だから、深見さん(洋貴)の悲しみが分かります。
 半分に分けあえます。
 遠山さん(双葉)は、…あの人は、深見さんの悲しみを2倍にする人です」

 五月も強引に、雪恵を待ち伏せする時間を勝手に決めてその場を立ち去ります。

 そんなとき、洋貴のケータイに双葉から電話が入る。
 彼女は文哉について、因島へ行く決心をしている模様です。
 着ている服がいつのもバアチャン服と違う(笑)。
 双葉は洋貴をカラオケ屋に誘い、先に入ってひとりでスパゲティとか食べてる。
 そしてその、「彼女にしてはいいほうの部類」 に入る白い服に、スパゲティのケチャップをつけてしまう。
 入ってきた洋貴にそのことをさっそく指摘され、双葉は執拗にそのシミを取ろうとするのですが、正直逆効果ですよね(笑)。 シミ、広がっちゃうでしょ。
 ただ双葉もそのことは分かっているはずなんだと思うんですよ。 彼女は文哉と一緒にその場から逃げてしまうことの後ろめたさも手伝ってそのシミに執着しながら、洋貴のツッコミに答え続けるのです。
 その内容が、どーでもいいようでいて、結構興味深い。

 双葉が石川さゆりとか歌ってたと聞いて、「天城越え」 ですか?と訊く洋貴(笑)。 違う、「ウイスキーはお好きでしょ?」 だと答える双葉(笑)。
 情念タイプの女性だと洋貴は双葉のことをとらえていたと思うんですよ、ここ。 そしたら彼女は、ウイスキーを傾けながら男性に媚を売るようなタイプの曲を歌ってた(小雪サンのCMイメージも重なってるかと)。 「そんなのひとりで歌ってたんですか?」 って、この曲の性格を考えれば、「だいぶ面白い人だと思います」 という洋貴の感想は、とても当を得ている。

 それから彼女は、坂本冬美の 「また君に恋してる」 を歌ってた、と言う。
 「お酒の歌ばかりじゃないっスか」 と洋貴は双葉に突っ込むのですが、厳密に言うとこの歌、お酒の歌じゃないっスよね(笑)。 確か 「いいちこ」 だか 「二階堂」 かなんかの焼酎のCMの歌だった。 的場浩司サンが怖い顔してこっちに走ってくる、みたいな(笑)。
 その間違ったツッコミに双葉は 「ああ、そうっスね」 と同調してしまう(笑)。

 つまり、ふたりともこの曲をテレビのコマーシャルがきっかけで知っている、ということなんですよね。
 ふたりともよく、テレビを見ている、ということになるんでしょうけど、どうも私の個人的な感想を言わせていただくと、あまりふたりとも真剣にテレビなんか見てない気は、どうしてもするのです。 世間の動向に対してかれらは、結構無頓着というか、意識的に距離を置こうとしている気がするんですよ。 だから本編なんかより、コマーシャルのほうが印象に残ってたりする…、そんな気がします。

 洋貴はウーロン茶を頼もうとするのですが、注文の際に双葉は、ジンジャーエールを2つ、頼んでしまう。 これは洋貴が、双葉の両親が自分たちに会いに来たことや、双葉のことを家族も自分も心配しているということを、立てつづけにしゃべったことからくる、動揺だと思います。
 洋貴は金魚の折り紙がそこに置いてあるのを見て、雪恵の写真に写っていた金魚の折り紙と同じであることに気付き、双葉が文哉と会っていたということを瞬時に悟ります(相変わらず鋭すぎ)。
 洋貴のただならぬ顔を見て、双葉もウソをつき続けられないと察したのか、「昨日兄に会った」 と告白します(こっちも鋭すぎる)。

 「文哉今どこにいるんスか?」 詰問する洋貴。 「深見さん、ちょっと目が怖いです」 とまたやらかくスルーしようとする双葉。 「どこにいるんスか? なんで隠すんスか?」 と声が大きくなる洋貴。

 「…文哉反省してましたか?」

 固まったまま洋貴を凝視する双葉。
 おそらくその問いは、双葉も兄に会ったら確かめようと思っていたことに違いないのです(断定しております)。 「そうだ、そのことを訊くのを忘れていた」 という顔の双葉(感想には個人差があります)。

 双葉は、兄に動物園に連れてってもらった、と話します。

 「それで?」 語気が強くなる洋貴。 「そんなことはどうでもいい。 居場所は訊いたのか?」 という怒りを含んだニュアンスです。

 「『それで?』 って…。
 …まあ、…そういう感じです」

 「『そういう感じ』 って…?」

 「『じゃあ』 って…」

 「じゃあ」 だけで別れた、ということか。 双葉がなにも話す気がないと見た洋貴。

 「そうっスか…」

 「そうです」

 いきなり、頼みもしないジンジャーエールを、怒りを含んで完全にやけっぱちで飲み干す洋貴。

 「分かりました。 自分で探します。 すいませんでした」
 洋貴の目は、双葉と決別したかのような決意に染まっています。

 「何がですか?」
 訊くのが怖いけれど、訊かなければならない、という感じの双葉。

 「もともと、立場、違うし、僕とあなた。

 そういう関係じゃないし僕とあなたは。

 …
 …
 はい」

 無理やりピリオドを打とうとするかのような、「シャンシャン」 という感じの、洋貴の 「はい」 なのです。

 「あっ、はい」

 洋貴の決別の意志を汲み取ったかのように、目にいっぱい涙をためていく、双葉。

 お金を無造作に置き、その場を出ていこうとする洋貴。
 双葉は、すんでのところで洋貴のいつも羽織っているジャケットの裾をつかみます。

 「あのう!

 …いや、ちょっと、
 
 …あのう…!」

 洋貴と袂を分かつことが、身を切られるような痛みを伴うことを、じゅうぶん理解している双葉。 でも、自分の意志が、言葉となって、出てこないのです。
 「ぼくは…」 しばらく言いよどんだあと、洋貴は、達観したような笑みを浮かべて、こう言い残して部屋を出ていきます。

 「お疲れっス」

 ひとり残された双葉。

 「ああ…」 と、短いうめきのようなつぶやきを口にします。

 このカラオケボックスでのシーンには、ちょっとうなりました。
 要するに、セリフだけでは、何が何だか、まったく分からない。
 ト書きだけで進行していくような感覚なのです。
 これには、かなりのホンに対する咀嚼能力を要求される。

 ふたりの間には、やはり断ち切りがたい気まずさ、というものが、重たく横たわっているのです。
 だから雰囲気だけで、相手の気持ちを察してしまおうとする。
 自然、言葉は意味を持たないものになっていきます。
 見る側も自然と、当事者たちの感情に引き込まれていく感覚に陥ります。

 そして。

 「反省しているのか?」「被害者家族に償う気はないのか?」 ということを、やはり自分も、ちゃんと訊かなければならない、という決意を秘めて、双葉は因島に行こうとする兄との待ち合わせの場所に来ています。

 双葉はやってきた文哉に、「洋貴に会ってあげて」 と頼むのですが、文哉の反応は、私にとってはとても胸の痛むものでした。

 「なんで? なんで双葉が洋貴のこと?

 「反省って?

 「なんでお兄ちゃんが反省するんだ?

 「なんでそんなこと言うんだよ。
 たったふたりの兄妹なのに。

 「亜季ちゃんは天国に行ったんだ。

 「生まれてこないほうがよかったから」

 ――。

 双葉は文哉にかなり強い調子で反省を迫るのですが、文哉は暴力的に妹の腕を払いのけ続け、停めてあった軽トラに乗り込んでいくのです。

 「お兄ちゃん! お兄ちゃん…!

 亜季ちゃんは、生きたかったんだよ!
 生まれてこないほうがよかったわけないじゃない!
 お兄ちゃんっ!
 もうっ!

 悲しんでる人たちがいるんだよ! ねえっ!
 15年間毎日毎日悲しみ続けている人たちがいるんだよ!
 悲しくて悲しくて、泣きすぎて涙も出なくなった人たちがいるんだよ!(文哉、双葉を地面に叩きつけ、軽トラに乗り込む)

 なんで!
 なんで!(軽トラに突進する双葉)
 お兄ちゃん!(軽トラを激しく叩く双葉)
 なんで!(軽トラの窓ガラスを突き破ろうかという双葉)
 ねえっ!
 なんで!
 お兄ちゃん!(走り去ってしまう、軽トラ)
 …
 もうっ!(座り込んだまま、ありったけの怒りで、地面を激しく踏みつける、双葉)」

 はたから見てしまえば、恥も外聞もなく白昼堂々街中で何を兄妹ゲンカしてるのか?というレベルのものすごいやり取りだったんですが、ここで強烈な印象を残したのは、自分が亜季チャンを粛清させた理由にばかりこだわって、人としてどう思うのか、世間に対してどう顔向けできるのか、世間の誹謗中傷をなんだと思ってるのか、とにかくそれにフタをして、ただひたすら逃げようとしている、ひとりの 「少年A」 のままの、男の姿です。

 その夜。

 洋貴と五月は雪恵の仕事の終わるのを、ひたすら待っています。

 そのとき洋貴が、五月に対して話したこと。
 それはそれまで逃げていた自分と対決しなければならない葛藤を、ある種汚い言葉も使いながら、ありのままに打ち明けた言葉でした。

 「ぼくといて恥ずかしくないですか?

 …

 藤村さん(五月)ぼくのこと、勘違いしてます。

 ぼくは別にあのう、頑張ったこともないですし、誰かのために何かをしたこともありません。
 この年まで就職もしないで父親に食わせてもらって、…外歩くのが、まぶしくって。

 死にたいって思いながらマンガ読んで、
 死にたいって思いながらコンビニに着ていく服選んで、
 死にたいって思いながら、ションベンしてクソして…。

 あの山のなかの家で、ずっとへばりついてた。

 ナメクジみたいな人間なんです。

 …

 妹の復讐するとか言いながら何もできなくて、
 復讐復讐って言いながら、相変わらずグラビアとかちょっと見たり、
 復讐って言いながら、目ヤニつけたまんま夜になってまた、ションベンして、クソして…!

 ナメクジみたいに、ベタベタベタベタ、地べた這いずりまわってるんです」

 そんな洋貴に、五月は 「自分の人生を取り戻そうとしているから、加害者のことを探すんでしょ?」 ときっぱり言い切る。

 「別に、恥ずかしいことじゃないと思いますけど」

 そんな五月の言葉を聞き、洋貴はどう答えればいいか、分からない。

 「『はい』 って(言えばいいと思います)」

 洋貴はしばらく考え、その決意を表情に漲らせながら、「はい」 と答えます。

 ここでの洋貴は逃げている文哉と、鮮やかな好対照になっている気がします。

 それは、実情を話せば、そんなにカッコイイものじゃない。

 そうありたい自分と、結局そうなってしまっている自分とのあいだには、やはり多かれ少なかれ、乖離というものが存在している。

 でも、「遅くとも、せぬよりはまし」、なのです。

 人は自分の姿に絶望しながら、自分の無気力に打ちのめされながら、ただ上を向いて、前を向いて、生きなければならない。

 そんな姿勢こそが、実はいちばんの、人生のありかただと私は思うのです。
 見た目負けていても不幸でも、それはその人にとって、不幸じゃない。
 向上する心を失ったとき、はじめて人は、不幸だと思える。

 説教臭くなってまいりました。

 なにしろいくらカッコ悪くても、全然カンケーないのです。

 いっぽう因島に行こうとしていた文哉は、草間五郎(小野武彦サン)の農場に、帰ってきています。 双葉の必死の懇願が、彼を押しとどめた気がします。
 そこでは紗歩が五郎に促されて、現金持ち出しを謝らせようとしていたのですが、ん~なんつーか、謝らせる以前に、もう即刻解雇だと思いますけどね、こんな問題のある従業員は。
 しかし紗歩は全く悪びれる様子がなく、文哉が少女殺しの殺人犯だということを、オッパイ星人…じゃなかった(笑)サトエリに、ばらしてしまうのです。 憎たらしいなコイツ。 盗人猛々しいとはこのことだ。 ある意味少女殺しよりも悪質。
 ただ紗歩のこんな攻撃も、因島に行こうとしている文哉には、まったくダメージなんかないと思うんですが。

 そして仕事が終わった雪恵の前に立ちふさがった洋貴と五月とキーボー(あっ違う)。
 雪恵はほんの一瞬を突いてその場から逃走するのですがあえなく洋貴につかまってしまう。
 彼女が逃げたいと思うほど後ろめたいことって、なんなのか。

 今回も長~いレビューになってしまいました。 最後まで読んで下さったかたには、厚く御礼申し上げます。 ところどころオチャラケた表現を混ぜておりますが、深刻さを軽減しようとしているこのドラマにならったものであることをお断りいたしたいと思います。

 心を切り刻まれた人たちも、四六時中、深刻なことを考えているわけではない。
 なぜならその人たちも、世間の人たちのなかで、生きていかなければならないからです。
 暗い顔をしていては、社会ではつまはじきにされてしまうからです。
 でも普通に生活していても、心のどこかは、いまだ修復がなされないまま。
 そんな偏った心が、なんとなくトンチンカンな対応をとってしまう人間を、作りあげる。

 それは深刻さを軽減しようとするこのドラマの方策であると同時に、紛れもない悲しみを秘めたものであることに、見る側は気づかないといけない気がするのです。

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コメント

 今回もまた うなってしまうほどの作品の出来栄えだったと思います。 深刻な話をしているのに何だか滑稽に見えてしまう。またそんな風に行動してしまう、それぞれの悲しみや辛さがびんびん見ている私達に響いてくるようでした。

 今回の演出は「流れ星」の宮本さんだったと思います。「流れ星」でも少ない台詞の中での登場人物の思いが切ないほど伝わってきたのを思い出しました。

 大竹さん始めキャストの皆さんの演技は素晴らしいですね。

 それにしてもあの沙保と言う人は嫌な女ですね。何か秘密があるのでしょうか? リウさまのコメントを楽しみに次回を待ちます。

投稿: ゆみ | 2011年8月13日 (土) 20時52分

ゆみ様
コメント下さり、ありがとうございます。

どうも何日かぶりで書いたためか、分かりにくくなっているようです、このレビュー。 いま読み返して結構読みづらかった。 そんな記事にコメントを下さって、恐縮であります。

宮本サンでしたね、今回の演出。 とても高度なシーンが散見されていたように思います。 見る側の想像力を著しくかきたたせる。 ドラマの醍醐味を堪能しました。

それにしても何度も書いてるんですが、「本当に文哉が亜季チャンを殺したのか?」 という描写が、どうもすっぽり抜けているような気がしてならないんですよ、このドラマ。 いちばん直截な描写が、文哉(と思しき人物)が金槌を持って亜季チャンに近づいている、というシーンなんですが。

やっぱり文哉が殺したのかな。

紗歩は顔つきまで根性曲がってるという感じで(笑)、ここまで憎たらしく演技できるのもすごいな、と感じています。

投稿: リウ | 2011年8月13日 (土) 22時48分

コンビニATMで暗証番号何種類か入れたくらいで捕まりませんから、ATMを蹴っ飛ばしたりしたんじゃないでしょうかねえ?

小野武彦さんの農場は、過去のある青年たちの後見人みたいなことを引き受けているんでしょう。
紗歩も補導くらいはされてるんでは。
(勝手に予想w)

>死にたいって思いながらコンビニに着ていく服選んで
的確なセリフです。
なにしろ、ニートな男の子たちは「ユニクロに買い物にいくのに着ていく服が無い」というネットの書き込みをよく見ますから。
ヒロキがそういう状態になったきっかけは妹の死でしょうけど、元からそういう素養があったんではないかな。
どんどん外界と関われなくなってしまったんですねえ。
そんな彼から見ると、東京の五月さんはキラキラした別世界の人なんですよね
いくら「同じ境遇」と言われても。

肉親までもが雪恵を疎ましがること、
あんなに必死に逃げようとすることからみて
相当深い闇を文哉と一緒に抱えていたんでしょうね。

次回がまちどおしい!

投稿: マイティ | 2011年8月15日 (月) 15時13分

マイティ様
コメント下さり、ありがとうございます。 返信、遅れて申し訳ありません。

さすがマイティサン! たぶんそうですよ! いや~胸のつかえが下りました(笑)。 ATM蹴っ飛ばしですよ、きっと!

よく 「痛いニュース」 とかで2ちゃんねらーがそんなことを書きこんだりしているのを私も読んだことがありますが、あれってネタだと思ってましたcoldsweats01。 実際にそうなんでしょうかねー。 外界に出ていくのがつらいんじゃ、コンビニにも行けないのかな? そこまで重傷じゃないにしろ、洋貴の場合はこの事件がきっかけで、社会にまともに出ることが出来なくなったんですよね。

ただ私は思うのですが、オヤジの釣り船屋をやってるにしたって、立派に仕事をしていますよ、洋貴は。

人間、なにも立派な人に自慢できる職業でなくても、自分の社会に対する怖がりの度合いに相応した仕事ってもんは、あると思うんです。

要は、自分の足でちゃんと立って、自分ひとりの力で生きていく。 いかに安い賃金でも。

それが出来ていれば、人として恥ずかしいことはない、そう私は思います。

投稿: リウ | 2011年8月16日 (火) 06時55分

お疲れ様です。

カラオケBOXのところのやりとりは、なんか見てて、身が切られるような思い、せつなさがありましたよね。洋貴が最後何を言おうとしたかったのかも気になります

投稿: ima♂ | 2011年8月22日 (月) 07時32分

ima♂様
コメント下さり、ありがとうございます。

やはり、「君となら分かりあえるつもりでいた」 ということじゃないでしょうか。
と同時に 「君に幻滅した」 ということも呑み込んで、「お疲れっス」 と言っている。
いやな言葉を呑み込んでの、洋貴の優しさだった気がします。

投稿: リウ | 2011年8月22日 (月) 14時49分

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