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2011年10月13日 (木)

「家政婦のミタ」 第1回 本当は怖いおとぎ話

 「リバウンド」 から1クールおいて、また遊川和彦サンの新作。 ペースが速いな、というのが第一印象。
 まずどんな話なのか、というカテゴリー分類しようとすると(レッテル貼りたがる悲しい性ですが)、まずはホラーがベース、なのでしょう。 けれどもなんとなくブラックジョークの匂いもする。 同じ遊川サンの作品で論じれば、真面目人間に周囲がドン引きして笑わせる、というパターンは、「曲げられない女」 っぽくもあるし。 鉄面皮の女が結局周囲をよりよい方向に導く、という逆説的な部分は、「女王の教室」 を想起させるし。

 「家政婦のミタ」 というのは 「家政婦は見た!」 からの引用なのでしょうが、私の場合 「コピーはミタ」 を連想しました(ビルがスローモーションで崩れていくCM、バックには阿川泰子サンの歌う 「グッドバイ」。 この1980年代のCM、すごく好きでしたけど、三田工業のその後を暗示しているようでしたね)。

 主演の家政婦、三田を演じるのが、松嶋菜々子サン。 個人的には 「利家とまつ」 以来かなぁ。
 今年38歳ですか。 ますますお美しい、とゆーか、一切無表情。
 これまでの松嶋サンのイメージからは完全に乖離した役柄、という気がいたします。
 感情を一切表に出さないせいか、演技力なくてもOK、という気もいたしますが。
 でも無表情だから、男の私としてはそこに、ある種のエロチシズムも感じる。 やはり、美しい、です。
 そしてそのスレンダーな長身を、ドラマは無造作にアピールする。 彼女が演じる家政婦の内的な独特の感情が、そこに存在してくる気がするのです。

 いま述べたように、このドラマのいちばんの特徴は、この、人間的感情一切ゼロかつ仕事を完璧にこなす、三田という家政婦。
 きっちり時間通りに行動し、瞬時にその家庭の料理の味をマスターし、重いものを難なく持ち上げ、しかも熱いものを持っても熱がらない、やけどもしてない様子。
 この最後の様子からすると、「この人ロボットか?」 というほどなのですが、このドラマはそんな、SF的なものを目指してない、と感じるんですよ。 「実はロボットだった」、なんてオチ、あり得そうもない。

 おそらくでも、この家政婦は 「女王の教室」 の天海祐希サンがそうだったように、最後までほぼ、人間としての感情など出さないままだと予想されます。

 その予測から考察いたしますれば、このドラマは 「現実にありうる話」 を目指していない。

 「おとぎ話」 を目指している。 そう考えられるのです。

 ドラマ冒頭から、この家政婦が入る阿須田家の様子が描写されるのですが、この家は母親が亡くなってようやく四十九日を迎えています。
 優柔不断で子供たちに強いことも言えない、威厳もない父親(長谷川博己サン)、母親代わりに家事をやろうとするけど全く出来てない長女(忽那汐里チャン)、何かと食ってかかるのが見ていてうざったい長男(中川大志クン)、クールで勉強オタクっぽい次男(綾部守人クン)、母親を病的にまで恋しがっている次女(本田望結チャン)が構成員。
 散らかり放題の薄暗い家のなかで、家族全員が、見ていて何か、イラっと感を助長する誇張が行なわれている気がする。
 その 「オーゲサ」 なウザったさが、「現実とは少し違う、少し不思議(SF、by藤子F不二雄サン)な感覚を見る側に誘うのです。

 私が 「このドラマはおとぎ話だな」 と感じたのは、この三田という家政婦を紹介した紹介所の所長、白川由美サンが長谷川博己サンにかけた一本の電話。

 白川サンは、その三田という家政婦のコミュニケーション能力を心配しながらもその完璧な能力をアピールし、三田が 「誰かを殺せと言われれば、殺してしまうだろう」 という物騒なことを言って電話を切るのです。
 これってなんだか、「童話」 みたいじゃないですか?
 現実にはありえない。

 三田は完璧に仕事をこなし、その果てに、白川サンが危惧したように、亡くなった母親に異常に会いたがる次女に頼まれ、一緒に入水しようとする。
 ここでふたりが死んじゃったら第1回で話は終わりですから(爆)周到に長男によって助けられるのですが、遊川サンはその程度の話で 「あー怖かった」 と済ませるような作り手ではないのです(笑)。

 ここでそのクライマックスの状況を導き出す役として、ドラマではその亡くなった母親の妹、として、「リバウンド」 での演技も記憶に新しい相武紗季チャンを配します。
 彼女は忽那汐里チャンの学校の教師でもある。
 教師のクセして彼女は極度のKY思考で何かって言えば阿須田家をメチャクチャにする。
 彼女の存在自体もまた、戯画的でおとぎ話っぽさを助長していますが、彼女が次女の誕生日に死んだお母さんに会わせてあげる、などと安請け合いをしたものだから、阿須田家はまた修羅場になっていくのです。

 で、その相武紗季チャンが火種を撒いて 「はいちゃー」 と行っちゃったもんだから、その後の阿須田家はそれまで母親が亡くなったモヤモヤをみんなが吐き出してしまう、という事態に。
 感情的になった長女が、母親が死んでからそのままだった母親の持ち物を全部捨てて!と三田に頼みます。
 三田は、極めて機械的に母親の持ち物を片っ端から庭に投げ捨て、それに火をつける。

 目の前で跡形もなく燃えていく母親の遺品。

 その燃え盛る火を前にして、子供たちはその思いのたけを叫びまくる。
 長女は自分が母親役になれないことの苦悩をさらけ出し、クールな次男もほめてくれる人がいなくなったことの悲しみをぶちまけ、次女は自分が言ったひどいことでお母さんが死んじゃった、という、彼女が異常に母親に会いたがっていた理由も告白した。

 でもこの状況を客観的に見ると、これってかなり、近所メーワクな話であります。
 だいたい三田、可燃性の燃料(灯油かな?)を撒いてから火をつけてるし。
 こーゆーのは、ダイオキシン規制条例に反します(笑)。
 しかも宵の口でしょうけど、庭先で家族が入れ替わり立ち替わり大声で叫びまくってるし(火が燃えてると、原初的欲求が突き上げるものです…笑)。 迷惑防止条例違反であります(笑)。

 まあお隣のイヤーミなオバサンが抗議してましたけどね。 ホントだったらこの人ひとりしか出てこない程度で済むわけがない。
 それが、おとぎ話っぽいんですよ。

 ここで三田はそのイヤーミなオバサンに水をぶっかけるのですが、オバサンの抗議で火を消して、と長谷川博己サンに言われたため、延焼を防ぐ、という目的のためにやった、と三田はまた、機械的に話してました。
 ただちょっとここで、三田の感情が垣間見えた気もする。
 いや、でもあり得ないか(う~ん…)。

 この、杓子定規ばかりのことをしている三田が作り出す笑い、というものも、ドラマには存在しています。

 AKBの48人の名前をすべて言えるというのもご愛嬌ですが(笑)、先の相武紗季チャンが目論んだ 「死んだお母さんに会わせてあげる」 というのってどーゆーことなのか探りを入れろ、と長谷川博己サンから頼まれて、妻の父親である平泉成サン演じる頑固オヤジに極めて事務的にべらべらと内情をしゃべっちゃったり、あまりにそのしゃべりっぷりが機械みたいで笑えた笑えた。

 そして物語が展開していくうえで、溺れて亡くなった、という母親が、実は自殺だった、ということが、徐々に明らかになっていく。

 忽那汐里チャンのケータイに残された母親からの最後のメッセージ。
 そして浮気をしてそーな、長谷川博己サン。

 このドラマにリアルを求めると、ちょっと否定的な感想しか導き出されない気がいたしますが、松嶋サンの強烈なキャラクターに惹かれて、次回以降も見てしまうような気がいたします。

 先にも書きましたが、おそらくその、けっして開くことはないであろう彼女の胸の内を、さまよいながらも探りたくなっている心境であります。

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コメント

「家政婦のミタ」。
以前の「家政婦は見た」シリーズを踏襲するのかと思いきや、全然異なった雰囲気でしたね。松嶋さんのロボット的な対応が、彼女の美しさから引き出される怖さを漂わせてますね。

松嶋さんの昔のドラマ「氷の世界」と少し似た感じがしました。

リウ様のおっしゃるようにリアルさを求めるとちょっと・・・ですね。
4人の子持ちで、長谷川さんがお父さん役だと違和感ありますし・・・
 いま、売れっ子の長谷川さんキャスティングで視聴率狙いなのでしょうけれど、どうなんでしょう?

家政婦への指示の優先順位も気になるところです。年齢順なのでしょうか?(父、長女、長男、次男、次女?)

ロボット的な対応で、人間的な感情を表さないまま、どこまでドラマを進めていけるのかも興味を引かれるところですね(ロボットといえば、相武紗季ちゃんの「絶対彼氏」というドラマもありましたけれど)。

昨夜、「蜜の味」を視聴しました。菅野さんとARATAさんが出てたので・・
リウ様はご覧になってらっしゃらないでしょうか?

投稿: rabi | 2011年10月14日 (金) 09時31分

rabi様
コメント下さり、ありがとうございます。

さすがにrabi様、いろんなドラマをご覧になっていらっしゃいますね! 私は 「氷の世界」 も 「絶対彼氏」 も未視聴です…。
まあ以前は見るドラマを厳選していた、とはしばしばこの場でも書いているのですが。

私は長谷川博己サンがその歳で4人もの子持ちであることの原因を探ってしまいます(笑)。

結構自分が前に出るタイプの人間じゃないのに、他人を立てることが上手だから課長クラスになっている。 あまり苦労を知らないで高給取りになっちゃってる側面があるような気がするんですよ。 出世は比較的早かったんじゃないかな~。
それにもともとは子供が好きなんだと思います。 早い段階で給料が安定すれば、子供好きだから次々産ませちゃう。 でももともと優柔不断だから、子供たちとどのように接したらいいのか分からない。

浮気をしてそうなのも、優柔不断が招いたことなのかも。

三田に関しては、遊川サンは初期設定だけで、深い素性など一切考えてない気がする。 遊川サンに興味があるのは、彼女の存在によって変わっていく周囲のほうでしょうね。

「蜜の味」 は、見ました。 私もrabi様と同じように、菅野美穂サンとARATAサン目当てで見たんですが、…まぁ…(笑)。 記事に書くべきこともないし、次回はう~ん…、かな(スミマセン…)。 ただひとつ申し上げたいのは、主人公の女の子に、「あなたはなんのために医学部に入ったのか」、とお訊きしたい、ということでしょうか。 気のない回答で、まことに申し訳ないです…。

投稿: リウ | 2011年10月14日 (金) 15時34分


>結構自分が前に出るタイプの人間じゃないのに、他人を立てることが上手だから課長クラスになっている。 あまり苦労を知らないで高給取りになっちゃってる側面があるような気がするんですよ。 出世は比較的早かったんじゃないかな~。
それにもともとは子供が好きなんだと思います。 早い段階で給料が安定すれば、子供好きだから次々産ませちゃう。 でももともと優柔不断だから、子供たちとどのように接したらいいのか分からない。

なるほど、リウ様の分析素晴らしいです!
1回目の描写だけで、これだけの解釈、さすがです。good

>「蜜の味」 は、見ました。
主人公の女の子に、「あなたはなんのために医学部に入ったのか」、とお訊きしたい、ということでしょうか。 

全く同感でした。
さまざまなシーンで私もそう感じました。
なんか演出も過剰な部分があったりして・・(最後の方のシーンで風をビューッと吹かせたりするのはやめてほしい〜って思いました)

せっかく、菅野さんやARATAさんが出てるのに・・・。
「それでも、生きてゆく」の後枠の番組として、いささか期待はずれでした。despair

投稿: rabi | 2011年10月14日 (金) 18時40分

rabi様
再コメント下さり、ありがとうございます。

おほめにあずかり、お恥ずかしい限りですcoldsweats01。 そういう深い読みが出来るのも、遊川サンが長谷川博己サンの会社での様子とか、子供たちと話すことにさえ覚悟が必要でトイレで気合を入れるところとか、細かい描写をなされているからだと思います。

いっぽう 「蜜の味」 の主人公の女の子は、思い込みが激しくて子供っぽく拗ねたくなるところなど、「まあ子供だから」 で済ませられる部分もあるのですが、分娩室で泣いてしまったのが失恋のせいだったとか、目の前で子供が重傷を負っているのに何もしないで傍観してるだけとか、人間としての根本が抜けているような気がしたのです。

でもそんなことを書き始めたら、結構ねちねちとした記事になってしまいそうで。

言い訳みたいですけど(言い訳だ)「江」 の場合は、揚げ足とりが楽しいんですよ。 少なくとも脚本家がマジメにやってるように見えないので、このドラマに突っ込むことは至上命題だ、くらいの気分でやってます(爆)。

大石静サンの意図としては、「昼ドラみたいなドロドロをやりたい」、ということなんでしょうけど。 だからたぶん、回を追うごとに衝撃的なシーンの連続になるような気がする。

でも、私はそういうのはあんまり…、という感じでございますthink

投稿: リウ | 2011年10月15日 (土) 07時10分

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