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2011年10月29日 (土)

「ランナウェイ~愛する君のために」 善と悪の居場所

 脱獄ドラマ、「ランナウェイ~愛する君のために」。

 まず題材が脱獄、逃走劇、という時点で背徳の匂いがぷんぷんして、良識のあるかたがたは敬遠される内容のように思われます。 なんかタイトルもダサいんだよなあ(特に副題)。
 ただ私の場合、昔のアメリカドラマ 「逃亡者」 の遠ーい思い出が懐かしくて(ほぼストーリーの記憶なし、なんですが)「今さら脱獄劇をやろうとするドラマスタッフの気概、というものはどんなものか」 という動機で、ちょっと見てみようかな、と思いました。

 さしずめ逃亡者のリチャード・キンブル(映画版じゃハリソン・フォード)は市原隼人クン、追いかけるフィリップ・ジェラード警部(映画では地球調査員・宇宙人ジョーンズ、じゃなかった、トミー・リー・ジョーンズ)は嶋田久作サン、と言ったところでしょうか。 フィリップつながりで(なんやソレ)「仮面ライダーW」 のフィリップクン(菅田将暉クン)が脱獄犯の一員(運び屋で投獄)で出ています(カンケーないって)。

 初回2時間の長丁場を見ての感想を申し上げれば、「設定その他展開はかなり強引だが、熱い思いは伝わってくる」「結構あっという間だった」。

 こういうのは、昔からある 「スクール・ウォーズ」 とか最近の 「ROOKIES」 とかのヤンキー絡みの系統と言っていい気がしますが、「若者の勢いを体感するドラマ」、としてひとつのジャンルなような気がする。
 そんなヤンキー系のカテゴリーで 「逃亡者」 をやるとこうなる、という感じ。
 追いつ追われつのスピードに、あり得なさすぎと思いながらもその疾走感に身をゆだねる。
 感覚的に 「ダイ・ハード」 でも見ているときのような 「鑑賞上ある種の理屈をわきに置いちゃう」 という態度が必要なのかもしれないです。

 逃走メンバーは市原クンを中心として、「運び屋」 としてハメられた菅田クン、「テンペスト」 での高級官僚からガラッと変わって、暴力団から足を洗おうとしてほかの組員の殺人の身代わりで刑務所に入った塚本高史サン、ホストで客の踏み倒した借金絡みで(ちょっと不注意でよく罪名が飲み込めてないのですが)覚せい剤使用を押し着せられて刑務所入りしたKAT-TUNの上田竜也クン。
 市原クンも恋人の不可抗力による殺人の身代わりをしているし、4人とも、本当は自分が罪を犯してない、もしくは同情される余地があるという点で、共通しています。
 これが見ている者の4人に対する心情を、共感させる方向に導いている。

 その市原クンの恋人役に福田沙紀チャン。
 「IS」 でのイケパラ役(?)から一転して、刑務所入りした市原クンを健気に待ち続ける役です。 この子は主役級より、こういうポジションのほうが合ってる気がする。
 そのふたりの間に生まれた女の子が、篠川桃音チャン。 「ゲゲゲの女房」 での、何代目かの藍子チャン役で、「エロイムエッサイム、エロイムエッサイム」 って踊っていた、あの純朴な演技をしていた女の子です。 近頃の子役は 「すごい」 演技をする子が多いのですが、この子の演技はあくまで癒し系。 こーゆーフツーなのが、お父さんはいいですなあ。

 で、彼らは脱獄後、菅田クンが運び屋として全国に隠した合計2億円をまず回収しよう、という目的で動こうとする、のですが、なかなか動けない。
 そこで市原クンたちの逃亡を手助けする重要な役割を演じるのが、熊田聖亜チャンという女の子。
 市原クンたちが逃亡中偶然入り込んだ家で虐待を受けていたため、母親と内縁の夫(ガチだな…笑)から逃げて東京の父親のもとに行こうとする、ちょっとハスッパなしゃべりをする女の子です。
 この子の演技がまたすごいんだな。
 ハスッパなのはちょっと気になるけど、今どきの子役ってどうしてこうも演技がすごいのが多いのか。
 これね。
 世の中不景気で、親が子供を道具に使ってる感じがして、ならないんですよ。 その傾向の表れなんじゃないかって。 親の必死さが、子役たちの演技のすごさに直結している感覚。

 ともかく市原クンは娘の桃音チャンがあと3カ月の命、ということを知り、脱獄を決意する。 ほかの3人も、それぞれ割の合わない刑に服役していることを、なんとかしようと思って、脱獄する。

 まあ、話的にはいかにもあり得ないことが多過ぎるのですが、もともと脱獄をする、という時点であり得ないドラマ(笑)。 多少のことには目をつぶる用意が、こちらには出来ています(笑)。

 ただその 「あり得ないこと」 を挙げれば。

 刑務囚の竜雷太サンが彼らの脱獄を最初指導し、すんでのところで自分を犠牲にして4人を逃がすのですが、まずその方法からして荒唐無稽。 でもこのくらいあり得ないと、実際に囚人たちはみんなこぞって脱獄しそーな気もするし(笑)。 脱獄指南になってない、という点では反社会性のそしりをすりぬけている。
 そして上田クンが、「脱獄なう」 とか、ツイッターをしまくるんですよ。 足がつくだろっ(笑)。 こういうマヌケなことをよくするよ、つーか。 でもそれで上田クンの、チャラ男のあぶなっかしさ演出しているし。
 そして九州を脱出するとき、検問をすりぬけるために熊田聖亜チャンが一芝居打つのですが、これもあそこまで市原クンがキョドってしまったら、いくら温厚な警官でも、見逃すはずはない、と感じます。
 まあ、そこらへんのことは、みんな不問です。

 で、そのあり得なさを前提にして見ていると、不思議と4人を応援したくなってくる。

 それはこのドラマに流れる、「本当に悪い奴って誰なのか、本当にいい奴って誰なのか」 という問題提起の論調が、見ている側につねに突き付けられているからです。

 それをはからずもあぶり出していた出来事が、彼らが脱獄の際に刑務所慰問をしていたギター侍、波田陽区クンのギャグだった気がする。

 脱獄の争乱のなかで、一方的に刑務官から 「今日は中止」 と言い渡された波田クン、「まだ終わってないですよ」 と言ったら 「うるさい一発屋!」 とそのコワモテ刑務官から一喝され、怒りを込めて歌い出す。

 「♪けーいーむかんはいっつも、マジメな顔して働きます、ってい~んじゃな~い?
 でもこの刑務官の顔がいちばん、犯罪者みたいですから~~~っ! 残念!」

 大笑いしました。
 久しぶりに 「残念!」 で笑ったぞ(ああそれ…)。

 そのほかにも、熊田聖亜チャンを虐待していた内縁の夫(ガチ)、彼はいたいけな女の子に暴力をふるい煙草の火を押し付け、その時点でもう人間じゃねえ、という感じですが、さらに自分で拘束を解いて反撃しようとするもあっけなく返り討ちにされて、かなり卑屈に命乞いする。
 人間じゃないうえに、誇りすらない。
 なんなんだよ。
 動物ですらない。

 こういうロクでもない刑務官とか虐待男とか見ていると、やってることは違法だけれども、市原クンたちのほうがよほどまともだ、という気がしてくる。
 善と悪の居場所が、齟齬をきたしているこの違和感。
 このドラマの吸引力は、そこにあります。

 第1回終盤、九州脱出を前にして、彼らは途方に暮れてしまいます。
 そのとき、市原クンは絶対にあきらめない、とみんなに訴える。

 「オレはあきらめない。
 助けるんだ。娘を。
 一度も抱っこしたことがない。
 手を握ったことも。
 まだ、五つなのに。
 心臓病で、手術しなきゃ、あと3カ月の命だって言われている…。
 あと1年我慢すれば、親子3人、仲良く暮らせるはずだったのに…。

 オレだってホントは迷ってる。
 脱獄なんかしてホントに良かったのかって。
 だけど、オレが行かなきゃ娘は助からないんだ…。
 どうしても助けたいんだ…!
 なにがなんでも助けたい…!
 助けたい…。

 だから、オレはあきらめない。
 なにがなんでも、娘を助ける。
 人にどう思われようが関係ない。
 娘が助かるなら、なんだってする…!」

 泣き叫ぶようなこのセリフの、あまりの強引さ。
 そしてそれを感動に結びつける、あまりの強引さ。
 このドラマは、その強引さですべてを、見ている側に、納得させるのです。

 なにがベストなのかは分からない。
 でも思いだけは負けない。

 とりあえず市原クンの目的は、菅田クンが隠している、というその2億円の山分け分です。 それがあれば娘の手術への足がかりが開ける。
 その金にしたって、菅田クンの話をどこまで信用していいのか、まったく不透明、このうえない話であります。 どこでどう事情が変わっているかもしれない。
 でも一切のモヤモヤは吹き飛ばして、いくしかない。
 このドラマはそのパワーだけで、すべてを押し切ろうとしている。

 そして市原クンはとりあえず、竜雷太サンの頼みごとを叶えるために、娘の井上和香サンのもとへと向かう。
 井上サンはもう、事件を起こして服役なんかしている父親なんか完全に見限っているのですが、市原クンが持ってきた、父親のお守りの中に入っていた、自分が小さいころに描いた父親の絵を見て、父親と和解するのです(かなり話をはしょってますけど)。

 市原クンの熱い思いが、完全に崩壊していた親子関係を、ひとつ修復することが出来た。
 彼らの脱獄に、ひとつの成果が生まれたのです。
 ここは泣けましたね。

 そして市原クンのことを見守ろうとしている、元刑事役の渡哲也サン。

 この渡サンの存在感って言ったら。

 渡サンが見たくて、次回も見ちゃいそうであります。

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