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2012年1月22日 (日)

「カーネーション」 第16週 抑えられる気持ち、抑えられない思い

 今週の 「カーネーション」 は、レビューが簡単そうだ…と思ったのですが(笑)。

 どうなることでしょう。

 月曜放送分からさっそく始めます。




 昭和21年。
 パーマ機を導入して仕事にいそしむ八重子のところに、喪服姿の奈津が、やってきます。
 頭はパンパンのままやけど、その表情からは毒気が抜かれている。
 勘助と泰蔵の遺影に手を合わせる奈津。
 先週、憧れだった泰蔵の死に 「嫌やー!」 と耳を塞いでいた奈津でしたが、その認めがたい現実と向き合う気が起きている、ということで、奈津の変心が即座に見てとれます。

 八重子はその光あふれる1階から、薄暗い2階であのあと再び伏せったままになっていた義母、玉枝のところにやってきます。

 玉枝は先週、奈津を説得した時に、人間らしい心をいったん取り戻しかけているように見えました。
 でもまた伏せていた。

 奈津が来たと知った玉枝の目は、また大きく見開かれていきます。
 返事がないため階下に降りようとした八重子に、玉枝の声がかぶさります。

 「…ちょっと…手伝うて…」。

 玉枝の目から光る一筋の涙。 光と影の交差が、人の移ろいゆく心を表わしているようで、再三申し上げますが、高等芸術レベルであります。

 八重子に担がれるようにして下に降りてきた玉枝。
 涙をぬぐっていた奈津も気を取り直して、おぼつかない玉枝を支えます。
 型どおりのあいさつのあと、玉枝は意外な話を始めます。 安岡髪結ひ店というのはもう古いから、何か新しい名前に変えたい、というのです。

 「…安岡…美容室…?」

 答えを探しあぐねている玉枝に、奈津が口を開きます。 「それや」。 玉枝は制服も店の内装もリニューアルして安岡美容室を立ち上げたい、奈津にそれを手伝ってくれへんか?と頼むのです。

 さっきまでまた人形のように寝ていた玉枝がここまで生気を取り戻す、というのは、ちょっと展開的に唐突のような気もします。

 でも、実は玉枝は奈津を説得したあの日以来、そのことをずうっと考えていたフシがそこから見てとれるのです。 何事も変わらぬかのように床に再び伏せながら。

 もしかすると玉枝は、奈津がうちを訪ねてくれるかどうかに、ちょっとした願掛けをしていたのかもしれない、そう私は考えます。
 奈津がうちを訪ねて来てくれれば、自分の説得が、自分の思いが、奈津に通じたことを意味しているように、玉枝は考えていたのではないか。
 人を動かすことができれば、自分にもそれだけの力がまだ残っていた、ということだ。
 ならばそれで自分も、変われる度胸がつくかもしれない。

 奈津は玉枝の再スタート案を聞いて、泣きながら感謝するのですが、自分はもう表の世界の女とは違う、と言いかけます。 「言いない」。 玉枝は奈津の口を塞ぎます。

 「金輪際言いない。
 ええな。
 もう忘れ。
 忘れてな。
 先行こ。
 うちもそないするよってな。
 あんたもそないし。 な…」。

 うなづく奈津。

 その後、糸子は奈津を縛っていたその、裏の世界の怖いオニーサンらを前に、奈津の借金の保証人になります。 その場に同席した木之元のおっちゃんたちもおっかない顔をしてましたが(笑)、糸子はそれ以上にドスの利いた姉さんぶりです(笑)。

 ところがこのエピソード。 実は今週の話を推し進めるための動機のひとつとなっており。

 オハラ洋装店は比較的順調な経営状態だったにもかかわらず、奈津の保証人、安岡美容室のパーマ機代及び改装費及びユニフォーム代、と、そのことで経営を圧迫されるようになるのです。 いきり立つ昌子と松田恵に、「稼いだらええんやろ?」 と啖呵を切る糸子が決断した、実入りのいい仕事とは。 それはまたあとの話。

 いっぽう再び安岡の店。

 「八重ちゃん…。

 堪忍してや…。

 今までのぶん返していくさかい…堪忍やで…」

 玉枝の髪を結いながら落涙する八重子。 「すんません…!」 と、とっさに口にしてしまうのですが。

 これってその昔、出征が決まった勝が、善作に言ったセリフそのままですよね。
 正直なところ、「なんでスミマセンいわなあかんねん」 という感じで、その両方のケースとも用法が違ってますよね。
 でもこれって、自分の感情が高ぶりすぎて、適切な言葉で表現できないことが共通している気がするんですよ。 

 今まで玉枝から散々罵倒され続けてきた八重子。 それは直截ドラマを見ているうえでは出てこない場面でしたが、八重子はそのことで玉枝を憎んだりしたことはなかったのだ、と思うんですよ。

 いな、憎みたくなかったからこそ、「死神だ」 とまで言われたときにはさすがの八重子も黙って家を出ようとした。
 これって恨み事なんか言いたくない、という強い意志があったんだと思う。
 まあ勝手に想像してますが、ドラマを見ていればなんとなくわかる気がするのです。

 八重子のこれまでの苦しみを思えば、玉枝のこの謝罪は、どうも簡単すぎるきらいもある。

 けれども玉枝は、これからその埋め合わせをする、というように、未来を見据えています。
 これが単なる安請け合いなのかどうかは、そりゃあ嫁の判断に任せますが(笑)、自分の髪結い店を嫁が主体の美容室に変えるとまで言っているんですよ、姑は。
 その態度で見定めるのが嫁の立場でしょう。
 なんじゃないかな。
 まちょっと覚悟はしておけ(…若い人は知りませんかね、この大ヒット曲)。

 オハラ洋装店にやってきた奈津。 なぜか喪服のままです(でしたよね?)。 これって身請けを糸子にしてもらったあとですから、喪服である必要はない気がするのですが、たぶんあの怖いオニーサン達に身ぐるみ取られてしまったのかな、なんて感じました。

 「向こうむき」

 糸子は叱るでも殴るでもハッパをかけるでもなく、ひとことだけ、奈津に命令します。 素直に向こうをむく奈津。
 糸子は奈津のやつれた肉感を測るかのように肩幅をつかみ、生地を裁断し、奈津のために美容室の制服をあつらえていきます。

 「もうええ」

 ぶっきらぼうな糸子に何かを言いかける奈津。 糸子はそれを遮るかのように奈津に言います。

 「こんでチャラや」

 「え?」

 「うちは…祝言のとき、あんたに助けてもうた。
 うちはあんたに、ひと言も礼ゆうてない。
 あんたも言わんでええ」

 糸子は真面目な顔で奈津を見ながら、一瞬いたずらっぽい表情をします。
 奈津はそれを悟ったかのように、一瞬だけ微笑む。

 これが、注意深く見ていなければ分からないほど、一瞬なんですよ、ふたりとも。

 それだけでお互いが、「これがうちとあんただけのルールや」 と了解したようで、ふたりの奇妙な友情の深さが測れるのです。
 つくづく深すぎます。

 安岡美容室の開店。 糸子も駆けつけます。
 表情も明るい八重子、玉枝、太郎、そして奈津。
 新しい看板の前での記念撮影に、糸子も引っ張り出されます。
 そしてその出来上がった写真を見る糸子、季節はまただんじりを迎えています。
 何もかもが元通りになっていくなかで、だんじりを曳きに行こうと意気揚々な直子を見送る糸子。 新しい時代を感じています。




 火曜日放送分。 ちょっとも楽にならへんなあ…。

 昭和23年。

 神戸の伯父である正一が小原を訪ねてきます。
 娘がつぎつぎ嫁いでさびしい、と漏らす千代ですが、孫たちの喧騒で、実はそれほどでもないかも、なんて感じます。
 なんと言っても優子と直子はしょっちゅう喧嘩ばかり。
 伯父がいようがなんだろうが2階で喧嘩を始め、糸子に力づくでたしなめられるのですが、このときに三女の聡子が空気みたいな存在なのが可笑しい。 「あんたいてたんけ?」 と訊く糸子に、「はい…」 とドン引きしながら答える様には笑いました。

 そのときにまた、実にさりげなく、祖父の清三郎が亡くなったことが話題として出てくる。
 本当にこのドラマ、人が死ぬところをやらないなあ。
 いつもいつも、仏壇に手を合わせる風景だけは頻出するのですが。
 つまり、なんだかドラマ自体が、彼岸と此岸との対話のような感覚なんですよ。
 生きている者はこちらで頑張っている。
 死んだ者はあちらから見守っている。
 今週も、外光のなかにそれを感じる瞬間が、何度かあった気がします。
 杖をつきながら帰っていく正一。 年のせいなのか、空襲の際に怪我をしたのか。
 その風景も、きっとあちらから、清三郎が見守っている。
 そんなことを感じさせるのです。

 「(戦争からこっち、お祝い事と不幸が入れ子になって、ものごとも月日も、どんどん過ぎていきます。
 うちもあっちゅう間に、35ぉや。
 『諸行無常』 っちゅうやつやなあ…)」

 内省的なしっとりとしたBGMが流れるなか、物思いにふける糸子の頬に、紙くずが当たってきます。 止まるBGM(笑)。

 「あんたら、ほんまに、何回ゆうたら分かるんやッ!」

 またまた優子と直子の喧嘩です。 糸子はあんたらの名前は、おじいちゃんがつけてくれたんやと娘たちに諭します。 「聡子は?」 トートツな質問に少々慌てながら(笑)「そらあれや、神戸のおばあちゃんが賢くなるようにって…」「聡子、賢ないで、アホや~」 突っ込む姉ふたり(笑)。 破いた新聞紙をブーッと噴き上げる聡子(爆)。

 このチェンジオブペースが、このドラマの真骨頂だとつくづく感じます。
 糸子だけでなく、見る側の高尚な思索を阻害する(笑)。
 糸子は娘3人を安岡の店に散髪に行かせて家から追っ払うのですが、玉枝から 「これ以上切ったらドングリのはかまみたいになってしまうでぇ」 と言われるほどにそれはしょっちゅうのこととなり、しまいにはピアノだなんだとお稽古事を片っ端から習わせることにする。
 ところがそれが、また逆効果で(笑)。
 ただ娘たちをお稽古事に行かせるというのも、洋装店の繁盛ぶりが垣間見えるシーンではあります。
 またそれはのちのお話(またまた長くなりそうだ…)。

 「組合長の三浦から話がある」、と松田恵から糸子は聞かされます。
 実は泉州繊維商業組合には、周防のこともあってあれから疎遠になっていたのです。
 呼ばれた席にやってくると、あのいけ好かない北村と再会します。 「久しぶりやんけぇ……………んや分かれへんのかい、わしやわし!」「ああ……………………北村さんっ!」「ずっと出てけえへんけ?」(爆)。 お約束です。

 「なぁ小原はん…。 この北村に、手ぇ貸しちゃってくれんか?」

 久しぶりに会う、三浦の頼み事とは。




 水曜放送分。

 北村が言うことには、洋服はこれまで、呉服屋方式でひとりひとりオーダーメイド式に作っていたが、これからは既製品をあらかじめ大量に作って用意(ready)してしまうレディメイドの時代になる(オーダーメイドとは言っておりませんでしたが)、これなら価格をかなり下げられるとのこと。 北村はその既製品の店を立ち上げようとしているのだが、糸子にその既製品の、いくつかの新しい型を作って工場のスタッフに教えてやってほしい、というのです。 デザイン及び指導料、として、糸子の懐に入ってくるのは歩合で1割、10パーセント。

 これに二の足を踏む糸子。
 松田は北村の性格を云々するのですが、糸子は違う、と言います。

 糸子がこの時点で、北村が信用のおけない男であるとは考えていない、というのは興味深い。

 私などはこの北村を見ていると、なんや信用が出けへん気がするんですよ。
 ただの大口叩きの香具師みたいな感覚。 時代を先読みしているのは分かるけれど、安易にもうけ話に乗っかってんのとちゃうか。

 考えられるのは、糸子もまだ35で、ほかのビジネスパートナーと組むのはこれが初めてであり、相手を見て商売的な判断をつけるだけの薫陶を受けていない、という点。
 それとも、糸子はたった1回?の酒飲み合戦で北村の本質を見抜き、コイツは大口だけの男とちゃう、という判断をしているのでしょうか。
 それとも、糸子は組合長の三浦のことをかなり信頼している、という側面もあるのでしょうか。 かつて三浦のカバン持ちをしていた周防が、あれだけのテーラー職人だったし。
 どうもこの、周防絡みの信頼度を三浦に対して持っていた、というのがいちばん大きい原因のような気がする。 その三浦が、コイツはやる気を出したら本気でやる、と言っている。 糸子はその時点で北村に対する警戒心を完全に解いている気がするんですよ。 「あんなのはただのヒキガエルや。 やっかましいだけでどぉ…っちゅうことはないんや」 と言いながら、北村をウサン臭い、とは考えていない。

 むしろ糸子が問題にしているのは、そのレディメイド、という方法に対してです。

 「うちらの真逆の商売やんか。
 どこの誰が着るか知らん。 『とにかく数こさえて、売れたらええんや』 ちゅうな。 なんや話が雑やん。 情っちゅうもんがないで」

 実はこれって、オハラ洋装店の将来にとって、とても大事な舵取りのような気がするんですよ。
 オハラの店が時代の潮流に乗るかどうかの。
 今までのオーダーメイドにこだわるのならば、質の良さを第一にする代わりに、経営規模の拡大はおぼつかなくなる。 縫い子たちのスキルが重要視されるようになり、店の経営は硬直化していきます。
 レディメイドに加担する、ということになれば、糸子の言うようにひとりひとりの情に合わせたきめ細やかなそれまでの商売ができなくなる。 経営状態は良くなるでしょうが、職人肌の糸子にとってストレスはたまっていくのかもしれないのです。

 ただしここは、松田や昌子に糸子も押し切られてしまいます。 その大きな原因が、冒頭にも書きましたが、安岡美容室絡みの出費。 ドラマとしての説得力をここで増している、というのがうなります。

 ここで糸子が松田に責め立てられているときに店に来ていた、英語をしゃべる外国の婦人。
 ちょっとここにも注目です(んな話してる場合とちゃうのですが…)。
 周防と話しているとき以上に、糸子には英語はチンプンカンプンなはずなのですが、ちゃんとコミュニケーションをとっている(笑)。
 柔軟な思考ができる、という点で、糸子のレディメイドの判断にもちょっとばかり説得力に寄与している気がします。
 そして周防との比較を見る側に感じさせることで、このあとの周防との再会に弾みをつけているような気もする(これはいつもの考えすぎか)。
 クリスチャン・ディオールの話をここですることで、女性にとってモード(流行)とはなにか、の話の先鞭も付けている気がするし。

 ディオールのファッションの特徴が、八重子が持ってきた雑誌によってここで解き明かされていきます。
 ウエストをきつく絞ってスカートの部分を思いきり広げ、生地をたっぷりに使う。 のちに店に来ていたサエが、ギャザーをもっとつけて、みたいなことやってましたよね。
 店があまりに静かなのに気付いた八重子。 糸子はピアノ、習字、絵、日本舞踊、長唄(善作を思い出します)、お花、ダンスなど、娘たちに習い事を片っ端からさせちゃって家から追ん出してる、とほくそ笑んでいます。

 ところが…(「ゲゲゲの女房」 の野際陽子サンみたいですが)。

 「…甘かった」(笑)。

 一大事だ、というようなこわばった顔をしながら家に帰ってきた娘たち。

 「お母ちゃんピアノ買うて!ピアノピアノ!ピアノほしい!ピアノ!ピアノ買うて!」(笑)。

 「アホか! そんなもん買えるかいな」

 「ピアノほしい!ピアノ買うて!ピアノピアノ!」

 「あーかーんー! うるさ~~いっ! 買われへんちゅうてんねんっ!」

 15秒の沈黙(爆)。 口を開く優子。

 「…けど、うちらピアノほしい」

 さあまた大合唱(笑)。
 糸子はこの大交響曲に完全に押されてしまいます(爆)。
 千代に助け船を求めるのですが、「うちは知らん」 と千代は、うれしそうに耳を塞いでどこかに逃げてしまう(笑)。 千代にとってはこのかしましさが、父親を失った寂しさをひと時忘れさせてくれる薬なんでしょうね。

 「ピアノピアノピアノ!」
 「あ~~~~~~っっっっ!」(爆)。

 寝静まった夜。
 何かを書く音がしています。

 「(何かやってる)
 (あ~…)
 (見たいない見たいない!)」(笑)。

 娘たち3人が、ピアノの絵を描いているのです(爆)。

 これね…。

 私も覚えがあって(爆)。

 ナショナル(現パナソニック)のタテ型ラジカセ、RQ540(笑)。

 これが欲しくて、私その絵を描きました(爆)。 かなり精密に(笑)。 私こう見えても、絵が得意なもんで(爆)。

 当時かなりの値段だったのですが、オヤジはかなり無理をしながらも、誕生日プレゼントで買ってくれました。 ああ、感謝、感謝…。

 「(はぁぁ…。

 あんたらにピアノなんかやらせたお母ちゃんが悪かった。

 悪かったから堪忍してぇぇ…)」。

 親の心を、年端の行かぬ子供というものはまだ理解できません(笑)。

 しかし糸子がピアノを買おうという決意をしたかどうかは分からないのですが、これもレディメイドの仕事に加担する動機付けのひとつにはなっている。
 このドラマ、もう話の絡ませ方が絶妙すぎる。
 はぁぁ…。 こちらは感嘆のため息です。

 組合の事務所にやってきた糸子。
 周防はもういなかったのですが、三浦の話に 「工場を任せている奴がおる」 という話が出てくるその時点で、「ああそれが周防なんだな」 というのが分かってしまう。 「展開が読める」 ということを逆手に取ったこの手法にも、毎度のことながらタメイキものです。

 糸子は周防がいないことにすっかり心が打ち解け、「また会合出させてください」 と三浦に申し出する。

 ここでの糸子のうれしそうな顔を見ると、周防に対する好意を 「いけないもの」 として完全に忌避しているのが分かります。 つまり 「好意」 が 「敵意」 と呼べるまでに変質してしまっている。 いや、「敵意」 だと自分をごまかさなければ、自分の気持ちが抑えられないのです。 糸子はそのことに、気付いていない。

 「北村さんっ! またやりましょ、飲み比べ」
 「嫌じゃ。 里芋なんか潰したかて、なんも面白ないっちゅうねん」
 「里芋潰れるかいな」
 「里芋潰したろっちゅうてんねな」
 「里芋ちゃうねん!ジャガイモみたいな顔しやがって」
 「ジャガイモゆうたやろ今?」
 「ジャガイモやんか」
 「わいちゃんと話し聞いてるやんけ」
 「ジャガイモは酒弱いでハハっ!」
 「里芋潰したろちゅうてん」
 「潰してもうまいわ!」

 喧嘩を始める糸子と北村。 それを怒鳴って止める三浦。 また始める糸子と北村。
 糸子と娘たちのやり取りがここに転用されている、これまた構成の見事さ。
 あまり褒めすぎるとあとが怖いのでここらへんにしておきましょう。




 木曜放送分。

 心斎橋のはずれにある、北村の工場にやってきた糸子。 まだ誰も来ていません。
 周防を象徴するかのような外光が、また画面を占拠します。
 その逆光の中に浮かび上がった一台のミシン。
 糸子はそのミシンの質の良さに舌を巻きます。
 ふと見上げると、柱時計が止まっている。
 それを直そうと糸子がネジを巻いているとき、周防がやってきます。

 型は違いますが、この手の柱時計、うちにもありましたよ。 2、3年前まで修理し修理しして使っていたのですが、ついに部品もなくなり、使わなくなってしまいました。 盤面のあそこらへんに、ネジを巻く穴があるんですよね。
 糸子は周防との思いがけない再会に、ネジを巻きすぎて壊してしまう(笑)。

 北村もやってきて始まった打ち合わせ。
 北村は、糸子が流行らせた水玉のワンピースを作ってくれと言い出すのですが、糸子は舌打ちをしながら色をなしてそれに食ってかかります。

 「おたく、婦人服なめてますんか?」

 糸子はあんなのもうとっくに流行おくれだ、というのです。
 ちょっとこの展開は意外でした。
 自分の作ったものにもうちょっと誇りというか、こだわりがあってもいいと思ったのですが。
 つまり、百貨店の制服の時からそうでしたけど、糸子には時代のモードを見極める目、というものが元来備わっている感じなんですよ。 職人肌にはえてして過去にこだわる性癖があるように思えるのですが、糸子にはそれがない。
 そのモードを体系的に把握しているのは、八重子の持ってきていた婦人雑誌のなせるわざでしょう。 八重子は架空の人物らしいから、もともとファッション雑誌で流行物をチェックしていた知識の蓄積、というものが小篠綾子サンにはあった、ということになるでしょうか。

 「婦人服にはな、流行っちゅう、厳しい厳しい自然のおきて、っちゅうもんがありますんや」
 と糸子は言い切ります。
 「おたくも婦人服始めるんやったら、そのおきての前に土下座するつもりでやらんとあきませんで!」

 いっぽう糸子には、商売人としての勘、というものも働いているような気がする。
 どういうものが受けるのか、というものを、常に柔軟に考えていなければ、その勘は養えません。
 レディメイドのような画一化された商品には、やはりその手の嗅覚が備わっていないと商売ができない側面がある。
 糸子は勉強不足の北村に、一日オハラ洋装店に張り付いて勉強させることを強いるのです。 が、それはまたのちのお話(今日はこればっかしやがな…)。

 逃げる北村を過激に追い詰めた糸子でしたが、周防の前では借りてきた猫(笑)。 デザインを説明するのに不用意に近づいてくる周防を避けたり、糸子の恥じらいが、なんかとてもかわいい。

 気になっている相手が何の気なしに自分に近づいてくるのって、すごくイカンですよね、あれって(爆)。 勘違いさせんなっちゅーの(笑)。
 でもこれって、チューボーレベルの恋愛感情なんですよ。 ああ、あの頃は私もまだウブだった…。

 「どんな人やったんですか」 という昌子や千代に対しても、糸子は監督責任者が周防だとなかなか言い出せません。 だからチューボーレベルだっちゅーの(笑)。

 「(うちさっき…。

 周防さんに会うたこと、みんなに隠そうとしてた…)」

 「なんでや?」

 「(後ろめたかったからや)」

 「なにがや? なんも後ろめたいことなんか…」

 糸子。 自問自答してます(笑)。

 「(いや。ある。
 ごっつう後ろめたいことが、心の奥のほぉぉ~~に…)」

 糸子は邪念を払うように、自分の頬をひっぱたきます。

 「(あ~~~~~っ!
 なに考えてんやっ!
 アカンアカンアカンアカン!)」

 「うんっ! 仕事やっ! 仕事っ!」

 どうやら黒糸子との折り合いがついたようです(爆)。

 時計を修理している周防。
 頬を叩く音が近づいてきます(笑)。
 糸子が作業場に入ってきます。
 「顔…。 ここんにき、何か赤うなってますよ」。 周防は糸子の表情の変化を見逃さない。
 糸子はどうにも、やりにくくて仕方ありません。 いや、仕事はやりやすい。 でも、やりにくい(笑)。 このあと頬を叩くのは、周防と会う前の儀式みたいになっていきます(笑)。

 糸子はどうしてこの仕事を引き受けたのか周防に尋ねます。 金銭面とか勉強とか、いろんな理由を周防は語るのですが、最後に 「小原さんが指導に来ると聞いたけん」 とさりげなく言う。
 糸子は16秒、固まってしまいます(周防が三味線を弾くあいだ含む)(さっきの子供たちの沈黙といい、何の時間計っとんねん)。




 金曜放送分。

 魂を抜かれたように帰ってくる糸子。
 そりゃああんなことを言われたらねぇ。
 「熱あるんちゃうんけ?」 と心配する木之元に、糸子は離脱した幽体が戻ってきて(笑)言下に否定。 「ないわっ! 熱なんかないわッッ!」(笑)。

 井戸の水で顔を引き締めた糸子が戻ってくると、娘3人が手をついて土下座の格好をしています。

 「お母ちゃん」「話あんねん」

 話が何なのか聞かんでも分かるので(笑)「どき、どき」 と糸子は娘たちをかき分けて居間に入ります。 すかさず娘3人、「ピアノ買うてくださいっ!」。

 糸子はその様子に、自分がパッチ屋に勤めたいと父善作に頼み込んだ遠い昔のことを思い出してしまうのです。 「どけ」 と自分をかわして店に入る善作の記憶。

 ここ、不意になんか、鼻がツンと来ましたね。
 それにほだされて糸子もピアノを買うことを了承するかと思ったのですが。

 「アカンっっ!」

 善作を彷彿とさせる反応でした。
 おそらくピアノを買うてあげられるほどの余裕は、糸子にもあると思うのです。
 でも糸子は一瞬柔和な表情を見せながら、回想の善作が茶碗を投げつけたのと同じように、自分ののぼせた顔を拭いた手ぬぐいを、床に叩きつける。
 ピアノなんか買っても、どこまで続くか分かりませんしね。
 安易に買ってあげたもんに、根性入れ込んで続くわけがないですから。
 父親の気持ちを糸子はここで初めて?あらためて?分かったと思うし、それにもめげずにパッチ屋に入りたかった自分の気持ちを、再確認もしたと思うんですよ。

 出来上がった試作品。 北村は 「材料費がかかりすぎる」 と文句を言います。
 反駁する糸子。

 「北村さん。 おたく店を流行らせたいんですやろ?
 ほな人が欲しがるもん安う売る。 それを徹底的にやらんとあきません。
 特に開店がいちばん肝心なんです。
 あの店は値段以上のものを安う売ってくれる。 そないお客に信用してもらお思たら、最初は多少の我慢もせんとあかんのです!」

 精一杯いきがってそれを遮る北村。

 「あ~やかましっ!やかましやかましっ! ここの社長は誰じゃ? ワイじゃ! ほんなおのれらはな、わいのゆう通りにしちゃったらええんじゃ!」

 糸子はそんな北村の首根っこを引きずって市中引き回し…じゃなかった、自分の店に強引に連れてきます。 北村と糸子のやり取りを一部始終見ていた周防は、苦笑のしっぱなしでした。 どうも糸子を見ていると、楽しくて仕方ないらしい。

 さて北村に現場を見せて納得させよう、ということですが、商売人としての心構えが金儲けだけで動いている北村の心には、糸子の思いは届きません(笑)。
 「客なんか自分の顔がブッサイクなのに注文だけはようつける」 ととっとと帰ろうとするのですが、千代と昌子が 「もう食事も用意したんやし」 と北村の身柄を強引に拘束(笑)。

 頑強に 「もう帰ります!」 と拒んでいた北村ですが、次のシーンではすっかり呼ばれてます(笑)。 これもお約束やなぁ。
 千代がお酒をもてなすのは、死んだ主人がお酒が好きだったから、お客さんがお酒を飲んでくれるのを見るのがうれしいのだ、と話すのですが、これって結構切なかった。
 亭主を亡くし、父親を亡くしていた当時の千代の心情が今週は、さらりと語られていましたね。

 いっぽう北村は、オハラ洋装店の女所帯ぶりに、自分の家の男所帯ぶりを思い出した様子。 ここで自分が独り身であることもばらしてしまうのですが、家に女がいるというのは、変な意味じゃなくって、ええもんやなぁ、と漏らしてしまう。

 「なんで泣いてんの?」
 と訊く昌子。
 「泣いてない泣いてない…」 としおらしいところを見せる北村。

 翌朝、寝込んでしまった北村の耳に、朝餉の支度をする音が聞こえてきます。
 談笑する女たちの声。
 「聡子、新聞取っちょいで」
 「はーい」
 「おっちゃん寝てるよって起こさんようにな」
 布団を飛び越えて新聞を取りに行く聡子。
 北村の顔に、微笑みが浮かぶのです。

 なんか、いいシーンだったな~。
 なんてことはないシーンなのですが。
 男所帯だったから、あまりお袋にはかまってもらえんかったのかな、北村って。
 それとも何かほかに…。
 その寂しさ、切なさをうかがうことが出来たシーンのような気がします。

 作業場にやってきた糸子と北村。
 北村は疲れ果てた顔で周防にこう言います。

 「わいな…。
 女も服も、よう分かれへん。
 せやからこいつ(糸子)に全部任せら」

 元気なく出ていく北村。
 「なんがあったとですか?」 と訊く周防に、糸子。

 「毒気を抜いてもうたみたいで…お母ちゃんが」(笑)。





 土曜日放送分。

 服の概要が揃い、薄利多売をするためにこれを量産しようということになります。
 北村はかつてなく素直に糸子の指示通りに動く。
 かなり精力的です。
 「ワケ分からんがとにかくやり手の男」 という三浦組合長の評価そのままの働きです。

 そんなときに催された組合の月例会。
 三浦は 「新しい時代やのう」 と、感慨を隠しません。

 「新しい時代が始まるんや。

 戦争で焼けてしもたもんなあ。
 もうどんな思ても、二度とは取り返せえへん…。

 ほんでも…新しいもんはまだ…まだ手に入れることができるんや。

 な。

 お前ら切り拓け! なんぼでも!

 ほんでまた、新しいもんを見せてくれ!」

 感極まる組合長の話に、泣き出す北村。

 宴もたけなわになったころ、糸子はふと、考えます。

 「(北村さんの家に、なんで女がいてへんのか。

 周防さんは長崎で、どんな目に遭うたんか。

 組合長は、何を焼かれてしもたんか…。

 うちはなぁんも知らんけど、ほんでも、みんなとこないしているうちに、なんや、お湯につかったみたいに…。

 心の中から、溶けていくもんがありました)」。

 あの戦争のあと、みんながなにがしか、失ったものを持っている。
 その喪失感を埋めるために、日々頑張っている。
 女所帯のオハラ洋装店では女たちがたくましいため、そこらへんの切なさはにじみ出てこないのですが、それでもやはり、千代のように切なさを抱えていることは確かです。 ただ女たちは、それを笑い飛ばすしたたかさ、というものがある。
 男たちはそれに比べて、結構センチメンタルに流されてしまうきらいがあります。
 糸子がこの男ばかりの宴会で感じた安らぎって、実は女たちが押さえてきた我慢が垣間見えたことから起こったんじゃないのかな。
 そしてこのセンチメンタリズムって、酒飲みの父親、善作に通じている部分がある。
 酒を飲むと男というのは、かなりくどく感情に流される(笑)。
 糸子はその男たちのセンチメンタリズムに、父親の腕のなかにいる気安さを感じたのかもしれない。
 組合長のさっきの話は、大震災を経た私たちの心情とリンクするものもあります。
 なかなかに味わい深いシーンでした。

 酔いを覚ましながらの帰り道。
 糸子はつらつら考えます。

 「(はぁ…。

 うちは、恋しいんやな…。

 うちは、お父ちゃんが好きでした。

 勘助が可愛いてしゃあなあて、

 泰蔵兄ちゃんにあこがれてたし、

 勝さんを、大事に思てました)」。

 通り過ぎる米兵とパンパンガール。

 「(そういう人らを全部亡くして、開いたでっかい穴のところに、えらい人が入ってきてしもた…)」。

 周防の顔が糸子の脳裏を横切ります。

 月明かりに照らされた糸子の顔。 目からポロリと涙がこぼれます。

 「…かなんなあ…」。

 さびしい心が、かすれ声になった瞬間。 泣けました。

 「人を恋うる心」。

 糸子が人生のどこかに、置き去りにしてしまった感情です。

 それが、父親への郷愁から慕情へと発展していって、埋めがたい戦争の喪失感と結びついていく。
 そして糸子が、強引に抑えつけていた、不倫という不貞行為に対する抵抗力を、骨抜きにしていく。
 私には、かなりの説得力を持って受け止めることが出来た気がします。

 「(恋しいて、恋しいて)…。

 人のもんやのに…」。

 泣ける。

 ところが…(また野際サン…笑)。

 帰ってきた糸子がタンスを開けると、「ピアノこうて」 と書かれた紙がこの引き出しにも、この引き出しにも…(爆)。

 また高尚な思索を阻害しやがって(爆)。

 この3人の 「怪物」 の寝姿をあらためて見る、糸子。

 そして。

 糸子は寝る間も惜しんで仕事に没頭する周防と北村に、この人たちの開店をなんとしても成功させちゃろ、と決意します。

 「(それがでけたら、一個だけ自分に許そうと思てることがありました。

 それは、悔いの残らへんように、自分の気持ちにけりつけるちゅうことです)」

 そして開店の朝。
 糸子は洋服に着替え、紅も引いて正装をします。

 作業場にやってきた糸子。
 また4時ごろまでなんやかんやとやっていた、と起きたばかりの周防が話します。

 「あ、契約書ですよね?」「いえ…」

 糸子は持ってきた桜の咲いた枝を周防に渡すのです。 どっかから折ってきたのか? いーけないんだーいけないんだー。
 しかしここで、いけないんじゃ?と思わせる桜の枝のプレゼントは、いけないんじゃないか?と思わせるこの直後の告白とリンクしている気がする。

 「無事開店、おめでとうございます」

 「…ありがとうございます」

 糸子の洋服姿に気付く周防。

 「あれ?

 …よう似合っとですよ」

 糸子は意を決したように口を開きます。

 「周防さん」

 「ん?」

 「うちは、今日でしまいです。
 最後にゆわして下さい。

 好きでした!

 …ほんなけです。

 ほなさいなら…」

 お辞儀をする糸子。
 その場からすぐに消えたい、というように立ち去ろうとする糸子の手を、周防がつかみます。
 まぶしい朝の光。 外光がまた、周防を包んでいる。

 周防はゆっくりと、糸子を抱きしめます。

 「おいもです…」

 里芋じゃなかったのか?…ってちゃうっちゅーねん(スミマセンぶち壊しの解説して)。

 「おいも…好いとった…ずっと…」

 その様子を扉の向こうから見ていたのは。
 ジャガイモ…じゃなかった、北村です。
 北村は、サングラスを外します。
 あんなけ喧嘩をしちゃったのは、糸子を好きだったから、という悪ガキの定理だったのでしょうか。

 それにしても。

 周防のこの反応はちょっと意外でした。
 つまり周防の奥さんと子供は、ピカで死んでしまったのかな?なんてそのとき考えたりしました。
 奥さんと子供の影がまったく描写されてないもので。
 しかし実際の話、この不倫の話は事実らしいですね。
 思い切ったことをしますよね、朝ドラで不倫話とは。
 けれどもこのドラマの真骨頂は、「批判を恐れない疾走するだんじり」。
 よくぞやった、という気がします。

 糸子にとっても、周防の反応は意外だったと感じます。
 要はこの恋が成就すると、当の糸子が考えていないフシがある。
 自分の気持ちのモヤモヤをどうしようもできなくなったから、自分がその寂しさ、切なさに負けてしまいそうだったから、周防に告白した。
 その寂しさ、切なさ、悲しさの構造を重層的に描き出しているから、糸子の告白には同情できる余地が生ずるのだと感じます。

 してはいけないことをしている。
 その罪悪感を超えてでも、相手に伝えなければならない気持ちがある。

 本当は、そんなどうしようもないことを考えていたら、身も心もボロボロになりますよ。
 自分のダメさ加減が本当に嫌になってくる。
 確かに相手のことなんか考えてません、相手のことを思いながら。
 恋とは本来、そういうものです。
 相手がどういう気持ちなのかを尊重せず、自分だけの気持ちを優先しようとするから、人は苦しむのです。
 それが、恋する苦しみなのです。
 諦めきれない気持ちだけが暴走してしまうと、それこそストーカーだなんだっていう犯罪行為を犯してしまう。
 でも、それってすれすれのところで、とても紙一重なんですよ。

 注目なのは、当たって砕けてそれで終わりにしようとしていた糸子が、その思いを受け入れられてしまった、来週以降の動きですよね。

 あ~あ、今週は簡単なレビューになると思ったのに…。

 今週もずいぶん長い話に付き合っていただいて、心から感謝いたします。 ずいぶんお待たせしたし。

 重ね重ね申し訳ないです。

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コメント

リウ様、こんにちは。
感想UP、御疲れ様です。休息は充分にお取り下さい。

遂に「朝ドラ暗黙のハードル」を越えてしまった「カーネーション」ラストシーン、ハラハラしながら視聴致しました。

例によって某感想欄では、様々な意見が盛り上がっておりました。其の裏を返せば、番組に注目が集っている証ですよね。
来週予告、怒りの千代さんショット。我が娘乍ら、この所業許し難しといった処でしょうか?

※「猫ふんじゃった」伝説
三姉妹を連れて、三浦理事長を訪ねる糸子。其処で、理事長の華麗なるピアノ演奏に、親子揃って聞き惚れてしまう。
アンコール連呼の三姉妹。「ならば」とばかりに、見出しの曲を演奏する理事長。
其の選曲では無く、奇想天外な演奏方法に絶句する糸子と三姉妹。
その後、小原家にピアノが届いたが、あっという間に故障してしまったのは、言うまでもなかった。
(同世代なら、理解出来るネタであります)

ほっしゃん演じる北村。自分は、ほっしゃんを知りませんでしたが、味のある芝居に一安心でした。

投稿: M NOM | 2012年1月22日 (日) 13時27分

M NOM様
コメント下さり、ありがとうございます。

休息をじゅうぶんとったら、こんなにアップが遅くなってしまいまして…(笑)。 失礼いたしました。

「見る側のことを考えていない」「語り口がエラソーだ」 というのは、私がこのドラマの、いちばん最初の部分から感じていたことですので、不倫だろうがなんだろうがだんじりのごとく正々堂々と描写しちゃる、というこのドラマの姿勢にブレはない、と私は感じます。 このドラマ、一から十まで説明しようとしないんですよね。 最初から。

それを抜かしてもここまでの描写で不足しているのは、周防側の事情です。 でもそれも、どういう形で描写していくかはこれからだと思いますし、物語途中でモヤモヤしていても、それは作り手の手のなかで遊ばされているように思われてしまう。
長い目で見なければ、と感じます。 でも別に長い目で見なくても、鑑賞ポイントはありまくりですけどね。 だからレビューも自然と長くなっていきますし。 私がこのドラマに対して抱く信頼感は、揺るぎありません。

「猫ふんじゃった」 には笑ってしまいましたが、この先が楽しみで仕方がない私です。 逆にレビューのことを考えると気が重くなるばかりです…coldsweats01

投稿: リウ | 2012年1月22日 (日) 17時03分

今週もまた見ごたえのある内容、読み応えのあるレポ。
リウさま、お疲れ様です。

以前に「おしん」を見ていた時、夫亡き後、女で一人で奮闘している姿が印象的でしたが、
海外ドラマでは「炎のエマ」という同じく使用人からのたたき上げで、ハロッズ百貨店を起こした実在の人物、エマ・ハートがモデルのドラマを見ました。
このエマは、仕事もするけど、恋愛にも意欲的。
どんどん男が変わる、変わる・笑

私には、エマのほうが人間的に見えました。
だって、糸子だってまだ30歳かそこいら。
それで男っ気なしで一生生きていくってのは、どう考えても不自然です。
これだけ仕事ができるエネルギッシュな女性なら、男性の目から見ても魅力的だと思うし。

糸子は結婚して子供もいるとはいえ、恋愛は初めてなんですよね。
かわいらしくて、いじらしかった。

それでいいじゃありませんか。


>不倫
お子さん同士、同級生なので、顔を合わせると気まずかった、と優子さん(?)が語っていたと、何かで読みました。
おおらかな時代だったんですね。
実際のコシノさんは、もっともっと男性関係は派手だったみたいですよ。
これだけの仕事をする人だから、そうだろうなと思います。

組合に行ったときだって、ドラマではソフトに書いているけど、本当はもっともっとセクハラがすごかっただろうと思います。
完全な男社会だしね、
仕事ができればできるほど、妬みもあったでしょう。
(ピアノの話、わかります、わかります・爆)

でも、そんなことも、こんなことも、全部飲み込んで、
いい、悪いの枠の外、ってことでこのドラマは見たいですね。

投稿: マーシー | 2012年1月22日 (日) 17時06分

実はすごく不安な思いを抱きながら、周防氏とのエピソードの流れを見ていたんですが

定例会が終わって、ひとり帰って行く糸子の、モノローグの部分を見て
(これが安直なドラマなら、確実に周防氏に糸子を送らせるだろうが、この脚本は絶対そういうことはしないだろう・・・と思ったら本当にそうでした(笑))
糸子の側からの、心の流れが丁寧に書かれていたことに得心がいきすごく安心しましたです。
勝さんを大事にしてたかの部分は、ちょっと失笑しましたが、いや3人も子供を産んだんですもの妻の側としては十分相手に応えてのことと思います。周りがどう思おうとも。

そう、周りがどう思おうとも、あくまで糸子の視点から書かれていくドラマです。
良いことも悪いことも、取り返しのつかないことも時の流れが解決する「かも」しれないことも。
予定調和的なことの一切ない、ただ淡々と流れる人生。

私などはただ言葉もなく、ほんっとに感心しながら見ています。

投稿: samantha | 2012年1月22日 (日) 18時57分

あ。

桜の枝ですが。

彼女がお店を開いた時に、木岡のおっちゃんに桜の枝を一差しもらっていましたよね。

糸子が携えてきた枝も、あの時のエピソードが重なっているのかと思いました。

すみません、いっぺんに書かないで。

前回書きましたこと、

得難い友人だったのに
失ってしまった人のこと

もう、年齢的にそういう人間と知り合い、友情を深める、時間がないんじゃないかと思っていますし、そういうエネルギーも正直ないのです。
なのにどうして・・・

本当にこのまま生きて、先にまた何かあるのか
そんなことを期待するような資格が自分にあるのか

もうそのあたりがよく分からなくて

カーネーションで今回安岡のおばちゃんがゆるゆると回復しているのを見ると
ドラマだけど、こんなことが本当に起きたらいいと
図々しい私は変な期待をしてしまいます。
みち様にも、書いていただきありがとうございました。「みち」偶然ですが、私の高校時代の親友の名前です。彼女とも、長いこと会っていません。会ってもらえるかしら・・・。

投稿: samantha | 2012年1月22日 (日) 19時05分

マーシー様
コメント下さり、ありがとうございます。 ちょっと返信が遅れまして。 毎度毎度申し訳ありません。

エマ・ハートのことは相変わらず不勉強で知らなかったのですけど…。
確かマーシー様だったと思うのですが、以前ご指摘いただいたスカーレット・オハラ。
彼女はずいぶん奔放でしたけどね、恋愛でも。
スカーレットは自分の自己中心的な性格でボロボロになっていきましたが、糸子・オハラは果たしてどうなるんでしょう。

実際の小篠綾子サンが男性経験豊富だった、ということは、このドラマの不倫表現はかなり熟考されていますよね。 それこそスカーレットみたいなヒロインだったら、NHKの回線がパンクするほど抗議の電話が殺到するでしょうし。

実際の不倫相手も長崎出身じゃなかった、とのことで。

つまりピカに遭った人物に設定することで、不倫相手の自分勝手感をまたここで帳消し、軽減しようとしている。
それは掟破りの部分もあるような気もしますが、それもこれもすべて、作り手の意図しているところだ、と感じるのです。

人間、やっぱりいいところばかりじゃないですよ。

でも、それって自分もいろんなことに手を汚してきたからそう弁解したくなるところもあるわけでcoldsweats01

接待ひとつにしたって、相手を金で買収しようとしているのと、どこが違うんでしょう。

そういうことをせずに生きてこられたかたは、本当に自分が幸運なのだと思わねばならない気がいたします。

投稿: リウ | 2012年1月23日 (月) 12時28分

samantha様
コメント下さり、ありがとうございます。 返信が遅れましてあいすみません。

勝さんの場合は、完全に糸子の気持ちが置き去りの結婚でしたしね。
それをゴーインに決めたのは、もう今は亡き、善作・清三郎・ハルおばあちゃんの 「ならええやないけ!」(笑)でしたよね。
形だけで結婚して、一緒に住んでいるうちに夫の上機嫌さ、やさしさに触れて、情が移っていったわけですし。

「うちは、お父ちゃんが好きでした。」 という糸子のモノローグには、ドキッとしました。
ドキッとしたと同時に、すごく鼻の奥を刺激された。
娘が父親に寄せる気持ちってどういうものかよく分からないのですが、あんなけいろんなことがあった父親でも、やはり心の底から慕っていたんでしょうね。

そして勘助、泰蔵らの回想。
それこそドラマでは、糸子が人に恋する気持ち、というものが置き去りにされてばかりだったわけで、「ええよ糸ちゃん、今までよう我慢したなあ」 と言いたくなるような、「…かなんなぁ…」 という孤独のセリフだった、と思うのです。 あの切ない言いっぷりには、鼻の奥がツンツンしまくりでした。

「不倫なんて、相手の家族の気持ちを考えよ」、というのは、「不倫は文化だ」 なんていう軽々しい世情のせいでそう思っちゃうところもあるような気がするんですよ。

今の世の中、何かと言えば 「相手の気持ちを考えろ」、ばかりじゃないですか。
つまりいじめられっ子の論理で世間が動いている。
「やられた側の気持ちを考えろ」 というのはまさに正論ですが、それではあまりに、みんな打たれ弱くなってしまう。 バッシングとの闘いの連続ですよ、社会に出たら。

別に自分勝手に不倫をする人を擁護しているわけじゃないですけど。

桜の枝ですが、うわーよく覚えておいででしたね! 私はまったく記憶すらない状態でcoldsweats01
確か4月15日が開店日だったよーな気がするのですが、大阪じゃそれくらいが桜の開花日かな、なんて考えたり。
折った桜の枝を贈るのって、何か慣習みたいのがあるのかしらん。

確かに自分から動かないと、なかなか世界というものは広がりませんよね。 学校とか職場とか、知り合いの人が出来るのって、半ば当然の成り行きじゃないですか。 この歳になるとなかなかそういうコミュニティに巡り合えませんよね。

だったら、失ったものよりも、今そこにある関係を今以上に大事になさったらいかがでしょう。 エラソーな物言いで誠に恐縮ですが。

失った人に対しても、年賀状のひとつくらいで、気持ちというものは続いていくものだと思うのです。 年賀状はもうすっごくシーズン外しちゃってますけどcoldsweats01。 あれは便利です。

このブログも、実態はとてもバーチャルなものかもしれません。
でも、私もsamantha様というかたと巡り合った、と考えております。
お互い素性もなにも分からないですが、そんな実態のないものでも、つながっていれたらなあ、なんて感じています。

投稿: リウ | 2012年1月23日 (月) 13時00分

奈津が安岡家に来た時に着ていたのは、紬?というか、黒地に模様の織り込まれたふつうの地味な着物だったように思います。たぶん喪服ではありませんでした。

夜道の「かなぁんなぁ・・」には泣けました。
戦争で頼れる人をどんどん失って、自分が先頭になって家族を守らなくてはならなかったぽかっと空いた心の隙間に、するーっと入ってきてしまった周防さん。2年も心のどこかでくすぶっていた想いを断ち切って前に進むには、「言わずにはいられない」糸子の気持ちが痛いほど分かってしまいました。
周防さんを手に入れるために告白したわけじゃなかったのに。
不倫だ、これじゃ奥さんが可哀想、自分だって勝さんの浮気でイヤな思いしたのに・・・と非難してしまうのは安直だなぁ、と私個人は思います。某SNSのカーネーションコミュニティではこの「不倫」がショックだ!という感想が意外と多くてびっくりしました。

投稿: さり | 2012年1月26日 (木) 23時50分

さり様
お久しぶりです。 コメント下さり、ありがとうございます。

私も、奈津の着ていたのは喪服なのかなあ?なんて思いながらレビューいたしました。

不倫に関わらず、しちゃいけないシチュエーションの恋って、かなりごろごろ転がっている気はするのですが。

たとえば、親友の恋人を好きになってしまったとか。

これって相手がまだ結婚してないから不倫じゃない、だから奪い合ってもいいんだ、という理屈は結構自分勝手なように思えますよね。

結局、「相手を傷つける」 ということに対して、今の世の中、すごく神経質すぎる。

傷つけるのはいけないことですけど、それをわあわあ騒いで阻止しようとするのも、一概に正しいようには思えません。

相手を傷つけることを怖がって、当たり障りのない関係に陥っちゃっているのが、今の世の中なんじゃないでしょうかね。 表面上だけの関係、見栄だけでつながっている関係。

もっと打たれ強い日本人を作っていかなければ、この先国際競争力がますます低下していく気がして、ならないのです。

投稿: リウ | 2012年1月27日 (金) 08時49分

再見レビューも16週。

玉枝さんの立ち直りは先週のやり取りから、ちゃんと伏線があって奈津を励ましの言葉をかける度に彼女の中に活力が戻ってくる描写は上手い(ややドラマチック過ぎた感はありますが)。糸子が借金取りと交渉する場面、背後の木之本&木岡は善作時代からこういう事に慣れていた気もする…。
ただ恵&昌子の不満に糸子が開き直る件はコミカルに見せていますが、八重子や奈津のために奔走していた糸子の中に「お金があれば人を救える」という慢心が生まれているように感じます。で、周防編の最後に繋がると。晩年のインタビューは金銭的な損得というより無私と自己満足の線引きの難しさ、人はその試行錯誤を何度も繰り返す事を示していたと思いますし(この辺は三姉妹編でも、また書くつもり)。

>周防
背景が分かりづらい男ですねホント。
不倫ネタは「ふたりっ子」で既にあり、この時はヒロインの父親(「それでも、生きてゆく」にも出演した段田安則氏)でしたが当人、不倫相手、奥さんとそれぞれ描写がありました。しかし糸子に惚れた北村や、周防に惹かれた糸子(勝や善作の替わりに過ぎないといえば、それまでですが)に比べ周防視点で話が進んだ事は無い。これは脚本の限界なのか意図的な演出なのか。
一応、情報は散見されてますね。奥さんは夫の靴を持ち出した(←糸子とは真逆のタイプ?)行為が原爆症の遠因らしく(子供達は無傷)、故郷は焦土で病身の妻と育ち盛りの子供達を抱え話も通じない大阪に出てきたわけですから、そりゃ辛い(戦前からキャラ立てされた戦時中の安岡家に比べても想像し辛いですが)。
それを、おいそれと表に出さないのは彼の美点ですが一方で明確に自己主張して決断しないずるさも感じられ、終盤の周防は己のそういった部分を自覚した素振りが出ていましたね。

この周防編が後の展開に及ぼした影響は次回、考察の予定。

投稿: 巨炎 | 2012年8月29日 (水) 14時12分

巨炎様
コメント下さり、ありがとうございます。

この週の糸子は、泉州繊維組合に初めて顔を出したとき以来の、「男に囲まれた」 週だったような気がします。

まあ淵源的には、パッチ屋で働き始めたころの、職人たちの働きっぷりを見て以来、ということになりましょうか。

それ以来、糸子のまわりには、どうも 「男」 を感じさせる男性がいなかったような感じがします。

それがいきなり、違うタイプで仕事にのめり込む傾向性の強い男ふたり(周防と北村)と、糸子は仕事をすることになったのですから。

男たちが背負ってきたものを、男たちは滅多なことで口にしない。 北村も、男所帯である理由を口にしないし、周防もほとんど、自分の素性を明かしません。

でも、男たちの背中には、やはり戦争、という悲惨な出来事を経て、背負ってきたものがあまたある。

自分に暴力で言うことを聞かそうとしながら、お父ちゃんはうちにいったい何を教えたかったのか。

周防や北村を見ながら、糸子のなかで父親との思いが溶け合っていくのは、これは当然の成り行きだったかもしれません。

だから、周防に関しても、やはり素性は分からなくても一向に構わない、と思うんですよ。

作り手が本当に表現したかったのは、不倫がバレて糾弾会議になった、あの場面に凝縮されている、と感じます。

まあそれは今回論ずべきことではございませんが…。

思い切って周防に告白してしまった糸子、やはり 「人生ただ一度なんだから、なんでもやらなくて後悔するより、やって後悔したほうがなんぼかましや」 という気持ちが優先していた、と感じます。

その糸子の 「なんでもやって後悔しよう」 という姿勢は、夏木糸子編の糸子を貫いている生きかたのように思えます。

みんないずれは、死んでしまいます。

けど、だから生きていくことに、諦めてはいけない。 憶病であってはいけない。

そんなことを、この糸子の告白からは、感じ取ることができるのです。

投稿: リウ | 2012年8月30日 (木) 13時11分

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