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2012年1月25日 (水)

「かもめ食堂」 なぜなのか、は要らない

 「カーネーション」 の脚本家、渡辺あやサンの過去作である 「天然コケッコー」 がNHKBSプレミアムでやるので(本日1月25日夜9時より)、それを録画予約しようと思ったら、2日前(1月23日)に同じ枠でやっていたので 「どういうもんか、まあ見ても見なくてもいーや」 と思って予約を入れておいた映画。
 2006年の日本映画です。

 とは言うものの、舞台はフィンランド。
 なぜフィンランド?と思うことは、この映画に限っては禁物です。
 この映画、それだけでなくて、「どうしてなのか」 と理由を知りたがることを、まったく拒絶している映画だ、と言えるのです。

 で、「平清盛」 の第3回分を見ようと思ったのになぜかこっちに触手が伸びてしまい(これについても、なぜ?は禁句です…笑)、ちょっとのつもりで見出したら、なんか1時間40分、あれよあれよという間にすぎてしまって。

 結局全部見てしまいました(笑)。

 フィンランドで 「かもめ食堂」 という食堂を開いた日本人女性のお話。
 主人は小林聡美サン。
 開店から1カ月たつというのに、客はゼロ。 手持ち無沙汰にコップを磨いています。
 そこにいかにも日本アニメオタクみたいなフィンランド人の青年が入ってきます。
 Tシャツにはニャロメのプリント(笑)。
 そーか、「かもめ」 と 「ニャロメ」 の語呂合わせか…って違うって!(爆)
 その青年が 「ダレダ、ダレダ、ダレダ~」 と歌い出します。
 まあこれって若い人はどうか知りませんけど、「ガッチャマン」 の歌ですよね。 我々の世代には常識の権化であります。

 これをアニメオタクっぽい青年が、「この先を教えてくれ」 と言うのですが、小林サンもその先が分からない。
 まずこの時点で、はぁ?なんですよ(笑)。
 アニメオタクがこの歌を完全に知らない、というのも、小林サンの年代の人が知らないっていうのも、私にしてみりゃ 「あり得ねぇ~」。
 まあよほどガリ勉で(死語)テレビも見ないような人だったら分かるけど。
 女子だって知ってましたよ、「パンダちゃんの歌」 とか(元曲の替え歌です)。

 ただ小林サン、やはりその超常識が分からなかったことがとても気になったらしく、その後しばらく 「ダレダ、ダレダ、ダレダ~」 が頭の中を反芻し続けます(笑)。

 そんな小林サンの前に現れたのが、観光でフィンランドに来ていた日本人、片桐はいりサン。
 彼女に思わず 「ガッチャマンの歌」 の歌詞を訊いてしまう小林サン。
 それが縁で片桐サンは、小林サンの店を手伝うようになるのです。

 この映画、一事が万事この調子で進んでいくんですよ。
 深い事情とかの描写がまったくない。

 たとえば小林サンは、どうして1カ月もまるきり客のいない食堂を続けてこられたのか(食材を貯め込んでいるだけでも相当な出費になるはずなのですが)。
 もしかして経済的にとても余裕があるのか。
 宝くじでも当たったのか(笑)。

 片桐サンは、観光ビザで来ているならそんなに永久にこの店で働くことなんかできないのではないか。
 そもそもどうしてフィンランドまで来てるのか。

 この後ここにもたいまさこサンが加わってくるのですが、彼女をめぐる話はまたさらに不思議に包まれている。
 なぜなのかを考え出すと、特にもたいサンの場合は混乱を極めることでしょう。

 つまり事情を意図的に避けることで、普段自分がかかずらわっている社会とのつながりを、ふっと忘れさせてくれる絶大なる効果を生んでいるんですよ、この映画。
 この映画をふわ~っと1時間40分も一気に見させてしまったのは、そんな現実逃避っぽい、居心地のいい空間を作り出していることに、映画自体が成功しているからなのです。

 それは小林サンが作る、この店のメインメニューであるおにぎりを筆頭とした、フードコーディネイトが成功していることも大きい。
 ほんわかしてしまうんですよね。

 そんな現実離れした映画のなかで、「コーヒーは人に入れてもらうからおいしい」 とか、「人は変わるもんでしょ」 とか、ちょっとした話が自然と心の中に染みていく。

 忙しさにかまけていたからこそ、こういう映画が心に染みる時があるんですよね。

 それにしても、「平清盛」 のレビューが、また遅れそうだ…。

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映画」カテゴリの記事

コメント

リウ様

富山も雪。上越も雪。昨日、今日は富山で雪かきでした。多分、明朝もcrying
週末に上越に帰って雪かきするのが怖いですね、1mを超えてるかもです。
そうすると、同じ場所を3回は掘らないと排雪できないから、3倍の労力です。wobbly

「かもめ食堂」
私も以前、みました。良い映画でしたね〜。小林さんや片桐さん、もたいさんの何かほのぼのとした感じがとてもナチュラルでしたね。
出てくる食べ物も印象的でしたね。

さっき、BSで「天然コケッコー」見ました。
漫画家のくらもちふさこさん原作で、漫画は読んでなかったんですけど、見てみたいなあと思ってた映画だったので・・・

脚本は渡辺あやさんだったんですね。

何か行間を読ませるという手法というか、「カーネーション」の素地を感じました。
渡辺さんはここ数年で飛躍的に伸びてんだなあと思いました。
「天然コケッコー」は2007年の作品でした・・

これからどんな作品を見せてくれるのか、ほんと気になる脚本家さんですね。

投稿: rabi | 2012年1月25日 (水) 23時24分

rabi様
コメント下さり、ありがとうございます。
今朝のおはよう日本で見たのですが、新潟は市内でも結構な積雪。
ということは、上越はかなりのものでしょうね。 放っておくわけにもいかないでしょうし、雪掻きがさぞかし大変だとお察し申し上げます…。

雪国のかたにヒンシュクを買ってしまいそうですが、私は若かったころ、雪が大好きでした。 雪が降ると、風景が何もかも隠れてしまう。 なだらかな曲線だけになって、音がしなくなって。 田舎の福島では練炭のコタツだったのですが、あの匂いも大好きでしたね。 雪の日にコタツに入りながら、窓の外を見るのが大好きでした。 詩人の血がものすごく騒ぐんですよ(笑)。

でも仕事をするようになってからは、東京のわずかな雪でも、なんだかもう大迷惑の代名詞みたいになってしまって。

降り積む雪に叙情を詠嘆していた、あのころが懐かしい。

「かもめ食堂」 は、誠実に生きてさえいれば、食堂にも客が入るようになる、まっすぐに頑張ろう、という気になる映画でした。

「天然コケッコー」 についてレビューする予定は今のところありませんが、「かもめ食堂」 みたいに衝動的に書きたくなったら、書くかもしれません。

渡辺サン、この映画とか 「ジョゼ」 とか 「火の魚」 とか、短編しか書けない人だとばかり思っていたんですが、「カーネーション」 では完全に考えが改まりました。 すごい人ですネ(今のところ…)(また余計な但し書きを…coldsweats01)。

投稿: リウ | 2012年1月26日 (木) 07時41分

かもめ食堂、大好きです!
DVDも持っています。

年に1、2度くらいふわっと見返したくなって、見たらお腹が空きますsmileそして生きるのが少ーしだけ、楽になります。

この映画を見て以来、私の北欧あこがれ度が跳ね上がりました。いつか行ってみたいなあ~~(ただし夏にcoldsweats01

この作品には、同タイトルの群ようこさんの原作小説があります。といってもどうやら映画のプロットが出来上がってから小説をオファーしたような形らしく、実際のところ映画はオリジナルといってもよいみたいです。
私は映画を見た後に小説を読みましたが、リウさまが疑問に思われているような部分にちゃんと説明がなされています。

でもねー、やっぱりそんな事情なんて知らなくても良かったと思いました。不思議なことは不思議のままにしておいた方が幸せなこともあるんだなと。手品のタネを知ってしまってがっかりするのと同じですね。

あ、別に群ようこさんの小説がまずいわけじゃないんですよ。とてもよくできた小説でした。ただ、「かもめ食堂」のあの雰囲気は映画でしか楽しめないんだなあと思いました。

ちょっとヘンな人たちによる非日常で優しい映画、それでもう充分です。

投稿: ひゃく | 2012年1月26日 (木) 10時17分

ひゃく様
コメント下さり、ありがとうございます。

この物語に事情とか理由とか求めると、結構野暮、という感じはいたしますよねcoldsweats01

この映画をするすると最後まで見てしまったのは、事情が何なのか考えながら見ていることの精神的な 「落ち着かなさ」 と、「ロスト・イン・トランスレーション」 の逆バージョンのような、異邦人としての自分がフィンランドの人々にどのように受け入れられていくのか、という不安が入り混じった興味が持続したことによる、と感じます。

スンゴク構造的な解説をしてしまった(笑)。 レビュー本文中にやんなさいよ(爆)。

最後の、プールで小林サンがフィンランドの人々から拍手を受ける場面は、「エヴァンゲリオン」 の仮最終回みたいな、シュールな場面でした。 もたいサンが 「ネコをもらったので帰れなくなった」 というのも、「んなんじゃソリャああ~」 という感じでしたし。 でも、この映画はそれでいいんですよね。

極めつけはエンディングの 「クレイジー・ラヴ」 by井上陽水。 私はこの歌、百恵チャンのラスト・アルバムで初めて知ったクチなのですが、「なんでこの歌なんだよ」 と(笑)。 「粋」 という言葉が出てくるから、この映画に野暮を求めちゃいけないよ、というメッセージなのだろう、と感じたのですが。

テレビドラマを見ていると、「どうしてそうなる」 ということにばかり目が行ってしまいがちですが、そんな見方を離れれば、生きているのは案外のんびりとした、理由なんかないものなのかもしれない、なんて感じられます。 この映画はそんなことを私に教えてくれました。

投稿: リウ | 2012年1月26日 (木) 13時34分

リウ様

カモメ食堂、わたしも大好きです。
あのセットも、時間の流れが変わっちゃって好きです。

映画が先って、知らなかったです。
ひゃくさんの解説で知りました。ありがとうございます。
(このスタッフで今度は市川実日子さん主演の猫の話の新作でるようです。)

投稿: みり | 2012年2月 1日 (水) 23時28分

みり様
お久しぶりです。 コメント下さり、ありがとうございます。

連続ドラマでは、このような現実感に乏しい 「問題のない話」 というのは無理でしょうね。 2時間足らずの映画だからこそ、つかの間の非現実感を味わえる。

ところでドラマ日照りはまだまだですか? みり様の鋭いコメントを、またいただきたいものです…。

投稿: リウ | 2012年2月 2日 (木) 08時08分

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