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2012年1月 5日 (木)

「孤独のグルメ」 テレ東深夜の 「ただ食べてるだけ」 のドラマ

 最近テレビ東京のドラマ、というのが、結構評判になることが多くて、録画機の番組表を見ながら題名がアレそうなのは除いて(笑)ことごとく予約を入れています。

 まあ当たり外れもありますけど、今回のこのドラマは当たり、の部類に入るでしょうか。 そう大傑作、という部類ではないですが。

 原作は久住昌之サン、谷口ジローサン画のマンガ。
 谷口ジローサンというと非常に几帳面な画風のマンガ家で、どことなく顔のパーツが中央に寄っている、まあ意地悪な言い方をすればAKBの件のあのかたを思わせるような造形の顔をお描きになります(ハハ…)。
 この人のマンガのなかでは20年ほど前に描かれた(もう20年も前か…)「犬を飼う」 というマンガに大号泣した強烈な思い出があります。
 飼っていた犬が年老いていって、ただ死んでしまうだけの話なんですが(どうも悪意のあるよーな書きかたで申し訳ない)、それがもう…ね。 泣けるんですよ。 後にも先にも、マンガを読んであそこまで大号泣したのは、あの作品だけです。 昨今の 「泣ける○○」 というカテゴリーは、この作品から発生しているかも、と思えるくらい。

 で、そんなマンガ家サンの作品ともなれば、なんかすごいストーリーがあるのか、と思いきや、これがすごく極端な物言いをすると、「ただ食べるだけ」 の話なんですよ。
 要するに、BS-TBSでやってる、「酒場放浪記」 みたいな感覚。

 主人公の井之頭、という男は、雑貨商を営んでいる男。 その井之頭が仕事でやってきた門前仲町で強烈な空腹に襲われ、そのアンテナを駆使して入った焼き鳥屋で、ただひたすらものを食う、という、それだけの話で。

 や、そこに至るまでに、ちょっとした話はあるんですよ、確かに。

 井之頭が売り物を持ってきた、その門前仲町付近の顧客の喫茶店で、その喫茶店の店長のマシンガントークにただひたすらボー然とする、という前フリみたいな話。
 その店長は山村美智サン。 「オレたちひょうきん族」 のひょうきんアナウンサーですよね。
 その喫茶店の看板に、「おいしいコーヒーと手作りごはん」 と書いてあって、井之頭役の松重豊サンは、思わずコーヒーと、一膳の銀シャリご飯が並んでいる光景を想像してしまい、「(イメージがイヤなぶつかりかただ…)」 と、軽~くブルルッとするんですよ。

 もう、大爆笑しました。

 ここで凄みのある役や笑わせる役を両方こなす松重サンが、今回どのような役どころなのかが、一瞬で把握できる。

 で、その山村美智サンのマシンガントークを聞きすぎてクタクタになった松重サンが、いったん自分があこがれている骨董品屋に立ち寄って神社にお参りしてからその空腹を抱えて向かったのが、飲み屋横丁。

 「自分はいま、何腹なのか?」 という松重サンのアンテナは、一軒の焼き鳥屋に導かれるように、すーっと入っていきます。

 ここで注目なのが、その焼き鳥屋の女将さんの風情とか店の内装とか、いかにもフツーでありがちなこと。 特段変わった店じゃないんですよ。 のちほどここの店のモデルになった場所が出てくるんですが、女将さんがほとんどおんなじ顔で(つまり別人)、よく探したもんだとまたここで爆笑。

 さらに注目なのが、この井之頭、という男、下戸でまったく酒が飲めない。
 酒が飲めないから、まずウーロン茶を頼む。 女将はウーロンハイならあるけどと言って、店を飛び出して隣の酒屋からウーロン茶を買ってきて、「冷蔵庫がふたつあるの」 とか、大して面白ないウケ話をするんですが、これがまたリアリティがあって笑える。
 しかしまあ、ウーロンハイが出来るのになぜウーロン茶がないのか?というのは、やはりウーロンハイが市販の出来合いのものしか置いてない、ということを、ここで見る側は推測せねばならないのです。

 で結局、井之頭はそこの焼き鳥を、全種類(7種)1本ずつ頼み、またたく間に平らげていくんですよ。
 画面は井之頭が食む、焼き鳥のコリッコリッとした音と、淡々な井之頭の感想が続くのみ。
 「(うん…うまい。 これでごはんが食べたくなるなあ…。 なんでメニューに焼き鳥定食がないんだろう?…うまい、本当にうまい…。 焼き鳥って、こんなにうまいものだっけ?…おいおい、あっという間に6本食べてしまったぞ…。 なんだろうこのうまさは?…なんだか、笑えてくるなあ)」。

 なんじゃコレ(笑)。

 気の利いた感想なんて、これっぽっちも語ってないのに、それがかえって新鮮で、なんかこっちまで食べたくなってくる。

 井之頭はメニューで気になっていたホッケスティックと信玄袋、というものを頼みます。
 ホッケスティックはホッケの塩焼きがスティック状になってるだけで、単に食べやすいとか?チキンナゲット感覚?(笑) 信玄袋は焼いたあぶらげのなかにオクラとホタテが入っています。 「(今日はついてるなあ)」。 相変わらず大した感想を言いません(笑)。 でもうれしさが伝わってくる。

 そこに常連さんらしき男が入ってきて、つくねとピーマンを頼みます。

 なぬ? つくねはいいけど、ピーマン?

 見れば、半分に切っただけのなにも施されてないピーマンに(もちろん種は取り除いてますよ)つくねを詰め込み、それにがぶっとかじりついている。
 井之頭も思わずとっさに手を上げそれを注文(この松重サンの演技も笑えます)。
 ピーマンは3個で170円。 うーん、自分で買ってきてやったほうが良さそーな気もするが(爆)。
 ところがこの意外なる組み合わせ、見ていてひたすら食べたくなってくる。
 「(苦い…苦いぞ…でもなんなんだ? 新しいピーマンの肉詰めだなあ…苦い…でもうまい…苦うまい…!)」 いや~大したことはない感想ですが、コワモテの松重サンの顔がほころんでいくと、こっちまで 「そりゃ試してみるべきだろう!」 という気になってきます。

 松重サンは思わずその肉詰めのうまさに、ご飯を頼むのですが、どうも焼き飯しかないらしい。
 その焼き飯、梅肉入りで、そのミスマッチさ加減がまた刺激的。
 「(酸っぱい!…梅干しかぁ…。 焼き飯に梅干し…発想がなかった…これいいぞお…)」。
 またフツーの感想が続きますが、どんどん食が進む松重サンを見ていると、もうそれだけで説得力がある。
 これってグルメ番組に対する強烈なアンチテーゼですね。

 で、店を出る松重サンの姿を追って、ドラマはここで終了。

 あとは原作者の久住サンが出てきて、さっきの 「酒場放浪記」 みたいなことを始めるのです。
 ドラマの時間は正味20分程度。 30分番組の、3分の2です。

 言ってみれば、こないだTBSでやってた 「深夜食堂」 から、ストーリーをまったく省いたようなスタンスのドラマです。 20分程度だからそれでも成り立つ部分があるのですが。
 そして深夜にやっているために、視聴者の空腹力(なんじゃソレ)に強烈に訴えかけるものがある(私はリアルタイムでは見ることが叶わないのでそれはありませんが)。
 感心したのは、マクドナルドのCMがそれをあたかも狙ったかの如く入っていたこと(1本だけですけどね)。 24時間営業のマクドナルドに行きたくなるっつーか(笑)。 コンビニのCMも、こういう番組にバシバシ入れるべきでしょうね。 どうもスポンサーはわかっとらんなあ。

 まあ見逃してもさほど悔しい、と思えるドラマではありませんが、地方ではやってないとのことなので、ちょっと放送されていない地域のかたには酷なレビューになってしまいました。
 申し訳ないです。
 ただつくねと生のピーマンのコラボは、試してみる価値はありそうです。

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» 「孤独のグルメ」 第一話 江東区 門前仲町のやきとりと焼きめし [トリ猫家族]
 さてさて、新たなグルメドラマが始まりましたよ〜 「深夜食堂」に続けって感じですかね・・・ 原作は現在『SPA!』で、不定期連載中です。 番組HPはこちら  原作読んでますけど ... [続きを読む]

受信: 2012年1月 7日 (土) 17時51分

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