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2012年2月19日 (日)

「カーネーション」 第20週 自分が本当に欲しいものとは何か

 今週の話の流れとしては、直子が店を立ち上げ挫折を味わっていく過程と、それをサポートしようとする優子の心の推移、そしていくらテニスで名を上げようとも母親に認められず、孤独感を募らせていく聡子、このコシノ三姉妹の話がメインだったように思えます。

 そう、もともとこのドラマは 「世界的なファッションデザイナーであるコシノ三姉妹を育てた母親とは」、という興味から出発している。
 だからいくら聡子がテニスで頑張ろうとも、いずれ聡子も洋裁の世界へ入ってくることは、視聴者にはバレバレ、なんですな。

 その 「先がバレバレの話」 をどうやって見せていくか。

 それはやはり、得意げに持ってきた賞状の入った筒をさりげなく隠すとか、ふと寂しい表情をさせるとかしながら、最後には聡子のなかにたまっていた鬱憤を爆発させる、というベタな話しかないだろう。

 このドラマは始まった当初から、そんな 「視聴者に先が見え見えの話を正面突破して感動させる」、という手法のまま突っ走ってきました。
 善作は糸子のしようとすることに、反対することは目に見えている。
 けれどもなんとか頑張って、糸子はその父の思いを超えていく。
 予定調和と言えば、これほど予定調和だらけのドラマもない、と言っていい。 しかし。

 「先が分かってるからってなんやっちゅうんや」。

 このドラマは、そのことを恐れない。
 回避しようとすらしない。
 他人様に自慢できるようなご立派なことなんかないかもしれへんけれど、登場人物たちは、だんじりのように自分の人生を力強く突っ走っていくのです。

 そしてこの、今週メインの話であるように思われた、コシノ三姉妹の話の裏で。

 実は糸子にとって、第2の脱皮とも呼べる時期が近付いていることを、見る側は静かに感じることになるのです。
 私はこっちの話のほうが、今週のメインであると思われて仕方ない。
 少々お笑いに煙をまかれたような、ベタな展開が続く中で、糸子は自分の本当に進むべき道を模索している、そんなふうに私は感じたのです。

 今週はでも、レビューが楽そーな気がするのですが(話がベタなんで)、…んー、やってみないことには分かりません…。





 月曜放送分。

 昭和34年6月。

 優子がオハラ洋装店で、仕事で失敗しながらも曲がりなりにも歩き始めようとしたそのとき。
 妹の直子から、電話がかかってきます。
 「なんやごっつい賞を獲ったらしいけど…」 電話を取った松田恵は事態がにわかに飲み込めない。
 「なんの賞?」 と色めき立つ昌子や糸子を尻目に、優子がポツリとつぶやきます。

 「装麗賞や…うちが獲られへんかったやつや…」

 それは若手デザイナーの登竜門。 優子は寂しそうにその場を去りますが、糸子はそれを敏感に見つけます。 ここで糸子は 「妹に追い越されてしまった姉」 の構図を即座に理解したように見える。

 しかし糸子はその後、あえてその優子の前で、喜々として駆けつけた八重子と一緒になって、直子の受賞を騒ぎ立てます。
 「ドラム缶みたいな服」 と、糸子は直子のデザインした服を 「理解不能」 とけなしながら、新聞の取材がようさん来たとか、優子の前でこれ見よがしに自慢げにしゃべるのです。

 これって、糸子の無神経、でしょうかね?

 まあ平たく考えれば、糸子が優子に、「これしきのことでへこたれたらアカン」 と叱咤している姿ともとれる。
 けど、ここで糸子は、直子のことをけっして褒めていないのです。
 新聞社が来て鼻高々だとかいうのは確かに優子の心を傷つけるけれども、糸子のスタンスとしては、「だから何なんじゃ」、だと思う(笑)。 そんなことでいちいち傷ついていたら、心がいくつあっても足らへん、という感覚。
 却って母親の心情としては、「優子、あんたにはあんたのやるべきことがあるんや、その道を毅然と行き」、というところじゃないか、と思うのです。 「へこたれたらアカン」 と同じかもしれないけれども、こちらのほうが厳しい。
 単なる激励、と違うんですよね。 もっと突き放している。 それはもう無神経と紙一重のところで。
 些細なことかもしれないけれども、この 「無神経と紙一重」 のギリギリのところを、今週の糸子は演じていた、と思うんですよ。 聡子に対する態度も含めて。 これって重要なポイントのような気がする。

 別の日、直子からの電話を、優子は偶然受け取ります。 自分のなかにある嫉妬心や羨望、劣等感などをすべて押し殺して、優子は直子の受賞を喜ぶのですが、直子はそれが気に入らない。
 これって 「ええかっこしいの姉が、また下らない見栄で余裕をカマしている」 という怒りではないと思います。
 まああとから、その理由は明確に語られるのですが。
 とにかく気に入らないなら優子に直接話せばいいのに(笑)、直子はそれをしようとしません。
 「お母ちゃんに代わって」 と告げると、直子は母親に向かって、そのモヤモヤをすべて吐き出します。

 「ちょっとお母ちゃんなにアレ? なんであんな呆けてんよ? アホちゃうか? うちがちょっと装麗賞獲ったくらいで、あんなふぬけた声で 『おめでとう』 とかぬかしよって! お母ちゃんな、甘やかしたらあかんで! あの根性無し、どうせ毎日メソメソしてんやろ? あんまし続くようやったらな、一発蹴り飛ばして、『アホか!しゃっきりせい!』 って、怒ったってやっっ!!」 グワジャッ!(受話器を叩きつける音…笑)。

 唖然とする糸子(笑)。 しばらく考えてから 「…なんでうちがあんたにどやされなあかんねん?!」(爆)。

 糸子が 「(普通にしちゃあたらええねん、普通に…)」 と気を遣おうとする間もなく、北村が登場。 「あの山猿が装麗賞やて!」 と無神経このうえない話を優子の前でしゃべくるしゃべくる(笑)。 優子は北村がお祝いに持ってきた花束をタイガー・ジェット・シンのように(ハハ…)北村に叩きつけ、泣きながら店を飛び出していきます(笑)。 そーです、大声で泣きながら商店街を走るなんて、あり得ません(笑)。 ここは、笑うシーンなのです(笑)。

 喫茶店 「太鼓」 で、猛反省する北村でしたが、糸子は 「かめへんて」 と意に介さないふりをします。 「しゃあないやんか~。 ここでヘンにまわりが気ぃ遣うたところでどうなるってもんでもない、あの子が自分で乗り越えるしかないんや」 と、また実に冷淡なことを口にするのです。
 ここで随行してきた聡子が、糸子のホットケーキを食べようとするのですが、糸子はこれも冷淡に断る(笑)。 じぃ~っと北村を見る聡子、北村は 「…食えや!」 と、お約束のシーンです。 このホットケーキ、今週は要所要所に出てくる気がします。

 北村の用事は、去年糸子と組んで大失敗したプロジェクトの、生地代を糸子に渡しに来た、ということ。 封筒に入っていたのは、確か前年昭和33年に日本で初めて発行されたばかりの、一万円札の束。 大きかったなあ、あの聖徳太子…。
 とにかくそれをいぶかしがる糸子に、北村は自分の腕で売り切ったと得意満面です。

 いっぽう相変わらず店先でボケーっと憔悴している優子。
 糸子はそれを、苦々しい顔で見ています。

 そこに入ってきた、こないだの倒れはった妊婦さんの母親。 優子の腕を見込んで、自分の服を作りに来たのですが、優子は辛気臭い顔のままで接客してしまう。 糸子は娘を、裏口に呼び出します。

 「もうあんた店になんか出んでええ。 お客にあんなしみったれた顔しか見せられへんやったら、店なんか出な。 商売の邪魔や」

 仕方なく優子は、松田恵が見ているテレビを一緒に見て、ケラケラ笑います。
 そのテレビには、冬蔵を襲名したばかりの中村春太郎(小泉孝太郎クン)が出ています。
 出世して、春から冬か…(笑)。
 どうもこのドラマ、春太郎がどうなったか、というストーリーを最後まで考えているような気がする…(笑)。 春太郎は物語にちっとも絡んでこないくせに(最初ほどは)、その行く末は人間国宝か、みたいな勢いに感じるんですよ。 そーゆーオチって、面白くありません? あの女たらしが人間国宝、とか(笑)。
 壮年篇で小泉クンのお父さんが出てきたら面白かろう…や、そんなことを元総理がしてはダメですね(いや分からん、ウルトラマンにまでなった人だから…笑)。

 話戻って。 糸子は、テレビを見ていた優子についてもとやかく言い始める。
 松田は仕事中だけれども春太郎のファンだから特別にその時間だけ許した。 そやけどおまえはちゃう。

 「あんた…なにしてんや?
 なにしてんやそんなとこで?
 誰がテレビなんて見いちゅうた?
 店出るなっちゅうんはな、裏でテレビでも見とけっちゅう意味ちゃうんや!」

 「ほな何したらええんよ!」

 優子はブチ切れます。

 「どうせうちには直子ほどの才能もない! 店に出たかて、迷惑ばっかりかける! どないしようもない役立たずの邪魔もんや! テレビ見て笑ろてる以外、やることなんかないやんか!」

 バシッ!
 糸子の平手が飛びます。 糸子は間髪いれずに優子の頬を思い切りつねり上げて向かってくる。 ボーリョク反対(しかし糸子、善作と一緒やな)。

 「どの口がゆうてんや、ああ?!どの口がゆうてんやっ!!

 このアホがっ!
 ひがむのもええ加減にせえっ!
 東京の学校まで行かさしてもうて、何不自由のう暮らさしてもうて!」

 「ほっといてよ!!

 どうせうちはアホや!!
 役立たずや!!」

 優子も負けていません。

 「原口先生は、あんなけあんたを認めてくれちゃったんちゃうんけ?!

 お客さんが、またあんたのために来てくれたんちゃうんけ?!

 それが見えへん目ぇは、どんなけ腐ってんやッ!! ああ?! ゆうてみ!!」

 自分にないものばかりを見つめて、どうする。
 自分が培ってきた、自分の実績を見つめないで、どないして仕事なんかできるんや? 自分の作ったものを自信を持って売ることができるんや?

 店に出な。 テレビを見て明るく振る舞うのもすな。 じゃ何やったらええねん?
 うちがどんなけ傷ついてんか、お母ちゃんにだけは分かってほしいのに! なんでそんなに無神経に突っかかってきよんねん?

 松田と昌子に止められながらも、ふたりは大乱闘であります。

 その 「ちょ…っとした騒ぎ」(糸子の独白…笑)があったあと、指にホータイを巻いている糸子のもとに、警察がやってきます。
 スワ大乱闘の通報でも受けたか、と戦々恐々として糸子が出てくると、北村を逮捕した、と警察は言う。 「その件で、お話が」。

 ダメだコリャ。 やっぱしいつものペースだ、つーか、いつもより長くありません?(笑)




 火曜日放送分。

 この取り込み中、松田は直子からの電話を受け取ります。 直子は優子に話があったのですが、また例によって直接話そうとしません。
 直子は松田恵に、伝言を頼みます。

 「こんなこと、一生に一回しかゆわへんけどな。
 ちっこい頃から、うちの目の前には、いっつも姉ちゃんが走っちゃあた。
 いつか絶対あいつを追い抜かしちゃるて、…ほんでうちも走ってこれた。
 その姉ちゃんに今さら岸和田から見守られかてな、迷惑や。
 とっととまたうち追い越して、前走ってくれな困る」

 直子が優子に直接言わないのは、一種の照れ、というものがあるのでしょうが、実は屈折した、姉に甘えたがっている心からくるものなのではないか、と私は感じます。
 だから本音は伝わらなくてもいい。 松田あたりが自分の言葉を全部伝えてくれるとは、直子は思っていないだろうからです。
 自分のとげとげしい、しかも依存心が内包された言葉など、そのニュアンスだけがまわりからやんわりと伝わってくれれば、直子にとってはいいと思われるのです。

 しかしそれどころか、直子の思いは松田から、まったく優子に知らされることがなかった(笑)。 ケーサツが来てるなんて大事件のさなかなのですから。

 どうも北村は、売れなかった服にディオールのタグをつけて売りさばいたらしい。 詐欺であります。 糸子は北村から受け取った金の入った封筒を、ケーサツに押収されます。

 動揺しまくる従業員たちに 「怖がらなくてもいい」 と言い、組合に行って事態の悪化を防ごうとし、日照りの時は涙を流し、寒さの夏はオロオロ歩き、みんなにデクノボーと呼ばれ、…ちゃうちゃう(なんやねん)、そんな大変な時でも粛々と困難を乗り越えようとする母親の姿を、つまらない個人的な傷心で仕事を疎かにしていた優子が、見守ります。 どんな糸子の説教よりも、そんな母親の背中が、子供への最大の教育になる。

 三浦組合長と話し合う糸子、ディオールのタグをもっと本物そっくりに作らんかい、と言わんばかりの論調でかなり危険なのですが(笑)、三浦は 「堪忍したってや」 とだいぶ寛容です。
 三浦は北村について、勢いはあるけど信用がついてへん、オハラ洋装店の信用度に比べれば格段に足元が脆い、とかなり的確な評価を下しています。 「うちはそんな人失敗させてしもたんやな…」 と、糸子も素直にそれについては反省する。 また人生、勉強なのであります。

 鬱々とした表情で帰ってきた糸子は、耳をつんざくような音に肝を潰します。 聡子の発案で、なんやケーサツやら辛気臭いから、爆竹を鳴らして景気をつけよう、ということになったらしい。 長崎の精霊流しか(笑)。 いや、中国の旧正月か、と突っ込んだほうが的確か。 糸子は眉をひそめるばかりですが(たぶんご近所メーワクだし)、千代なんかはノーテンキに厄落としを喜んでいる様子。 一息ついて優子が、糸子に決意を語ります。

 「お母ちゃん。 うちな、心入れ替えたよって。 明日からまた、お客さんの前に、立たして下さい」

 優子は母親の姿を見て、この店が当たり前にあるのは、母親が必死でこの店を守ってきたからだった、ということに、気付いたのです。
 糸子は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をするばかり(笑)。

 「(こうゆう時に、ニカッっと笑ろて、『エライ!お母ちゃんうれしいで!』 ちゅうようなことをよう言わんのは、…血筋やろか?)」

 また肩肘ついてだらしなく寝そべりながら、糸子は父善作の遺影をそっと見上げます。
 善作の遺影。 ハルおばあちゃんの遺影。

 「(…血筋やな)」

 気の抜けたあくびをする糸子。 そのとき…!

 「ちゃう!!」

 善作の大声が響き渡り、糸子は飛び跳ねてしまうのです。 幻聴やて。 不審がる優子や聡子。 千代はうつらうつらして、それに気付きません。 ワロタ。 と同時に、小林薫サン、このためだけに再びスタジオ入りしたのかな?と思わせてしまう、うれしい再会です。

 その4カ月後。

 ドギツイ付けまつげをしている直子のもとに(考えてみれば現代も、やたらと重たいマスカラをつけたがる女性が多い風潮にある気がします)(あれは大して美しくない、とは個人的な感想であります)斎藤源太がやってきます。 装麗賞が獲れたと言って男泣きする源太。 結構しょっちゅうやってんやな、この賞。

 それを松田や昌子に報告している直子、オハラ洋装店に戻ってきているのですが、ごっつい露出気味のドレスを着ています。 それを 「うちの式にそんなオウムみたいな服着てくつもりけ?」 と詰問する優子…って、優子、結婚式なんかい!

 そこに現れた北村、執行猶予中の身だからか、収監されたからか、紋付き袴を着ているくせに、「そんな身分ちゃう」 と式によう出ようとしません。
 それを引き留める直子、北村は頑強に拒みながら、ほんまは引き留めてほしい様子(笑)。 優子は店から出てきて、「おっちゃんが式に出てくれんかったら、うちは嫌や!」 と大声を上げる。 衆人環視のなかで、「わいは、オマエに迷惑かけたないんや!」「なんの迷惑かけんねん!そんな寂しいこと言わんといてよ!」「わいかて出たいよそれは!」「おっちゃんに出てほしいねん!」「殺生なことゆうなよオマエぇぇぇ~~~っ!」 と抱き合うふたり(爆)。

 直子は北村の逮捕を知らないために、「何やってんねん?」 という顔で呆れかえり、糸子は 「茶番や…茶番茶番…」 と悟りを開いております。 結局フツーの振り袖姿で式に赴く直子。 この日オワリ。

 …って、優子の結婚相手って、いったい誰なんよぉ~~っ?!

 この相手は、結局先週出てきた、あのウサン臭い男だったのですが、このドラマ、例によってこの先しばらく、その相手について、まったく触れようとしません。 つーか、出てきたのはほんの数秒。 ほとんど黙殺状態。
 おそらくこの男、糸子に 「うちのコネなんかアテにしたらあきません」 と言われ、改心したんでしょうね。 いや、やっぱり奈津のダンナみたいに、コバンザメなのかもしれない。
 でもこのドラマの語り手は、それがさも瑣末な問題であるかのように取り扱っている。
 こういうはぐらかしが、物語に別な部分への余韻を生む結果となっていることは、明白であります。
 それを 「肝心な部分について何の説明もない」、と騒ぎ立てるのは無粋である。
 行間を読む、という行為が、物語を味わうひとつのよすがとなることに、ひとは気付かねばなりません。





 水曜放送分。

 昭和35年10月。 優子の結婚式から、1年後の場面から始まります。

 糸子はサンローランの言葉について、単語の意味を聡子に訊いたりしています。 「シンプル」 とか 「シルエット」 とか、実に簡単な単語なのですが、アホの聡子(アホの坂田みたいやな)は分かりません(笑)。
 聡子は仰向けに寝そべりながらマンガ本?を読んでいるのですが、その両脚は糸子の膝の上。
 これってかなり変なシチュエーションじゃありません?
 糸子はそのとき聡子の靴下に穴があいていることを発見するのですが、自分が縫ってやるでもなく、指摘するのみ。
 千代だけは、そんな聡子が母親にかまわれたがっている真実を見抜いています。 千代に促され、糸子は聡子が獲った、秩父宮賞についてちょっと褒めてみます。 仏壇に向かって、「ありがたやありがたや…」(笑)。 聡子はとてもうれしそうに、ひとりまた寝そべって、足を軽~くバタバタさせます。
 今週は先に指摘したとおり、このような聡子の 「神聖かまってチャン」 的なベタな演出が、そこかしこに展開されます。

 世は高級既製服、プレタポルテの時代へと移行しつつあります。 糸子がサンローランのことを学習しようとしていたのもその一環だと思われる。
 ただし既製服、つまりレディメードについて詳しい北村が講師となって組合で女性経営者たちに解説をしても、糸子はまだオーダーメイドにこだわっている感じ。
 しかしここで、糸子の思索は、来るべき夏木マリサンの壮年篇に向けて、始動したように私には思えるのです。

 「(昔は、あんなけ待ち望んじゃった時代の変化っちゅうもんが、今のうちにはなんや怖い。

 アメリカのもんやからって、そないジャンジャカ売れることももうないし。

 下駄は完全に、靴に取って代わられてしもた。

 …うちは今、47。

 お父ちゃんが呉服屋の看板を下ろしたんは、50の時やった…)」

 商店街を通って自分の店に戻ってくるまでのこの糸子の思索のあいだ、木之元のおっちゃんの店はさびれ、木岡のおっちゃんの店も半分たたまれている?ような様子が、映し出されます。
 そしてオハラ洋装店のショウウィンドウに映った、糸子役の尾野真千子サンの姿。
 物語がだんじりのように先へ、先へと向かっていくなかで、なんやひとり、彼女だけが、若いころの姿のまま、取り残されてしまったような感覚に、私は襲われました。
 もう、オノマチでは糸子が表現しきれない年代に、突入しつつある。
 今までキャスティングに、ほぼいささかの疑問も生じることなく突き進んでいたこのドラマに、初めて生じた違和感。
 47というと、私ももうすぐなりますが(笑)。
 私の場合、気ばかり幼いままで、顔をまじまじと見ると、歳を取っていることに今さら驚かされる、という逆のパターンであります。
 糸子の場合、表情は若いままなのに、気持ちだけが、老成しつつある。

 そんななかで意気軒高なんは、昔からの知り合い、サエです。 久々に店に来て、優子の大きくなったお腹をさすっています。
 ダンスホールの踊り子から、心斎橋の高級クラブのママへ。 サエの歩んでいるのは、順調な出世コースのように思えます。
 彼女は 「男」 に対する執着心で、最新モードには目もくれず、自分の信念に基づいて、従業員の女の子たちのドレスをオハラ洋装店に頼み続けている。 何の迷いも、そこにはありません。 糸子にはその潔さが、まぶしく思えている。

 「(うちは欲張りすぎなんや。 サエみたいにほしいもんをひと言でようゆわん。

 自分がええと思う服を作りたいけど、商売もうまいこと行かせたい。

 時流に流されてたまるか思てるけど、時代に遅れてまうんは嫌や)。

 はぁぁ…しょうもな。 アホらし。

 (ほんなもん、根性据わらんで当たり前じゃ。

 …うちがほんまに欲しいもんて、…なんや?)」

 この糸子の思索は、物語上、かなり重要だと思われます。 糸子は70を過ぎてから、自分のブランドを立ち上げることになる。 その端緒となるべき思索のように思えるからです。

 そんな展開が自分に待ち受けていることを夢にも考えていない糸子、年末に帰省してきた直子が北村と、プレタポルテについて話がはずんでいるのを横で聞いていて、北村にツッコミを入れたりしています。
 既製品でもデザイナーブランドで高く売ることができる。 タグ貼っ付けただけでオモロイように売れる…て、それで捕まったのはどこの誰やねん?(笑)
 ここでようやく直子は、北村がタイーホされたことを知るのでした(笑)。

 その夜、ゴミ袋みたいな黒いテカテカの生地のパジャマ(まあ、自分のデザインでしょうな)を着た直子が、妹の聡子と将来について突っ込んだ話を寝床でしています。
 テニス選手になったらええやん、という直子。 姉の優子に対して一触即発、みたいな雰囲気なのとは打って変わって、リラックスモードです。
 けれども聡子の返事はつれません。 「う~ん…。 ほんでもお母ちゃんはあんまし喜ばへんやろ?」。
 いつものようなのんきなしゃべりかたにも関わらず、聡子の本音がそこには詰まっている。 「うちが賞やらとっても、ちょっとしか喜ばへんかった。 お姉ちゃんが装麗賞獲ったときのほうが喜んじゃった」。 秩父宮賞のほうが、装麗賞よりよほどごっついで、という直子。 そりゃ、4か月にいっぺん出るような賞よりはなぁ…。 「やっぱしお母ちゃんは、自分の仕事と関係なかったら、あんましどうでもええみたいや」。 直子は、「お母ちゃんなんかどうでもええやん。 自分のほんまにやりたいことしいや」 と直言します。 聡子は 「ふ~ん…」 と気の抜けたような返事をしながら、表情は真剣です。

 昭和36年正月。

 木之元のおっちゃんが、アメリカ商会をたたむことになるのですが、拾う神というものもあるもので、「太鼓」 のマスターが引退することで、そのあとを任されることになります。 木之元の息子は日本橋の電気店へ。 日本橋ゆうても、東京の 「にほんばし」 ではなく、大阪の 「にっぽんばし」 です。
 時代は変わっていきます。 おそらくこの後、喫茶店にも厳しい波が訪れるはずなのでしょうが、木之元のおっちゃんはたくましく生きていくはずです。

 考えてみれば当時は年功序列終身雇用が今よりもずっと当たり前の世の中でした。 そのなかで商店街の人々は、自営業の代表。 どんな商売でも、流行り廃りというものがある。
 現代は、一般のサラリーマンでさえ自営業的、みたいな世の中なような気がします。 社会に出てから40余年、ずっとひとつの仕事に携わる、ということがとても難しい。 そんな現代から見て、木之元のおっちゃんの変遷していく物語は、とても羨ましいところがあるけれど、飄々としているところが参考になる気がする。

 糸子にも初孫が誕生します。 「(人生ちゅうんは優しいもんで、何が欲しいかもようゆわんような人間の手にも、急にポコッと宝物をくれることがあります)」。 この糸子のモノローグは、木之元のおっちゃんが新しい就職先を賜ったこととリンクしています。
 糸子と聡子は、互いに 「叔母ちゃん」「おばあちゃん」 と言いながら、初孫の理恵をあやしています。




 木曜放送分。

 昭和36年5月。

 直子が4月から東京は銀座の百貨店に、自分の店を出すことになったのですが、このごろ頻繁に、その直子から電話がかかっています。
 電話代を心配する糸子に、千代は仕事がキツうてへこたれてるんとちゃうか、東京に行ってみてきたらどうか、と提案します。
 糸子は 「こだま」 で東京へひとっ飛び。 新幹線の開業まであと3年とちょっとですが、それでもこの特急列車で7時間、だいぶ昔に比べれば、楽になったはずです。
 糸子がいざ、直子のブティックに来てみると、店先には絵の具をぶちまけたような自転車のがらくたが、奇抜な服と一緒に展示されている。 昭和36年というと1961年ですから、サイケデリックが流行るまでには、あと5、6年は必要な時期です。 要するに時代の先を、直子の感性は行きすぎている。

 糸子が店に入ろうとすると、デパートの支配人がやってきて、「この鉄クズを撤去しろ」 と苦情をまくしたてる。 その昔の國村支配人、そう言えば懐かしい。
 そこで店内の様子も分かるのですが、店内もかなりアーティスティック。 ワレワレハ宇宙人、ボヨヨヨヨ~ンみたいな服を着てしぼられる直子を、後ろにいる従業員たちはくすくす笑って見ている。 従業員たちとの関係も、最悪なようです。
 糸子は陰からその様子を見て、出直してくると、今度はさっきの支配人から、あいさつの仕方について厳しいレクチャーを受けている始末。 糸子はまた出直します(笑)。
 そしてさも初めて来たようなふりをして店に入ってきて、直子のバレバレの見栄にも付き合ってあげる糸子。 ところがそこに憤然とクレーマーがやってきて、お宅で買ったパンタロンを直してほしい、と言ってくる。
 ヘンなところにポケットがあるために、歩きにくくてしょうがない、というのです。

 機能性より芸術性を重視する直子には、それが気に入らないのですが、糸子はきっぱりと言い切ります。

 「服っちゅうんはな、買うたひとが気持ちよう着て初めて完成するんや。 ほれ、やり直し。 手伝どうちゃるさかい」

 厳しくも温かな母親の存在感に、直子はホッとしたのか、泣いてしまいます。 奇抜なファッションで 「武装」 しているからこそ、その気の抜け方が、こちらの胸にも響いてくる。

 その夜、あのフェノメノンを交えて、糸子が店屋物の寿司をおごろうとしています。 その注文をケチろうとする仲間のひとりの様子からして、直子が窮状していることがうかがい知れ、さらにそれは仲間うちにも知れ渡っている様子です。

 ここで糸子は、斎藤源太が作ったという、あの撤去された自転車のオブジェを 「見た見た~」 と言って、ずいぶん前からブティックに来ていたことが、ばれてしまいます。 そこはそれ、大阪のオバチャンの強引さで押し切ってしまうのですが、「若い子ぉのやることは自分には分からんからて間違うてるとは限らんちゅうことを覚えたんよ」 と寛容なところを見せます。

 「要はな、外国語みたいなもんや。
 うちには分からんでも、それで通じおうてる人らがいてることは分かる。
 ほんでな、相手がどんくらい本気か、気持ちを込めてゆうてるかっちゅうんも、なんとのう分かるもんなんや。
 あの鉄クズは本気なんやなぁって思うたで」

 彼らの語る夢は果てしなく大きい。 プレタポルテのデザイナーとなって、世界中に自分のデザインした服を着てもらいたい、というのです。 直子は、東京をファッションデザインの発信地にしたい、という夢を、目を輝かせて語ります。

 この直子を含めた、フェノメノンたちの夢は、糸子を新たなステージへと飛翔させる、大きな引き金となっている感じなのです。

 「(若い子ぉらの夢の形は、思てもみんほど、広々と、どこまでも高うて、聞いてるこっちまで、飛んで行けそうでした)」。

 青空に白い雲。 トンビは飛んでないかもしれませんが、いつか善作が見上げたように、糸子は夢が駆け巡っているかのような空を、見上げます。

 「(夢は大きいほど、壊れやすいかもしれんよって、どうか、どうか守っていけるように)」。

 糸子はフェノメノンたちに、食料を仕送りしてあげるのです。

 糸子は北村に、木之元のおっちゃんがマスターになった 「太鼓」 へと呼び出されます。
 聡子を伴ってきた糸子。 どうやら北村は、聡子に話がある模様。 糸子はホットケーキとココアを注文します。 このココアを、糸子は文句も言わずに飲んでいました。 ああ~また、サイドストーリーが気になる…(笑)。 ココアをめぐる物語…。

 北村は、「聡子をわいに預けへんけ?」 と訊いてきます。 聡子をプレタポルテのデザイナーにしたい、というのです。
 糸子はその、あまりにも突飛な提案を拒絶します。 「アホか」。

 ところが聡子は、この提案に乗ってくる。 ここで聡子が乗り気なところを見せたのは、物語上必須であります。 しかし糸子はそれも一蹴。 「あんた一枚でも、デザイン画描こうとしたことがあるか?」。 聡子はぐうの音も出ないのですが、洋裁への思いが募っていることだけは、見る側に伝わってくるのです。




 金曜放送分。

 「(とにかく、上機嫌が身上やった勝さんの血ぃをいちばん引いてんのが聡子で、上のふたりが取っ組み合いしている横で、いつもヘニャヘニャ笑てるような子ぉやったさかい、聡子のことを各別心配したっちゅう覚えがありません)」。

 そんなヘニャヘニャ聡子のなかで、湧き上がりつつあるもの。
 ドラマの語り手の主眼は、そちらのほうにある。
 自分の本当にやりたいこととは何なのか。
 今度テニスの全国大会に出る、という聡子にも、その究極の選択が、迫っているのです。

 優子が産休明けから、オハラ洋装店に復帰します。 それを冷ややかに見る糸子。 糸子は3人の娘を産んだ時も、そらまるで片手間のようやったですからね。
 娘の理恵を保育所に預けてきた、という優子に、おばあちゃん(千代)に任せたらええやん、という糸子。 ここにも母と娘の生き方の違いが、さりげなく表現されています。 優子にしてみれば、完全に善作に任せっきりだった母親のやり方を見て、自分の娘を保育所に預けている。 幼な心に、善作やハルおばあちゃんの負担を、感じ取っていたのでしょう。

 いっぽう直子は、意志の疎通がうまくいっていなかったブティックの従業員から、三下り半を突き付けられます。 孤立無援になってしまったのです。
 泣きながら松田に電話してくる直子。 かつて装麗賞を獲得した、直子のプライドは、すでにずたずたです。
 緊急会議が開かれるオハラの店。 そこに聡子が、何かの賞状を持ってスキップで帰ってくるのですが、みんなの深刻な顔を見て、それを引っ込めてしまいます。

 直子に助っ人を送り込もうという話になり、そこに優子が名乗りを上げます。 理恵どないする気や?と反対する糸子に、優子はこない言い切ります。

 「お母ちゃん。 悪いけど。

 今のうちの店に直子の仕事を、ほんまの意味で手伝える人間は、ほかにいてへん。 うちだけや。

 正直、お母ちゃんとか昌ちゃんとかでは無理やと思う」

 喧嘩を売っているような優子の言いぶりに、糸子は色めき立ちますが、優子はかまわず言葉を続けます。 直子のけったいな服を理解できるのは、うちだけや。 常識で考えたらオウムみたいな服やけど、あの子の才能は、悔しいけど本物なんや。

 「直子が今、あの年で、東京みたいな厳しい街で、何をやろうとしてんのか、うちにはよう分かんねん。

 それがどんだけ難しいことか。

 あの子が求めて、苦しんでる理想が、どんだけ高いもんかをほんまに分かって手伝うてやれるのは、…うちだけや」

 優子はまたまた必殺技の、土下座をするのですが、糸子は席を蹴ります。 「知らん! 勝手にしい!」。

 千代はそんな優子に、「直子にうなぎでも食べさしちゃり」 と、餞別を持たせます。
 この千代。
 聡子のこともちゃあんと見てるし、どの孫に対してもきちんと目が行き届いている。
 糸子が子供たちを顧みないことの穴埋めを完全に全うしている点で、小原家をきちんと下支えしているのが、さりげなくすごい。 若いころからの茫洋ぶりなのですが、彼女なりの役割、というものに落ち着いている。

 糸子は優子から、自分がもう時代遅れみたいに言われたことが癪に触って仕方ありません(笑)。 アタリメをかじりながら酒をかっ食らい、「半人前が! なんじゃあいつら、あんーな仲悪いクセに!」 と、善作が乗り移ったかのよう(笑)。
 またゴロ寝怪獣になった糸子(笑)、そばで食事を取っていた聡子に、直子の服は変やろ?と訊くのですが、聡子はうちもあんなん着たい、と無邪気に言い切ります。 それに果てしなく絡む糸子(笑)。 絡み酒かい(笑)。
 賞状の入った筒が、置き去りになってます。

 東京。
 チラシを配り続ける直子。
 プライドだなんだと言っている場合ではなくなっている模様です。
 そこにやってきたウィンドウショッピングの客。
 直子の服を嘲笑って去っていきます。
 装麗賞の評判でやってきた客も、冷たく一瞥するのみ。
 孤独を噛みしめる直子。
 そこに後ろから足音が近づいてきます。
 「いらっしゃいま…」
 しおらしくあいさつをしようとする直子の前に現れたのは、理恵を抱いた優子です。

 思わず泣いてしまう直子。

 ダメだここ。

 涙腺崩壊する。

 直子が、「私を見て!」 と言わんばかりの派手な服を着て、メイクもかなりとんがっているがゆえに、このシーンは泣けるのです。

 さっきだいぶ前に解説したのですが(笑)、これは要するに、こんな恰好をしていなくても、人が常にしている 「外敵からの武装」、いわば 「心の壁」 の象徴なのです。 エヴァ的に言うと(笑)ATフィールド。
 それが突き崩された瞬間、人は安心して、泣いてしまう。

 自分の追い求めている夢が大きいからこその、挫折の大きさ。
 先週分で解説しましたが、装麗賞と言っても、単になんちゃら審査員の評価でしかない。
 そんな一面的な評価は、その人の自信を空洞化させる危険性を、常に孕んでいるのです。
 そんな壁にもろにぶち当たっていた直子。
 だからこそそこに、最大のライバルと直子が考えていた姉の優子が来た、ということの心強さが、直子を泣かせるのです。
 さっき解説したように、直子には、姉に甘えたい、という屈折した感情がある。
 それが噴出してしまった、とも言えるのではないでしょうか。

 …こうして解説してしまうと、泣けなくなってくるな(笑)。

 仏壇に朝のあいさつをする千代。
 相変わらず、異人たちとの会話がこの物語の底辺を、静かに流れています。
 そこで千代が一瞥し、仏壇のなかに置いた、聡子が持ってきた賞状の入った筒。
 それはテニスの大阪府大会で、聡子が優勝した賞状だったのです。





 土曜日放送分。 あ~くたびれた。

 優子は無敵の外面スマイルでデパートの支配人をすぐさま魅了(笑)。
 奇抜な服に眉をひそめる客にも 「カラスみたいでしょ?」 と笑いを取り、「でも私が着てるのも、ここのデザイナーの服なんですよ?」 と効果的に商売をしていきます。 糸子の厳しいビジネスの薫陶が花開いている。

 お客に媚びんでもええ、と憮然とする直子に、優子はいったん店の周りに人がいないことを確認してから、直子をクリアファイルでどつきます(笑)。

 「アタっ! なんやっ?!」

 「このクソガキっ! いつまで甘ったれてんやっ!」

 「はあっ?!」

 「これは商売なんや!
 クサレ芸術家気取りも、ええ加減にしいっ!」

 そこに入ってきた支配人。 「やぁ~~小原姉妹、どうだね調子は?」

 優子はジキルとハイドのように豹変、ニコニコ満面の笑みを作って、「ああ~、どうも! おかげさまで、なんとか頑張っておりますぅ~」(爆)。

 そして聡子は、テニスの大阪府大会優勝者として全国大会出場のため、東京に行くことに。 祝賀会が 「太鼓」 で開かれるのですが、そこで目を引いたのは、木岡のおっちゃんの老けぶりでした。 幸いなことに女房も健在でしたが、あの下駄屋はいったいどうなったんでしょうか。

 聡子が東京に行く日、糸子は徹夜明けで、ミシンの前に突っ伏して寝ています。
 「ああ…行くんか…気ぃつけてな…」
 起きがけの眠たい目のまま、半分機嫌悪そうに言うだけの糸子。
 聡子は構わず、明るく出発します。

 東京の、あの下宿にやってきた聡子。 中は…。
 あのおどろおどろしい魔女の部屋は、幾分緩和されていたようです(笑)。
 連れてきた優子もすぐ店に戻ってしまい、ちょっとさびしそうにする聡子。
 しかしこれは、聡子が望んだことなのです。
 ホテルでも取りゃいいのに、という糸子のモノローグ。
 でもそこでなんの世話もされないまま、姉たちの仕事ぶりを見ていた聡子には、テニスよりもやりたいこと、という気持ちが、徐々に膨らんでいくのです。

 そんな聡子、なんと全国大会で優勝してしまう。

 姉たちとその喜びを分かち合う聡子ですが、アホの聡子は(笑)実家に連絡を寄こさなかったために、糸子がそれを知ったのは、翌朝のこと。
 しかも中学時代の恩師とか顧問とかゆー人に叩き起こされて(笑)。

 糸子、額を赤くしたまま、それをメーワクそうに聞くのですが(今週は赤いポイントがあまり出て来よらんと思っていたら、ここか…笑)、「…なんや、そんなことか…」(笑)。 そんなことかて(笑)。 「ほなまた、本人帰って来てから、直接ゆうたってください」 とまた寝てしまいます(笑)。

 それにしてもですよ。

 糸子は何を、そんなに徹夜続きで頑張っておるのでしょうか。

 仕事がいくら忙しいと言っても、それまでこういう描写は、一切なかったように思うのです。

 これにはどうも、糸子が将来に向けて、何かステップアップを企んでいる、という匂いを、強く感じる。

 あと2週間。

 糸子が夏木マリサンに脱皮するまで、あと2週間なのです(宇宙戦艦ヤマトか)。

 商店街に横断幕が張られ、大騒ぎで帰ってきた聡子に、糸子も一応はお追従のように、聡子を褒めてあげます。

 「お帰り。 ごっついなあ。 全国1位か!」。

 しかし糸子はすぐに仕事に復帰してしまう。 それを一瞥する聡子。

 聡子はみんなに祝福されながらも、思い詰めたような顔をしていきます。 夜中に糸子が操るミシンの音が鳴り響くのを、寝床でずっと聞いている聡子。 その音が聡子の頭いっぱいに鳴り渡ったところで、聡子は決意するのです。

 居ずまいを正している聡子。 やってきた糸子に、今日限りでテニスやめるわ、と言い出します。
 糸子はなんとなく他人事みたいな感覚で、「なんでや?もったいない」 と引き留めます。 ただしそれは、けっして強い調子ではない。
 この糸子の態度、無責任と紙一重で、尾野真千子サンのその演技バランス感覚が、とてもいい。
 糸子はもとより、娘たちに対してあれこれと干渉するタイプではありません。
 ちゃんと生きていけるんやったらそれでええ、という態度です。
 ところがそれは、常に無責任、と隣り合わせの状態。
 それを冷たい、と取るか、信頼されている、と取るかは、人によって違います。
 聡子はそれを、冷たいと取った。
 のほほん聡子の次のセリフは、見る者の心を打つのです。

 「…もうええんや…」

 「はぁ?」

 「…やれるとこまでやったよって」

 「いや、せやけど…」

 糸子は言いかけて、聡子の感情が高ぶっていることに、初めて気付きます。

 「…

 もうさみしい…」

 …

 驚いた表情の糸子。

 「…さみしいさかい…」

 泣いてしまう聡子。

 ダメだなあこれも。

 泣ける。

 「(うちは、なぁんも気ぃ付いてへんかったけど、上2人の取っ組み合いの横で、いっつもヘニャヘニャ笑ろてたこの子にも、いろんな思いがあったようでした)」。

 洋裁をやると聞いて驚く千代に、聡子はこう言います。

 「もう全国1位とれたよって。
 …
 そらうちは、お母ちゃんも姉ちゃんもみぃんなそればっかしや。 うちだけずっと仲間はずれやったんや。

 …

 やっとや…。

 こんでやっと仲間入れる…」

 全国1位になったからもういい。
 これをもったいないかそうでないかを決めるのは、やはり本人次第だ、と思うのです。
 ひとというのは、どこを目標にしているかで、ゴールそのものも決定的に違ってくるのです。
 町内の1位なのか。
 都道府県の1位なのか。
 全国の1位なのか。
 世界の1位なのか。
 ひとは欲張りだから、どうしても世界を目標に据えたがる一面があるけれども、アスリートたちは、自分が体力の限界に挑戦しながらも、限界が分かるだけに、ゴールを自分で決定する選択に迫られるわけです。 他人がとやかく言うことじゃない。
 聡子の選択を、「母親にかまわれたがっているから」 と安易に判断してしまうことは、誤りであると私は感じます。
 その視点から見ていくと、今週の話は、限りなくベタに近くなっていく。
 どうせ聡子もファッションデザイナーになることは分かっているから、と見くびりながら見ていると、聡子が直面していたアスリートとしての意識の限界に、目を向けることができなくなる。

 聡子が実業団なり、そこでそこそこ活躍することは出来たかもしれない。
 でもそれは、最終的に、聡子が本当にやりたいことではなかった。
 単純に母親にかまわれたがっていたのではない。 その先にいろいろある。
 千代と聡子との今週最後の会話のなかには、その真髄が隠されているような気が、私にはしたのです。




 …疲れた…。

 (笑)

 以上です。

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コメント

リウ様、こんにちは。ご無沙汰です。
長兄を冥土に見送る儀式をしていた為に、感想に参加出来ませんでした。

大河ホームドラマの体を為してきたカーネーション。
糸子に善作の、千代にハルの影が二重写しに重なり、重層的な世界観を形成していますね。子ども達の演技は、直子の存在感が秀逸。モデルとなったコシノジュンコ氏に、よくぞ此処まで近づけりと、脱帽しました。

反対に、木之本のおっちゃんが年齢不詳状態で??? 演出プランの不徹底? 俳優さんに役柄を丸投げ? 瑣末な場面ですが「良いのか?」と、疑問視しておりました。

ネタを沢山抱えてシンドイと思いますが、どうかご自愛下さい。

投稿: M NOM | 2012年2月19日 (日) 14時46分

火曜日放送分の
>>結局フツーの振り袖姿で式に赴く直子。

このときの直子が結構美人に見えたので吃驚
しました。
川崎さんも女優だと再認識させられました。

ところで、Motherの再放送が始まり、2話分
を録画しました(テロップには再編集とある
ので、CM枠を増やすためにカットしていると
思いますが。)。
普段は全くドラマに関心がない私でもMother
の名前と、松雪泰子が主演で芦田愛菜という
子役の出世作だということは知っていました。

まさか尾野真知子さんが出演しているなんて、
知っていたらオリジナルを観ていました。

考えてみるとこのMotherというドラマが成立
するためには、尾野真知子さんの凄惨な虐め
が不可欠です。ということは、尾野さん凄か
ったのでしょうね。
大切に観ていこうと思っています。

投稿: MLACT | 2012年2月20日 (月) 00時40分

M NOM様
コメント下さり、ありがとうございます。

いつも真っ先にコメントを寄こしてくださるかたがこのところどうしたのだろう、と思っておりました。 大変でございましたね。 くれぐれもお気を落とさないよう、私もお祈り申し上げます。

人生、生まれ来る命があり、人との出会いがあり、人を見送る。 この連続で、自らも年老いていくんですね。 50も近くなるとつくづくそう感じます。

「カーネーション」 もまさに、その感覚で突き進んでいくドラマだと思うのですが、木之元のおっちゃんと木岡のおっちゃんの老け方の違いには、私もちょっと注目しています。

長く生きてると、「この人は老けるのが早い、この人はいつまでたっても老けない」、と感じることってありますよね。 木之元のおっちゃんはまさに後者のタイプ。

私が思うに、これは木之元のおっちゃんがめげてもすぐ立ち直り、自分の生きたいように生きているから老けるのが遅いのではないでしょうか。 気持ちがいつまでも若いから、外見上も老けてこない。

もしそんな思想が演出でなされているのだとすれば、これもまたこのドラマを礼賛するファクターになってしまうのですが。

投稿: リウ | 2012年2月20日 (月) 08時00分

MLACT様
コメント下さり、ありがとうございます。

「Mother」 では、このブログでは何度か書いておりますが、オノマチサンが愛菜チャンをいじめる母親役だったことに加えて、周防役の綾野剛サンが、そのオノマチの 「内縁の夫」。 尾野サンはどうしてもわが子をいじめてしまう苦悩を演じ切っていて秀逸だったのですが、この周防のほうがね…(笑)。 まあどんな男なのか、ご覧下さいませ(特に第1話はエグイ)。 私はドラマを見ていて、これほど憎ったらしい男を見たことがありませんでした(笑)。

直子役の川崎亜沙美サンですけど…。

プロレスラーなんですよcoldsweats02
それにしてはかなり演技がすごいですよね。
取っ組み合いのシーンでハマっていたわけだ…(笑)。

「Mother」 なんですけど、尾野サンもよかったけどやはり、芦田愛菜チャンがすごかった。

今ではこの演技パターンが周知のものになってしまってどうも鼻につく、というかたが多いみたいですが、「Mother」 のころは私、この子に10年分くらいの涙をもっていかれました。

今この子がどうしてここまでもてはやされているのかがよく分かると思います。 そしてもうすでに、子役の悲劇に突入している感のある彼女。 はたで見ていて痛々しい。

「Mother」 に関しては、当ブログでもかなり詳細なレビューをしておりますので、もし気が向いたらお立ち寄りください。 コチラ→ http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/04/mother-1-2-447a.html

(記事の最後に各回へのリンクがあります)

投稿: リウ | 2012年2月20日 (月) 08時39分

お疲れ様です。リウさんのアップが日曜朝になってからカーネーションのない日曜朝が楽しみになってます(笑)

この週。
なんや糸子冴えないなぁと思っていましたが、リウさんのレビューを読んで今週。お見通し!さすが!と思いましたよ。
しゃがんで一二の3!で飛び上がる、そんな糸子に「そやそや!それでこそ糸子や!」となんかとっても元気もらえました。47歳…徹夜などもうとうにできまっしぇん(泣)うちの3姉妹はますますキラキラして可能性やらなんやら…あ〜もうワタシも立派なオバサンね。と嘆息する日々
彼女達がイイ!と目がお星さまになるアイドルやら歌やらオシャレやら全然わからんちんshock
そんでいちいち『こんなん何がイイのさ』とけちつけてから、オバサンには理解できないことに呆れられる始末。

けど…糸子に教えられました。
自分がイイと思わなくても彼女らはわかってる。そんでイイんだと

感覚の老化があってもそれを認めることで見えてくるものもある。
ちっとワタシも賢くなりました。
で、仕事にもプラスに働いてるようです。
まだやれる。
諦めなければ

単純で良かったと思います。


聡子の『もう、さみしい』には泣かされました。
勝さんのいつも上機嫌の気質を一番受け継いでいる子。けどその上機嫌の笑顔の裏側にはご指摘のとおり、かまってちゃんのさみしさがこちらには見えていたから、いつ爆発するんだろうと思っていました。あのぽつりとした さみしい の告白は、いつぞや直子を預けての雪路の勝さんの涙となぜかだぶり、なんか悲しくてさみしくて…

そうそう。あの時の赤ちゃん直子。泣いてばっかだったあの子。コシノジュンコさんの実のお孫さんだったらしいですよ。
撮影中、本気泣きで結構大変だったとか…

コシノファミリーの全面的な協力で、この奇跡のドラマを毎日見れる幸せ。
ほんとありがたいです。

投稿: みち | 2012年2月21日 (火) 01時08分

みち様
コメント下さり、ありがとうございます。

ひや~、小篠サンのひい孫とは…。 もう記憶の彼方ですが…coldsweats01。 理恵、のほうじゃなくて直子の赤ん坊時代のほうですか。

土曜日はBSで一週間分をリアルタイムで見て(寝てしまって後から、という場合もあります)そこからだいたい前文と、月曜放送分を書いているあいだに、また眠くなってまいります(笑)。 で、何時間か寝たら、またまた作業に取り掛かり、半分あたりまで書くとだいたい晩ごはんとなり(笑)、それでまたうつらうつらして、「チューボーですよ!」 の時間あたりに起きることもあれば、午前2時くらいまで寝てしまうこともあります。 そこからラストスパートで、5、6時くらいには完成する、というパターンであります(なんかアホみたいですね、こうやって書きだして見ると…)。 私の週イチの休みを返してくれ~っ(爆)。

しかし糸子に、自分の年齢を越されてしまいました…coldsweats01。 もう、さみしい(笑)。

私の涙腺崩壊ポイントは、直子が助っ人に来てくれた優子を見て、泣いてしまったシーンでしたね。

頑張っても頑張っても続くいやなこと。 意地っ張りでやってきたから、誰にも弱音は吐けない。

毎日の大阪への電話が、そんな助けを求めている気持ちの表れだとは、自分自身も感じてなかった、と思うんですよ。

でも千代をはじめ、家族はそれを敏感に感じ取る。

誰からも見向きもされないばかりでなく、最先端を走っているからこそ味わう風当たりと孤独感のなかで、いきなり現れた、姉。

折れそうな気持ちを抱えて頑張っている人なら、この時の直子の涙には、心から共感するだろうな、と感じます。

もう残り10回を切ってしまった、オノマチサンの糸子。

どんな脱皮をするのか、興味は尽きません。

投稿: リウ | 2012年2月21日 (火) 14時22分

再見も第20週です。

才能任せに突っ走る直子の傍ら、優子が半泣きで積み重ねてきた経験が実を結ぶのに併せて聡子も参戦とバトルロイヤルが一気に本格化するダイナミズムは見事。後、「こだま」をモノクロTVで映す演出は予算の範囲内の工夫が感じられます。

しかし直子、雇われ店主とはいえ下積みも研修期間も経ずのド新人が即、現場のトップは破格を通り越して無茶。やはり例年の壮麗賞と比べても「史上最年少受賞!期待の超新星!!」とマスコミが騒いだ事が原因でしょうか。紳士世界刊行などメディア拡大期(それでいて現在のような乱立状態ではない)というのが拍車をかける。百貨店側も直子の服より肩書きを見てのスカウトですね。要は客寄せパンダ。実際にはアライグマ(某アニメに惑わされないよーに)でしたが。
この事態に糸子が無頓着だったのは、東京への関心が薄い事と「言うても聞かん子や。覚悟は本物やったし痛い目を見るのも勉強の内や」ぐらいの感じでしょうか。東京かぶれ(笑)で、社会人として最初の一山(出産・育児を含めれば二山?)を越した直後の優子は母に比べても妹の状況に危機感が強かったでしょう。

上京を申しでる場面は小細工を弄した第18週との比較で優子の成長を示しますが聡子の表情にフォーカスを当てる演出。末っ子視点で姉は着実に母に認められる存在になっている(優子がどん底の時に「太鼓」に随伴していたのもポイント?)。
この後の優子と直子の対面ですが川崎さんが最初、スゲー嫌そうな顔に見えます(笑。ライバルにどん底の自分を見られる屈辱。まして直子。こんな直子の気持ちを溶かしてしまうのは、やはり「母性」でしょうか。第19週の千代さんのお見舞いが(正確には二宮直子時代の第17週から)まず前フリ。先だっての糸子上京でもチラっと泣きますが「松の5人前や。竹梅や頼むなや」「ホットケーキまだー!」とオヤジ属性の方が強くて、前フリ第二段階。満を持しての優子。里恵を連れたまま訪れるのも、(極論すれば)優子役が新山さんなのも、このために思います。尾野さんや安田さんも撮影終了後に浮いた話が出てますが、既に結婚して娘さんがいるのは新山さんだけ。

しかし第115回では早くも次のステップが始まっていたようです。優子が着ているのは直子服のアレンジですが第21週で登場する優子デザインの発芽ですね。学生時代の「自分の持ち味が無い」という直子の指摘。岸和田に戻った直後は目の前の仕事をこなせるようになるのに手一杯でしたが、上京を申し出る頃には「才能は勿論、デザイナーとしての目線も直子の方が上」という姉として屈辱的事実までしっかり受け止めています。天性の閃きはなくとも着実に経験を積み重ねていく優子のスタンス。
一方、直子ですが優子が来る前は店内には直子服としてはおとなしめのが置いてました。自分の美学に拘る直子ですが、ポケットの件など世間に併せる必要性もそれなりに感じていたのではないかと。でも評判も売り上げも全く上がってこない(往年の小原呉服店のようだ…)。ところが優子は直子服の中でも強烈な一品をドーンと置いた(笑。「何のつもりや」な心境の直子、ドレスと優子の間から見ている表情にフォーカスを当てる演出。姉の接客自体は気に入らない一方で、持ち味を殺す方向に気持ちが向いていた自分に気付いたのではないでしょうか。肝心なのは持ち味を上手く相手に伝える事。これが第21週の(時代が追いついてきた余裕も手伝いますが)スタッフや聡子への助言に繋がる。
優勝報告に聡子が訪れる場面で、並んでお客に対応してますが、「コイツのいい所を盗んでやる(真似ではない。そもそも出来ない)」的な水面下の戦いが始まっていた気がします。

前半は優子が、後半は直子が自分を見失い立ち直るまでを描いた第20週。しかし、こうして見ると「姉ちゃんは偉いやんか」の一言で復活した糸子の単細胞こそ社会人として、もっとも得がたい資質のような…。優子の経営手腕や直子のセンス、一面的には糸子を凌いでいますが、やはり一人の人間としてのバランスやタフさは「ウチらの何枚も上手や」です。

投稿: 巨炎 | 2012年9月23日 (日) 11時47分

巨炎様
ちょいと腰がアレでして…。 パソコンの前に座っていられません。 あとで返信いたします。

投稿: リウ | 2012年9月24日 (月) 10時57分

巨炎様
えー、大変申し訳ございません、いましばらく返信お待ちくださいませ…(こちらも全力で返信いたしたいので…)。

投稿: リウ | 2012年9月26日 (水) 13時47分

巨炎様
病もある程度癒えて、あらためて本腰入れて返信いたします(あまり腰を入れすぎるとイテテテテ…笑)。

直子の東京進出失敗について糸子の心情を考えたとき、結構ヒントになっているのが、この週フェノメノンたちに寿司をごちそうしているシーンではないか、と感じます。

「夢は大きいほど壊れやすいよって、どうか、どうか、守っていけるように」。

糸子は彼らの大きな夢を目の当たりにしながら、自分の分不相応な夢と格闘すべき若者たちに、エールを送っています。 直子に対しても、同じ気持ちだったのではないでしょうか。

こんな糸子の 「一見無関心ぶり」 って、孫の理恵に対しても同じだったような気がしますね。

糸子が理恵に対してかけてあげる言葉は、とても必要最小限。 余計なことは一切言わなくて、なんとなく突き放し気味にも思えます。

優子と直子の服に関する巨炎様の考察は、私には及びもつかないことで、あらためて再放送でもしてくれないと確認ができません(録画したものはレビュー終了後片っ端から削除する習慣なので…)。

それにしても、服みたいな小道具にさえ神経が行き渡っているこのドラマの懐の深さには、脱帽の連続でヅラまで脱帽したくなってきます(注:私はヅラではありません…笑)。

巨炎様の深い考察に適切な返信が出来なくてもどかしいですが、今回はビョーキだということでご勘弁願いたいと存じます…coldsweats01

投稿: リウ | 2012年10月 2日 (火) 09時16分

今更ながら、ちょっと気付いた事を…。

>ゴミ袋みたいな黒いテカテカの生地のパジャマ
>を着た直子が妹の聡子と話を寝床でしています。
>リラックスモードです。
この時期に小原家にも浴室が出来たのね。
(直子の髪がまだ乾いていない)
前半のような大掛かりな屋外セットは無くなりますが
屋内ディテールの変換は凝りまくってますな。
第22週とか昭和40年代オンリーの家具類を
あの週だけしか使わないのだから贅沢。

後、聡子に絡んでいく場面は末っ子は皆、可愛い
程度に最初は思っていたのですが、ひょっとして
直子は妹の中に亡き父親の面影を見ている?
戦時中、仕事が無くなっていく勝さんが
気性が激しくて皆に敬遠されている直子と
一緒に二階にいる場面が何度かあります。
「誰にも可愛がられなかった」と言った直子
ですが心のどこかで父親を覚えているのかも。

投稿: 巨炎 | 2013年1月15日 (火) 16時52分

巨炎様
コメント三連投下さり、ありがとうございます。

ひゃ~、1週だけのセット…。

ホントに凝りまくってたな~と感じますね。
「純と愛」、入院でリタイアなんですが(笑)、たまに朝この時間に見ると、かなり気持ちが波立つ感じがします(笑)。 「そんなに朝っぱらから怒るとこっちまで嫌な気分になる」 みたいな(笑)。 朝に見る話じゃない気がします(笑)。

でも 「純と愛」 でも、ここまでの凝り方はしてないでしょうし、今後朝ドラでこういう、細部にまで目を光らせていることは、やらないでしょうねぇ。

直子の勝さんに寄せる思いまで想像するなんて…。

つくづく巨炎様、このドラマを深く読み込んでいらっしゃるcatface

投稿: リウ | 2013年1月17日 (木) 13時24分

>「純と愛」
朝のリアルタイムと貯め録とでは、印象が変わりますか。「カーネーション」は朝から観ても割りと大丈夫でしたが硬軟織り交ぜで、気持ちのぶつけ合いが起爆剤となって作品を一定のベクトルに牽引していました。対して、「純と愛」の場合は「空回り」や「行き違い」の連続。まあ時代モノと現代モノの差という事もあるのでしょうが。

三姉妹は「三つ子の魂、百までも」でしょうか。
優子は終盤、実話に基づいた髪型になってましたが序盤の三つ編みはドラマオリジナルらしいですね。こういうのもポイント。
生前の善作が膝枕に乗せて「髪切ったら承知せえへんぞ」と凄む。三姉妹編開始直後の優子の髪型がこの頃に戻っていて糸子に進路を反対されると、北村の所に足が向く。この時期の糸子に「お父ちゃんやったらこうする」という意識が常にある一方、優子の側には「お爺ちゃんが生き取ったらウチの味方になってくれるのに」的意識があり北村がその受け皿になってる。実際、学生時代~30代半ばまでの優子の人生のポイントにはことごとく北村が絡んでいます。
聡子は男性が常駐している「家庭」という概念が意識下に無いのかもしれませんね。ボーイフレンドは沢山いて男嫌いという訳では全くなかったのに。

投稿: 巨炎 | 2013年1月21日 (月) 14時42分

巨炎様
コメント下さり、ありがとうございます。

おそらく貯め録りして見たほうが、心の準備が出来ていいです、「純と愛」 は。 特に 「朝の時計代わり」 程度にしか見てない人には、ちょっと解せない部分が多いでしょうね。
まあ、リタイアした身でとやかくは申せませんけど。

でも、こういう、「朝っぱらから見ると気分が悪くなる」 ようなドラマをあえて作っている遊川サンは、チャレンジャーだな、という気もするんですよ。
「朝ドラ」 の予定調和をぶっ壊している、というか(笑)。

私の興味は、次回作 「あまちゃん」 に移っているのですが(笑)、クドカンがどうやら四苦八苦しながら作っているのが伝わってきます(雑誌コラム連載で)。

そのコラムで判明したのは、どうやら10~20パーセントくらい水増しして脚本が作られている、ということです。 つまりそれだけ、カットされている。

「カーネーション」 でも同等のことが行なわれていた可能性が高いのですが、おそらく 「省略された」 とこちらが思った部分なのだろう、と感じます。

しかしその、たぶんなされた省略の仕方が、絶妙であったことはもう私も巨炎様もじゅうぶん認識してる(笑)。

北村に関しても、おそらく省略された部分を、こちらが読み取れるように仕上げていたと思われるのです。

出来ればコンプリート版、というものも、見てみたい気がいたします。

投稿: リウ | 2013年1月22日 (火) 08時16分

「花アン」が色々と言われる一方で、
「カーネ」の再放送も20週まできました。

今週、直子が接客のつたなさとか従業員の関係とか
モロさを露呈していきますが、やっぱり糸子は異常。
本人は下積み修行が基盤のつもりですが、
接客指導を受けたこともないのに多少の経験で
スキルを体得していたし、自分とトップの間にいた
中堅所のポジションをすっ飛ばしているのに
イエスマンでない人材を抱える度量を持っている。

善作が「急に膨らますな」と言ったのが解ります。
彼は若番頭から独立したのが28歳、
優子も直子のアドバイザーを経て同じ年。
21歳で看板を立ち上げた糸子って、
シャアが二十歳で少佐とか大佐になったのに近い。
直子がコケた一因は直子自身にも
「母は二十歳過ぎからしている事だから自分もできる」
ぐらいの感覚があったのでしょう。


投稿: 巨炎 | 2014年8月16日 (土) 22時19分

巨炎様
コメント下さり、ありがとうございます。

糸子の接客スキルというものは、そもそも生活に密接していたからこそはじめから備わらざるを得なかった、という種類のように感じます。

売れてナンボ。 売れなきゃ生活できなくなる。

それとやはり、主体的な経営者として松田などに経理を丸投げしていなかったのではないか、という気もします。 だから洋装店の経営にブラックボックスがない。 従業員が着服をしたりする変な隙間というのが、ない気がするのです。

直子は芸術家肌だから、いい作品を作っていれば客はしぜんとついてくる、というのが理想なのではないか。 だから経営も他人任せで、かなりずさんだと感じます。 そこに優子が入ってきて、ようやく経営が立ち直る。

つまり娘たちというのは、それぞれが糸子のひとつの側面を有した分身なのではないか、という解釈も成り立つ気がするのです。

投稿: リウ | 2014年8月17日 (日) 08時54分

>売れなきゃ生活できなくなる。
>主体的な経営者

えー、第5週後半~第6週前半にかけて
経済観念欠如ぶりを善作にかなり怒られてますが…。
松田氏も糸子と直子を経営者としてドッコイ扱いだし。
私は、この辺りは糸子も直子同様に才能故の
落とし穴があるという感じるのです。

明日放映分の話になりますが、直子が
背の高さにコンプレックスを抱くスタッフに
「自分の持ち味に自信を持て」と語っています。
これは直子自身が行き詰まりを脱し
「デザイナーが自信を持って進めるから買う人は自信を持って着ることが出来て、その自信が服と人の双方を美しく見せる」
という形に落ち着いてきた事を示しているのですが、
これ実は糸子が最初に根岸先生に教わった事なんですよね。

糸子自身も上京した時にそれを伝えたかった節はあります。
「服ちゅうんは買うてくれた人が気持ちよう着てくれて初めて完成するんや」
しかしデザイナーとして糸子や優子が積み上げていくモノを一足飛びに飛び越えてしまった直子にはそれが具体的にどういう事なのか理解できない。リウ様の指摘にあるように
「ウチの服の良さは解る人は、喜んで買ってくれるはずや。何がアカンのや」な訳ですね。

「そんなん商売とちゃうからです…」若い頃の糸子の
自分へのツッコミが直子にも当てはまる、というより
糸子が才能故にグルッと回って直子と同じドツボに
ハマる危険性があったように見えます。

「商売は人助けとちゃうんや!」
「これは商売やで!」
天性の資質など持たない善作や優子の方が
商売のシビアさを良く解ってます。その優子が
間に入る事で初めて糸子が言いたかった事は
直子にも伝わったんじゃないかと。

投稿: | 2014年8月17日 (日) 22時00分

巨炎様
ツッコミ下さり、ありがとうございます(笑)。

え~、自分もこのコメントを返信していたときは夏バテでレロレロでございまして(言い訳)、ちょっと事実誤認があったようでございます。

つーか、もう2年以上も見てないし(開き直ってるぞ、ハシモトが開き直っとる)。

ただやはり、糸子の踏ん張りには、「家族を養わにゃならん」、というオブセッションも基本的にはあると思います(聞き慣れない英語で逃げよーとしとる…笑)。

生活が出来なくなるから働くのであり、それはヒッキーをしていた私にはかなり説得力のあるドラマの論調だった、ということは、真面目に申し上げなければなりません。

このへんでお許し頂けるでしょうか?(ハハ…)。

投稿: リウ | 2014年8月20日 (水) 11時43分

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