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2012年10月 6日 (土)

「純と愛」 第1週 転がる石のように

 当ブログ、このドラマの第1回レビューで 「登場人物たちがかなり本気で怒り合っている」 と書いたのですが、このたび1週間分1時間半を通しで見ようとして、その点がとてもしんどく(笑)、休み休みの視聴になってしまいました。 1週間分を通しで見るには適していない、このドラマ(笑)。 疲れる(笑)。

 なにしろこのドラマで、いちばん本気になって怒り続けているのが、ヒロインの狩野純を演じる夏菜サン。

 第1回では、自分の就職のためにわざわざ宮古島に帰ってきて、父親役の武田鉄矢サンと壮絶なののしり合い。
 第2回では、大阪にあるホテルの就職面接で、面接官の態度が気に入らないと、「このホテルは潰れますよ!」 とぶちまける(笑)。
 こんなことを言ったらフツー面接には確実に落ちますが(爆)、「たぶんこーゆーとき、ドラマでは合格するのがセオリーである」 と踏んでいたら果たしてその通りになって(笑)、純はそのホテルで働き始めるのですがそこでも周囲の人間と激しくぶつかり合って、自分じゃセーブしているつもりでも結局は言いたい放題にブチ切れまくる。

 ところがこのドラマ、純がいちいち自分の行動に割って入る、ナレーションがなかなか笑えるんですよ。
 第1回ではいちいち自分のナレーションにツッコミを入れてたのが少々ウザかったのですが(「こんなときにドラマだったらナレーションが入るんだろうな~」 とか)、このドラマは私小説か、というくらい、純のまわりに起きたことしかやらない感じがするし、純のその時その時の心情をこれでもか、というくらい描写しまくっている。

 ここに絡んでくるのが、謎のストーカー(笑)、風間俊介クン(待田愛、まちだいとし)。

 彼の設定は第1週を見る限りかなり謎なのですが、彼は他人の顔を見ると、その人の本性が分かってしまうという特殊能力を有しているらしい。
 だから誰かが優しそうな顔をしていても、彼の目にはとても冷たく見えてしまったりして、他人の顔を見るのがとても怖くなった。
 それで下ばかり向いて歩いているから、彼は街中ですれ違う人すれ違う人にぶつかりまくっている(笑)。

 この設定自体はとても特殊だと感じるのですが、もともとこのドラマの脚本家である遊川サンは、特殊な設定がとても好きな人ですから、別に彼が 「家政婦のミタ」 とか 「リバウンド」 しまくる相武紗季チャンとかと同じ部類の人間だと思えば違和感はない。

 で、その彼が、純を見て、「はじめて表と裏の区別がない人と出会った」 と言って、純に付きまとい始めるんですよ。

 いずれにせよ愛のやってることはかなり理解不能ですが(笑)、愛が話す 「裏表のない人」 という純の評価は、見ている側にはある程度の説得力を伴っている。
 だって考えてることがそのまま行動に出てるタイプだと分かりますからね、過剰な心理分析ナレーションで(笑)。

 純は純で、猪突猛進型、しかも唯我独尊タイプ、愛は愛で、なんか気味悪いストーカータイプ、何を考えてるか分からない。

 これって結構視聴者の好みが分かれそうな気がするんですが、私は気に入りました(愛のほうはこれからかな、理解するのに)。

 このドラマを見ていて感じるカタルシスは、純がぶちまける本音にあると言っていい、と感じます。

 純の人生でいちばんの羅針盤となっているのが、少女の頃に大阪からやってきた宮古島での、おじぃ(平良進サン)の経営していたホテルです。
 彼女はこのホテルが魔法の国のように思えて大好きだったのですが、おじぃが亡くなって父親の武田鉄矢サンが引き継いだこのホテルが、そんな自分の理想からかけ離れてしまった、そのことに心を痛めている。

 つまり、おじぃの経営していたころのホテルは、顧客の満足を第一義と考えていたからこそ、チェックアウトする人たちが笑顔でホテルをあとにしていた。
 それなのに父親が経営を引き継ぐと、金儲けばかりを考えて顧客の側に立っていない。
 そのくせ父親は、島の人間はウザいとかインフラ整備をしなきゃダメだとか、まるで自分の側に非がない、という態度を貫いている。

 純にはそれが許せないのです。

 彼女はここのホテルの経営を引き継ごうとし、父親と衝突します。

 「あたしはっ! おじぃのホテルがこれ以上ダメになるのを見ているのがイヤなのっ!
 お父ちゃんが嫌々社長をやってるならもうやめたほうがいいんじゃないかっていってるのよ!
 うちのホテルはね、穴だらけの船なの! 気付かないうちにどんどん沈んでるの! その場しのぎで、穴を埋めようとしたって無駄なの!
 船を心から愛して、ちゃんと行き先を決める人が船長にならなきゃ沈んじゃうんだって!」

 これは、兄ふたり(速水もこみちクン、渡部剛クン)、母親(森下愛子サン)もあえて含め、この家族が話す言葉から考えまでみんなバラバラなことをきちんと丁寧に描写し、そしておじぃの夢のホテルと武田サンのなんとなく慇懃無礼な支配人ぶりとをきちんと比較して描写していたからこそ説得力があらわれるセリフだと感じる。

 結局父親から 「出てゆけ!」 と言われ、純は仏壇にあるおじぃの遺影を一瞥します。
 そのときに純が感じた、本意のなさ、申し訳なさ。
 彼女はおじぃになんとか顔向けをしたくて、「私、いつかうちよりでっかいホテルの社長になってやるから!」 と父親に啖呵を切って、うちを出てゆく。

 そしてその、でっかいホテルの就職面接で、面接官たちが面接中にオーゲサな音楽のケータイ着信音を鳴らしたり、スンゲーでかいクシャミをしたりして、面接を受けるほかの女の子の話がメロメロになっているのを苦々しく見ていた純。

 自分の番になってやはり、オーゲサな着信音と、デケーくしゃみが繰り返されたことによって、その怒りが爆発してしまいます。
 純は相手が面接官だろうがなんだろうが、自分の言いたいことは言わずにはおれないのです。

 「(心の声:冷静に、冷静に…)こんなことは言いたくないんですけど(あ゛あ゛~っダメダメ、純っ!ダメっ!)どうしてケータイとか切っとかないんですか?
 さっき、彼女(メロメロになった人)が、あなたのケータイが鳴ったせいで調子が狂って、結局言いたいことの半分も言えなかったの、分かってます?
 (制されて)てゆか、あなたのクシャミもそうですよ?
 もう少しこう、気を遣って、せめて小さくやるとかできないんですか?
 あなたみたいにでっかい声でくしゃみをする人って、まわりの人間がどれだけびっくりして、どれだけ心臓が縮む思いがするか、分かってます?
 (ここで渋い声の志賀廣太郎サンが「もうそのくらいで、時間もないし」 と割って入ると、純、すっくと立ち上がり)時間がないとおっしゃるなら言わせていただきますけど、この面接は、あたしたちの一生がかかってるんですよ?
 だったら、あなた(志賀サン)もこっちが話してる時は書類なんか見てないで人の顔をちゃんと見ましょうよ!
 もう二度と会えないかもしれないんだから、せめて、今この瞬間を、共に、いい時間にしましょうよ!
 考えたらそれってホテルの基本理念じゃないんですか?
 それくらいの気配りもできなくて、よくホテルで働いてますね?
 エライ人がこんななら、近いうちに潰れますよこのホテル!」

 そして。

 面接後、近くの橋でぐったりとうなだれる純。
 「(あ゛あ゛~。
 やってしまった…)」

 こうして書き起こしをしていて気付きましたが、これって 「曲げられない女」 の菅野美穂チャンや、それこそ 「リバウンド」 の相武紗季チャンが通ってきた 「ボーダイなセリフ」 の、ほんの序の口、という気がしてきた(笑)。

 まさしく遊川作品だ。

 会社の面接で 「なんだここの面接官、や~な感じ」 とか思った人なら、純のセリフのひとつひとつに快哉を上げたくなるはずであります(笑)。
 このドラマのカタルシスは、まさにここにある。

 彼女は 「社長になりたい」 という入社動機を話すのですが、入社後それが揶揄の対象になる。
 彼女が考えている 「おじぃのホテルの理念」 と、この大ホテルの理念とは食い違いを見せていき、第1週からかなりしんどい状況になっていきます。
 彼女が面接の際にかばったメロメロチャンも入社したのですが、純の歯に衣着せない性格に、いつしか彼女も、純から離れていく。

 ここらへんの描写も、とてもシビアです。

 異常な状況を自ら作り上げていき、そこから見えてくる人間の本音というものを引き出す作業。
 遊川サンは粛々と、自分の仕事を進行しているようであります。

 そして純。

 彼女の言っていることは、常に正論です。

 私は面接の際に面接官たちがケータイを鳴らしたり大きなくしゃみをしたりしているのは、こちら側のペースを乱す面接官たちの策のひとつではなかろうか、と思っていたのですが、見進めていくと、どうもこの面接官を担当したホテルの先輩たちは、顧客満足などはどぶに捨てたマニュアル人間たちのようです。
 こんな 「ホスピタリティ」 を忘れたようなホテルに、どれだけ正論が通用して変化を切り拓いていけるか、それもこのドラマの大きな興味のひとつであります。

 純はたぶん、そのなかに投じられる、ひとつの石、一石です。

 彼女の正論は、時に自分を曲げて生きてきた者たちをいらつかせる。

 でも、純の側にしてみても、彼女は転がっていく石のように、世間というものにぶつかり続けながら、次第に相手に通用していく自分の意志というものを見つけていくはずです。

 なかなか楽しみなドラマになっていく印象がするのですが、やはりこれを1週間分見続けていくのはつらいと感じます。 せめて3回分づつくらいでレビューしたいものですが、そこまで自分に気力があるのかどうかも今のところ分かりませ~ん(ハハハ…)。
 今回だってセリフ起こしだけで相当疲れたもん(笑)。

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コメント

主演の夏菜さんが脚本家に何度も泣かされたとか
真剣にドラマを作っている逸話が聞かれるので
結構、期待できそうですね。でも朝から
この内容では視聴率はとれそうもないな~。

ところで前回、触れられていた宮地真緒さんは
丁度、10年前の朝ドラ「まんてん」に
出ていましたっけ。
屋久島から大阪に働きに出てという辺りは
本作と被りますが、バスガイドを首になった
女の子が数年で宇宙飛行士になり、
結婚・出産まで経験する展開のご都合主義ぶりは
歴代作品の中でも、ちょっとアレでした…。

巨炎様
コメント下さり、ありがとうございます。

朝っぱらからかなり気持ちがささくれ立つような内容のドラマだと思います(笑)。 ただ救いなのは、純の詳細かつシツコイ(笑)ナレーションが面白いことかな。 曲げられない女もリバウンドした女も、かなり正論で攻め立ててたから、それが気持ちよくハマると、家政婦みたいに視聴率も上がるかも。

巨炎様は朝ドラに関して生き字引のようですねhappy02。 「まんてん」 はやはり(笑)未視聴ですが、朝ドラ、いろんなレベルの作品がある、ということでしょうね。 「梅ちゃん先生」 が気楽に見られた、ということが、やはり意味のあることだと腑に落ちてまいりました。

リウ様

こんにちは。
第1週、私も中々面白く観ました。
単なるヒロイン上げな展開にしていないのが、好感が持てます。

その点で、ホテルの指導担当、桐野さんの存在が気になりますね。「自分が正しいとしか思えない人間は、成長をやめた人間です」というセリフは、朝ドラの中では極めて画期的な名言ですよ。考えてみれば、このキャラも、「女王の教室」天海祐希さんの役どころに共通するものがあります(あそこまで極端ではありませんが)。

ここにも、遊川ワールドの住人がまた一人、という感じです。

Zai-Chen様
コメント下さり、ありがとうございます。

富士子サンのセリフ、そうですよね。 かなり重要だと思ったのですが、純のボーダイなセリフを書き起こししているうちに、気力が失せてしまいました(笑)。

この第1週でいちばん重要なシーンだと私が思ったのも、ホテルのチューボーでのやり取りでした。

純の上司たちは、けっして正しいとは言えない。

でも、どこかでサービスに歯止めをかけなければ、顧客満足の奴隷になってしまう部分もある。

純のしていることは、実に正しいけれど、それだけで回っていかない世の中というものもある。

結構遊川ワールド全開の、深い話が展開しているように思えました。

ああ~、このドラマのレビュー、どうしましょう?(と訊かれても、困りますよね…笑)。

こんばんは。

私もこのドラマ「ちょっと疲れる・・・」という印象です。(あらすじ・みどころ書くのはすぐ終わりますが)
「朝から毎日危なっかしいヒロインのハプニングを見せさせるのか?」みたいなところです。

ただ、気になったのは今週1週間で思ったのは初回で武田鉄矢とケンカした際に「ここより大きなホテルの社長になる!」ということです。

純の夢は「おじいの”ゆめのくに”の再建」のはずなのに、売り言葉に買い言葉でか、まだ気づいていないのか「大きなホテルの社長」と言っている。

大きいホテルとロイヤリティの高さって必ずしも一致しない。そこに彼女はまだ気づいていない。(気づかせずに半年終えるならドラマとしてちょっとお粗末です)
極論言えば「ゆめのくに」は民宿でも魅せることは出来るのですから。


あと、ロイヤリティの低さに文句言ってるシーンがあって(スリッパの位置聞いたり、エアコンの位置聞いたり)、そこに「若さ」を感じました。
日本の物価で24,000円でそこまでのロイヤリティを求めるのは結構酷です。
サービス業に従事している人の全てに適正があるわけでもないし、(だからこそ「マニュアル」の存在意義もあるわけで)そんなに高いロイヤリティを求めたら従業員は感情労働で潰れる人が続出するでしょう。
主人公は若いからまだそこに気づいてない。
人を育てる難しさ、経営の難しさ、客への責任などなど。
誇張されたオオサキプラザホテル重役の面々ですが、彼らの言い分も決して「間違い」でもない。(純の言い分もそうですが)
「客」の求めるサービスの質の高さ、快適さが現代の日本の労働者の感じる閉塞感の一因であるのも事実なので。

「ゆめのくに」ってなんなんでしょうね〜なんて思ったりします。

まぐのりあ様
コメント下さり、ありがとうございます。

純を見ていると、やはり 「曲げられない女」 のオギワラ、菅野美穂チャンを連想しますね。
彼女は言ってることがすべて正論。
けれどもその正論を貫くことで自らが傷つき、それでもやっぱり最後まで正論を曲げずに生きていた。

今回遊川サンが純に対してオギワラと同じシンパシーを持ちながら物語を進めていくとすると、やはりケータイとくしゃみの上司に寄り添うような展開にはなっていかないような気がいたします。

でもそれでも、やはりその上司たちにも、消極的な正論というものがあって。

つまり仕事をするうえで、それが天職だと思ってやっているのか、サラリーをもらうための手段だと思ってやってるのか、「なんのため」 という意識の違いによって、すべからく行動指針も違ってきてしまう。

たかが5分遅れたくらいいいじゃない、というのはいいのですが、困るのはそれをスタンダードな対応だ、とお客さんに(あ、お客様に…笑)取られてしまうこと。

仕事がどうしようもなく好きでやってる人は、お客様の喜ぶ顔を見ることが出来れば目的は十分達成できるのですが、ただの仕事感覚でやってると、具体的な線引きがされていないことにとても不満を感じてしまう。

「大きなホテルの社長!」 と純が口走ってしまったのは、やっぱりおじぃに対する本意のなさ、申し訳なさから衝動的に出た言葉だと思います。 おじぃのホテルを継ぐことができなかったけれども、おじぃの心は受け継ぐよ!という意味で。

まあ、このレビューの題名にも書きましたが、純はまだまだ若く、とんがった石です。
それが世間に揉まれながら丸くなっていくんだろうな、という気持ちで、このサブタイトルをつけさせてもらいました。

でも、腰痛持ちにとって1時間半イッキ見というのは、ちょっとつらいですね(ハハ…)。

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    レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]
    全200ページ程度のボリュームのなかで、キャンディーズに関する特集記事は50ページ。 ただし、これが濃い。 全シングル曲、ほぼほとんどのアルバムの解説は当然として、彼女たちの芸能界における歴史から見た考察、コメディエンヌとしての彼女たち、DVD解説など多岐にわたり、キャンディーズが分析されています。 特に圧巻は、レア音源に関する記述。 ここまで調べている読み物には、個人的にはお目にかかったことはありません。 700円。

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    こちら上記の海外版。 内容的には国内版とほぼ一緒なので、値段が安いこちらのほうがいいでしょう。

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