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2012年11月10日 (土)

「PRICELE$S~あるわけねぇだろ、んなもん!~」 第1-3回 大切な価値の居場所

 当ブログで木村拓哉クンのドラマを採り上げる場合、常に俎上に上がるのが、この人自身の評価であります。
 つまり木村クンのドラマを論じるのではなく、木村クン個人に議論の矛先が向かってしまう傾向にある。

 それはとりもなおさず、木村クンの演技者としてのスタンスが、世間に出始めのころからほぼ変わらないことによるものが大きい。
 彼は誰を演じるにしても 「木村拓哉」、というカテゴリーから、(著しく)逸脱しようとしません。 頑ななまでに。

 このスタンスは木村クンを評価する際の分水嶺となる。
 私の場合、この 「演じる役より、その役を演じる俳優のキャラ優先」 というありかたについて、あまり批判したりとか積極的にしたくないほうですかね。
 なぜなら、昔から、そういう 「個人キャラ優先」 の俳優さんって、いましたから。
 片岡千恵蔵サンとか、左卜全サンとかね(古っ!…笑)。
 …そう、古いんですよ。
 今はこういうことのできる俳優さんというのは、まったくいないとは言わないまでも、まず見かけない。 器用さとかうまさが優先されますからね。

 そのうえで木村クンの演技を評価すると、必ずしもうまいほうだとは言い難い。
 でも私は木村クンの演技を見ていて、彼が頑なに守ろうとしているものを、尊重してあげたい気持ちになる。
 だって、人の世なんて(大きく出たぞ…笑)、一期一会だと思うから。
 こういうスタンスの人が俳優をやっていて、それを同じ時代に生きている私たちが見る。
 いずれにしたってアクが強いから、後年 「あんな奴がいたなぁ」 という記憶には、強く残るわけです。
 そういう演技者のありかたも、あっていいと思うのです。

 で、このドラマの木村クンですが、相変わらず誰に対してもタメ口(まあある程度は使い分けてますよ)で、感情もとてもむき出し。 考えてることが表情にすぐ出る(人の心が読める 「純と愛」 の待田愛でなくても分かる…笑)。 常識のある大人からすれば、彼は大人になりきれないピーターパンの象徴みたいに見えるのではないだろうか。

 でも、彼がもと勤めていた、「ミラクル魔法瓶」 という会社には、彼の居場所というものが、あったわけです。 そこでの木村クンに対する評価は、実際の世間的な彼の評価と共通する部分があった。

 つまり、ナマイキそう、態度が横柄、といった評価は、気さくである、一緒にいて気を遣うこともなさそう、なんでも相談しやすそう、という評価と、実は表裏一体である、ということ。

 そのなかで木村クンは後者の好意的な評価を獲得しており、彼はその会社のなかで自由に泳いでいたわけです。

 それが、ある出来事がきっかけとなって(なんかネタバレブログがネタを隠しとるぞ…笑)会社を追い出される。 つまり汚職が発覚した時点で、彼の評価は、前者の否定的部分が一気に大きくクローズアップされ、会社内での居場所を無くした。

 住んでいるところも爆破され(笑)ケータイも落とし一気に文無しになった木村クンは、まあ超絶貧乏となったわけですが(笑)、ここで私が注目するのは、彼がそのことについてあまり気に病んでいない、という点です。

 つまり、自分がどんな状況に置かれようとも、その状況を彼はどこかで面白がっている。
 ビンボーでさえ、そのノウハウを知ることを、彼は面白がっている。

 面白がっている、などと書くと誤解を招きそうですが、「目の前に壁がある。 逆境がある。 それを乗り越えるのが人生の醍醐味だ」 という、ある種の強靭な精神力が、もともと備わってしまっているように見えるのです。

 だから面白がっているとはいえ、彼はいつもふざけていない。

 彼にとっては会社での地位とか濡れ衣を着せられ傷つけられた名誉とか、そんなところに興味がないんですよ。
 彼の価値観の中心に座っているのは、そんなことじゃない。

 要するに、やる気があるかどうか。
 目の前のことに真剣になれるかどうか。

 目の前のことに真剣だから、彼は年端もいかない子供たちに対しても、ありがたいと思ったときには、真剣に一礼をする。 「こんなチラシの裏に書いたビラなんか、誰が読むかよ」 みたいなビラを、せっせせっせと書き続ける。

 だからこそミラクル魔法瓶の中村敦夫サンは、自分の後継者に利益追求の冷たい判断しかできない藤木直人サンよりも、木村クンにその素質がある、と死ぬ間際に言い残したのです。

 何かのために一生懸命になれる。
 誰かのために一生懸命になれる。

 このドラマは、けっしてビンボー生活のノウハウを教えるものでもないし、ましてや木村クンが濡れ衣を晴らして会社に返り咲き、藤木直人サンと立場が逆転する、という、ありがちに思われるハッピーエンドを描こうとしているわけではない。

 ビンボーでも腐るな。
 そしてビンボーに、安住するな。

 このドラマの主眼は、そこにあるように思える。

 そのうえでドラマの脇を固める俳優さんたちが手堅い、ということは強みだと思います。
 まずは木村クンの復帰の鍵を大きく握っている中井貴一サン。
 空気みたいな存在の上司を、すごくうまく演じている。 全然笑わせようとしてないのに笑えるというのはすごい。
 ユバーバが(ゼニーバか?)そのまま実写で出てきたような夏木マリサン。
 彼女は貧乏のなんたるかを実に処世訓的に把握している気がする。
 そしてイッセー尾形サン。 「おるおる」 系の嫌味な専務を好演しています。
 そして今回ドラマの木村クンの相手役、ということになるのでしょうか、頭の切れる戦国武将オタクの香里奈サン。 ツンデレ系、ということになるのか、とにかく彼女のキャラが生かされた役になっている、と感じます。

 プロット自体に緻密性がない部分はまま見受けられるのですが、なにしろ見ていてあまり肩が凝らない。 気楽に見ながら、「オレも現状打開しないとな~」 という気分にさせてくれる。

 このドラマを見て、木村クンのことをとやかく言いたがる向きが多いのも分かるのですが、いっぺん自分の価値観について、ちょっと疑問を持つということも、振り返ってみる、ということも、私たちには必要な気がします。

 少なくとも役のなかの木村クンは、そりゃ会社に復帰もしたいだろうけど、そっちよりも大事なものを優先している。

 価値観の置き場所が、違うんですよ。 ドラマの中のその他大勢の人々と違って。 香里奈サンも、子役たちも、そこについて行っている。

 中井貴一サンは、まあベタな展開だろうけど、そんなとこに気付きながら、木村クンの味方になっていくような気がするのです。

 そもそもこのドラマ、題名の時点から、木村クンに批判的な人たちをふるい分けている気がする。

 「あるわけねえだろ、んなもん!」 ですよ?(笑)

 私この副題を知って、少々ムカっとしましたもん(笑)。 なめとんのか?って。

 だから見るの乗り遅れて(笑)。

 この題名を見てもなおこのドラマを見よう、という木村クン寄りでない人たちは、だからよほど木村クンを批判したい人たちなんだ、と思いますよ(爆)。

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コメント

リウ様

レビューありがとうございます。happy01

>ビンボーでも腐るな。
 そしてビンボーに、安住するな。

>このドラマの主眼は、そこにあるように思える。

>そのうえでドラマの脇を固める俳優さんたちが手堅い、ということは強みだと思います。

さすが、リウ様。ほんと、そうだと思います。
脇を固めてらっしゃる方たちとのバランスがとてもいい感じですね。

ビンボーを礼賛というわけでもなく、それでもってビンボーを卑下するわけでもなく。。

今はこういうアパートはほんとに稀だと思いますが、昭和の時代には、こういうアパートもまだ残っていたなと思いました。
困った人がいれば、お互い様で助け合っていたような時代でしたね。

今は、コスト削減優先の時代ですから、新人を育てる人も時間もなく、使い捨ての時代になってしまっています。人を切り捨てること優先みたいな。。。
余裕がないせいで、失敗を許せなくなっているのではないかと。。。
ささいな事で人をバッシングする風潮も、余裕がないせいかなと思います。

コスト削減を優先しすぎる事で、企業が自分自身の首を絞めているのでは?という気がしています。

ビンボーでも、心にゆとりを持って夢を持って前に進んでいってほしいという想いを感じるドラマですね。


「あるわけねえだろ、んなもん!」
私はこの副題は、逆説的なのかなと思っています。プライスレスということ自体が無意味というような。。。

リウ様のレビューは、いつも待ち遠しいですね。lovely
お体と相談しながらupして下さいませ。

投稿: rabi | 2012年11月10日 (土) 23時10分

rabi様
コメント下さり、ありがとうございます。

「あるわけねぇだろ、んなもん!」 って、いかにも木村クンが言いそうなセリフでしたが、子役のふたりが言ってましたよね(笑)。

木村クンのしゃべり方というのは、かようにいい大人を少々カチンと来させる性格がある。

「とっつきやすい」 などと本文では書いてしまいましたが、実際の木村クンに関しては、逆に独特の 「とっつきにくさ」 があるように私は感じています。

それはありていに言えば、「モテる男のキザったらしいオーラ」(笑)。

ずいぶん前の木村クンのドラマのレビューでも書いたのですが、私は彼の行動規範には、松田優作に対するリスペクトが多分なりとも含まれている気がするんですよ。

松田優作サンも、かなり自分のスタイルを押し通した人だったから。

木村クンの場合、若い時にあまりにもイケメンで人気がありすぎたから、松田優作サンが 「家族ゲーム」 で脱皮したみたいな華麗なメタモルフォーゼが出来ず、若い頃のイメージに拘泥され続けている気がする。

今回のビンボー人役というのは、だからそんな彼にとっては、ちょっと冒険がかっている感じがします。

…また木村拓哉論になってしまいました(笑)。
それだけ私を夢中になって論じさせる何かを、彼は持っているということで(笑)。

今どきの世の中、みんな即戦力ばかり求められていますよね。

コストカットの果てに、失われた大事なもの、それは 「やる気」 だ! という叫びも聞こえてきそうな、このドラマです。

投稿: リウ | 2012年11月11日 (日) 07時34分

たしかにキムタクと松田優作、似通っている部分ありますね〜。
自分のアイデンティティーをしっかり確立している気がします。

そして、どこか子供っぽいというか、大人になってしまうと忘れてしまうものをいつまでも持ち続けているような気がします。
それは努力によるものなのか、天性のものなのかは判りませんけど。。。

木村くんは、いつも負けず嫌いで、どんな事にも、どんな時でも一生懸命なところが好きですね。

>それだけ私を夢中になって論じさせる何かを、彼は持っているということで(笑)
確かにそうですよね。彼はどこか別格というかユニークなアイドルだと思います。
(もう、アイドルとはいえないかな?)

香取君や中居君は、番組の中でも、時々疲れてるんだろうな眠そうだなあと感じるときがあるんですけど、木村君は、そういうところを絶対に見せないですよね。
そういう意味でもプロフェッショナルだなと思います。

なんだかキムタク礼賛みたいになっちゃいましたけど、これからも続けてみたいドラマですね。
最後はどうなるのか楽しみです。

投稿: rabi | 2012年11月12日 (月) 13時48分

rabi様
再コメント下さり、ありがとうございます。

そういえば放送が昨日でしたね。 私はまたまた見るのに時間がかかりそうですが(このドラマに限りませんが)。

rabi様のおっしゃるような、「一生懸命さ」 というところも、彼をとっつきにくくしている一因のような気がします。 なんか気安く話しかけられなさそう、という一途さが、彼にはある。

それはどこか、不良少年が持っている結界のバリアみたいで。

でも、真面目な態度で彼と話をすれば、彼はきっと、すごくフランクに話してくれる。 不真面目だったり、色眼鏡で彼を見ているような人と、彼はけっして話そうとしない気がする。

なんかそんな、大縄跳びみたいな変な緊張感みたいなものがあるんですよ。

女性はそんな部分に、男としての 「危険な香り」 を感じ、惹かれていくのではないか、という気がするのです。

また木村拓哉論になってシマッタ(笑)。

これから40代に突入していく彼が、どのようにその 「ヤバい男」 を魅せていくのか、とても興味がありますね、同じ男として(イケメンじゃないですけど)。。

投稿: リウ | 2012年11月13日 (火) 08時02分

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