« 「平清盛」 最終回まで見て | トップページ | 小沢昭一サンの死に思うこと »

2012年12月30日 (日)

「松任谷由実 デビュー40周年 はてない夢の旅」 ユーミンのふたつの顔

 遅ればせながら、入院前に録画しておいたNHKのユーミン40周年番組を見ました。 どうもインタビュー・エディションというのも今日やってるみたいですけど、脳学者の茂木サンが出るかでないかくらいで、内容的にあまり変わらんですね。

 まずは小林克也サンナレーションによる荒井由実時代からの、コンサート・イベントなどを中心としたユーミン・ヒストリー。 そしてユーミンに多大なる影響を与えたプロコル・ハルムとのアビイ・ロード・セッション。 それから、初期のユーミン・サウンドを支えたキャラメル・ママとの久々の共演による 「ひこうき雲」。

 個人的にいちばん興味があったのが、このキャラメル・ママとの共演だったのですが、それはとりあえず置いといて、ユーミンには確実にふたつの顔がある、とこの番組を見ていて考えていました。

 ひとつはパフォーマーとしてのユーミン。 ユーミンのステージは昔から派手だったんですが、私が見たのはたった一度だけ。 「パール・ピアス・ツアー」 の時。 もう30年も前だぞ(爆)。 いや、もともと私、ライヴとか見ない人間なんですよ。 拓郎サンもみゆきサンもサザンもさだサンも、一度も見たことがない。 上條恒彦サンのは見たか、小学生くらいのときに(ハハ…)。

 で、このパール・ピアス・ツアーはユーミンのライヴのなかでも結構地味めだったほうでして、ド派手な仕掛けなどはなかったけれども、のちに当時FM東京でやってたユーミンの番組で、この私が見た当日のことをユーミンが話してくれた、という思い出があります。 なかなかツアーの中のその回のことなんか、話題になんかならないでしょう。 この日は特に観客の体温が低くて(笑)、それでユーミンは覚えていたらしい(笑)。

 で、ユーミンというのはつくづくコンサートで目いっぱい派手なことをやりたい性分の人なんだなー、ということがこの番組前半でつくづく分かったのですが、本当にいちばん彼女が売れてて、シャングリラみたいなド派手なことをやっていた1990年代って、ほとんど私、ユーミンをフォローしてなかったな、なんて考えて。

 私が愛していたのは、ユーミンのもうひとつの顔、「内省的表現者」 としてのユーミンだったんですよ。

 その表現力が最も充実していたのは、やはり荒井由実時代のアルバム4枚にとどめをさす、と考えています。

 特に好きなのがファースト・アルバムの 「ひこうき雲」 で。
 数年前、このアルバムのマスター・テープを聞きながら、当時のスタッフ、そして演奏者たちがあれこれとトークをする、という 「MASTER TAPE」 という番組が、やはり同じNHKで放送されていたのですが、これは私にとってもかなり貴重な保存番組となりました。 この番組を見てからというもの、「雨の街を」 を聞くときに、松任谷正隆サンがピアノの上に置いていった、一輪のダリアの花を思い浮かべるようになったものです。
 「MASTER TAPE」 という題名の番組だから、もしかするとユーミンのほかにも、いろいろとやろうとしてたんじゃないかって思うのですが、これ以外に出てきませんね、あれから(たぶん)。

 その番組のレビューも当ブログでは書いたのですが(こちら→ http://hashimotoriu.cocolog-wbs.com/blog/2010/01/master-tape--10.html)、当時キャラメル・ママのメンバーでギターの鈴木茂サンだけが、とある事情で問題起こしてここに加わってなかったんですよ。
 それが今回、この番組で出てくれまして。 それがうれしくて今回このレビューを書いてます(笑)。

 「MASTER TAPE」 のなかでも、即興的に鈴木サン抜きで演奏が始まって、そのときにユーミンが 「今度キャラメル・ママとツアーしたいね」 みたいなことを言い出していたのが、今回叶ったような形ですよね。
 ただまあ、ここ数年のユーミン、やはり声質が変わっているみたいで、「ひこうき雲」 はオリジナル・キーで歌われなかった。 にもかかわらず、最後のヴァースの一番高いキーを出すのに、ユーミンは苦労していたようです。

 この演奏後に、キャラメル・ママのメンバーたちとのトークが繰り広げられたのですが、鈴木茂サン、結構しゃべっていましたね。 ただまああたりさわりのない話に終始した感はあります。 曲の世界観がしっかりしているから、あまり苦労することはなかった、みたいな。
 やはり 「MASTER TAPE」 でのトークを聞きたかったな。 特に細野晴臣サンのガット・ギターの味がトークの前面に出た感じだったので、鈴木サンの、なんかアドリブ全開のギターを抜き出して聞いてみたかったし。

 まあ何にしても、この 「ひこうき雲」 というアルバムをはじめとして、荒井由実時代のユーミンの曲は、暗いものがかなり多い。

 私、暗いもの好きで(笑)。 だから軽薄短小、ネアカ時代ってすごく嫌でね(笑)。 それはいいとして、だから 「松任谷」 時代よりも 「荒井」 時代のユーミンのほうに心酔してる。

 特にやられたのは、2枚目のアルバム 「ミスリム」 のラスト、「旅立つ秋」。 詩を書く者として、晩秋の空気を完全に言葉にしている、と感じましたね。

 荒井由実時代の空気を代表しているように思える曲、「曇り空」。 彼女の醸し出す 「曇り空」 の空気は、彼女が通っていた多摩美術大学の上に垂れこめていた、1972年あたりの空気を忠実に描写しているような気がします。 多摩美術大学は、私が住んでいるところの比較的近く。 私が彼女の音楽に共鳴するのは、そんなところからきているような気がすごくする。

 「ミスリム」 にはまた、「私のフランソワーズ」 という曲があるのですが、この曲のベースにあるのは、フランソワーズ・アルディの 「もう森へなんか行かない」 だと感じます。 「もう森へなんか行かない」 の曲の出だしは 「私の青春は去って行ってしまう」 ですからね。 ユーミンの作り出す曲の不思議なメロディ・ラインは、個人的な感想を申し上げれば、プロコル・ハルムよりもフランソワーズ・アルディの曲(作曲者はいろいろですが)に影響を受けているような気がしてならないのです。 私もフランソワーズ・アルディは大好きです。

 これらに共通しているのは、やはりかなり内省的である、ということです。 彼女はファースト・アルバムから、「恋のスーパー・パラシューター」 みたいな、派手なパフォーマンスを指向するような曲がありながら、「花紀行」 とか、「なにもなかったように」 とか、とても心の奥深い部分に沈んでいくような印象を受ける曲が多い。

 これも以前にブログに書いたのですが、ユーミンの曲を聞きながら、私も生きてきました。
 ユーミンだけじゃないですけどね。
 でも私のなかでのユーミンは、やはり今でも、「曇り空」 のなかにいるのです。

|

« 「平清盛」 最終回まで見て | トップページ | 小沢昭一サンの死に思うこと »

テレビ」カテゴリの記事

コメント

リウ様

こんなにレビュー書いてて大丈夫なんでしょうか?
心配になってきます。

退院されていろいろやりたい事はおありでしょうが、長時間、座位の姿勢を取ることはやはリスクは高いと思いますので、もう少し、短いレビューの方がいいのでは?
(とはいっても、リウ様の性格上、ご無理かもしれませんけれど。。)

荒井由実、大好きでしたね。
「ひこうき雲」のアルバムも買いましたけど、今は行方知れずです。
「ひこうき雲」をはじめ「紙ヒコーキ」「曇り空」「ベルベット・イースター」どれも素敵な曲ばかりでした。
 ご存知のように、暗いものが好きだったので、松任谷になってからは、、、
40周年のベストアルバムも、逡巡しつつ買わずじまいです。

リウ様。新番組も目白押しですが、やわやわとお願いできればと思っております。

投稿: rabi | 2012年12月30日 (日) 20時08分

rabi様
ご心配おかけいたします。 悪ガキです(笑)。

まあ、そんなに長文の文章でもない、と自分では思っておるのですが。 また調子に乗って本日3つ目の記事まで書いてしまいまして。 でも一つの記事について、たかだか2時間もかけてませんので。 休み休みやっておるので、体調のほうはだいじょぶです。 さすがに昨日は長時間座っていて、お尻が痛くなりましたが、今日は痛くないし。

松任谷時代のユーミンも、私は結構アルバム持ってますけど、「ノーサイド」 あたりが最後だったかな、ちゃんと聞いてたのは。 ユーミンが本当にモンスター的になったのは、まさしくそのあとですもんね。

あとは 「今年のベストドラマ」 でも書いて、今年はフィニッシュの予定ですが、もしかすると毎年恒例、「紅白」 を見ながらのレビューも書くかもしれません(ワーカホリックだなァ)。

投稿: リウ | 2012年12月30日 (日) 22時45分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/521783/56427232

この記事へのトラックバック一覧です: 「松任谷由実 デビュー40周年 はてない夢の旅」 ユーミンのふたつの顔:

» 松任谷由実 最新情報 - Nowpie (なうぴー) J-POP [Nowpie (なうぴー) J-POP]
松任谷由実 の最新情報が一目でわかる!ニュース、ブログ、オークション、人気ランキング、画像、動画、テレビ番組、Twitterなど [続きを読む]

受信: 2012年12月31日 (月) 06時42分

« 「平清盛」 最終回まで見て | トップページ | 小沢昭一サンの死に思うこと »