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2013年2月 2日 (土)

「メイドインジャパン」 第1回 日本経済衰退の原因

 先週は裏番組の 「泣くな、はらちゃん」 を見ていた関係で、だいぶ見るのが遅れてしまったこのドラマ。 「泣くな、はらちゃん」 は第2回までは、かなりイケてます(どっちのドラマを宣伝しとるのだ)。
 このところ体力不足でまともにテレビも見ることが出来ないのですが、ようやくこのドラマを見ることが出来ました。 って、もう今日は、その第2回目ではないか(ドラマ自体は連続3回)。 これは、その第1回目のレビューです。

 メインバンクから3か月後の取引停止を提示され、倒産が不可避となった巨大電機メーカー、タクミ電機。 会長(岸部一徳サン)直属の部署として極秘裏に立ち上げられた再建戦略室に集まったのは、荒野の七人、もとい、七人の侍、もとい(ひつこい)7人の企業戦士。
 彼らの使命は、言わずもがな、父さんの会費、もとい(変換違い)倒産の回避であります。

 そのリーダーには元営業部長の唐沢寿明サン。 財務課長の吉岡秀隆サン、工場長の國村準サンなど錚々たる面々。
 とりあえず家内工業的な超弱小会社で働く身としては、こうした巨大企業の論理というものにはかなり疎いので、ドラマ的な体裁を基準として話を進めてまいりますが、最初の印象としては、唐沢サンと岸部サンの組み合わせで、数年前にフジテレビで放送した 「不毛地帯」 を連想し、吉岡秀隆サンがそれに絡んで、「Dr.コトー」 が混ざってるよ~な印象?(笑) いずれにしても、ドラマ好きとしては、このキャストにはそそられますね。

 ドラマは、営業の責任をとって子会社に飛ばされることになった唐沢サンが、部署での別れのあいさつをするところから始まります。
 まずそこから彼の性格が端的に把握できる。
 開けっぴろげで明るいけれども、言いにくいことをズケズケ言うから、人によってその評価が変わりそうな人。 イケイケドンドンでやってきたみたいで、敵も多そう。
 営業不振の責任をとっての左遷だから、いちいち言うことが自虐的でもあり、それをなんとも自慢げに話したりするから、ちょっとウザいかな、という感じ。
 ドラマに入り込めるかどうかは、この唐沢サンが演じる、矢作という男の性格に左右されます。

 脚本の井上由美子サンは、かつて私にいろんな傑作ドラマを見せてくれた人ですが、この矢作のウザさを強調した導入部分には、ちょっとしたハードルを見る側に設定しているように感じます。
 しかしそのハードルを見る側が飛び越えれば、ドラマにはちゃんと吸引力があり、井上サンの腕が衰えていないことが分かる。
 このドラマからは、綿密な取材がなされている匂いが、確実に実感できるのです。

 そして唐沢サン、吉岡サン、國村サンの主要メンバー3人は、岸部会長から産廃処理場に呼び出されます。 この状況設定も、いかにもドラマ的。
 ここで3人は会長から極秘任務を依頼されるのですが、どうしてここで?という疑問に、会長はこう語るのです。

 「ここは、家電品の墓場だ。 老いさらばえて休みを終えたモノ、生きたまま葬られたモノ。 ここに立つと、長く使えるいいモノを作らねばならん、と身が引き締まった。 おかげでタクミのテレビは、メイドインジャパンの象徴と言われた時代もあった。 だが、うちの製品は、あっという間に売れなくなった。 ここは、我が社の明日の姿だよ」

 ここで見る側が感じるのは、「長く使える」 ということは、買い換えのスパンが長くなることであり、必ずしも企業の業績にいい影響をもたらさないのではないか?ということです。
 しかし、我が国の家電メーカーは、それを克服してきた。
 それは、メーカー側が常に新たなビジョンというものを消費者に提示し続けた発想力の豊かさ、という要因があったことは事実です。 たとえば洗濯機でも、最初は一層式で脱水も手回しみたいにやっていたけど、二層式になり、全自動になり、消音設計になり、みたいに進化し続けた。 ラジオも、最初はラジオだけだったものにカセットをつけ、それがステレオになり、さらにドルビーシステムやメタルテープ、といった具合に付加価値をどんどんつけていった。
 でもそれでまた消費者が買おう、というのには、メーカーに対する信頼がなければならない。
 結局 「長く使える」 ということが、消費者の信用をつなぎ止める最大の手段であった、と思われるのです。

 会長から企業再建のオファーを受けた3人は、残り4人を集めるのですが、それを承諾する彼らの動機も、きちんと描かれている。 動機は大切です。 こうした部分からも、井上サンの語り部としての力を信頼できる。
 ある者は部署で干されている。 ある者は大量リストラを拒否するも、倒産すればそれ以上の失業者を出す、という比較によって承諾を決断する。

 そしてリーダーの唐沢サンや、吉岡サンも、自分たちがどうしてこの極秘プロジェクトを受諾したのかを互いに話すのですが。
 吉岡サンはもともとタクミ電機には中途採用で、前の会社でも同じような業務に携わり、結局倒産させてしまっている経験から、この業務の企業としての本音部分をわきまえています。 いわく、「失敗した時に、首を切りやすい。 つまり 『捨て駒』」。
 それに対して唐沢サンは、持ち前の強気な発想で、こう切り返す。 「『捨て駒』 上等。 そっちのほうがよっぽど面白い」。

 ここらへんのやり取りは見ていて痛快です。 開き直った人間がなにをやるのかには、ドラマ的な期待感が高まるものです。

 その唐沢サン、本当の動機は、女房と離婚の話が持ち上がっていて、金が要るからなのだ、と言います。 カッコイイことを言っても、個人的な理由で会社が潰れたら困る、と考えているのです。
 吉岡サンにしても、やはり妻が身重なこと、つまり個人的なことが最大の動機となっている。

 こうした動機付けはしかし、このドラマの根幹的な部分に深く関わっているのではないか、と私は感じます。

 つまり、唐沢サンも吉岡サンも、会社に対する忠誠心とか、心意気で再建業務をやってるわけではない。
 それはとりもなおさず、企業にそれだけの魅力がない、ということに相通じている。

 このタクミ電機の場合、現在の社長は、岸部サンの息子である、及川光博サンが取り仕切っています。 要するに世襲。 岸部サンは息子に失望し、再建がなったあかつきには首を切ろうとしている。 経営者としての資質がない、と判断しているのです。

 じゃ経営者の資質って何なのか。

 おそらくそれは、人間的な魅力なのだ、と思われます。

 まあ日本企業の経営者として代表的なのは、松下幸之助サンとか本田宗一郎サン、ということになるかと思いますが、この人たちに共通するのは、経営理念の道理がきっちりしていて、人間的に慕われやすい、ということになるでしょうか。 社員が 「この人にはついていこう」、という吸引力。 おそらく高度経済成長期の浮揚力には、リーダーの資質というものが大きく関与していたように思われるのです。
 これらの経営者は、自社の社員をきちんと人間として評価する能力というものを、生来備えていた。 ひとりひとりの社員を、きちんと尊重していた。

 それがいつの間にか、企業の業績を上げることが第一義とされるようになり、社員は会社の部品と認識され、経営が立ち行かなくなれば切る。 切ることを前提としたいから、次に正社員の数を減らし、契約社員だらけにする。

 それは、コストカットを余儀なくされている経済の現状も確かにあるんですけどね。
 だいたい社会保険とか、負担が大きすぎて払えないから、正社員なんか採用できないし(あ、内情しゃべっちゃった…笑)。

 こんなときモノを言うのが、経営者の人間的な魅力だと思うのですが、そういう大きな人って、最近あまりいないもので。
 まあ企業名をいうのは憚られますが、なんか最近、顧客をバカにしたようなコジキ経営をしているような外食産業もありますよね。 ああいう経営者には、ホントついていきたくないって思う。 意識して買いに行かなくなりましたよ、私、そこに。

 それはともかく、企業が社員のことを軽視する、いや、せざるを得ない状況が、日本経済の衰退の原動力となっている。 個人的な事情で決断し行動している唐沢サンや吉岡サンの動機は、それを如実に反映している、と思われるのです。

 そして個人を大事にしない企業の体質が、才能の海外流出を招いている現状を、このドラマはあぶり出していきます。

 それが、唐沢サンによってタクミ電機を追われ、中国へと渡った、高橋克実サン。
 彼はリチウム電池の技術を中国に売り渡した、いわばタクミ電機倒産の引き金を引いている男。 その技術は高橋サンがタクミ電機時代に開発したもので、タクミ電機の所有財産。 法的手段が有効なのは目に見えている気がするのですが、高橋サンはなにが自信の根拠なのか、まともに取り合おうとしません。

 なんでかな。

 でもその説得力を増しているのが、唐沢サンたちが渡った、中国(上海)の現在の、圧倒的な威容です。

 ものすごい交通量、信号もまるで無視のバイタリティ、タクミ電機の本社ビルも大企業らしかったけれど、それをはるかに凌駕するような巨大ビルの林立。
 まあ、新幹線の事故とか橋の崩落とか、中国の建設技術のアレさが断片的に伝わってまいりますから、日本人としては 「こんなの形ばかりで手抜き工事が横行してるんだろ」 みたいに見くびってしまいがちなのですが、笹子トンネルの事故などを経験してしまってからは、日本だって大きなことは言えなくなってるし。

 何よりドラマ的な説得力だな、と感じたのは、工場内を案内してもらっている唐沢サンたちが、中国語しか話そうとしない高橋サンのあとをついていくとき、工場が昼休みか終業時刻だかで、従業員の中国人たちが、どっと通路を歩いていくシーン。
 彼らはなにしろ膨大な人数で、唐沢サンたちと反対方向に、うねりをあげて流れていく。

 日本がリストラだなんだと汲々としているのに、こちらはその10倍の人口を抱えて、ちゃんとやっている。 低い賃金で働かされてるとしてもですよ。
 だいたい日本だって、今じゃデフレから抜け出せなくて、チマチマとやっとるじゃないですか。 低賃金の中国とどこが違うのか。

 そんな人海戦術でガーッとやられたら、いくらこっちが 「法的に有効」 などと見栄を切っても、押し切られてしまう。 尖閣のこともあるしね。 ドラマの先行きにも、そんな危惧を抱いてしまうのです。

 ボーイングの故障に日本の技術が大きく関わっている、などということを聞くと、まあ他国製の制御システムとかに問題があるとしても、日本の技術力の低下に思いが行ってしまいがちな今日この頃。 町工場でも経営の悪化で技術の継承が行なわれなくなり、やはりメイドインジャパンを誇れるような時代が、静かに終焉を迎えているのではないか、という状況を、どこまでこのドラマが表現してくれるのか。 あと2回、という短いシリーズですが、単なる高橋サンの遺恨の話になってしまうことなく、深いところまで考えさせてくれることを期待します。

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コメント

「メイドインジャパン」。録画して見ています。

昨日は。「最も遠い銀河」を見てました。白川道の原作ということもあり、見応えありました。これは2夜連続なので、今夜もありますね。

「メイドインジャパン」
キャスティングや音楽もいいですし、筋立てもしっかりしていて、各家庭の有り様もさりげなく挿入され、中国へのロケ等、さすが60周年記念番組ですね(すごく上から目線ですねwobbly

>技術の継承が行なわれなくなり、やはりメイドインジャパンを誇れるような時代が、静かに終焉を迎えているのではないか

確かにそういう気がしてますね。sonyのvita発売のときもいろいろありましたし。。。
これが日本の企業?って思いました。

何か根本的な大事な部分を置き去りにしてきちゃったような気がします。

余裕がないということが、いろんな場面でマイナスに働いていますよね。
技術は伝えていかなくては残りませんから、細々でもいいから続けていかなくてはいけないのに、そんな余裕はないの一言で切り捨てられていく。。。
その結果が今の日本。

次回(第3回)は最終回。どういうlastになるのか楽しみにしています。

投稿: rabi | 2013年2月 3日 (日) 17時27分

rabi様
コメント下さり、ありがとうございます。

なんか変なところで話題の2時間ドラマ、的なことをよくやってますよね、最近。 もともとノーチェックなので、「疑惑」 も見逃したし(ただし見なくても別に、という感じですか)(2時間とか、長~いドラマ苦手なので)。

またまた 「はらちゃん」 を見ていたので、このドラマの第2回もまだ見ておりませんが、これも1時間15分なので長いなーと思いながら見てます(笑)。

「はらちゃん」 は面白いですよ(また宣伝してる…笑)。 でもレビューするには至らない(爆)。 純粋なはらちゃんの論理に、「でも人間世界、いろいろあるからねぇ…そう単純にいかなすぎて困っちゃうんだよねぇ…」 と思いながら、純粋なはらちゃんに笑わせてもらってます。

まあ私も、日本経済なんて難しいことはよく分かりませんが、昔の会社は、未来に対する夢を持っていた気がするんですよ。 所得倍増なんて、まあいろんなからくりが絡んできますけど、「今日より明日はもっといい」 というモチベーションを、働く人たちが持つことが出来た。

そしてそれを実現させようとする、労働組合というものが力を持っていた。 今じゃ労組なんか衰退の一途でしょう。

そしてトップには、働く人たちの夢に注目し、育てようとする人たちがいた。

詩人的な観点から日本経済衰退の原因を捉えると、冷笑主義の台頭が大きい気がします。

なにをやっても同じ。 毎日がルーティンワーク。 年功序列や終身雇用はとっくに崩壊し、いつまでも同じ給料で(もしくは年々目減りして)それでも生きなきゃならないから働かざるを得ない。

少子化なんてのは、子供を育てる金がない、とみんな冷笑しているからだと思う。 昔のほうが貧乏だったのに子供は育てたじゃないですか。 どこかでみんな、錯覚している。

…話が止まんなくなってきたのでとりあえずやめます(笑)。

投稿: リウ | 2013年2月 4日 (月) 06時56分

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