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2013年4月 6日 (土)

「妻は、くノ一」 第1回 7代目市川染五郎の持つ 「飄々とした空気」

 黒船来航より30年ほど前。 平戸藩に勤める、天文学好きな男、雙星彦馬(ふたぼしひこま)。
 このうだつの上がらなそうな男に嫁が来るのですが、それが幕府の送り込んだ密偵。
 しかしこの彦馬がとんだ見込み違いだったということで、結婚後ひと月でお役御免、彦馬の前から姿を消してしまいます。
 彦馬はその、最愛の妻を探し求めて江戸にやってくる。

 ドラマの筋立てとしてはそんなところですが、彦馬の運命を変えてしまうキーパーソンとして出てくる、もと平戸藩主の松浦静山と、幕府関係者などの対立構造がちょっと頭に入らなくて、ドラマの最初のうちは、ちょっと話が分かりづらかった。

 しかしそんな小難しい話の興味をつなぎ止めたのは、主役の彦馬を演じる市川染五郎サンの、なんとも安定感のある飄々とした佇まいでした。 意外なことに。

 どうも染五郎、という名前を聞くと、私の場合お父上の松本幸四郎サンのイメージが抜けきれなくて(なにしろ大河ドラマでいちばん最初にまともに見たのは、幸四郎サンが染五郎時代に主役を演じた 「山河燃ゆ」 でしたから)。
 それに今の染五郎サンって、結構テレビドラマに積極的に出てくる人のように思うのですが、まずそのドラマを見たためしがない。

 だから今年に入って、「八重の桜」 で孝明天皇を演じる7代目染五郎サンの演技に対して、個人的にはとても新鮮で、「こんな安心して演技を見ていられる人だったのか」 という驚きがとても強かった。
 そして今回のこのドラマでの、役柄的には天皇とは全く違った下位の武士の役。
 去年の転落事故で精神的に生まれ変わったのかと思わせるほど、そのどちらの役にも、「安定感」 というものを深く感じるのです。

 ところがどういうわけか、個人的に感じるのは、この 「安定感」 の質は、お父様の松本幸四郎サンよりも、先ごろ亡くなった中村勘三郎サンに近いものがある、ということです。
 これって、たぶん孝明天皇にしても彦馬にしても、どことなくしゃべりかたの 「間」 とかが、達観しているような印象を与えるところが大きい。 演技によって生じる、人間的な大きさ、キャパシティというものを感じるんですよ。 「寛容」 とか、「鷹揚」 といった性質のものを。

 対して松本幸四郎サンの演技というのは、寛容さより真面目さを感じることが自分の場合、多い。
 染五郎サンの演技に、どうしてお父上の遺伝子よりも、勘三郎サンの面影のほうを感じてしまうのかは、私にはちょっと謎です。

 しかしそれは同時に、勘三郎サンや市川団十郎サンといった、現在の歌舞伎界において最も屋台骨を支えていると思われたかたが相次いで亡くなったことを、染五郎サンという新しい世代が、着実に受け継ぎつつある、という感慨も、同時に私に抱かせるのです。

 少々抽象的な議論になってしまいました。

 ドラマ的に面白いのは、染五郎サン演じる彦馬がその純粋な気持ちで妻を探し求めているのに、その妻は平戸藩的には 「敵」 という存在であること。
 だから、彦馬が妻と再び出会うとき、それはバッドエンディングを導き出す要素となっている。

 そしてこの、天文学のこと以外は全く役立たずに見えるこの彦馬が、天文学の知識を借りて、江戸の幼女誘拐事件(かどわかし)を解決してしまう、という意外性も面白い。

 彦馬の妻でくノ一 「織江」 を演じるのは、朝ドラ 「てっぱん」 のヒロイン、瀧本美織チャン。 髪形が江戸時代なので誰だか分かんなくて(笑)、エンディングタイトルで 「ゲッ、そーだったの!」 みたいな。
 でも、この美織チャン、業務命令で妻を演じただけ、というのに、彦馬の純粋な性格に実のところ惚れてしまっている、という設定がよい。 ツンデレ、というカテゴリーとはちょっとずれるけれども、表面上は 「あんな平凡な男」 と冷たいところを装っているのが、いいんですよ(笑)。
 吹き替えかもしれませんが、やっぱりくノ一ですから、アクションシーンというものがある。
 なかなかサマになっている気がします。

 美織チャンの母親役が若村麻由美サン。 「純と愛」 のオニのよーな(笑)母親の面影が、ちょっと残っているのというのが笑える。 状況的に見て、この母親もくノ一であり、 娘が彦馬に惚れちゃったのを見抜いている、というのも、ドラマ的にいいんですな。

 そしてキーパーソンの松浦静山には渋い渋い吉田東洋(「龍馬伝」 ですね)、田中泯サンです。 隠居の身でありながら、武術的にかなりの手練れ。 美織チャンもそうですが、このふたりのアクションシーンは見モノであります。

 これは、ひょっとすると、かなり拾い物のドラマかもしれません。
 連続8回。 NHKBSプレミアムで毎週金曜夜8時より。 今回の第1回再放送は、4月7日午後6時45分からです。

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コメント

時代劇に力を入れているNHK、
でも他のはだいぶ空回りのようで、
「大岡越前」も、主役に色気がなく・・・。
(主題曲があれ?と思ったら、TBSのスタッフが移動して制作しているそうで)。

これは面白かったです。
端正な印象の強い染五郎が、あえて三枚目というか、
ちょっとまだ作りこんでいる印象はありますが、
許容範囲。

彼には、頑張ってほしいですね。
奈落を見た男、ですから。

マーシー様
コメント連投下さり、ありがとうございます。

「大岡越前」、これってNHKではなくTBSが作らなければいけませんね。 テレビマンとしての気概の問題だと思います。
って、「大岡越前」 に気概を持つテレビマン自体がもういないんでしょうね。 世代交代が進んで。

「奈落を見た」、って、そのまんまですがな、ことに今回の場合(ハハ…)。 いや、笑いごとではございませんが。

忍びどうしの確執も描かれていて、このドラマはもしかすると、シリーズ化を目論んでいるのかもしれない、という気にさせます。
なにしろ原作では(あ~ネタバレだ)織江は抜け忍になって彦馬と添い遂げるとのことで、その後カムイ伝的な展開みたいですから。

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  • : レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]

    レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]
    全200ページ程度のボリュームのなかで、キャンディーズに関する特集記事は50ページ。 ただし、これが濃い。 全シングル曲、ほぼほとんどのアルバムの解説は当然として、彼女たちの芸能界における歴史から見た考察、コメディエンヌとしての彼女たち、DVD解説など多岐にわたり、キャンディーズが分析されています。 特に圧巻は、レア音源に関する記述。 ここまで調べている読み物には、個人的にはお目にかかったことはありません。 700円。

MUSIC

  • ザ・ビートルズ -

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    ロック界、いや、すべてのポップミュージックにおけるアルバムの中で史上最高と称され、すでに世界文化遺産の域にまで達しているこのアルバム。 そのアルバムの発売50周年を記念して、スペシャルエディションがリリースされます。 なかでもブッ飛ぶのがこのスーパースペシャルボックスセット。 CD4枚組であらたなリミックスのステレオ盤1枚、モノ盤1枚、初期テイク集が2枚、さらにブルーレイ1枚とDVD1枚で5.1サラウンド、ハイレゾ音源、ドキュメント映像 「メイキングオブサージェントペパーズ」 のデジタルリマスター等々、卒倒するようなラインナップです。 18、000円プラス税と値は張りますが、史上最高の名盤だからこそこれは買い。 5月26日の発売までに予約をしておけば、アマゾンならば値下がりした時に値段がそのあと高騰しても最安値で購入できます。 ビーファンならずとも、これは注目ですぞ!

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    山口 百恵: ゴールデン☆アイドル 山口百恵(完全生産限定盤)
    全シングルA・B面プラスボーナストラック(「あなたへの子守歌」)を、山口百恵名義としては初のブルースペックCDとしてリリース。 音はいわゆるドンシャリ系ではなく、アナログ盤に準拠した原音に忠実な印象です。 パッケージングはアナログシングル盤サイズで中袋、CDを納めるケースが完全にドーナツ盤をイメージしています(よく言えば斬新…笑、悪く言えばチャッチイ…笑)。 しかしその発想は買える(笑)。 ほぼ原寸大のシングルジャケットと裏の歌詞カードの複製ブックレット。 ただスキャニングは欲を言えばもう一歩。 当時シングル盤を中心に聴いていたかたなら、この編集盤はかなりの 「買い」 です。 しかしこのジャケット表紙の写真、スッピン風で個人的にはすごく好き。

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