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2013年11月 5日 (火)

「リーガルハイ」 第2期 第1-4回 「裁判」 ってなんなのか

 前クール 「半沢直樹」 の、度を超えた好評で思いっきり助走をつけた感じの、堺雅人サン主演、「リーガルハイ」 セカンドシーズン。 視聴率的にも余勢をかってファーストシーズンより5%は上積みされているようです。

 ただ第1回の設定を見た感じでは、かなり失望しました。
 そのもっとも大きな要因は、ファーストシーズンで主人公・古美門研介を遺恨の相手として敵視し続ける、三木法律事務所の生瀬勝久サン・小池栄子サンのコンビがわきに追いやられ、サワヤカーな好青年、岡田将生サンが、古美門のあらたなライバルとして起用されたこと。
 そして次に、このシリーズを通じての話になりそうな悪女・小雪サンの登場。
 正直なところ、フジテレビはこのところ安易な続編を乱発して前作のクオリティダウンを次々敢行している、というイメージが 「ヒッジョーに」 強くて、今作もその範疇か、と感じました。 お祭り騒ぎで登場人物増やして、論点をとっ散らかせる。 生瀬・小池コンビというこのドラマのおいしいエッセンスを追い出して、線の細そうな俳優を人気があるからと投入する。

 こういう手法は、この春に放送されていたスペシャルバージョンみたいな単発のときには威力を発揮するのですが、こうした連続ものに採用すると、本来のシリーズファンを失望させる大きな爆弾になることが多い。
 「リーガルハイ」 よお前もか、という失望があったことは否めません。

 しかし、この岡田将生サンの、誰にでも当たりがよく人たらしで、裁判を常に 「訴えるほうと訴えられる側の両方が幸せな結果をもたらす場」 にしたいという野望を描いているこの男の設定を見て、この男の存在というのは、古美門研介の存在意義をより深くするためのものであることが分かった気がします。

 古美門研介というのは、裁判で勝ち続けることが自分のアイデンティティだと思い込んでいる、ゴーマンで自分勝手の権化みたいな男。 無敗神話に酔いしれ、今回一方的な罪の受け入れによって負けてしまった、原告小雪サンの失地回復のため、シリーズを通して弁護に挑み続ける。
 彼の天まで届く鼻っ柱の強さはその弁護料の高額さににも裏打ちされている。 要するに弁護士界のブラック・ジャック的な存在であろうとしている。 だからどのような不利な案件でも、どーでもこーでも屁理屈でも草の者をしのばせてまで相手の弱みをつかみ取って、裁判を勝利に導こうとする。 事実それで彼は無敗を誇ってきた。

 この、なりふり構わぬ彼の弁護の方法は、当然品のいいものではありません。 どんな悪いヤツだって無罪にしちゃうんだから(でもどうにも勝ち目がないヤツの話には、あくまで乗ってきません、負けるのがイヤだから…笑…結局なんだかんだと乗っちゃうこともあるけど)。

 しかし岡田クンが演じる、今回の羽生という若手弁護士は、裁判に際して双方が幸せになる、ウィンウィンの結果を目指している、という時点で、古美門研介のスタンスとは完全に対極にあるのです。
 これは、沙織に対する個人的な恨み(笑)で古美門と対峙していた生瀬サンの三木弁護士とは、根本的に違う。
 羽生弁護士は、古美門弁護士のアイデンティティに対峙しようとしているからです。
 三木弁護士では、単なるベタなケンカのレベル、持ち込まれた案件によって浮き彫りにされる社会問題、というレベルでしかドラマが進行しないのですが、羽生弁護士の登場は、さらに一歩踏み込んで、古美門が単なるゴーマンで自分が勝つことにしか眼中にない男なのか、というレベルまでドラマを深くすることができる。

 そしてその先には、「そもそも裁判って、いったい何なんでしょうね?」 という、作り手の声が聞こえるような気がするのです。

 羽生弁護士が目指すウィンウィンの結果、というのは、弁護士報酬という観点から捉えると、「それじゃ弁護士が食っていけないだろう」、という話になるような気がするんですよ。
 どれだけ弁護士が弁護料をもらうのかは不勉強で知りませんけどね。
 でも相手から慰謝料とかそれなりのものをいただかないと、結局支払われる弁護料というのは、訴えた側が自腹で工面しなければならなくなる。
 古美門のやり方というのは、限りなく弁護料をつり上げることによって、そこらへんの問題をすべてクリアしようとしている。 羽生弁護士のやり方というのは一見クリーンなように思えるけれども、和解ですべて決まるということは、残ったのは高い弁護料だけ、というパターンが増えていく、ということになるんじゃないのかな。

 まあ、裁判とかやったことないから、いい加減な議論ですけどね、私の話も。

 ただ、裁判というのは、そんなお金を払ってでも、自分の言い分を通そうとする行為でしょ、訴える側にとっては。

 そしてそこには、「お金ですべて、とまではいかないが、ある程度のことは納得したい」 という思惑が働いているわけでしょう。

 このドラマ、シリーズを通して私が感じるのは、古美門というのは、そういった裁判とか係争の本質的な部分に対して、かなり醒めた目でピカレスクを気取ろうとしている存在に見えるんですよ。
 やるからには必ず勝つ、石にかじりついてでも勝つ、という彼の姿勢は、だから裁判とか、それをリードする弁護士という職業そのものの存在意義まで問うている、そんな気がする。

 だいたいどんな悪人でも、弁護士というものは、付くものでしょう。
 今回のシリーズではホリエモンのモデルの人は自分で自分を弁護してたけど(笑)。
 話はそれますが、あのホリエモンの回は、このドラマそのものに対する自虐的なパロディにまで昇華してましたよね(笑)。
 それはそれとして、とにかくその、誰が見ても悪人、と思える人にまで弁護士がつく、というのは、悪人にも一部の理があるからだ、という理屈があるからなんじゃないのかな(またいい加減なことを言ってますけど)。
 古美門弁護士は、そんな 「誰が見ても」 という世間一般の認識に対しても、常に懐疑の目を向けているように私には思えます。 そしてそれがこのドラマの生命線でもある、そんな気がする。

 そんな古美門の本音を白日のもとにさらけ出すのは、三木弁護士では役不足なんですよ(役不足の意味、合ってるだろうな?…笑)。

 ただまあ、岡田クンもまだ線が細すぎて、古美門のアクの強さに対抗しきれてない、という気もしますけどね。

 認識不足による議論もいろいろあると思うので、いちおう先回りして、謝っておきます。 従って今回のこのレビューに関して、イチャモンの類は受け付けません(笑)。

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コメント

リウ様
こんばんは。

聞くところによれば、日本の民事裁判の3割から5割は和解で決着しているということです。そこがアメリカとは全然違うところで、そういう意味では、岡田将生くん演じる羽生先生は、現実的な有能さに恵まれた弁護士なのではないかなあ、と思います。

生瀬さんの三木弁護士との確執は子供の喧嘩みたいなもんだったので(笑)、1stシーズン最終話で種明かした以上、引っ張るのはもう無理でしょう。みんなが幸せにウィンウィンを目指す超優秀なゆとり世代、という羽生君のキャラは中々の新機軸だと思いますね。正直、1~2話目くらいは、イマイチこの対立軸がはっきりしてなかったように思えましたが、第4話の決着の仕方などは、ウインウイン王子ならでは。実際、ああした近隣トラブルは、絶対的な白黒は付けがたいものが殆どですからね。

このドラマ、確かに小美門の言動はハチャメチャですが(だって、そういうドラマですし)、1stシーズンでは、小美門が法廷で勝つことが、必ずしも当事者のその後の人生にとっての勝ち負けに結びつかない、という苦みがリアルでした。
その、明確に白黒や勝敗が付けられない生身の人生にあくまでも寄り添い、最大公約数としての幸福を導き出そうとする羽生弁護士と、詭弁でも汚い手口でもなんでも使い、無理やりにでもケリを付けようとする小美門。確かに、このテーマには、1stから進(深)化したものを感じます。

ただ、そうなると、1stでは、一つの対立軸だったガッキーの、黛”朝ドラ”真知子弁護士の立ち位置がどうなるのか?まさか、羽生くんのところに行くことはないと思うのですが、そこがちょっと気になる処です。

投稿: Zai-Chen | 2013年11月 5日 (火) 22時44分

Zai-Chen様
コメント下さり、ありがとうございます。

このドラマ、かなり掘り下げると1回ごとにテーマがあってその都度レビューしなければいけないのですが、そういうメンド臭いことは敬遠しがちな今日この頃の当ブログ(笑)、三木→羽生のライバル交代の意義に的を絞った総論を展開いたしました。

ただこのライバル交代で、ガッキーの存在意義があやふやになった、ということは少なくとも起きていない気がします。
それは、ガッキーが恋愛感情を別として、古美門研介がどうして弁護をするのか、という弁護の基準について、自分も共感し始めている、という心の動きが描写されているように思うからです。

ファーストシーズンの黛クンだったら、迷わず羽生弁護士事務所に移籍したと思う。
でも羽生クンのやってることが、どこかで甘いと感じ、裁判を起こす起こされる、という世界では、当事者たちの思惑というのは変質してしまうものなのだ、という現実に直面しているから、自分と同じベクトルの羽生クンにつくよりも、古美門の罵詈雑言の奥に潜むものを見つけたがっている、という構図が見えてくる。

この過程が非常に興味深いのですが、それをこのドラマの流儀として、ガッキーをブロードウェイ弁護士にしちゃったりするところが、あくまで人を食っていて楽しいのです(笑)。

だから私が今作のガッキーを見ていて感じるのは、「彼女もただカワイイカワイイだけの女優から、脱皮しつつあるな」、ということ。 堺雅人というクセ者役者と対峙するには、やはり自分の殻をかなぐり捨てなければならないのです(笑)。

投稿: リウ | 2013年11月 6日 (水) 14時11分

最終回を迎えました。
6話ラストのまさかの移籍から、
加速度的に面白くなりました。
私は特に7話(伊東四朗)と9話(ラスト前)が
すごかったと思いました。
最終回は第1シリーズの最終回のように
ギャグ全開ではなく
シリアスとのバランスが
取れていて好感触でした。
最後の最後のセリフ
(このシリーズでは多分封印していた)
「少しはマシになるだろう」で
終わらせたのも、思わずうなりました。
敵役としては羽生弁護士では
弱かったという点は認めるものの、
まさに裁判や司法そのものへの
問題提起となっていたドラマであり
コメディにおいて、
15%以上の視聴率をとるドラマにおいて、
この内容を盛り込めたことが
すごいことだと感じます。
すでに第3シリーズへの期待が高まります。

投稿: Passing | 2013年12月21日 (土) 02時41分

Passing様
コメント連投下さり、ありがとうございます。

その、面白くなったという、7話から見ていないワタシです(笑)。 このところ忙しくて、録画がたまりっぱなしです。 忙しさの中には、このブログでのコメント返信も含まれてはおるのですが、好きでやっているので問題ありません(笑)。

どうもこのドラマ、サードシーズンもにらんでいるスタンスですよね。 そんなに裁判、いろんな種類があるのかな、ネタ切れしないのかな、というのが結構不安なんですけど(笑)。 6話までのこのセカンドシーズン、あまり裁判の案件がパッとしない回もあったような気がするので。

早いとこたまっている録画を見て、年内にはレビューを書きたいものです(どうなのかな?…最近どうも、ブログの更新がおぼつかなくて…笑)。

まあ、みなさんとワイワイ、コメントのやり取りをしているほうが、ひとりでレビューの文章を書くより私も好きなようです。

投稿: リウ | 2013年12月21日 (土) 13時06分

はじめまして。
通りすがりのモノです。

リーガルハイ、他の方が仰っていられたように、しり上がりに面白さを増していました。
と、言いますか、シリーズ全体を通した伏線などがだんだん明らかになり、繋がりだし、「やられた」感に打ちのめされました。

私も確かに、始まり数話はちょっとタルいかなとも思いましたし、三木法律事務所2人の出番が減ったことや、個人的にあまり好きではない女優さんの小雪さんが引っ張られ続けるのも、テンションサゲに思っていました。岡田さん演じる羽生君では古美門の敵としては弱いなぁウザいなぁ(敵役が強くないと対決にならない)とかetc.

ところが、
伏線としての意味が明らかなになるにつれて、特に羽生君のwinwinの「正体」というか「影の部分」が見えてくるにしたがって、「そうか!」とうなってしまいました。

たしかに、1話1話でも、そうした伏線をうまく張り巡らせてラストに持っていく構成力に関心もしていましたが、シリーズを通しても(なんかやってくれるんだろうという期待はしてはいましたが)やってくれました。脱帽です。

リーガルハイは、パロ的なところに注目が行きがちですし、それが楽しみの一つでもありますが、(静岡県民しかわかりませんが、"コンコルゲン"古舘寛治さんと"望月しょうじ"松嶋亮太さんの静岡ローカルCM男優夢の競演なんてのも)、あの構成力も大きな魅力だと思っている次第です。

すいません、通りすがりのくせに、ごたくが長くなりました(笑)。この辺で失礼させていただきます。

投稿: たかたん | 2013年12月22日 (日) 10時44分

たかたん様
こちらこそはじめまして! コメント下さり、ありがとうございます。

そうなんですか~。 私、「半沢直樹」 もまだ全部見てないんですが(笑)、堺雅人サンのドラマというのは、とにかくなんか、お腹いっぱいになっちゃう感覚で、たまった録画を見ようとするとき、なんか身構えちゃうんですよね。

まあそれだけ、内容が濃いものが多い、ということに尽きます。

それにしても羽生弁護士、ウィンウィンになるにはそれなりの理由があったのですね。 うーん、見てみたいぞ(笑)。

ガッキーが羽生クンのもとに移籍しちゃってから録画したものを見てないので、この年末を利用して、全部見ちゃいたいと思います。

古舘寛治サン、最近NHKの朝ドラ 「ごちそうさん」 でもウサン臭い詐欺師役で出てたんですよね(笑)。 そういう役が似合う人なのかな(笑)。 なんかどこか、演技がシロートっぽいというか、オドオドしてるというか(笑)。 ヘンな独特の空気を持っているので、なんとなく最近気になってます(笑)。

投稿: リウ | 2013年12月24日 (火) 11時31分

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