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2015年7月10日 (金)

「アイムホーム」 木村拓哉という役者の 「自分さがし」

 木村拓哉、という役者は、実に興味深い役者である、といつも感じています。
 彼は若かりし頃、そんじょそこらのイケメン芸能人をそこらのして 「恋人にしたいナンバーワンタレント」 を歩み続けた。 そして彼は、頑固なまでに 「自分は何を演じても木村拓哉であり続ける」、というポリシーを掲げながら役者を続けてきた。

 その彼の 「わが道を行く」 姿勢はごく早い時期から衆目の批判にさらされてきた感があるのですが、その人気のピーク時を超え、中年という年代に差し掛かってもそのスタンスを変えないことに対する彼への風当たりは、近年ますます強まっている気がします。

 そんな彼が参加することのできるテレビドラマのカテゴリというのは、年代を経るごとに徐々に狭まってきている。 それでも彼はそれを逆手にとり、先細りしていくカテゴリを注意深く取捨選択しながら、自分の存在を最大限にアピールできるドラマを決定し、自分にしかできないドラマを次々世に送り出している気がするのです。

 例えば、昔のような恋愛ドラマが出来なくなった代わりに、妻や家庭を持った男の恋愛モノは、出来るようになる。 そのハスッパな態度から、生真面目な企業ドラマは出来ない代わりに、新しいタイプのリーダー像を目指したビジネスドラマは出来る。

 これは簡単なようでいて、実は難しい。 要するに制作側に対して注文をつける、ということだから。
 けれども、だいたいジャニーズ事務所のテレビ界に対する影響力が大きいからとか、そういうことだけでは彼が主役に起用され続けるはずがありません。 間口の狭い 「木村拓哉」 という役者が最大限に生かされているからこそ、結果的にそのクールでのトップクラスの数字(視聴率)を連れてくる。 なんだかんだ言っても注目を浴びてしまう。 だからテレビ局も彼を起用し続けるのだ、と思う。
 それはたぶん、事務所の力関係とは別にある、彼自身の 「自己プロデュース能力」 ゆえなのだ、と感じる。

 近年での彼の主演作は 「MR. BRAIN」「PRICELESS」「安堂ロイド」「HERO(続編)」「宮本武蔵(単発)」などですが、そのどれもがどこか、通り一遍のドラマにはない視点の、「ちょっと違う地平」 に立っているドラマばかりでした(「安堂ロイド」 だけは 「だいぶ違う地平」 でしたが)。
 彼の出るドラマは、いわゆる 「普通」 というものを、どこかで拒絶している。
 「宮本武蔵」 は脚本のつまらなさ、という致命的な弱点がありましたが、やはりどこかで映画 「マトリックス」 的な 「武蔵」 を狙っていたような気がした(スイマセン、途中リタイアなので的確でない論評かもしれません…笑)。
 その演技レベルからいって、「南極大陸」 のような本格的なドラマになってしまうとちょっと浮いてしまうようなところがあるのですが、彼の出るドラマには、常にどこかに 「ドラマをスタッフみんなでつくる面白さ」、という雰囲気が漂っている。 それは題材が 「普通とはちょっと違う面白さ」 を有しているからだ、と思うのです。 彼のドラマには実によく、大物俳優が名を連ねる。 それはやはり、究極的にはそのドラマが 「面白そう」 に見えるからなのではないでしょうか。

 そして今回の 「アイムホーム」。

 「宮本武蔵」 を除外すれば、木村クンにとって初めてのテレ朝ドラマでした。
 このブログをよくご存知のかたならご理解いただけると思うのですが、私はテレ朝のドラマを、ほとんど忌み嫌うレベルであまり見ません(笑)。 私の嫌いな、人が殺されただの犯罪を犯しただのというドラマがあまりにも多いからです。 そうした種類のドラマ以外でも、「やけに誇張が目立ち、センセーショナル主義」 であるとか、「なんかどこかで手を抜いてる」、みたいな感覚が抜けない。
 それでも近年ではよほど他局に視聴率を先んじているドラマが多いのですが、私はどこかでテレ朝のドラマに対して、いまだに軽い侮蔑的な感情を抱いている(あくまで個人的な偏見によるものなので悪しからず)。

 そんなテレ朝であるから、木村クンがご自分の主演ドラマにテレ朝を選んだ、という今回の選択は、好調なテレビ局に、それまでのイメージに拘泥することなく乗り換える、という彼のフレキシブルさによるもので、視聴率の波に乗る最良の自己プロデュース方法であったという評価はできるのですが、どこかで 「都落ち」、という気がしないでもなかった。

 彼の近作の内容には、どこかに自虐的な傾向が見て取れる気がします。 「PRICELESS」 では自らをホームレスに落ちぶらせ、「安堂ロイド」 では未来からやってきた同種のアンドロイドから 「時代遅れ」 とあざ笑われる旧型のアンドロイドを演じていた。 そこには確実にメインストリームから外れつつある自嘲が含まれていたのではないか。 このテレ朝への連ドラ初出演も、その傾向と同じなのではないか、と。

 しかしその題材は興味深いもので、それまでの派手で華やかな主演作に比べると 「年齢相応」 に落ち着いた、と思えました。 内容的には、「事故で直近5年ほどの記憶をなくした男が、妻と子供の顔が仮面に見えるようになってしまった」、という、さすがに 「普通のドラマとはちょっと違う地平」 に立っている話。 それで私も、見てみよう、という気になりました。

 この 「アイムホーム」、原作は石坂啓氏のマンガで、数年前に時任三郎サン主演で一度ドラマ化されたのですが(私は未視聴)、なんかNHKの番組公式ページのあらすじを読むと、今回とはずいぶん違う話のように思えました。 「ハゲタカ」 で知られる脚本家の林宏司サンは今回、基本的な設定はそのままで、大胆な換骨堕胎を敢行した気がします。

 「妻と子供の顔が仮面に見えるようになった」、という話はカテゴリ的に考えると家庭崩壊をテーマとしたホームドラマの比重が大きいように感じる。 けれども、そこには 「妻と自分、どちらが仮面をかぶっているのか」 を探るサスペンスが介在しており、さらに主人公をやり手の証券マンに変更したことによって、主人公が勤めている証券会社の巨悪を絡めたサスペンスまで演出できた。

 5年程度の記憶がごっそり抜け落ちたことで、木村クン演じる家路久はとても普通の 「人の良い男」 になっているのですが、その5年のあいだ、どうもまるで別人格、と思えるほどに家路久は最悪の性格をしていたらしい。
 つまり、その5年以前はそんなに悪い性格じゃなかった、ということですよね。 その、記憶を失った家路が唯一ふて腐れたようになったのは、北大路欣也サンが演じた、自分の失踪した父親と再会したとき。 そしてその父親をどこかで許しているようだった、風吹ジュンサン演じる自分の母親と接しているとき。

 ただ、ドラマを見ているとその5年間以前でも、前の妻である水野美紀サンに対してもかなりつらく当たってたみたいだし、そうなると家路久が 「朴訥で善良な男」 になっちゃってるのは記憶とは無関係なのか、そこらへんの明確な説明が、ドラマ全体を振り返ってみると結構ぼやけていた気がします。

 そして残念だったのは、最終回のトンデモ展開もそうだったんですが(笑)、結局家族への愛がいちばん、という毒のないオチにしてしまったこと。 まあ、逆に言えば 「みんなみんな、いいヤツだったよ」 ということですが。 ここらへん、まあ偏見も入り混じりますが、「テレ朝クオリティ」 なんだよな、というか。 テレ朝の局のカラーに対する独断と偏見を語り出すと長くなるのでやめますが(笑)。

 ただ興味深かったのは、「失われた5年」 のあいだの自分を探しまわっている家路と、役者としての自分の居所を探している木村クンがときどきダブって見えたこと。 ハスッパな自分(5年の間の性格最悪だった家路)と普通レベルに還元していく自分(朴訥で善良な家路)とのあいだで、「これからどういう役者として生きていくのか」 暗中模索をしている。 そんな彼の 「自分さがし」 みたいなものが見えた気がしたのです。

 彼が次のステージに選んだのは映画版の 「HERO」。
 これはいわゆる 「昔の杵柄」 というヤツで、かつての当たり役でその主人公が年齢を重ねていったらどうなるのか、という安全牌のような気もするのですが、「常識はずれな青年検事(久利生)が、どう成長していくのか」 という、これも木村クンの 「役者としての自分」 を模索するような内容なのではないか(見てないから分からないけど)。

 まだ当分は、木村クンの出演作に興味を持っていられそうです。

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テレビ」カテゴリの記事

コメント

私は、彼の出たドラマでは、随分昔の作品ですが、「おとうと」で、幸田文原作のドラマで斉藤由貴ちゃんのおとうと、碧郎さんを演じたのが、とっても鮮烈に心に残っています。そこでは、斉藤由貴ちゃんが主役で彼は、それほどの知名度がなかったのですが、すっごく良かった。「太陽がいっぱい」のアラン-ドロンみたいな衝撃がありました。アランドロン、わかりますかね(笑)
で、その後有名になった「あすなろ白書」も全く興味なかったし、ロンバケも、ビューティフルライフも、「武士の一分」の映画を見てから、DVDとビデオで見直したくらい。武士の一分は10回以上映画館に通って見ました。今でもすごく好きな作品です。多分、彼のやった役じゃ一番地味な役だったけど、エンドロールまで余韻が残って、良かったですよ。
で、アイムホームは残念ですが、見ていません。
でも、彼を演技者として、キムタクだからという色眼鏡を外してみた時、卓越した役者だと思います。まあ、キムタクでなきゃ満足出来ない方々の方が多いでしょうけどね。しかし、ドラマ不況の中、しっかり結果も残すんだから、凄いですよ。
事務所が脚本にいちゃもんつけるのどうのとも言われてて、気の毒でもありますが。
ミックジャガーのように、いくつになってもやんちゃ(カモフラージュって説もあるけど)なキムタクというアイドルでもいいんじゃないでしょうか。私の人生で二つの作品で感動させてくれたので、これからの活躍を祈っています。

ささ様
コメント下さり、ありがとうございます。

私、木村クンが超人気のころのドラマって、あまりマジメに見てないんですよ。 人気が下降気味になってきてからの彼の出演作に、興味がわいてきたタイプで。

最初にきちんと見たのは、「華麗なる一族」 だったかな~。 それからは、単なる恋愛ドラマを除いては、ほとんど見てる気がします。

要するに、人気や若さにまかせてブイブイ言わせてるものには、興味がわかないんですよね。 やってれば、という感じで。

「なにをやってもキムタク」 という謗りって、それはそれで立派なこだわりなんじゃないか、って私は思っちゃうんですよね。 その姿勢って、彼が影響を受けたと思われる、松田優作サンや田村正和サンに、共通してる気がするし。

それと、彼の出演作に、とても有名どころが大挙出演する、というのが不思議で。 これってけっして、事務所の力関係だけでは説明がつかない、と感じる。

二枚目俳優というのは、美貌が落ちてきてからのほうが面白い、というのは、悪趣味でしょうかね(笑)。

リウ様

upありがとうございました。
ドラマの中の役と「キムタク」自身の自分探し。なるほど〜と思いましたね。
確かに彼としても今後どうやって役者の道を精進していくか悩んでいる最中かもしれませんね。

「HERO」の続編のテレビドラマも松さんが出なくてどうなるかなと思ってましたが、北川さんでもうまく回っていました。脚本スタッフさんの力によるところが大きいのでしょうね。
映画版はどうなっているのか、こちらも楽しみです。

ささ様のご覧になっていた「おとうと」私もおぼろげに記憶はあったのですが、弟役はキムタクだったんですね。全然あの頃の記憶がなくて、ネットで探してみました。
キムタクはキムタクと言われる、その片鱗がみてとれました。
そして、ささ様の審美眼の高さに恐れ入りました、アランドロンのような衝撃にふさわしいという表現。確かにそんな感じでした。

ロンバケもビューテイフルライフも華麗なる一族も視聴しましたが、武士の一分だけは見ていませんでした。ぜひ、見てみたいものです。

今後、彼がどんなふうに役者の幅を広げていくのか、とても楽しみにしています。

rabi様
コメント下さり、ありがとうございます。

ロンバケもビューティフルライフも見てないワタシ(笑)。 人気絶頂のイケメンが恋愛ドラマしても、やっかみが先に立ってしまうのです(爆)。 しかもアホみたいな高視聴率だったし(笑)。

なにしろ記事にも書きましたが、彼の人気がピークのころって、その後2015年に至るまで、どんなイケメンも太刀打ち出来てないほどのすごさだったと記憶してますから。 まあ長谷川一夫とか石原裕次郎と比べたら遜色あるだろうけど。

「私が見た黎明期の木村拓哉」 という話題で対抗しちゃいますが(笑)、私が木村クンを初めて見たのは、ジョージ・ハリスンが来日したさい(たしか1990年)に 「素晴らしき仲間」 でビートルズ好き、ということでコメントしているのを見たとき。 かわいかったですよ~(笑)。

いまウィキで調べたんですが、その出演記録はないけれど、「おとうと」 のほうが先みたいですね(チッ…笑)。

リウ様

「私が見た黎明期の木村拓哉」
ジョージ・ハリスンが来日したさい(たしか1990年)に 「素晴らしき仲間」 でビートルズ好き でしたか〜。
これは見てなかったですね。私のちょい負け?
(ま、勝ち負けじゃないですけど・・・)

木村君にはやはり稀有な才能があるんだと「おとうと」の映像を見て思いました。
25年前の演技で、あんなだったのですから、天性の才能を持っている人ですね。
そして才能だけじゃなく、並外れた努力もきっとされてるはずですもんね。

年をとったら、年をとったなりの木村君の良さが出てくるだろうと思ってます。
ちまたでは木村君の容姿の劣化とかいう話もありますが、わたし的には「何を言ってんだか」って感じです。

「アイムホーム」の視聴率、「天皇の料理番」に負けちゃいましたね。もっとも番組としては「天皇の・・」の方が数段上だったと思いますから、この結果は至極当然かな。

佐藤健くんの良さ、ぜひ発見してほしいですね(ひょっとして、リウ様と健くんって内面が似てたりして・・・ 外見とは言いません(;´▽`A``  )

ではでは、リウ様の今後のレビュー期待しております。

rabi様
コメント下さり、ありがとうございます。

「素晴らしき仲間」 も、意識して見ていたわけではございません(ハハ)。 当然のごとくビデオ保存したんですけど、彼が人気絶頂になったときに、「アレ、ジョージの番組の中でなんか見たことあるよな」 と思って見返してみたのが実際のところで。

彼がすごいな、と思った最初は、現場に台本を持ち込まず、完璧に覚えて現場入りする、という話を、確かさんまサンだかがしゃべってたのを聞いたとき。

おまけに、共演する役者さんたちの評判が、妙にいいんだ(笑)。 おそらくとても相手に気を遣う人なんだ、と思いますね。 まあ、いい人だけで仕事は出来ないけれど、ぶっきらぼうそうに見えて実は自分以外の人を大切にする。 そんな出来た人を、私はあれこれ言う気になれないですね。

容姿に関してはそりゃ、若い時は無敵ですよ(笑)。 ネットじゃ男女問わずすぐに話題になるのが 「劣化」 ですけど、「お前らもぜーんぶそーなるのだ、ザマーミロハッハッハ」 と言いたくなります(笑)。

私? 私の顔は佐藤クンには似てないけれども(笑)、「誰々に似てる」 と言われたこともございません。 まあ、「俺物語」 みたいなスンゴイ顔でもないかわりに、ごく普通、いや、普通よりはほんのちょっと下、というレベルの顔だ、と思っております(笑)。

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    レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]
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    こちら上記の海外版。 内容的には国内版とほぼ一緒なので、値段が安いこちらのほうがいいでしょう。

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