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2015年10月11日 (日)

「偽装の夫婦」 第1回 パターンの読める遊川脚本だが…

 数年前NHK朝ドラで放送され、ヤフー感想欄では空前の批判対象となり、未だに評判の悪い 「純と愛」。 その遊川和彦氏脚本による(この形容は意地悪だ…笑)(「女王の教室」「家政婦のミタ」 といったドラマのスーパーヒットメーカー、と言い直します)、日テレ水曜・秋ドラマの登場です。

 この人の作るドラマは基本的に過激で極端であり、良くも悪くも奇を衒いすぎる傾向にあるように思います。 設定が奇抜すぎるので、どうしても煽情的な形になる。 「もっと先が早く見たい」 と視聴者を誘導しすぎるのです。 結果、視聴率だけはいつもついてくる。
 しかしその、遊川ドラマを見た視聴者の反応というのは人によってかなり違ってきます。 これほど違う感想を導き出す脚本家というのは非常に珍しい。

 私も長年この人のドラマは見てきたのですが、この人の作り出す物語というのは、基本的に社会批判や社会に対する失望がベースとなっているように感じます。
 だから世の中を肯定的に捉える(または憎しみとか怒りを好まない)(または建前を軽んじない)人々にとっては、まさに神経を逆なでされるような感覚がする。 社会に対する不条理とかを感じている人にとっては、「ユカワよくぞ言ってくれた」 的なカタルシスが得られる。

 遊川サンのその社会批判には少なからず、「人間不信」 というものが横たわっている気がします。 家族とか友人といった、人がフツー大切にする信頼関係の、「欺瞞」 をえぐり出すのが好きなんですよ(笑)。
 しかもどうも見ていると、この人の根底にあるのは 「性悪説」 なのではないか、と思うことがよくある。 人間の本性は悪である、という中国の古い教えですね。

 それをすごく感じたのは近作の 「○○妻」。 ネタバレになるので書きませんが、あのラストは、「人間いくら懸命に生きようとしても、結局悪意によってすべてダメになってしまうんだよ」 という極端な諦観が支配していました(ネタバレしたも同然?…笑)。
 しかし、途中リタイアした 「純と愛」 もひっくるめて(論じる資格はないのですが…笑)、遊川作品に私がいつも感じるのは、「荒涼とした風景の先に見えるもの」 なんですよ。

 人生、理不尽の連続。

 つまらないことばかりで、明日なんて見えない。

 不幸ばかりで幸せなんか来ないんじゃないか。 幸せになる資格そのものが自分にはないんじゃないか。

 どうせみんな最後は死ぬ。

 なにやっても同じ。

 そんな絶望の支配するなかで、遊川作品は、「それでも、生きてゆくんだよ、人間は」 という結論を見る側に突きつけ続けている気がする。
 絶望したからって死んじゃっちゃそこで終わりなんだよ。 明日を良くするも悪くするも、みんな自分にかかってるんだよ。 いいことないからって脱力して死んでいくなんて、結局死んだあとも負けたまんまだ。

 ただ、言いたいことはたぶんそうなんだろうけど、物語としては、見る側を勇気づける内容には、けっしてなっていない、というのが、遊川作品のクセなのでありまして(笑)。

 見る側というのは、物語の整合性というものを本能的に求めているわけですから、「こうなってこうなったから、こうなった」 というチャート通りにいかないとすごく気分が悪くなる(笑)。

 例えば、「努力したから報われる」。 「自らの正当性が相手に分かってもらえたから、または誤解やボタンの掛け違えが解けたから、今後はうまくいく」。
 実際に生きていればお分かりでしょうが、けっしてそうじゃないですよね(笑)。

 「偽装の結婚」 の第1回においても、主人公の運動会での頑張りはいったん報われたような形になるのですが、けっしてそううまく展開していかない。
 最後も、「これで話がまとまるか、やれやれめでたしめでたし」、と行きそうになると、けっしてそういかなくなる。

 物語的には、ゲイの沢村一樹サンと天海祐希サンが(役名で話しないでスミマセン)きちんと結婚できるには、「女の友情」 というものを利用するしかないんじゃないか、という気がするのですが、そんなことを考えてしまうのは、やはり私自身もどこかで 「予定調和」 というものを考えてしまうからであって(笑)。
 別に沢村サンと天海サンが結婚しなくってもいいんですもんね(笑)。
 でも天海サンは沢村サンと別れて25年も悶々として読書に逃避して独身を貫いて人格まで変わってしまったわけですから、沢村サンといくらヘンな形でも結婚してほしいと思うのは、これまた人情でして(笑)。 いや、そもそもドラマで主役の男女が出てくると、このふたりはくっつくべき、いやそーじゃないなどとやるのは、ドラマを見る側の悪いクセなのであります(笑)。

 しかしユカワの向いている方向は、けっしてそっちじゃない(笑)。

 おそらく遊川サンは最終回に向かって、この主役ふたりに難易度が高まっていく問題を、それこそRPGのように繰り出してくることでありましょう。 でもその先に待っているのは、「いくら絶望的な状況でも、生きてかなきゃならんのだ、負けたままで終わるのが人生ではないのだ、前を見て生き続けることにのみ、人生の意味があるのだ」 という結論だ、と思うのです。 けっしてふたりの幸せな結婚、という単純図式ではなく。

 小賢しい理屈に終始してまいりましたが、このドラマ、かなり軽妙で面白く仕上がっております。
 前作の 「○○妻」 も、ヒガシクンの微妙に憶病な俺様キャラと柴咲コウサンのオバケみたいな神出鬼没キャラがうまく合致して、そこそこのコメディとはなっていたのですが、いかんせん話にシャレが利いていない気がして、そこで思い切り笑えない部分があった。
 でも今回は違います。

 なにしろ天海サンの 「顔と本音が全く違う」 キャラの演じ方がうまい(笑)。 そしてその本音がスケスケだ、という微妙なさじ加減が絶妙だ(笑)。 彼女の演じる嘉門ヒロという女性は、毎朝鏡を見て作り笑顔の練習をしている(笑)のだけれど、相手から理不尽なことをされるとすごくムッとしてるのが、笑顔なのにバレバレなんですよ(笑)。
 コレ、私自身がよくあるケースなので、「よく見てるよなあ人間」 みたいな(笑)。 いくら愛想良く笑顔で応対していても、本心がマル透けみたいな(爆)。

 そして昔のサイレント映画の字幕のように出てくるヒロの本音が、もう笑える。

 (母親の躾が悪いから、そんなガキになるんだよ)
 (おいおい、ここはおめ~らの家じゃねえぞ)
 (だったらひとりで生きろよ、小娘が!)
 (こいつらになにを言っても無駄…)

 そんな凍りついた笑顔の仮面のままで生きる 「氷漬け」 の天海サンの頭上から、沢村サンがやかんでお湯をかけているオープニングの提供で流れるシーンが、ホントよく出来てる(笑)。
 その沢村サン、いくら本気で天海サンのことを怒っても、それがオネエ言葉だから、ちっとも深刻にならないんだな。 「○○妻」 では、ヒガシクンの演じるニュースキャスターが、かなりマジメすぎていくらギャグの場面でもそれが深刻になってしまう、という悪循環に陥っていたように思うのだけれど、今回はそれがないだけすんなり入ってくる気がする。

 遊川サンの作り出すシニカルな展開がもうダメ、という人にはお勧めできませんが、コメディドラマという点では、今年の冬ドラマだった 「デート」 以来、笑わせてくれます。

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コメント

リウ様

長いレビューしていただいたのに、コメント書かないでごめんなさいヾ(_ _*)

遊川さんの脚本
>この人の作り出す物語というのは、基本的に社会批判や社会に対する失望がベースとなっているように感じます。
その通りですね。
ただ、私もどうせみんな最後は死ぬ。なにやっても同じ。 と考える側の人間なのですが、遊川さんのシナリオに全く同調できるかというとそうでもなく・・・
なにか 心を波立たせるものがありますね、彼の脚本は。

「◯◯妻」も2、3回見てリタイアしちゃいましたし・・・
天海さんや沢村さんが良いので、今回は見ていけるかな〜。。。

それにしても、みなさんは、このドラマご覧になってないのでしょうか?

大河や朝ドラには、コメントが多いみたいですが、どうなんでしょうね?

投稿: rabi | 2015年10月16日 (金) 23時03分

rabi様
コメント下さり、ありがとうございます。

「コメント書かないでごめんなさい」 なんて、気に病む必要はまったくございません。 かえってrabi様の心のご負担になっていたとしたら、それこそ申し訳ないことですconfident

みなさんがこのドラマをご覧になっているかは分かりませんが、いずれにしてもこのブログのこの記事は、さほど読まれていないみたいです(ランキングで同日に書いた 「あさが来た」 第2週のほうがよほど上なので…)。

みなさんユカワ氏のドラマに結構警戒感を持っているのかもしれません。 なんたって 「○○妻」 のラストがああでしたから(あ、rabi様、ご覧でないんでしたね…coldsweats01)。

投稿: リウ | 2015年10月17日 (土) 07時30分

リウ様

こんにちは。
「純と愛」って、NHKオンデマンドのライブラリーにも載ってないんですよ。一体どこまでトラウマなんだNHK!とか思ってしまいますけど・・・まあ、それ言うと「平清盛」も同じなのですが。

遊川さんの脚本のドラマって、実は私も余り観てなくて、この「純と愛」と「女王の教室」くらいかなあ。「ミタ」も「〇〇妻」も観てないのですが、良きに付け悪しきにつけ、色々な話題が耳に入ってくるので、つい「みた」気になってしまいますね。

でも、今回の「偽装の夫婦」はシチュエーションコメディとして大変よく出来ていると思います。天海さんの、「貼りつけたような氷の微笑」も流石ですが、個人的には、沢村一樹さんの、普段は男言葉でしゃべっているのに、感情が昂ってくるとおネエ言葉になってしまうというのがツボ。この人、こういう芝居って本当にお上手だよなあ、と感服することしきりです(褒めてるのか?これ)

私の乏しい鑑賞歴のクセして何かいうのもあれですが、遊川ドラマって、今までは、公言すると皆から退かれ、顰蹙を買いそうな「本音」を敢えて登場人物に言わせ、観る者の価値観や常識に揺さぶりをかけることによって、ストーリー展開への興味を繋いでいくという作りが基本パターンとしてあったと思うのですけど、それが今作はちょっと違っているような気がします。

いくら顔でバレバレとは言え(笑)、天海さんが散々吐いてる毒は、あくま字幕の上。それが、イヤだイヤだと思ってるのに、沢村一樹さんのおネエパワーに上手く乗せられ、人のためになることを「やっちまう」という。そこが、コメディの黄金パターンになっていますよね。まあ、そこは遊川さんなので、この先どう展開するか判りませんが。

ただ、かつてのような露悪的までの本音の吐露が、少なくとも表面的には姿を潜めているのは、そんな「本音発言」が全くインパクトを持たない世の中になっていることを察知しているからかな、とも思ってしまいます。

10年前、「女王の教室」で天海さんが演じた主人公が言っていたような事は、当時はまだ、精々ネットなどで密やかに語られるぐらいで、テレビという表の場所で口にするのは憚られるぐらいの、「建前の力」が残っていたと思うのですが、最近では、あれぐらいのこと、一国の大臣でもいいかねないことですからね。

「偽装の夫婦」は、そんな、本音の吐露にタブー破りの快感が伴わなくなった世の中で、遊川さんが放つ新機軸なのかもしれません。そうした意味では、シングルマザー、DV被害、身体障害者、しかも同性愛と、「そこまでかぶせるか?」といった趣の、内田有紀さん演じる園児の母親の存在をどう描くのかに、注目しております。

投稿: Zai-Chen | 2015年10月18日 (日) 11時35分

Zai-Chen様
これは長いコメントを下さり、ありがとうございます。

Zai-Chen様がご覧になっていないドラマのことを書くのは気が引けるのですが、いただいたコメントを読んでいて 「○○妻」 のことを思い出したので、ちょっと書いてみます。

遊川サンの作品で俎上に上がる社会悪について、以前はもっとキレがあったように思うんですよ。
それが、「○○妻」 ではかなり鈍っているような気がしたんです。

あまりに同じことを言い過ぎて、そのドラマも視聴率的には大成功をおさめた、というのに、ちっとも社会を啓蒙できていない、という無力感、とでもいうのでしょうか。

そのキレの鈍さ自体を、「○○妻」 では主人公で正義感が著しく強いニュースキャスターのヒガシクンに、「自らの投影」 として託したような気さえした。

このヒガシクン演じるニュースキャスター。

すごい正論をどんな逆境にも構わずズバズバ言うんだけれど、それが正論すぎて、きれいごとすぎて、少なくとも私のなかにはあんまり突き刺さってこなかった。

「きれいごとすぎる正論の持つ力」 は、まるで急場しのぎのカンフル剤みたいに、一瞬のインパクトだけですぐに人々の心から洗い流されてしまう。

そんな無力感を、遊川氏も抱いていたのではないか。

そんなことをふと、考えながら見ていたりしたのです(実はこれ、レビューで書きかけたのでしたが挫折いたしまして…笑)。

いまのところはいいんだけれどだんだんと展開がね~、みたいな不安はぬぐいきれませんけど(爆)。 結局ぶち壊しまくって、後には何も残らないですから(爆×2)。

Zai-Chen様の渾身のコメントにじゅうぶんお答えしきれなくて、甚だ残念です。

投稿: リウ | 2015年10月19日 (月) 08時14分

このドラマの最終回を見ました。(笑)
遊川さんに対してNHKがトラウマを抱えてるとは、知りませんでした。夏菜ちゃんが主役の朝ドラってひどかったの?(笑)
偽装の夫婦の最終回はちゃんと予定調和になってましたよ。男前な天海さんが素敵でした。天海さんという男前な女優をうまく生かしたお話になっていたと思います。関係ないけど、性悪説はキリスト教にも通じるものです。
夏菜ちゃんはNHKのBSで、リリーフランキーさんとcoversって音楽番組の司会を視聴率に全く関係なく楽しげに毎週されております。NHKは本音では視聴率を度外視した番組を作り続けたいのかもしれませんよ。(笑)私、お気に入りで、毎週録画して見ていますが、マニアックな歌手やアーティストが度々出てきますから。夏菜ちゃん、可愛いです。

投稿: ささ | 2015年12月12日 (土) 14時39分

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