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2016年3月20日 (日)

「真田丸」 第10回 資料がないのを武器にする、とはこういうことさ

 まずはお断りを。
 失敗した人に追い打ちをかけるのは甚だ不本意なのでありますが、実はホントはしたくて仕方ない根性ワルなので、ご了承いただきたいと思います。
 というのも、今年の大河を見ていると、まるで去年の大河の失敗の原因が、とてもよくあぶり出されてくる気がしてならないからなのです。

 去年の大河、主人公が結構無名の人だったのに関連して、当初脚本を担当したおふたかたのどちらかが 「それで却って自由に描ける」 と、実にポジティヴに捉えておいででした。
 しかしその結果は(言及を避けます…笑)(その失敗のからくりは、前回のコメント欄で述べました)。

 翻って、今年の真田幸村(信繁)。
 ウィキで調べると、長男の信幸に比べてティーンエイジャー時代は(いやそれ以降もか?)ほぼなにも書いてないに等しい。
 要するに資料がないのだと思うのですが、脚本の三谷幸喜サンはその 「資料がないこと」 を完全に味方につけ、それを武器にして独自の物語を紡いでいる。 出自はあるのかもしれないけれど、「これって三谷サンの創作なのではないか」 と思うことがよくあるのです。 この第10回も、そうでした。

 しかも完全フィクションとしてではなく、史実と巧妙に繋げながらだから、物語の緊張感というのはまったく損なわれることがないんですよ。
 そこから浮き彫りにされるのは、三谷サンなりの歴史解釈、という見方もできることはできますが、どちらかというと三谷サンのストーリーテラーとしての手腕なのだ、という気がする。
 ここで三谷サンの脳内における、物語の作り方を勝手に想像してみると。

 「まず徳川と北条が手を結んだことに関連して、徳川から真田に何らかのイイワケの場があったはずだよね。
 そこに今回の物語を面白くさせるカギがある。
 この場合、真田昌幸を徳川方に行かせて家康の弁明を聞かせるべきかな? いや、昌幸は狡猾だからそんなことしないでしょ。
 じゃ、誰を真田の名代として行かせよーかなー。
 そうだ、のちに徳川の人質となる信幸に行かせよっか。
 そこでのちの妻の父親である本多(藤岡弘、サン)と絡ませたら、こりゃ面白いよ! 大泉サンに藤岡サンが 『テメー!コノーッ!』 なんてやって大泉サンがビビってさー(笑)。
 真田がたは沼田との交換条件に何を出すだろう。 そうそう、上田城! 昌幸がのちに徳川にひと泡もふた泡も吹かせる城を、当の徳川に造らせた、という事実って話としてサイコーっしょ!
 でも家康にもタヌキの片鱗をちらつかせておかなきゃネ。 そうだ、人質だったばば様を木曽義昌から譲り受けた、ということにして、それを沼田城明け渡しのひとつの材料にしよう!」。

 三谷サンの思考回路は、おそらくかようにローディングしているのだと思うのですが(笑)、まず話の軸が念頭にあって(今回に関しては沼田城と上田城の重要性の喚起と、いかにして北条・徳川の結びつきを超える力関係を構築できるか、ということ)、「どの駒をどこに配置させるか」「その駒をどのように有効に動かすか」 ということを縦横無尽に結び付けていく。
 脚本家の 「ストーリーテリング力」 というのはそこに集約されていることを、しみじみと感じさせるのです。

 しかし、沼田城を守る昌幸の叔父・矢沢頼綱が北条への明け渡しを拒絶して 「ザケンジャネエゾぉぉ~~っ! 徹底抗戦じゃああああ~~~っ!」 と(笑)齢70にて 「ジーサン頑張る」 状態になり、対応に苦慮した昌幸は、上杉ともう一度結ぶ、という選択をするのですが、この史実を前に三谷サンは、まだティーンエイジャー真っただ中の信繁を駒として使おうとするんですよ。 ちょっとこれは暴挙ではなかろうか、と。

 だって、ことこの 「真田丸」 という物語において、信繁は叔父信尹の息子として、すでに上杉に潜入して、景勝と会話まで交わしているんですよ。 その話も三谷サンのフィクション色が強いのですが。
 そんなところにまだドラクエ換算レベル15くらいの息子をもう一度送ろうっていうのは、いくら昌幸でも無謀、というものです。

 しかし三谷サンの思考回路は、「いや、昌幸の出たとこ勝負、相手を食う力。 それらをさらに視聴者に強く印象づける流れになるはずだ」、という方向に向かうわけですよ(笑)。

 だから 「策はない。 信繁、お前が考えろ」 という 「丸投げ状態」 を作り出し、信繁に 「はい?」 と 「ちょ待てよ状態」 を作り出す。 こののち、信繁は見ている側をあっと言わせる策を編み出すのですが、それは完全な 「主人公アゲ」(主人公に必要以上に花を持たせる)の展開であるとはいえ、三谷サンが本当に書きたくて仕方なかったのは 「(策は)知らん」「はい?」 という、すっとぼけたやり取りだったのではなかろうか、という気がしてくるのです。

 しかし若い信繁は、親父から丸投げ状態にされたことが、うれしくて仕方ない。 「丸投げ」 イコール 「信頼された」 ということだからです。 こういうモチベーションが、良策の源泉となっていくのですが、三谷サンはそこに、「梅に信繁の子が出来た」 というもうひとつのモチベーションをくっつけた。
 モチベーション(動機)が出来る→人が行動する→もっとモチが出来る→行動に弾みがついていく、という図式を完全に踏襲しているんですね。

 にしても信繁、手が早ぇぇな(笑)。

 上杉に乗り込んだ信繁は、さっそく自分を取り囲む兵から、無数の槍を向けられます。 しかしそれにまったく動ぜず、上杉に厚かましい依頼を展開していく信繁。
 この光景も、主人公アゲのひとつの方法でありますが、実はこれ、同じ回の前半で、徳川に出向き厚かましいお願いをして本多忠勝から 「テメコノ」 と恫喝を受けビビりまくっていた、兄の信幸との好対照を狙っている。
 こういう対比がドラマを面白くする方法だ、ということを熟知したうえでの、確信的展開なんですよね。

 信繁の駆使した策とは。

 「現在徳川が上杉の攻撃に備えて上田城を築いている。 そこにはわれら真田が配置されることになっている。 しかし実は、それは徳川に備えるためのもの。 われら真田は、徳川に味方するつもりはない。 われらの領地は、われらが戦で正々堂々と勝ち取った土地なのだ。 その領地を北条と徳川は勝手に分けてしまった。 到底受け入れられない。 武士の面目に関わる話なのである(要約)」。

 真田の一見狡賢い策は、実は武士のプライドに関わる話なのだ、という価値の逆転を、若き信繁は説得力の柱とするんですね。

 「上杉が真田に加勢するなど、天地人が…いや天地がひっくりかえってもあり得ない!」 と一喝する直江謙続。 なお一部セリフを勝手に改竄いたしました(笑)。

 「ご加勢していただきたいわけではないのです。 我らが上杉を攻めるフリをするので、撃退したフリをしてほしいのです」。

 「どーゆうこっちゃ?」(またセリフを改竄しております)

 「上杉方は、真田を倒した勢いに乗って、次は上野の北条を攻めるらしい、と噂を流します。
 それを耳にした北条は、沼田どころではなくなる。 そのための戦芝居」

 この人を食ったような、あり得ない提案を上杉景勝が呑む動機として、三谷サンは景勝の自己内省能力を利用した。 「また騙されたら、それは信繁の人柄を買った自分の器がそれまでだ、ということで、自己責任だから」 と。
 当時の状況を鑑みれば、上杉方も四面楚歌の状態で真田の提案に乗っかるしかなかった、ということなのだろうし、ドラマで演じる役者の年齢を離れて見てみれば、当時景勝も謙続も信繁も、みんな若いんですな。 まったくあり得ない話に、三谷サンはしてない。

 ただしその 「戦芝居」 のありように関しては、ちょっと疑問は残りました。 こんな程度で情報操作とか、出来んのかな、と。 徳川方の忍者ハットリくんが見てるかも知んないんだし(笑)。

 梅の話にインスパイアされた 「兵を失わずに済む戦」 を見事実行に移した信繁。 次は梅とのできちゃった結婚だー(不適切な表現)。
 この、架空の話の組み立て方にも感心します。
 しかしそのままメデタシメデタシで済ませることはけっしてしない。 徳川の次なる一手は、室賀なのであります。

 ここで室賀が、「頼られるのがうれしい、実は健気な性格」 である設定をしていることが、また生きてくるんだな。 三谷サン、さすがです。

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コメント

15歳で、「妊娠しちゃった」って彼女に告げられて、それをモチベーションにして、首尾よく策がうまくいったら、「結婚しようよ」(笑)僕の髪が、肩まで伸びて、君と同じになったらじゃなくて。でき婚。(笑)
まず、昌幸パパ、息子二人の使い分けが妙手。徳川に自分が行けば、その場で決断しなきゃならないから、堅い信幸に名代をさせ、信尹と信繁を一緒に連れて行かせる。信尹は交渉要因で信繁はお城作りの説明係。(笑)「じゃがではござらん」
信幸兄ちゃん、超頑張った!その後の脱力状態が、大泉さんならでは。
でも、あの図面、きっともう一枚、違うものがあるよね。だって、対上杉じゃなくて対徳川の城だもの。裏図面?があるはず。(笑)
沼田のじいちゃん、実は使者、3人殺してるそうです。それも、皆、多少とも真田に縁のある方々を。沼田に使者って言われたら、それは死刑勧告ですよ。(笑)
で、上杉に信繁。面白いが取り柄の息子。兼続くんはまた、親方様が情につけこまれて困った事にならなきゃいいが、と心配しつつ、応対してたそうです。昌幸パパ!許せなーい!って先週言われてたのに、面白い小倅が来ると、また、話に乗っちゃった。(笑)
信繁の策も妙手なら、息子二人をうまく使った昌幸の策も妙手。で、やや子が。でプロポーズさせた梅ちゃん、あなたも妙手の使い手です。(笑)

ささ様
コメント下さり、ありがとうございます。

僕の髪が~肩から伸びて~、というのが正調 「結婚しようよ」 の替え歌でありますが(笑)それはどーでもいいとして、「黒木華は天皇の料理番でもあっちゅーまに孕んでいた」、という巨炎様のコメントの意味がそのとき分かった(笑)。

なんか悔しいので、今晩はリアルタイムで見て速攻レビューにしてやろうか、と目論んでいますが、休日なのでどんな用事が出来るか分からないので 「今のところはいちおう」、としておきます(笑)。

しかし 「裏図面がもう一枚あるはず」、というのは鋭いですね。 表図面をわざわざ徳川に見せに行っている、というのも、そうなると周到な 「騙しのテクニック」、ということになるんですね。

しかしエンケンサンの、「ぼそぼそ喋りバージョン」景勝は、なんとも 「戦国の世に間違えて生まれてきてしまった」 悲哀感を出していていいですね。

そうか~、「妙手」 の題名のふたつ目は、梅のそこだったか~(笑)。 貴重な補足を頂き、ありがとうございますconfident

景勝、いい人過ぎるんだもの。(笑)直江兼続だって、「切り捨てましょう」って言っとかないと、裏切りへの帳尻合わないし。きっと、妻夫木くんの天地人兼続だと、涙を流して、信繁を歓迎しただろうけど。今回は人情厚い景勝をクールダウンさせるのが兼続のお仕事みたい。愛の兜の下のクールさ、猿芝居とわかっていても、敵は真田ぞ!油断ゼロ。信繁とのアイコンタクトで、勝ち戦の芝居を仕上げる。兼続の愛は景勝への愛だよ〜〜!景勝、だって、涙浮かべているんだもの。
北条にはお利口の鷹はいるけど、はっとりくんはいないから。今年の家康は、北条と真田でやりあってる分には我関せずかと思っていましたが、どうも、本田正信が容堂公よりおっかない事を企んでるようで。普段はほんわかしてる人が、「真田昌幸、そろそろ死んでもらいましょう。」怖いって。容堂公より、切れ味がある。
ライダー1号忠勝の方が絶対、いい人に思える(笑)
しかし、昌幸パパは碁で負けそうになると、碁盤をかき消すのね。モフモフを箒代わりにして。子供っぽい。(笑)その勢いで徳川との関係もいつでもかき消すのでしょう。もう人質返して貰ったし、お城も作ってるし。(笑)
息子は上杉で、あれは徳川と戦う為のお城でーす!ばらしてるし。
梅ちゃんのやや子がで、ちゃっかりプロポーズ!信繁くん、策士だけど、色恋はお子様。「梅ちゃん、男を手玉にとるのはちょろいもんだよね」ってきりちゃんに言われそうです。(笑)

ささ様
コメント下さり、ありがとうございます。

いくつもコメントが続いていくのが大河レビューの伝統なのに(笑)、このコメントで打ち止めですね、なぜならもう次回のレビュー書いちゃったから(笑)。

兼続は 「愛」 の兜じゃねーなー今回は…、みたいな感じですね(笑)。 だから暗がりで、あまりよく 「愛」 の字が見えなかった(笑)。 「サル芝居だ…」(笑)。 じっさいのところ対峙したまま終結する戦はあったそうで(ヤフー感想欄の事情通による…笑)、「こんな程度で情報操作」 は出来たのかもしれませんね。

ただ今年の大河は、「話の組み立て方」 に面白味があるので、あまり 「史実がこうだから」 と杓子定規に考えてしまっては、面白味が半減するようですね。

第11回 「祝言」 でも昌幸パパは室賀にボロ負けでした、碁が(笑)。
いや、私も、知ってるわけじゃないんですが、あれだけ盤面が埋まってない状態で室賀が 「勝った」 と言ってたから(笑)。 要するに陣取りゲームなわけですよね、碁って。

合戦シーンの少ない大河ですが、何故か緊張感が常にあるのは、お話がちゃんとしてるから。(笑)
猿芝居の戦芝居。あそこで一言も言葉を交わさず目配せだけで、戦芝居が成立しているのが、脚本家と役者の力量でしょう。今回のクール兼続が私は好き。遠藤さんの景勝も。でも、この景勝を見ていると、将来貧乏くじ引いちゃうのがわかる。でもそれを受け入れる器の大きさと、その景勝の為なら閻魔大王に手紙も書くし直江状も書くだろう兼続が想像できます。
真田の赤。あの赤にどれだけの血潮が流れているのでしょうか。
真田パパの碁は、室賀様に勝った事が無い。そんな奴が、大名の野望を。国衆合議制をフイにして。室賀様も妖怪とライダー1号を飼ってるたぬきにつけこまれますわね。
戦国とは、本当に真っ当に生き抜くのが難しい時代だったのだと、このドラマで思います。


ささ様
コメント下さり、ありがとうございます。

まさかのこちらへのコメント(笑)。 まだおっしゃり足りなかった?(笑)

いや、ビンボー臭いですもんね、今回の景勝(笑)。 なんか不動明王を引き継いで背負ってたみたいな北村景勝とはやはり違う。

赤い色の装備というのは、たしか武田軍が同じだったような気がするのですが気のせいか? と思ってウィキで調べたら、「赤備え」 で出てました。 やはりこれも武田信玄リスペクトの一環であったんでしょうかね。

噂によると、上田城、徳川と戦う為に上杉からも援助してもらたようです。どっちの敵からも資金出して貰う、昌幸パパしたたか(笑)それも上杉にしたら、ちっとも自分達の為にならないだろうに。絶対直江兼続は、親方様が誑かされたと思っていそう。(笑)
だが、多分、ぎりぎりまで腐れ縁は続くのでしょう。景勝いい人だもの。
徳川に呼ばれた室賀様、自分一人とわかって、昌幸を出し抜いて嬉しいような、不安なような。
室賀様は昌幸に騙されるのには慣れているのに、おっさん二人が焚きつけるから。
でも近藤正臣さんは容堂公の時も今回もほんと、怖い。まあ、相手は騙して裏切ってなんぼの真田さん家だから、ちょうどいいのかな。(笑)
真田で、真っ直ぐ生きる信幸、将来、たまらないでしょう。

ささ様
コメント下さり、ありがとうございます。

半日で新しい回のレビューをアップしてしまったので、まだこの回で書き足りないことが?(笑)

こないだNHKラジオ深夜便で、名古屋からの放送、「尾張三河から出た三英傑」、というテーマでやってましたけど、いや~面白かった。 三英傑、というともちろん信長、秀吉、家康ですけど、どうして三人ともこの地域から出たのか、という分析をしておりました。 まず大坂には堺を中心とした商人圏があり、京には朝廷が控えている。 だから新たな勢力を展開しにくい。 そして上洛、をしようとした場合、尾張三河あたりがいちばんやりやすい。 そして適度に 「イナカ」 である。

そこに出ていたどっかの教授が 「戦国時代というのはそんなに裏切りとかが主流だったわけではない」 みたいなことを話していたのも興味を惹かれました。

つまり昌幸って、どっちかっていうと 「外道」 の部類(笑)。

しかしまあ、我々としては、斎藤道三とかよく見聞きし知ってるから(私は 「国盗り物語」 は見てないですが)、却って純潔な上杉氏になんか、魅かれたりするわけで。

エンケンサンの景勝はその意味で応援したくなっちゃうけど、昌幸の出たとこ勝負に慣れた身としては、「景勝、オマエはツマラン」(また大滝秀治サン)になっちゃうのかな~(笑)。

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BOOKS

  • マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下

    マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下
     1600ページも費やして、この上下巻はまだ彼らのデビューまでしか書かれていない。 3部作計6巻のうち2巻に過ぎないのだ。 なんと気の遠くなるような作業なのだろう。  本書はビートルズを語るうえで孤高の一作となるはずだ。 虚飾をすっかり剥ぎ取った、20世紀最大の奇跡に潜む真実が、これを読めば理解されるはずである(当ブログ紹介記事より抜粋)。 本書下巻では、1962年のレコードデビューまでが書かれています。

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  • ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白

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    まず驚かされるのが、表紙のポールの写真です。 よくこんなのが採用されたな、というくらい、刻まれた年輪が顕著に分かる 「年老いたポール」。 飾り気のないその写真に、「素のポール」 をあぶり出そう、という心意気が見える。 そして実際、著者のその目論見は、成功しているように思えます。 何より大きいのは、「NME」「Q」「MOJO」 など音楽メディアで長年記者を務めてきた著者がポールと同じリバプールの出身者である、ということ。 さらにポールと同じファースト・ネームであること。 だからポールはまるで自分の分身に話しかけるかのように、時折同郷人にしか分からない言葉で気さくに著者に話しかける。 この本を読む者は、まずその 「不思議なリラックス感」 に包まれるはずです。  本の構成は大きく二つに分かれます。 前半ではビートルズからウィングス、ソロに至るポールのたどってきた長い長い歴史、後半ではポールの人格に迫る試みがなされていく。 そのインタビューは、一気に行なわれたものではありません。 著者がNMEの記者だった1979年のものから、明示はされていないがおそらく2013年、「NEW」 の発売前後が最新のものではないか、と思われます。 実際読んだ感覚では 「キス・オン・ザ・ボトム」 あたりが最新のような気もする。 その30年以上にわたる膨大なポールへのインタビューを、項目によって構成し直しているようです。 ですから、今年(2016年)亡くなったジョージ・マーティンについてのポールの見解であるとか、最新の情報が提示されているわけではない。 ポールの情報というのはこの歳になってもなお日々更新型ですから、その点については物足りなさが確実にあります。 さらに、30年以上というとポールのものの考え方にも変化変遷があってしかるべきだと思うのですが、30年以上をリミックスにかけているからその変化というものがつかめてこないもどかしさがある。 表紙を飾ったポールの 「老い」 という問題にも、この本はきちんと答えてくれているわけではない。 さらに言えば、ジョン・レノンの死について多くが割かれているのとは対照的に、2001年に亡くなったジョージ・ハリソンの死についての記述はない。 正直なところ、このような本を読み漁ってきた身としては、衝撃に値するような情報が書かれているわけではありません。 しかし前述したような、リラックスしたムードのなかでポールと語らっているような疑似体験を共有できる強みが、この本にはある。 この本全体に貫かれているのが、この心地よさなのだ、と思うのです。 その心地よさが乱れるパートがあります。 自身の失敗作、どうでもいい作品について語るときのポールは多分に感情的になりがちであり、イライラした様子を隠しません。 特に 「シークレット・フレンド」 を語るポールのくだりはポールファンなら一読に値する部分でしょう。 しかしそのイライラも、ポールの人間性が垣間見える瞬間としてこの本にとっては必要なパートなのです。 3000円以上と、この本は決して安くはない部類の本です。 ただその値段に見合うパフォーマンスは兼ね備えています。 この本と付き合った1か月足らずの間、心地よい体験をすることができました(アマゾンの自身のカスタマーレビューより)。

  • : レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]

    レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]
    全200ページ程度のボリュームのなかで、キャンディーズに関する特集記事は50ページ。 ただし、これが濃い。 全シングル曲、ほぼほとんどのアルバムの解説は当然として、彼女たちの芸能界における歴史から見た考察、コメディエンヌとしての彼女たち、DVD解説など多岐にわたり、キャンディーズが分析されています。 特に圧巻は、レア音源に関する記述。 ここまで調べている読み物には、個人的にはお目にかかったことはありません。 700円。

MUSIC

  • ザ・ビートルズ -

    ザ・ビートルズ: サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(スーパー・デラックス・エディション)(4CD+DVD+BD)
    ロック界、いや、すべてのポップミュージックにおけるアルバムの中で史上最高と称され、すでに世界文化遺産の域にまで達しているこのアルバム。 そのアルバムの発売50周年を記念して、スペシャルエディションがリリースされます。 なかでもブッ飛ぶのがこのスーパースペシャルボックスセット。 CD4枚組であらたなリミックスのステレオ盤1枚、モノ盤1枚、初期テイク集が2枚、さらにブルーレイ1枚とDVD1枚で5.1サラウンド、ハイレゾ音源、ドキュメント映像 「メイキングオブサージェントペパーズ」 のデジタルリマスター等々、卒倒するようなラインナップです。 18、000円プラス税と値は張りますが、史上最高の名盤だからこそこれは買い。 5月26日の発売までに予約をしておけば、アマゾンならば値下がりした時に値段がそのあと高騰しても最安値で購入できます。 ビーファンならずとも、これは注目ですぞ!

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    山口 百恵: ゴールデン☆アイドル 山口百恵(完全生産限定盤)
    全シングルA・B面プラスボーナストラック(「あなたへの子守歌」)を、山口百恵名義としては初のブルースペックCDとしてリリース。 音はいわゆるドンシャリ系ではなく、アナログ盤に準拠した原音に忠実な印象です。 パッケージングはアナログシングル盤サイズで中袋、CDを納めるケースが完全にドーナツ盤をイメージしています(よく言えば斬新…笑、悪く言えばチャッチイ…笑)。 しかしその発想は買える(笑)。 ほぼ原寸大のシングルジャケットと裏の歌詞カードの複製ブックレット。 ただスキャニングは欲を言えばもう一歩。 当時シングル盤を中心に聴いていたかたなら、この編集盤はかなりの 「買い」 です。 しかしこのジャケット表紙の写真、スッピン風で個人的にはすごく好き。

  • デイヴ・グルーシン&リー・リトナー -

    デイヴ・グルーシン&リー・リトナー: Two Worlds / Grusin & Ritenour
    NHK朝ドラ 「花子とアン」 で美人のスコット先生が夜な夜な歌い、チビはなチャンがすっかり覚えてしまったイギリス民謡、「ザ・ウォーター・イズ・ワイド(流れは広く)」。 このアルバムでルネ・フレミングが歌っていたのを思い出しました。 ルネのソプラノはけっして大袈裟でなく上品で、私のとてもお気に入りのソプラノ歌手ですね。 このアルバム自体は全体的にクラシックにギターのリー・リトナーが絡むフュージョンぽいものなのですが、故・黒田恭一サン評するところの、「大人が聴く音楽」。 胸を締め付けるような哀しみと、すべてを包み込むようないたわりに満ちていて、私の人生のなかでも最上位に位置する愛聴盤です。

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    桜田淳子: ゴールデン☆ベスト 桜田淳子~シングル・コレクション
    彼女の活動期に発売されたシングルをすべて網羅したベスト盤。 確かに後年のものほど馴染みがありませんが、選曲漏れがないので、彼女の存在とは何だったのか自体に思いが至るベスト盤です。 音も楽器の音像がよくてなかなかいいマスタリングをしている気がします。 2600円程度で推移しています。

  • ザ・ビートルズ -

    ザ・ビートルズ: ザ・ビートルズBOX(限定生産品)(USBメモリ)
    パソコンにUSB端子があり(たいていついてると思います)、パソコンで音楽が聴ける環境をお持ちの人ならば、聴くことができます。 現在のテクノロジーで最もいい音質で聴ける、ビートルズの音楽です。 ただし国内版にもかかわらず、訳詞とか一切なし。 ジャケットもブックレットもパソコンデータ。 純粋に音楽だけ楽しみたい人向けです。 また、曲間にコンマ何秒かのブランクが入ります。 「アビイ・ロード」 のメドレーも同様です。 しかし、音はさすがに、すごい。 大きな音量であればある程、目の前にビートルズが迫ってくる勢いです。 ツヤが違います。

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    The Beatles: The Beatles [USB]
    こちら上記の海外版。 内容的には国内版とほぼ一緒なので、値段が安いこちらのほうがいいでしょう。

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