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2016年8月

2016年8月28日 (日)

「第48回 思い出のメロディー」 事情が見え隠れする 「はずしかた」

おことわり 初出時より加筆訂正いたしました。

 毎年お盆の頃に送り火のように放送しているNHKの 「思い出のメロディー」。 しかし今年はリオ五輪があったためでしょう、2週間ばかり遅れた放送になりました。 私も毎年この番組のレビューを書いている気がするのですが、今年ほどこうした 「五輪で放送がずれた」 みたいな、裏の事情が見え隠れするために 「どこか外している」 ような出来のものを見たのは珍しかった気がします。

 その最たるものがイモ欽トリオ。 今回の司会が萩本欽一サンだったつながりですが、イモ欽トリオはメインボーカルのフツオこと長江健次サンが萩本サンと絶縁状態とかで、山内惠介サンが代役(これを番組では、「イモ欽トリオ'16」 と仮称していた)。 なんか以前、ほかの番組でオリジナルメンバー3人で 「ハイスクールララバイ」 をやっていたような気がするんですが、萩本サンの前ではさすがにできなかったのかもしれません。 残念な気がします。
 もしSMAPが再結成して何十年後かに 「思い出のメロディー」 に出演でもしたら、木村クンだけがいないんでしょうかね。 そのくらいの違和感だったな。

 この、「イモ欽トリオ'16」 というユニットで今回 「欽ドン!良い子悪い子普通の子」 も当時のまま再現されたのですが、欽ちゃんの役も代役で小堺一機サン。 これも当時の欽ちゃんのリアクションのキレ味を当人が出せない、という事情が見え隠れしてしまう。 時の流れの無常さを感じてしまいますね。

 「欽ちゃんファミリー」 からはほかに、「欽どこ」 から細川たかしサンとわらべが登場。 わらべは倉沢サンと高橋サンのおふたりだけだったけれど、歌ったのが 「もしも明日が…」 だからいいのか。
 これは当時の記憶をたどりながらでないと分からないのですが、わらべというユニットはもともとこのおふたりに、高部知子サンという人がいた。 この人はいろいろ問題があっていなくなっちゃったんですが、最初のシングル 「めだかの兄妹」 のときはいたんだけど 「もしも明日が…」 のときは、すでにいなかったのかな~。 ベストテン番組でも 「欽どこ」 でも、このおふたりと欽どこファミリーしか歌っていなかったような気がする(そういえばお母さん役の真屋順子サンも、闘病が長いですよね)。 苦い過去が呼びさまされる感じで、ちょっと複雑な気分で見てました。
 高橋サンのほうは、昔のぽっちゃりイメージから、だいぶ大人の魅力が備わった感じに見えたな。

 細川たかしサンは欽ちゃんとの思い出多い 「北酒場」 を、途中から司会者ブースに移動して欽ちゃんと肩を抱き合って熱唱。
 それにしてもですよ。
 気になったのは細川サンの髪型(笑)。 「あれはズラだ」「いや、ズラならあんな不自然な形にはしない」 と一緒に見ていた母親と議論になった(笑)。 もしおハゲになっているのだとすれば、面白いおハゲかたですよね(笑)。

 今回見ていていつもより多く感じたのは、「いや、この人でこの曲が聴きたいんじゃない」、ということ。

 例えば水前寺清子サンの 「365歩のマーチ」。 熊本出身の水前寺サンが熊本地震復興に願いを込めた、という形だし、この人の世代共通のアイコンとしては、もうこの曲が鉄板なんでしょうけれど、私個人としては 「大勝負」 とか 「いっぽんどっこの唄」 とか男唄が聴きたいんですよ。 どっちも熊本応援のニュアンスは出るし。
 ただ、水前寺サンのお声を聴いた限りなんかかすれ気味で、短い音符の多い 「365歩」 で良かったのかな、という気もしました。

 考えてみれば、「大勝負」 とか 「いっぽんどっこ」 は、「男はこうあるべき」 という 「逆セクハラ」 みたいな曲(笑)。 こういうハラスメントぎりぎりの決めつけ強制タイプの曲、というのは、時代的にもうそぐわないのかもしれない、なんてことも考える。
 しかし、ひよってどうするのだ、という気は強くするんですよ。 「強い言葉を私自身が欲している」 ということもあるけれど。

 今の世の中、不用心に決めつけたり強い言葉を吐いたりすると、途端にバッシングの対象になる。 「知らないクセにエラソーに言うな死ね」 みたいな。
 けれども思うのだけど、「まあそうは言うけどこういう事情もあるし」 とか、「そういう考え方もある」、という寛容な方向性というのが、世の中の空気としてはいちばん成熟しているのではないか。

 「この人でこの曲が聴きたいんじゃない」 の最たるものだったのは、倍賞千恵子サンの 「オホーツクの舟唄」 でしたかね。 森繁サンが倍賞サンに 「屋根の上のバイオリン弾き」 の打ち上げで必ず歌わせた、というこの曲。 メロディーは 「知床旅情」 なんですが、歌詞が全く違う。 「知床旅情」 の成立過程というのは 「NHKラジオ深夜便」 で結構知ってはいたのですが、もともとこの曲自体 「♪春は名のみの」 みたいですしね(笑)。
 ただ倍賞サンで私が聴きたいのはこの曲じゃなかった。 この人って歌い方がきっちりとしてとても潔癖なくせに、「さよならはダンスの後に」 とか色っぽい曲があったりするんですよね。 そういうアンビバレンスなところが聴きたいのにな~。

 弛緩しがちな番組に少々スパイスが効いた感じになったのは、堺正章サンの登場でした。 欽ちゃんと堺サンの揃い踏みというのは、あまり記憶にない気がするな~。 どちらも昭和40~50年代のテレビの立役者。 だからなのか、年はとってもどこかで見えない火花が散っている感じでした。
 その両巨頭の仲を取り持つ形になったのが先ほどの小堺サンで、欽ちゃんファミリーの一員になる前は堺サンにお世話になったらしい。 「NTV紅白歌のベストテン」 の写真が紹介されてましたよ。 アレ、あの番組に出てたかな~。 ただ私の記憶だと、小堺サンは 「ぎんざNOW!」 あたりから認識してた。 「どっちが師匠なんだよ!」 という両方からの突っ込みを巧みにかわしながら、見事に緩衝役を務めていた気がします。

 その堺サンは 「さらば恋人」 を歌ったのですが、私個人としては 「涙から明日へ」 とかちょっと普段聴けないような曲が聴きたかったですね。 この人と言えばこれ、という曲はいつも耳にしていて、スマッシュヒットくらいの曲のほうが、懐かしさが倍増したりするケースって、多いんですよ。

 堺サンはそのあとも、井上順サンらGSスーパーバンドで歌っていましたが、このGSスーパーバンドというのが今回いちばん盛り上がった場だった気がします。 井上順サンはソロでも1曲聴きたかったですけど。
 メンバーはほかに、オックスの真木ひでとサン(Vo)、タイガースの加橋かつみサン、ブルー・コメッツの三原綱木サンがギター、ゴールデン・カップスのミッキー吉野サンがキーボード、ドラムスがジャッキー吉川サン。

 このGSの人たちって、なんか若死にするケースが目立つ気がするんですよ。 ホント少なくなりました。 ちょっと前までは 「GS大全集」 とかいう番組が余裕で出来たのに。 あの番組出るとその直後にお亡くなりになるひとが多い、とか昔記事で書きました(ハハ)。
 気になったのは、メドレーの最後で歌われた「バンバンバン」 の作者であるかまやつサンが出てこなかったこと。 最近アルフィーの坂崎サンの番組にゲスト出演していたのですが、特徴のある鼻にかかったような声じゃなくて、「この人なんか声変わった?」 と思っていたら、その後に予定されていたライブがキャンセルされた、と聞いてましたから。

 真木ひでとサンの 「スワンの涙」 では、ダンサーたちが次々失神していく、という爆笑ものの演出も(笑)。
 加橋かつみサンは太ったな~。

 太ったと言えばその後ミッキー吉野サンが掛け持ちで出てきたゴダイゴのタケカワサン。 太って久しいですが(笑)、歌のキイがあからさまに下がっているのもなんだかな~つーか。 「ガンダーラ」 が鉄板なんですが今回は 「モンキー・マジック」 と 「銀河鉄道999」。 ただ 「ガンダーラ」 は聞き飽きたような気もするけど聴くたびに発見があるタイプの曲なので、これもやってほしかった気が。

 内藤やす子サンは脳こうそくによる記憶障害とか、さまざまなことを乗り越えて10年ぶりの歌唱。 それは感動的でもあったのですが、歌った曲は 「六本木ララバイ」。 内藤サンと言えば 「思い出ぼろぼろ」 とか 「弟よ」 を聴きたかったのですが、体力の負担が少なそうだったからか、「六本木ララバイ」。 仕方ないかな~。

 荒木一郎サンはサングラス姿で登場。 いかにも 「出たくねえな~」 オーラが体中から出てましたが(爆)、こういうこだわりって最近あまり見かけないよなー、という気がしながら見てました。 出た以上はきちんと仕事してましたけど、歌ったのがこれも定番の 「空に星があるように」。 これは個人的な要望の最たるものですが、「あしたのジョー2」 の主題歌 「ミッドナイトブルース」 なんかが聴きたかったよーな。

 いちばん爆笑ものだったのが、オーラス1曲前の北島三郎サン。 「風雪ながれ旅」 だったのですが、この曲につきものなのが、あの 「大量の紙吹雪(笑)」。
 これは今回、紅白のときなんかに比べるとはるかに容赦がないレベルでしたね(笑)。 紅白だとやはりきちんと聴かせなければいけない、というNHK側の演出意図が見え隠れするのだけれど、「思い出のメロディー」 ではこれをギャグ化してしまおう、という感じに見えました。
 サブちゃんはこのほかにも、巨大な漁船のセットで 「北の漁場」 を歌ったし、これで噂されていた 「紅白への特別枠での再出場」、という目はなくなった、という感じでしょうか。 この人が紅白に出ないと1年が終わらん、という感じなんですけどね。

 ラスト全員で歌われたのは、「ステージ101」 の主題歌だった 「涙をこえて」。 しかしこの曲、サビ以外あんまし知らないんだよな~(笑)。 「青い山脈」 でよかったんじゃね?みたいな(笑)。

 ただ 「青い山脈」 にしたって、ホントに懐かしい、と思える世代というのは、毎年確実に減ってきているわけです。 今回特に感じたのは、制作側に 「どの世代に向けてこの番組を放送しているのか」 について、多少の迷いがあったんじゃないか、ということ。
 この番組の後に放送されていた曲当てクイズみたいな番組で、ドリカムの 「未来予想図Ⅱ」 が回答として用意されてたりしたんですが、私なんかこの曲、懐メロとしても知らないんですよ。 松嶋菜々子サンのドラマでプリプリの 「M」 を松嶋サンがカラオケで歌ってたけど、私は出だしの部分くらいしか知らない。 しかし私より5年くらい年下の妹なんかにしてみると、どちらもガチな懐メロだったりする。

 しかしそうなると、私が70くらいのホントのジジイになった後って、こういう番組自体がもう成立しなくなりますよね。 若い人に共通の懐メロがないですもん。
 まあ、私が死んだあとのことなんか、どーでもいいんですけど。

 以上、思ったままを勝手に書き殴りましたが、あらためて番組のラインナップを記録しておきます。

 オープニングは 「とと姉ちゃん」 の 「あなたの暮し出版」 のドラマセットから小橋常子(高畑充希チャン)が突然現れた欽ちゃんに、NHKホールまで連れ出されるシークエンス。

 そして出演者全員で 「上を向いて歩こう」。 最後のパートを高畑充希チャンがソロで歌いましたが、結構うまかったぞ。

 出演者全員が揃ったところから前述の水前寺清子サンの 「365歩のマーチ」。 ただ3番は歌われなかった。 ここが歌詞的に重要なのに。

 そして三山ひろしサンによる春日八郎の 「お富さん」。 歌詞のスーパーインポーズを見ると新たな発見がいろいろと(笑)。 当時からしてもかなり難解な歌詞だったみたいですから。

 続いてロス・インディオス&丘みどりサンで 「別れても好きな人」。 ロス・インディオスはもう3人しかいないのか~。 丘みどりサンは、亡くなったシルヴィアさんの代役でしたが、シルヴィアさんの色気には到底及ばず。 つーか、最近色気のある歌い方をする女性なんか絶滅してますよね。 みんな精神的に子供なんだな。

 次は山田太郎サンの 「新聞少年」。 学生帽にランニング姿のいかにも当時の新聞少年然としたガキ共(失礼)がバックダンサーだったけど、違うんだ、違うんだよ…(笑)。 お前らに新聞配達をして家計を助ける、とかいう世界は理解できないだろう(辛辣)。

 続いては二宮ゆき子サンの 「まつのき小唄」。 こういう 「芸者ソング」 というのも、絶滅いたしましたね。 スゲー大昔は本物の芸者さんがよくレコード出してましたけど、「歌がうまい」、という判断基準が西洋的な歌唱のカテゴリと相容れないんですよ。 いかにも口を大きく開けて歌ってない感じだし(西洋の歌唱の基本は、「口を大きく開けまして」 ですからね)。 じっくり聞くととても興味深いですよ、「芸者唄」 というのは。

 そして水森かおりサンによるテレサ・テンの 「つぐない」。 今陽子サン(ピンキー)の 「恋の季節」。 菅原洋一サンの 「今日でお別れ」。 菅原サンに関しては、数年前の 「思い出のメロディー」 のレビューで言及したかな。
 それから先ほどのイモ欽トリオ'16による 「良い子悪い子」 と 「ハイスクールララバイ」。 細川サンの 「北酒場」 とわらべの 「もしも明日が…」。
 そして渡辺マリさんの 「東京ドドンパ娘」。 すごいよね、この歌(笑)。 市川由紀乃サンによる島倉千代子 「この世の花」。 ペギー葉山サンの 「学生時代」。 「夢多かりしあの頃の」 という歌詞を、「夢を借りしあの頃の」 とばかり思っていたあの頃(笑)。

 大津美子サンの 「ここに幸あり」。 歌唱力がすごいと思ったけど、ビブラートがヘンというか(松山千春も同じようなビブラート使う…笑)。

 堺サンの 「さらば恋人」。 そして北島三郎サンの 「北の漁場」。 倍賞千恵子サンの 「オホーツクの舟歌」。 書き忘れたけれど、倍賞サンだけは北海道の羅臼からVTR出演でした。

 永六輔サンの歌はオープニングでもやったのですが、あらためてここで氷川きよしサンによる 「見上げてごらん夜の星を」。 永サンの功績を考えれば2曲というのはいかにも少ない感じでしたが、ひょっとすると紅白までとっといてるのかもしれない。 「二人の銀座」 なんか、和泉雅子サンとか出てきて歌ってほしいよな~。

 ここまでが前半で、後半はGSメドレー。 「あのとき君は若かった」 を堺サンと井上サンで。 ふたりとも赤いミリタリールック。 「ブルー・シャトウ」 を三原サンのボーカルで。 真木ひでとサンで 「スワンの涙」。 「シーサイド・バウンド」 を加橋かつみサンで。 最後が全員揃って 「バン・バン・バン」。

 雪村いづみサンは 「思い出のワルツ」。 美空ひばりサン、江利チエミサンとの三人娘の思い出も披露しました。

 そして舞台は 「スター誕生!」 のオーディション再現。 城みちるサンと石野真子サンがその俎上に(笑)。 そしてそれぞれ、「イルカにのった少年」「ジュリーがライバル」 を。 特に 「ジュリーがライバル」 は、高倉健サンと倍賞千恵子サンが映画 「駅STATION」 で紅白を見ていたときに、トップバッターで出てきた石野真子サンが歌った曲。 映画ではそれからおもむろに 「舟歌」 が流れたんですよね。
 しかし石野真子サン、昔流れたVTRより今のほうが数倍キレイだったぞ。 こういうのを美魔女というのか?

 そして今回唯一、VTRで大部分が流れたのが、山口百恵チャンが 「ひと夏の経験」 を初出場した紅白で歌ったシーン。 まあファンには見慣れているVTRであります。 紅白の映像ではこれと 「プレイバックパート2」 はよく見るんだが、「夏ひらく青春」 とか 「横須賀ストーリー」 は見たことないな~。

 そして、内藤やす子サンの 「六本木ララバイ」。 荒木一郎サンの 「空に星があるように」。 ゴダイゴの 「モンキー・マジック」 と 「999」。 島津亜矢サンが村田英雄サンの 「夫婦春秋」、天童よしみサンが美空ひばりサンの 「愛燦燦」。 で、北島サンの猛吹雪があって(笑)「涙をこえて」 でエンディング。

 最後になりましたが、高畑充希チャンの司会ぶりは 「うますぎてつまんなかった」(笑)。 いや、今回字幕が同時に出てたから、これはもう録画だということが分かるわけで、だから本番でとと姉ちゃんがどれだけのもんだったのか、本当のところはよく分からない。

 そんなとこでした。 以前に書いた覚えのあるものは極力省略したつもりですが、最近頭がぼけてるから重複してるやもしれません。

2016年8月 8日 (月)

「真田丸」 第29-31回 秀吉の急激な衰えと死

 このところの 「真田丸」、どうも内容を盛り込み過ぎて結局どれも中途半端なまま進行している、という印象がぬぐえなかったのですが(その内容については前回レビューのコメント欄で飽きるほど言及していますのでそちらを参照されたい)、秀吉が死んだ第31回 「終焉」 は久々に面白かったように思います。

 何が面白かったのか、というと、臨終近い秀吉の周りで起こる大河ドラマ恒例の 「いつもの混乱」 のなかに 「出浦による家康暗殺未遂」 という 「今まで見たことのない展開」 があったから。
 そのからくりの仕掛け方も実に周到で、家康と三成の遺言分捕り合戦から端を発した秀吉の 「家康暗殺指令」 を三成が真田昌幸のもとへ持っていった、そのきっかけがかつての 「忍城の戦い」 で三成が昌幸に助けられて以来昌幸を 「師匠と崇めていた」、という 「いつから仕込んどったんじゃい」 方式(笑)。

 しかもこの出来事の前に出浦にあらためて 「昌幸をけしかける」 シーンを作り、そこに信幸の舅である本多忠勝を 「孫に会いに来た」 と登場させていた。 このシーンがやたら気になったのは、オープニングシークエンスで本多が出浦を後ろからばっさりやっていたシーンがインサートされていたからで、本多がバカでなければ出浦という人物の危険性をここで察知していたはず。

 昌幸が三成の 「それってちょっとゴーインぽくね?」 的家康暗殺依頼を、いったん 「聞かなかったことにする」 と言いながら、「明日の朝家康に何があっても真田はあずかり知らぬこと」、という 「スンゲーオトナの対応」 をするのにもシビレル。 このドラマを操縦する三谷氏の真骨頂というのは、こうした 「曖昧さの行方」 を物語の深みに寄与させる手腕なのではないか、という気がします。

 そして出浦が忍び込んだ先に家康と共にいたのは、なんと信幸。 ここで信幸は 「おこうにも子供が出来たことを舅殿に知らせるのは自分にゃー無理」 という相談で来ていた、というまたこの周到さ。

 そしてその信幸が、出浦の出したちょっとした音(火遁の術用の火薬の瓶のフタでも抜いたか)に気付いて家康にそれを報せ、結果的に家康暗殺をほかならぬ信幸が阻止する、というこの話の組み立て方。 信幸にとっての味方が、真田から家康に委譲する瞬間だったのではないか、という見せ方がうまいんだな。

 結果的に出浦は本多忠勝と対峙し、そして冒頭のインサートシーンになってしまうわけですが、ここで本多が出浦を真田の庄で見た、という描写がない、というのもいい。

 つまり本多は 「知っててあえて黙ってるのか」、それとも 「かなりのバカで自分が斬った相手が誰なのかも分からない」 というふうだったのか(笑)が分からないから、見る者の緊張がなおさら強まるのです。

 後ろからばっさりやられた出浦は、さらに火遁の術でその場から辛くも逃げ切り、昌幸のもとに瀕死の状態で辿り着く。 昌幸の表情は悲嘆に歪みます。 「ワシは(権力に貪欲な)そんなお主に惚れた」 とかつて昌幸にしゃべっていた出浦ですから、家康暗殺の指令を昌幸に託されたことは無上の喜びだったでありましょう。 昌幸にもここはボーイズラブとか…それはまあいいとして(笑)。

 ただまあ、ウィキを参照いたしますとですね、出浦は関ヶ原のずっと後まで生きていたそうですから、「死んだフリしてまたひょっこり出てくる」 ことを期待いたしましょう。

 この、大河ではこれまで見たことのなかった出来事が、家康と三成の遺言分捕り合戦以上に、秀吉の死にまつわる混乱を強烈に演出していった気がしたのです。

 死の床にある秀吉は、遺言のムリヤリ書かされ以外にもいろいろダシに使われます(笑)。

 つまり、「このローソクの炎が消えたらワシも死ぬ」 という 「最後の一葉」 みたいな生きる望みを、あえなく小早川秀秋に消されてしまう、という 「遠~い先の関が原への仕込み」(笑)。 その場に居合わせた信繁と家康が揃って 「わーっ!」、というのは、これはドリフ式ギャグと申しましょうか(笑)。
 ただ小早川はこれまでにも、裏切りへのチャートが思わぬところで見え隠れするのが見ていて面白い。

 そして見舞いの席で信繁に対してうそかまことか、「本音」 を吐露する家康。
 このドラマのスタンスで面白いのがこの家康で、少なくとも秀吉が逝去するまで家康には、自発的な天下取りの動機が備わっていない、ということになっている。 この回では女房とか側近に焚きつけられていたけど、家康の心変わりの材料として今のところ一番考えられるのは頭カチカチの三成の仕切り方に対してでしょうか。 でも今のところ少なくとも家康にはじゅうぶん人間性が垣間見られて、このドラマでの家康は好きだな。

 そして信繁が秀吉から託された最後の願いは、「秀頼を頼む」 ではなく、「三成を助けてちょ」 だった。 これで 「真田丸」 における信繁の行動原理は定まったといえるでしょう。

 このところメッセンジャーボーイ系の端役扱いだった信繁。 秀吉が死んで…いや、まだ本当の主役になるのは先でしょうか…(笑)。

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BOOKS

  • マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下

    マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下
     1600ページも費やして、この上下巻はまだ彼らのデビューまでしか書かれていない。 3部作計6巻のうち2巻に過ぎないのだ。 なんと気の遠くなるような作業なのだろう。  本書はビートルズを語るうえで孤高の一作となるはずだ。 虚飾をすっかり剥ぎ取った、20世紀最大の奇跡に潜む真実が、これを読めば理解されるはずである(当ブログ紹介記事より抜粋)。 本書下巻では、1962年のレコードデビューまでが書かれています。

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  • ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白

    ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白
    まず驚かされるのが、表紙のポールの写真です。 よくこんなのが採用されたな、というくらい、刻まれた年輪が顕著に分かる 「年老いたポール」。 飾り気のないその写真に、「素のポール」 をあぶり出そう、という心意気が見える。 そして実際、著者のその目論見は、成功しているように思えます。 何より大きいのは、「NME」「Q」「MOJO」 など音楽メディアで長年記者を務めてきた著者がポールと同じリバプールの出身者である、ということ。 さらにポールと同じファースト・ネームであること。 だからポールはまるで自分の分身に話しかけるかのように、時折同郷人にしか分からない言葉で気さくに著者に話しかける。 この本を読む者は、まずその 「不思議なリラックス感」 に包まれるはずです。  本の構成は大きく二つに分かれます。 前半ではビートルズからウィングス、ソロに至るポールのたどってきた長い長い歴史、後半ではポールの人格に迫る試みがなされていく。 そのインタビューは、一気に行なわれたものではありません。 著者がNMEの記者だった1979年のものから、明示はされていないがおそらく2013年、「NEW」 の発売前後が最新のものではないか、と思われます。 実際読んだ感覚では 「キス・オン・ザ・ボトム」 あたりが最新のような気もする。 その30年以上にわたる膨大なポールへのインタビューを、項目によって構成し直しているようです。 ですから、今年(2016年)亡くなったジョージ・マーティンについてのポールの見解であるとか、最新の情報が提示されているわけではない。 ポールの情報というのはこの歳になってもなお日々更新型ですから、その点については物足りなさが確実にあります。 さらに、30年以上というとポールのものの考え方にも変化変遷があってしかるべきだと思うのですが、30年以上をリミックスにかけているからその変化というものがつかめてこないもどかしさがある。 表紙を飾ったポールの 「老い」 という問題にも、この本はきちんと答えてくれているわけではない。 さらに言えば、ジョン・レノンの死について多くが割かれているのとは対照的に、2001年に亡くなったジョージ・ハリソンの死についての記述はない。 正直なところ、このような本を読み漁ってきた身としては、衝撃に値するような情報が書かれているわけではありません。 しかし前述したような、リラックスしたムードのなかでポールと語らっているような疑似体験を共有できる強みが、この本にはある。 この本全体に貫かれているのが、この心地よさなのだ、と思うのです。 その心地よさが乱れるパートがあります。 自身の失敗作、どうでもいい作品について語るときのポールは多分に感情的になりがちであり、イライラした様子を隠しません。 特に 「シークレット・フレンド」 を語るポールのくだりはポールファンなら一読に値する部分でしょう。 しかしそのイライラも、ポールの人間性が垣間見える瞬間としてこの本にとっては必要なパートなのです。 3000円以上と、この本は決して安くはない部類の本です。 ただその値段に見合うパフォーマンスは兼ね備えています。 この本と付き合った1か月足らずの間、心地よい体験をすることができました(アマゾンの自身のカスタマーレビューより)。

  • : レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]

    レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]
    全200ページ程度のボリュームのなかで、キャンディーズに関する特集記事は50ページ。 ただし、これが濃い。 全シングル曲、ほぼほとんどのアルバムの解説は当然として、彼女たちの芸能界における歴史から見た考察、コメディエンヌとしての彼女たち、DVD解説など多岐にわたり、キャンディーズが分析されています。 特に圧巻は、レア音源に関する記述。 ここまで調べている読み物には、個人的にはお目にかかったことはありません。 700円。

MUSIC

  • ザ・ビートルズ -

    ザ・ビートルズ: サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(スーパー・デラックス・エディション)(4CD+DVD+BD)
    ロック界、いや、すべてのポップミュージックにおけるアルバムの中で史上最高と称され、すでに世界文化遺産の域にまで達しているこのアルバム。 そのアルバムの発売50周年を記念して、スペシャルエディションがリリースされます。 なかでもブッ飛ぶのがこのスーパースペシャルボックスセット。 CD4枚組であらたなリミックスのステレオ盤1枚、モノ盤1枚、初期テイク集が2枚、さらにブルーレイ1枚とDVD1枚で5.1サラウンド、ハイレゾ音源、ドキュメント映像 「メイキングオブサージェントペパーズ」 のデジタルリマスター等々、卒倒するようなラインナップです。 18、000円プラス税と値は張りますが、史上最高の名盤だからこそこれは買い。 5月26日の発売までに予約をしておけば、アマゾンならば値下がりした時に値段がそのあと高騰しても最安値で購入できます。 ビーファンならずとも、これは注目ですぞ!

  • 山口 百恵 -

    山口 百恵: ゴールデン☆アイドル 山口百恵(完全生産限定盤)
    全シングルA・B面プラスボーナストラック(「あなたへの子守歌」)を、山口百恵名義としては初のブルースペックCDとしてリリース。 音はいわゆるドンシャリ系ではなく、アナログ盤に準拠した原音に忠実な印象です。 パッケージングはアナログシングル盤サイズで中袋、CDを納めるケースが完全にドーナツ盤をイメージしています(よく言えば斬新…笑、悪く言えばチャッチイ…笑)。 しかしその発想は買える(笑)。 ほぼ原寸大のシングルジャケットと裏の歌詞カードの複製ブックレット。 ただスキャニングは欲を言えばもう一歩。 当時シングル盤を中心に聴いていたかたなら、この編集盤はかなりの 「買い」 です。 しかしこのジャケット表紙の写真、スッピン風で個人的にはすごく好き。

  • デイヴ・グルーシン&リー・リトナー -

    デイヴ・グルーシン&リー・リトナー: Two Worlds / Grusin & Ritenour
    NHK朝ドラ 「花子とアン」 で美人のスコット先生が夜な夜な歌い、チビはなチャンがすっかり覚えてしまったイギリス民謡、「ザ・ウォーター・イズ・ワイド(流れは広く)」。 このアルバムでルネ・フレミングが歌っていたのを思い出しました。 ルネのソプラノはけっして大袈裟でなく上品で、私のとてもお気に入りのソプラノ歌手ですね。 このアルバム自体は全体的にクラシックにギターのリー・リトナーが絡むフュージョンぽいものなのですが、故・黒田恭一サン評するところの、「大人が聴く音楽」。 胸を締め付けるような哀しみと、すべてを包み込むようないたわりに満ちていて、私の人生のなかでも最上位に位置する愛聴盤です。

  • 桜田淳子 -

    桜田淳子: ゴールデン☆ベスト 桜田淳子~シングル・コレクション
    彼女の活動期に発売されたシングルをすべて網羅したベスト盤。 確かに後年のものほど馴染みがありませんが、選曲漏れがないので、彼女の存在とは何だったのか自体に思いが至るベスト盤です。 音も楽器の音像がよくてなかなかいいマスタリングをしている気がします。 2600円程度で推移しています。

  • ザ・ビートルズ -

    ザ・ビートルズ: ザ・ビートルズBOX(限定生産品)(USBメモリ)
    パソコンにUSB端子があり(たいていついてると思います)、パソコンで音楽が聴ける環境をお持ちの人ならば、聴くことができます。 現在のテクノロジーで最もいい音質で聴ける、ビートルズの音楽です。 ただし国内版にもかかわらず、訳詞とか一切なし。 ジャケットもブックレットもパソコンデータ。 純粋に音楽だけ楽しみたい人向けです。 また、曲間にコンマ何秒かのブランクが入ります。 「アビイ・ロード」 のメドレーも同様です。 しかし、音はさすがに、すごい。 大きな音量であればある程、目の前にビートルズが迫ってくる勢いです。 ツヤが違います。

  • The Beatles -

    The Beatles: The Beatles [USB]
    こちら上記の海外版。 内容的には国内版とほぼ一緒なので、値段が安いこちらのほうがいいでしょう。

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