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2017年1月 4日 (水)

「べっぴんさん」 前半まで見て

 子供服・ベビー用品を扱う仕事を立ち上げていくヒロインの姿を描いた、今回のNHK朝ドラ。
 前半までを見た全体的な印象をひと言で申し上げると、「地味」。
 「あまちゃん」 以降の朝ドラに顕著だったように思える、いろんな仕掛けが盛りだくさんで、見ていてウキウキするような派手さがまったくない。

 だいいち、今回の朝ドラは 「見る側を笑わせようとしていない」。 このスタンスの朝ドラを見るのは、私にとってはずいぶん久しぶりのような気がする。
 地味な上に笑わせようとしていないから、見る側は簡単に 「つまらない」、とそっぽを向いてしまいがちだ。 悪いことに 「笑える部分」 の作り方がまたかなりヘタクソで、笑わせようとしている部分では思いっきり白けてしまうこともしばしば。
 じっさいに視聴率はあまり芳しくないし(それでもそれまでの朝ドラに比べれば、という話だが)、「紅白歌合戦」 でも私の見る限り完全に黙殺されていた。 大阪制作の朝ドラが紅白で冷遇されるのは今までにも何度か見てきたが、ここまで完全無視というのはなかった気がする。

 これは、ヒロインの芳根京子を以前から朝ドラヒロインに推し続けてきた私にとっては非常に残念な事態だ。 彼女を推したのは 「表参道高校合唱部」 での天真爛漫で元気な演技を見たからであるが、「べっぴんさん」 のヒロインというのは、これまでの朝ドラヒロインにはあまり見たことのない、いわば真逆の性格によって彩られているのだ。

 いわく、消極的。
 いわく、暗い。

 ここに 「自分の言いたいことをズケズケ言わない」、という項目も付けたいのであるが、「なんか…なんかな…」 と逡巡する決まり文句のあと、結局ヒロインは言いたいことをしゃべっているので除外する(笑)。 ただここ数作にわたる、流行語を生み出したいというNHKのスケベ心がここでも継続しているような気がして、この 「決まり文句」 はいただけない、という気はする。

 また、物語の性格に目をやると、「お嬢さまがたのままごとみたいなビジネス」、という内容が浮かび上がってくる。 ドラマに出てくる男性陣がしばしば呆れかえるのだが、ヒロインを加えたメインスタッフ4人は出たとこ任せでいつも結果オーライによって救われている。 逆境に対する必死さがまったく見えず、常になんかいつの間にか解決していたりする。

 引き合いに出すのは酷だが、同じ関西圏で同じような服飾ビジネスを展開していた朝ドラ 「カーネーション」 においては、主人公は自らが生きていくために死に物狂いだった。 どうにもならんもんを強引にこじ開け、とんでもない受注をしたときは自らに鞭打ち、塗炭にまみれながらもなにがなんでも仕上げた。

 「べっぴんさん」 にはそうした 「苦労話」 が一切ない。 弁当箱を急に500個作らなければならなくなってもフンフンみたいな感じで病気がちだった子が仕上げてしまうし、どこからともなく助っ人の女性たちが集まって足りない商品を作ってしまう。 ちょっと気に食わないことがあると仕事を休み、忙しくなった途端に 「過労」 で倒れたりする。 見ていて、ホントにお嬢さまだな、と思う。
 経理は相当なドンブリなので、どこまできちんと報酬が支払われているのかも謎だ。 原価との兼ね合いもたぶん雑なのであろう(ヒロインの夫が経理をやることになったので、今後このような杞憂は一掃されるが)。

 それなのに話はとんとん拍子に進み、彼女たちの店 「キアリス」 は有名百貨店に支店を出してしまう。 「カーネーション」 のオハラ洋裁店とは何が違うのだろうか。

 おそらくキアリスは、戦後のベビーブームという時代のニーズにかなりマッチした、というのが私の結論であるが、作り手の描きたい部分もそこにあるのではないか、という気がしている。

 なぜ、このような甘っちょろいお嬢さまビジネスが成功していくのか。

 実は、私がこのドラマの視聴をリタイア出来ない理由もそこにある。

 まず彼女たちのビジネスというのは、「主婦目線」、ということが挙げられる。 自分たちに興味のあることだから、発想もけっしてビジネス的に外さない。
 さらに、メンバーひとりひとりのポテンシャルが思った以上に大きい。 特にデザインを考える君ちゃんだったか?(よー覚えとらん…笑)、の能力が売り上げに多大な貢献をしているように思える。 看護婦やってた人(これも名前がパッと出てこない…笑)はこのメンバーのなかで唯一お嬢さまではないが、彼女の育児知識はキアリスの立ち上げ時に集客力に弾みをつけることにとても貢献した、と思える。
 そして、前半最終週の話の展開から分かったのだが、この4人が 「友達感覚」 で風通しを良くしている、というのも大きかった。 開店と閉店の時間は毎日決められていたのだろうが、ドラマを見ていると結構その縛りも緩いような気がする。 フレックスタイムとまでは言わないが、この緩い関連性がキアリスを円滑に動かすカギなのだ。

 この4人はけっしてガツガツと利益を上げようとしていない。 ただ言えるのは、彼女たちが取扱商品を増やしていくのは、利益誘導のためでなくて、先ほども指摘した 「自分たち主婦がそうしたほうがいいと思うから」 という目線からでしかないのだ。

 このような地味な話をきちんと視聴に値するレベルまで持っていけているのは、やはりヒロインの芳根京子の力が大きい。 このコは、元気な役でも地味な役でもこなせるオールラウンダーだったのだ。 地味な役だとそれが分かりにくいのが少々忸怩たる思いだ。

 また、男の視聴者、という立場からいうと、ヒロインの夫である紀夫の 「不器用さ」 にも注目してしまう。 彼は自分のしたいこととするべきことのズレに悩み、自分の居場所を求め続けている。

 いずれにしても、生真面目に話を展開しているという点では評価できるが、話にはところどころ矛盾点もあるし、変に笑わせようとするところに多少の揺らぎを感じなくもない。 それでもたぶん最後まで見てしまうのだろう。

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テレビ」カテゴリの記事

コメント

橋本様

 明けましておめでとうございます。

 体調は回復されたのでしょうか・・・?
レビュー再開のようで楽しませてもらっております。
真田丸も終わり、また一つ楽しみがなくなり・・・。年を取るにつれ楽しむ事が下手になるようで淋しい限りのおばさんです。
「表参道・・・」で活躍したキャピキャピさんは、打って変わって、朝からどんよりした空気感。
2週間でリタイアしてしまいました・・・(泣)
「某○○先生」よりも早かった・・・。
芳根さんは可愛いし応援したかったのですが、残念です。なので、橋本様のレビュー読んで、そんな風に展開してるのか~と思ってるところです。
事業は成功するのでしょうが、あのどんより感は、上品さ故なのでしょうかね・・・?
次の朝ドラもも期待できそうにないし、楽しみ少ない老後になりつつあります(笑)

おばさん 様
このヘロヘロブログを今年もよろしくお願いいたします(笑)。 コメント下さり、ありがとうございます。

体力的にもしんどかったのですが、ブログを休止したのは精神的な面が大きかったです。 再開したのは、まあ気を取り直して、といったところでしょうか。

ただまあ、今後はもっと自分の書きたいように書こうかな、と。 「です・ます調」 を 「だ・である調」 に変えたのも 「イチャモンは受け付けません」 という気持ちがこもってます(笑)。

朝っぱらから見るにはしんどい朝ドラではありますよね。 なにしろ夫婦そろって暗いんだもん(笑)。 だから最近はこの夫婦以外の人が一生懸命笑かしにかかっているのだけれど、これがまた白けるんですよ。 真面目にやっててそれが可笑しい、という方法で笑わせればいいのに。

次の朝ドラ脚本は岡田惠和サンだったかな。 この人は当たり外れが大きいので 「泣くなはらちゃん」 みたいな傑作を期待してます。

まあ、2年後のクドカンの大河ドラマに期待しましょう(長すぎだ~)。

無理に笑いを取ろうとせずに「面白い!」と視聴者に思わせられれば立派なのですが前半からあった微妙な所が後半、増えてきたかなぁ…。
モデルになった人達もお嬢様で軍資金もあまり不自由しなかったらしく作中で描かれているように旦那や周囲の人の助けもあって軌道にのってきたらしいです。その辺り、ホームドラマ的縛りで曖昧にしているのが問題でしょうか。

「カーネーション」のように潰れかけの呉服屋が二代後には三姉妹全員が世界的デザイナーなどという奇跡がホイホイ、転がっている訳は無いといえば無い。

巨炎様
コメント下さり、ありがとうございます。

後半に入ってからまだ1話も見ていないのですが、前半で私が特に気になったのはすみれの姉であるゆりの変節ですね。 子供が出来たからってそんなに簡単にそれまでの 「社会で活躍したい自分」 がどこかに行ってしまうものなのか…。 ただまあ、これまでの朝ドラヒロインのカテゴリからいけば、蓮佛サンのほうがよほどヒロインの条件が揃ってる。 だからゆりが活躍してしまうとすみれのヒロインとしての意味がなくなる、よってゆりをドラマ上から抹殺する(物騒)というからくりなのではないか、という気もします。

軍資金が豊富だからお手伝いさんもいて、腰痛で簡単に入院して(私のようにヘルニア手術でもしないと入院なんか無意味のような気もしたんですが…笑)布地も簡単に調達できて、という感じでしょうか。

お金がある人が羨ましい(笑)。 私には小原家のほうが感情移入しやすいようです。

後半に入りスナック喫茶のママさん役に
江波杏子さんが登場!

最近、この人は岸田今日子さんにイメージが被ってきました。「御家人斬九朗」で岸田さん演じる母上が余所に遊びに行ったエピでゲスト出演した事もあります。BS-TBSで再放送クライマックスな「赤い運命」や「武田信玄」等、岸田さんの影が色々なところでチラついているような。

巨炎様
コメント下さり、ありがとうございます。

そう言えば岸田サンも江波サンも、大きい口とかぱっちりした目とか、よく似てますよね。 声も低くて似てますね(ただ私の場合岸田サンはどうしてもムーミンのインプリンティングが…笑)。

「赤い運命」 では、やはり三國連太郎サンが注目でしたね。 私再放送視聴はちょっと挫折したのですが(録画予約を忘れたりして)このドラマでの三國サンは完全に外見犯罪者(笑)。 その哀しみを表現する、という点では、三國サンにとっては序の口の演技難度だったのではないか、と。

これが終われば今度は 「赤い衝撃」。 中条静夫サンや大坂志郎サンが注目、でしょうか。

やっぱりみなさんぱっとしないと感じてますね。
あーこんばんはです、りうさん。最近はもっと暗くなってますね。こうなったらその線でやり続けるしかないかな?でもさくらも小学生じゃないんだからと思うところもあっていまだに感情移入できてないのです。しかし「純と愛」よりはぜんぜんいいのでみまーす。

ドラマ大すきおやじ51才 様
コメント下さり、ありがとうございます。

今年に入ってから全然見てないよ~(笑)。 え?ますます暗くなった? じゃ見るのやめようかな~(笑)。 なんかチラッと見ると娘のさくらがグレてるようだし(笑)。 朝ドラ恒例の 「ファミリーストーリー」 路線になっとるな、つーか。

>娘のさくらがグレてるようだし
そんなレベルにも達しない話を何週も引っ張りました。「マッサン」のエマや「あさが来た」の千代もここまで酷く無かった…。

「カーネーション」の影響が悪い方向に出ているのかも。「ゲゲゲ」までの実話ベース朝ドラは社会的に成功した人本人より、その近親者が主人公のケースが多くどんな風に育てた&支えたかという所をメインストーリーにしやすかった。「あさが来た」や本作は主人公が前半から、かなりの成功を収めてしまった事が後半、裕福な環境で育ちすぎた子供に手を焼くホームドラマ色が強くなる。

「カーネ」は糸子がそこまで成功していないのですよね。祖父・清三郎から受けついたカリスマや天性のお客目線で難関を突破していく一方、
『家計の事など感知していなかったのに卒業後に採用の取り決めを反故にして女学校中退』
『パッチ屋解雇直後、清三郎の引き抜きを知らない善作が就活を指示したのを好機と捉えるどころか同じ場所で貞子さんと語り、祖父との会話を思い出しても約束の内容だけはスルー』
『父の反対を押し切ってまで三年務めたパッチ屋には退職二年が経過しても人脈が残っているのに、父が送り出したロイヤルではその経験を生かそうともせず昼休み等、一人で過ごす』
自分のやりたい事にはホイホイ飛びつく一方で家族の事を真剣に考えて行動すべきポイントでは途端にテンションが下がる。正に親の心、子知らず。父の教えをことごとく蔑ろにしてきたから、祖父の才能を受け継ぎながら洋裁屋の一女店主どまりで、しかも親の立場になったら自分を棚に上げて偉そうな事をほざきまくる!

「ウチをどないしたら認めてくれるん?分からへん」とロイヤル時代に言っておきながら三姉妹編で優子が同じことを言ったら「自分で考え!」。糸子が生地屋に務めたのは自分の判断や考えでしたっけ?聡子にも自分の学歴を棚上げで説教。正に理不尽な壁となって立ちふさがっていたわけで、これを乗り越える事で娘達は大きく飛躍した…ってドラマ的には完全にヒールなんだよねぇ(笑。
生来は静子寄りの性格だった優子は
『母に認められるためには大阪の洋裁学校に通うだけでは不十分と考え原口先生に師事』
『妹のために土下座までして二度目の上京を決意』
勝似の聡子も自分は座学が苦手だからと座学を馬鹿にしたりせず『机にじっと座って勉強してきた姉に相談』と。
娘達の方が余程、真面目(笑。だからこそ後半になってもテンションは落ちなかった訳で。「勉強やで」を繰り返してきた善作にしてみれば
「ワシの優子ちゃんがアホの糸子に勝ちよったで~!!!」状態。

巨炎様
コメント下さり、ありがとうございます。

「カーネ」 について書き始めると相変わらず底なしですね巨炎様(ハハ)。 あれはヘンな主人公アゲがない稀有なドラマでした。 なにしろ全員気取ってなくていい。 「カルテット」 についてしつこくまた言及してしまいますが、あそこに出てくる人たちはみんな気取っているのが嫌なんですよ。 「小賢しい」 とでもいうか。 私にとっては未来人ですね。 好きになれないパターン。 感情移入が出来ない。

そもそも、自分が昔そういうナマイキな嫌われ者タイプだったから嫌悪感が増すのかもしれませんが。

「べっぴんさん」 ですが、いや~今年に入ってから視聴が進みませんね~(笑)。

さくらがいかしたドラマ―に恋し始めたところまでは見たんですが、「いかにして若いヤツは不良になっていくのか」 というすごく古~いテーマを扱っているような気がしてます(笑)。 芳根京子チャン似の娘をよく探してきたな、という感じですが、いかんせん娘のほうが年上に見えたりして(ハハ)。

ただ…なんか、なんかな…(笑)、ダイジェストで見たい感じが…(笑)。 いつも倍速で見てるんですがまだカッタルイ。

ただ、倍速でミスチルの主題歌を聞くと、こっちのほうがテンポが良くて好きですよ。 たまにフツー速で見るとこんなカッタルイ曲なのか、と幻滅します(笑)。

大阪万博で団時郎が爺さんで登場。
来年にはウルトラマンに転生するのか…。
ロイヤル大将の髪型とか糸子の服がオレンジとか
MATを意識していたのかなぁ…。

今春からの再放送は「こころ」(2003年)。
スチュワーデスのヒロインが
子持ちの男と結婚するが相方が死亡して
血の繋がらない子供達を育て…という話。
設定がベタで脚本的に凄く良かった訳でも無く
有名作やヒット作ばかりが全てではないが…。

大河の再放送は「風林火山」だそうで。
「信玄」の西田勘助は軍師というより密偵だったし
こちらは順当でしょうか。

巨炎様
コメント下さり、ありがとうございます。

「風林火山」 かぁ~。 「武田信玄」 との比較探求という点では面白そうですが、あまり見る気はしないですね。 まあ、山本勘助がもともと今川の密偵だったという、今年の大河とのつながりを考慮しての再放送なのでしょう。

そうした今年の大河宣伝の一環、という枠を離れたときに私が見たい再放送は、全編残っていない昔は仕方ないとして、「春の波濤」「太平記」「毛利元就」 あたりでしょうか。

それにしても 「べっぴんさん」 は今年に入ってから録画がたまる一方です。 もう1ヶ月くらいたまってしまいました。 さくらのことばっかりやってる感じで、もともと暗い話がますます暗くなっている。 たまった録画を一括削除してしまおうかと思案中です。

ファミリアのことはちゃんとやってるんでしょうか? まあここまで来てこれだから、3月の今もたぶんちゃんとやってないんでしょうね。 ファミリアの話なんか、もうどうでもいいですが(笑)。 今さらやられても困るというか(笑)。 あの、ポケットに手を突っこんだままの失礼な男は、VANに倣って倒産でもしたんでしょうか?(もうどうでもいいか)。

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  • マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下

    マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下
     1600ページも費やして、この上下巻はまだ彼らのデビューまでしか書かれていない。 3部作計6巻のうち2巻に過ぎないのだ。 なんと気の遠くなるような作業なのだろう。  本書はビートルズを語るうえで孤高の一作となるはずだ。 虚飾をすっかり剥ぎ取った、20世紀最大の奇跡に潜む真実が、これを読めば理解されるはずである(当ブログ紹介記事より抜粋)。 本書下巻では、1962年のレコードデビューまでが書かれています。

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  • ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白

    ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白
    まず驚かされるのが、表紙のポールの写真です。 よくこんなのが採用されたな、というくらい、刻まれた年輪が顕著に分かる 「年老いたポール」。 飾り気のないその写真に、「素のポール」 をあぶり出そう、という心意気が見える。 そして実際、著者のその目論見は、成功しているように思えます。 何より大きいのは、「NME」「Q」「MOJO」 など音楽メディアで長年記者を務めてきた著者がポールと同じリバプールの出身者である、ということ。 さらにポールと同じファースト・ネームであること。 だからポールはまるで自分の分身に話しかけるかのように、時折同郷人にしか分からない言葉で気さくに著者に話しかける。 この本を読む者は、まずその 「不思議なリラックス感」 に包まれるはずです。  本の構成は大きく二つに分かれます。 前半ではビートルズからウィングス、ソロに至るポールのたどってきた長い長い歴史、後半ではポールの人格に迫る試みがなされていく。 そのインタビューは、一気に行なわれたものではありません。 著者がNMEの記者だった1979年のものから、明示はされていないがおそらく2013年、「NEW」 の発売前後が最新のものではないか、と思われます。 実際読んだ感覚では 「キス・オン・ザ・ボトム」 あたりが最新のような気もする。 その30年以上にわたる膨大なポールへのインタビューを、項目によって構成し直しているようです。 ですから、今年(2016年)亡くなったジョージ・マーティンについてのポールの見解であるとか、最新の情報が提示されているわけではない。 ポールの情報というのはこの歳になってもなお日々更新型ですから、その点については物足りなさが確実にあります。 さらに、30年以上というとポールのものの考え方にも変化変遷があってしかるべきだと思うのですが、30年以上をリミックスにかけているからその変化というものがつかめてこないもどかしさがある。 表紙を飾ったポールの 「老い」 という問題にも、この本はきちんと答えてくれているわけではない。 さらに言えば、ジョン・レノンの死について多くが割かれているのとは対照的に、2001年に亡くなったジョージ・ハリソンの死についての記述はない。 正直なところ、このような本を読み漁ってきた身としては、衝撃に値するような情報が書かれているわけではありません。 しかし前述したような、リラックスしたムードのなかでポールと語らっているような疑似体験を共有できる強みが、この本にはある。 この本全体に貫かれているのが、この心地よさなのだ、と思うのです。 その心地よさが乱れるパートがあります。 自身の失敗作、どうでもいい作品について語るときのポールは多分に感情的になりがちであり、イライラした様子を隠しません。 特に 「シークレット・フレンド」 を語るポールのくだりはポールファンなら一読に値する部分でしょう。 しかしそのイライラも、ポールの人間性が垣間見える瞬間としてこの本にとっては必要なパートなのです。 3000円以上と、この本は決して安くはない部類の本です。 ただその値段に見合うパフォーマンスは兼ね備えています。 この本と付き合った1か月足らずの間、心地よい体験をすることができました(アマゾンの自身のカスタマーレビューより)。

  • : レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]

    レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]
    全200ページ程度のボリュームのなかで、キャンディーズに関する特集記事は50ページ。 ただし、これが濃い。 全シングル曲、ほぼほとんどのアルバムの解説は当然として、彼女たちの芸能界における歴史から見た考察、コメディエンヌとしての彼女たち、DVD解説など多岐にわたり、キャンディーズが分析されています。 特に圧巻は、レア音源に関する記述。 ここまで調べている読み物には、個人的にはお目にかかったことはありません。 700円。

MUSIC

  • ザ・ビートルズ -

    ザ・ビートルズ: サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(スーパー・デラックス・エディション)(4CD+DVD+BD)
    ロック界、いや、すべてのポップミュージックにおけるアルバムの中で史上最高と称され、すでに世界文化遺産の域にまで達しているこのアルバム。 そのアルバムの発売50周年を記念して、スペシャルエディションがリリースされます。 なかでもブッ飛ぶのがこのスーパースペシャルボックスセット。 CD4枚組であらたなリミックスのステレオ盤1枚、モノ盤1枚、初期テイク集が2枚、さらにブルーレイ1枚とDVD1枚で5.1サラウンド、ハイレゾ音源、ドキュメント映像 「メイキングオブサージェントペパーズ」 のデジタルリマスター等々、卒倒するようなラインナップです。 18、000円プラス税と値は張りますが、史上最高の名盤だからこそこれは買い。 5月26日の発売までに予約をしておけば、アマゾンならば値下がりした時に値段がそのあと高騰しても最安値で購入できます。 ビーファンならずとも、これは注目ですぞ!

  • 山口 百恵 -

    山口 百恵: ゴールデン☆アイドル 山口百恵(完全生産限定盤)
    全シングルA・B面プラスボーナストラック(「あなたへの子守歌」)を、山口百恵名義としては初のブルースペックCDとしてリリース。 音はいわゆるドンシャリ系ではなく、アナログ盤に準拠した原音に忠実な印象です。 パッケージングはアナログシングル盤サイズで中袋、CDを納めるケースが完全にドーナツ盤をイメージしています(よく言えば斬新…笑、悪く言えばチャッチイ…笑)。 しかしその発想は買える(笑)。 ほぼ原寸大のシングルジャケットと裏の歌詞カードの複製ブックレット。 ただスキャニングは欲を言えばもう一歩。 当時シングル盤を中心に聴いていたかたなら、この編集盤はかなりの 「買い」 です。 しかしこのジャケット表紙の写真、スッピン風で個人的にはすごく好き。

  • デイヴ・グルーシン&リー・リトナー -

    デイヴ・グルーシン&リー・リトナー: Two Worlds / Grusin & Ritenour
    NHK朝ドラ 「花子とアン」 で美人のスコット先生が夜な夜な歌い、チビはなチャンがすっかり覚えてしまったイギリス民謡、「ザ・ウォーター・イズ・ワイド(流れは広く)」。 このアルバムでルネ・フレミングが歌っていたのを思い出しました。 ルネのソプラノはけっして大袈裟でなく上品で、私のとてもお気に入りのソプラノ歌手ですね。 このアルバム自体は全体的にクラシックにギターのリー・リトナーが絡むフュージョンぽいものなのですが、故・黒田恭一サン評するところの、「大人が聴く音楽」。 胸を締め付けるような哀しみと、すべてを包み込むようないたわりに満ちていて、私の人生のなかでも最上位に位置する愛聴盤です。

  • 桜田淳子 -

    桜田淳子: ゴールデン☆ベスト 桜田淳子~シングル・コレクション
    彼女の活動期に発売されたシングルをすべて網羅したベスト盤。 確かに後年のものほど馴染みがありませんが、選曲漏れがないので、彼女の存在とは何だったのか自体に思いが至るベスト盤です。 音も楽器の音像がよくてなかなかいいマスタリングをしている気がします。 2600円程度で推移しています。

  • ザ・ビートルズ -

    ザ・ビートルズ: ザ・ビートルズBOX(限定生産品)(USBメモリ)
    パソコンにUSB端子があり(たいていついてると思います)、パソコンで音楽が聴ける環境をお持ちの人ならば、聴くことができます。 現在のテクノロジーで最もいい音質で聴ける、ビートルズの音楽です。 ただし国内版にもかかわらず、訳詞とか一切なし。 ジャケットもブックレットもパソコンデータ。 純粋に音楽だけ楽しみたい人向けです。 また、曲間にコンマ何秒かのブランクが入ります。 「アビイ・ロード」 のメドレーも同様です。 しかし、音はさすがに、すごい。 大きな音量であればある程、目の前にビートルズが迫ってくる勢いです。 ツヤが違います。

  • The Beatles -

    The Beatles: The Beatles [USB]
    こちら上記の海外版。 内容的には国内版とほぼ一緒なので、値段が安いこちらのほうがいいでしょう。

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