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2017年10月21日 (土)

「監獄のお姫さま」 エンジンがかからない、暖まらない、しかし…

 宮藤官九郎脚本のプリズンものドラマ。 今や 「あまちゃん」 で大脚本家の仲間入りをし、再来年には大河ドラマで 「いのち」 以来となる現代モノしかもフィクションモノを手掛けようとする人の脚本であるがゆえに、いやがうえにも期待は高まる。
 しかも主演は小泉今日子。 そして朝ドラ連続出演していた菅野美穂、固定ファンの多い満島ひかり。 誘拐される大企業の社長に伊勢谷友介。 これが集まったらどうなるの?くらいの注目度だった。

 だった(笑)。

 第1回を見た印象を率直に申せば、ドラマの中で 「なかなかエンジンがかからないバン」 というのが出てきたが、あんな感じだった(笑)。 笑わそうとしている場面で、なんか滑った感じになるのだ。 いや、笑えることは笑える。 ただ 「あまちゃん」 の記憶でクドカンドラマを見ているために、しぜんとこちらのハードルが、高くなっているのだろう。

 いつものことなのだが宮藤サンが、「さぁ~、おもちゃ箱をひっくり返してやるぞ」 と気合を入れまくると、妙にギャグが空回りするような気がしてならない。 「うぬぼれ刑事」 や 「11人もいる!」 がそんな感じだった。 今回ものっけから 「サンジャポ」 の同じシーンを繰り返し流すのだが、爆笑問題の演技の下手さが目について(といちおう書くが、「それなりにきちんと演技してはいるものの、いつもと違うのがどうしても目についてしまう」 というのが正確なところだ)「サンジャポ」 というある程度の知名度を味方につけたゴージャス感の演出が伴わない結果となっている。 TブーSのブタ君の活かし方も滑っている感じ。 いや、どうせなら 「オールスター大感謝祭」 の現場を活用したりしたら、もっとゴージャスな滑り出しになったかもしれない(無理か)。

 この第1回の目的を考えた場合、「本格的な打ち明け話はとりあえずあとにして、この女性たちが(オバチャンたち、と言わないのがこのブログの良心だ…あ言っちゃった)社長を誘拐するまでのドタバタを描く」 ということだろうと思う。

 そう、この女たちは、綿密な計画を立てているクセに、かなり間抜けている。 それはこの女たちの 「悪に徹しきれない」 良心なのだ。

 ただ、これは 「ひよっこ」 最終回の項でも指摘したことだが、このギャグの滑り具合というのは、「女性どうしの会話というものに対する、男性脚本家の苦手度」 に関係しているのではないだろうか。
 宮藤サンは、「女たちを自分と同じメンタルで捉える」 ことでその不自然さを解消しようとしているように思える。 つまり、「女性たちのしゃべり言葉を必要以上にオトコレベルに口汚く」 しているように見える。 これは正直なところ、「口の悪い女子高生の会話」 の領域から出ていない気がする。 しかしジェンダーの壁が限りなく低くなっている現代では、かなり有効な手法であろう。

 ギャグが滑りがちなのはまだエンジンが暖まっていないことでいいとして、第1回目でいちばん感情移入できたのは、キョンキョンが自分の息子に会うシーンだった。

 そもそも伊勢谷社長誘拐のために組まれた女たちのチームは、要するに刑務所で知り合った4人の女囚(小泉、菅野、坂井真紀、森下愛子)と1人の看守(満島)という構成だ。 その彼女らが出所後ある冤罪を晴らすために伊勢谷社長を誘拐したのだが(そのためにまず伊勢谷社長の息子を誘拐する、という余計なことまでする間抜けぶりだが)、今回この誘拐をすることで、彼女たちはまた収監される可能性がとても高いのだ。
 しかも再犯だから、罪はもっと重くなるはずだ。

 おそらく小泉の息子は、小泉の初犯が原因でどこかに預けられている。 小泉は伊勢谷のエドミルク社が作るクリスマスケーキを持って(そのケーキを買ったのは、「ケーキを買えばイケメン人気社長の伊勢谷とハグできる」、という特典を利用して、伊勢谷社長にモノ申そうとしたためだが)その息子に会いに行く。
 小泉の息子は迷惑がりながらも、もういろんな事情は分かっているから、という成長ぶりだ。 小泉は、今度の社長誘拐で自分がまた収監されることを見越して、「今度は前よりももっと長く、会えなくなるかもしれないの」 と、こらえていた涙を流してしまう。
 踵を返す小泉。 振り返ると、自分があげたホールケーキを丸ごとほおばる息子がいる。 息子は母親からの土産を、家に持って帰るわけにいかないのだ。 男がホールケーキを食べるのは、かなりしんどい作業だ(笑)。 ここで息子の健気さが伝わる仕組みになっている。

 このシーンがあまりにもぐっときたので、「もしかすると宮藤サンは今回、ギャグで笑わすよりも真面目なシーンで人を泣かそうとしているのではないか」、と思ったほどだ。

 ひょっとするとその 「マジメ路線」 の矛先には、再来年の大河ドラマの重みがのしかかっているのではなかろうか、とまで考えた。 考えすぎか。

 来たる大河ドラマでオチャラケ通しなわけにもいかないから、宮藤サンはきっと重いテーマを追求しているはずだ。 その余波が、今回のキョンキョンと息子のシーンに波及しているのかもしれない。

 ふとそんなことを思ったのだった。

 「ギャグが滑っている」 とは書いたが、ドラマ自体が破綻しているわけではないことは明言しておかねばならない。 小泉は天性のカンでこの 「女どうし」 の難しいドラマの舵取りをしている気がするし、満島はやはり出てくれば演技に見入ってしまう。 さらに伊勢谷は自分の息子に対する情を前面に出しながらも、その隠されたワルモノぶりをどのように曝け出していくのか、興味が尽きないドラマであることは確かだ。 次回から始まる、「どうして彼女たちが今回の誘拐に至ったのか」、という 「長い打ち明け話」 も然りだ。

 そこでオマケに笑わせてくれる、その程度なら、ギャグの滑りも気にならない、ということであろうか。

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コメント

リウ様
おはようございます。

確かに、ちょっと力入り過ぎかなあ、と思わせる初回でしたね。あのサンジャポからのループはちょっとしつこかったような気が。プロデューサーも、「これは今までのクドカンドラマの集大成になる」と言われたとか。ちょっと気合入り過ぎで空回りしちゃったのかな・・・・・・・・・でも、面白かったですけどね(笑)

私も、あのクリスマスケーキのシーンはグッときちゃいました。思うに、クドカンが作るお話って、その奥底に古典落語(それも江戸落語)のエッセンスが流れているんじゃないでしょうか。本当に、下らない、馬鹿馬鹿しい、それを突き抜けシュールな域まで行ってしまう滑稽話の部分と、日本人の琴線に触れまくる人情話。クドカンの脚本は、1つの話の中に、それが混然一体となって表れてくるから油断できない、と思っております。

クリスマスイブに、公園のベンチで一人、ホールケーキを頬張る息子クン(しかし、ようできた子や)、これなんか、まさしく現代版「子別れ」やなあ・・・・と、先ほどBS-TBS「落語研究会」で本家「子は鎹」を聴いたばかりの私が申しております(笑)

投稿: Zai-chen | 2017年10月22日 (日) 11時17分

Zai-Chen様
コメント下さり、ありがとうございます。

宮藤サンと落語といえば 「タイガー&ドラゴン」 ということになるのでしょうね。 しかしその頃私は、ちょうど仕事が忙しくてテレビドラマからいちばん離れていた時期(笑)。 まあ、「トレンディドラマ(特にフジテレビの)」 なるものが出てからテレビドラマに嫌気がさしたのがきっかけでしたが、ずいぶんいいドラマを見逃し続けていたような気がします。

「子はかすがい」 という噺を一席やるだけでも、まずかすがいの意味を教えなきゃならん、というのが最近のセオリーだそうで、そもそもかすがいを使わないで今の若い人にも分かるほかのものを代用してしまう、ということも噺家さんたちはやるようですね。 「子は接着剤」 とか?(笑)

「あまちゃん」 にハマってしまったからこそ思うのですが、宮藤サンは徐々に徐々にシリアスからコメディに持っていくとなかなか具合がいいように思うんですよ。 でもロック人間だから、ドバーとやらないと気が済まないんでしょうね(笑)。

投稿: リウ | 2017年10月23日 (月) 07時11分

>宮藤サンが気合を入れまくると、妙にギャグが
>空回りするような気がしてならない。
私がこの人の脚本が嫌う理由が正にコレ。
プロデューサーが手綱取っている辺りはイイのですが
暴走すると内輪で騒いで楽しんでいれば
傍で見ている人も楽しいだろうという
バブル期特有の感覚がモロに出て付き合いきれない。
(「あまちゃん」最終週のサブタイでこういった意識がモロに出ていた)

リウ様のレビューが色々な作品に伸びてますが
私は今期は上半期に比べてもテンションあがりません。
強いて言えば木曜日の「ゆがみ」くらい。
視聴率好調の「奥様」とか
設定ばかりチートで貼り付けて話のスケールがショボイ。
新婚の生活感が全く無い。
往年の志保美悦子級ならともかくCG演出頼りまくって「精霊」で
多少、マシになった程度の綾瀬はるかをチヤホヤし過ぎ。

投稿: 巨炎 | 2017年10月28日 (土) 12時45分

巨炎様
コメント下さり、ありがとうございます。

私がレビューをシコシコ書いていた同時間帯に、「刑事ゆがみ」 オススメ印を下さっていたんですね(笑)。 「刑事ゆがみ」 は、ドラマ好きが 「このドラマ面白いよ」 とひとに言いたくなるようなドラマです。

さて、宮藤サンのドラマについてですが。

バブル期特有のイケイケドンドン感というのは確かにありますね。 私はこの人の 「お祭り感覚」 というのは、宮藤サン出身の、東北特有の湿気を伴っていると感じます。 つまり日常のしがらみを、どこかで後ろを振り返り引きずりながら、「ぶっちゃけちゃうぞ、あっ、言っちゃったぞ」 みたいな、ブレーキとアクセルを両方踏んでいるような感覚。 でもその、どことなく後ろ髪ひかれているようなブッチャケ感を、出せる役者というのがあまりいない。 全部ブッチャケちゃうんですよ。 それが巨炎様に嫌悪感を催させる要因となるのではないでしょうか。 風土的なものかも。 私は親が東北人なので、その独特のウェット感を楽しめるのかもしれません。

志穂美悦子サンの演技、というとあまり印象的なものは記憶にないのですが、「この人演技がうまくなってきたな~」 と思ったら長渕サンと結婚しちゃったような覚えがあります(笑)。
「奥様は取り扱い注意」 は作り手がこういうのはあまり得意じゃなかった、という気はしますね。 西島サンのほうを主役にしていればよかった。

投稿: リウ | 2017年10月28日 (土) 16時42分

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