« 「正義のセ」 悪趣味だが、元凶探し | トップページ | 冬ドラマいろいろの話の続き(「アンナチュラル」「FINAL CUT」「海月姫」「BG」) »

2018年4月15日 (日)

「半分、青い。」 第2週 残されていく独特な余韻

 第2週の終わりまで子役で繋いだこのドラマ。 主人公の片耳が聞こえなくなる。
 「片耳が聞こえなくなるくらいなんだっていうんだ? もう片方は聞こえるんだし大したことじゃないじゃないか」 と思いたくなるところであるが、診断を下した医師によってそれは予想以上に大変なことであることが両親に明かされる。 ただそのことが分からない子供時代の主人公、楡野鈴愛には、その重大性がピンとこない。

 私も重度の難聴であるが、正直なところ耳鳴りは両方で起きたときから寝るときまでずーっと鳴っている。 もし誰かが 「君の名は。」 みたいに私の体と入れ替わってしまったら、そのうるささに死にたくなってしまうだろうと思うほどだ。
 しかし当の本人ははたち前からずっとこの状態で、年々ひどくなっているのだろうが徐々になので慣れっこになってしまっている部分がある。 その重大性に気付かないのは本人だけなのだ。 だから健康診断で 「耳鼻科に行くように」 と言われても、いっこうに行こうという気にならない。 いや、正直に告白すると、何十万もする補聴器を買いたくないだけだ。

 一時それがかなりひどくなった時があって、片耳がほぼ聞こえなくなったときは、さすがに医者に行った。 そしたら原因は分からんがメニエル病の疑いとか。
 それが今回の朝ドラの主人公と同じような状態だったから、片耳のリスクには共感できる部分が多い。
 なにしろ、めまいがする。
 平衡感覚がなくなる。
 幸いその状態は改善されたのだが、重度の難聴という状態は変わらないので、仕事をしていても不便を感じることは多い。 はじめに 「耳が聞こえにくいので」 と断らなければならない面倒があるし、それでもわざとなのかぼそぼそしゃべってくる人間には、適当に合わせている場合もある。 相手によっては、「橋本はこちらの言うことに適当に答えるいい加減なヤツだ」 と不快に思われている向きもあるのではないだろうか。

 個人的な話が長くなってしまったが、「片耳聞こえないくらい別に大したことないじゃん」 ではないことは、ご理解いただけたかと思う。 特に音の立体感が失われるのは危険を伴ったりする。 この子は人生において結構なリスクを負うことになったのだ。

 母親の松雪泰子は医者からその大変さを詳細に聞いたときから、かなり悲観的になる。 ドラマのなかではいちばん絶望し、「そこまで悲しまなくても」 と思うほどなのだが、この松雪の哀しみには、この週の前半できちんと理由づけがなされている。
 いわく、「自分の娘は鈴愛(スズメ)という独特な名前のせいでいじめられていたのに、その名前を付けた自分を思いやって黙っていた」、というくだりだ。

 そしてこのドラマの優れたところは、そんな松雪の絶望に対して、周囲の人間があれこれと強引な修正を松雪に求めてこないところだ。
 悲しい時は、泣けばいい。
 松雪の夫である滝藤賢一はそうやって松雪を慰める。

 鈴愛は鈴愛で、別に自分の片耳が聞こえなくなった、と聞いても悲しくなかったし涙も出なかったが、それを母親を始め家族が悲しんでいることが悲しくて、律の前で大泣きしてしまう。 それは鈴愛の、母親や家族に対する優しさなのだ。

 悲しい時は、泣けばいい。

 その、「自然に受け入れていけばいいよ」、というドラマ全体の優しさによって、見る側の涙腺は緩むのである。

 そして、ドラマがいたずらに暗い方向にならないのは、子供時代の鈴愛と律がしゃべる、一種奇妙な昔言葉である。 「承知した」 など武将言葉なのはこの物語の舞台が戦国時代の中心だった岐阜だからか、とも思われるが、特に鈴愛は男言葉を使うことが多い。 これは助けたり助けられたり、という出来事のなかで、特に鈴愛と律のあいだだけはその立場がときどき逆転することの象徴なのかもしれない。 一方的な関係ではないのである。 互助関係なのである。

 その奇妙な言葉のやり取りはこちらの心を和ませ、そして奇妙な読後感をこちらに与えてくれる。 不思議なドラマだ。

 気が強くお転婆で人の心を思いやることのできる鈴愛であるが、第1週に続いて今週も、また恐ろしい夢を見たようだ。 先週は 「3本足のムーミンパパ」、今週は 「3つの月」 だ。
 ここで共通しているのは 「3」 という数字だが、「あり得ない、いつもと違う」 ということに対する恐怖が、鈴愛のなかに存在している可能性がある。 これも奇妙な引っかかりを見る側に残していく要因のひとつだ。

 次週から本格的に出演することになる永野芽郁。
 どのように成長した鈴愛を見せてくれるのだろう。

« 「正義のセ」 悪趣味だが、元凶探し | トップページ | 冬ドラマいろいろの話の続き(「アンナチュラル」「FINAL CUT」「海月姫」「BG」) »

テレビ」カテゴリの記事

コメント

リウ様
こんにちは。

そう言えば、「御意」も出てましたね。
てっきりネタ元は「ドクターX」からかと思いましたが、そっか~。リウ様おっしゃった、戦国物のメッカ、岐阜県が舞台だからという視点、気づきませんでした。そう言われてみると、確かに、律くんの醸し出す軍師感がハンパありませんなあ。
鈴愛を守ることが自分の使命と心得てるところなどは、まるで秀吉に対する竹中半兵衛の思慕の情といいましょうか。

永野芽衣ちゃんは、UQモバイルCM三姉妹の末っ子だったり、時々清野菜名ちゃんとの区別が付かない事がありましたが(笑)、映画版「俺物語!」の演技はかなり良かったです。原作の、「絶対現実にはいねーだろ!こんな娘」という
ヒロインを見事に3次元化していました。

前作は早々に脱落しましたが、今回は先が楽しみですね。

Zai-Chen様
コメント下さり、ありがとうございます。

いや、私のほうは 「ドクターX」 見てなかったのでそっちの発想のほうがありませんでした(ハハ…)。

「俺物語!」 の映画ばかりか原作までお読みなんですね(笑)。 いやーもうあらゆるジャンルに興味の幅がおありで羨ましいです。 私なんかもう、最近はマンガを読んでも内容が入ってこない(笑)。 アニメとか見ても妙に薄っぺらく感じてしまうことが多く…(「ピアノの森」 には少々がっかり)(「ルパン三世」 の新シリーズは、若干レビューしてみたい気もしますがどうかなァ)。
「俺物語!」 と言えば、鈴木亮平サンもこの映画に出ていたくらいでは、当ブログでこんなに言われることもなかったのに(いや、鈴木サンのことは、小生けなしておりませんですよ…笑)。

清野菜名チャンと言えば、このドラマにも出るとかどこかに書いてた気がするなァ…。

>人の心を思いやることのできる鈴愛
子役時代はそういうキャラだったのですか。
最早、聴覚障害という事で甘やかされた
自己中ヒロインとなりさがっております。
自分に都合が悪くなると逆ギレと自信満々な屁理屈、
周囲には謝らせるけど自分は謝らない。
「あまちゃん」「まれ」に続くバブル期の
ノリが良ければ許される悪ノリ作劇です。

巨炎様
コメント下さり、ありがとうございます。

えー、律君の京大の受験票を鈴愛がもってっちゃったとこから見てません(笑)。 まあほかの春ドラも連休明け以降ちーとも見てないのですが(それでも昨日あたりからぼちぼち見てます)。

私はどーも、今回の朝ドラは見ていて少々かったるい気がします(まあ私が見ているところまでは)。 だから積極的に見ようとあまり思わない。

でもまあ、朝ドラクオリティって普通このくらいじゃないですか? 夢中になって見るのには物語にかなりの周到さが必要だと感じます。

巨炎様の書きようから想像するに、鈴愛は 「半分」 どころか 「だいぶん、青い。」 ようですね(笑)。 まあ青いから、ってことで、許してあげましょう(ハハ…)。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/521783/66611368

この記事へのトラックバック一覧です: 「半分、青い。」 第2週 残されていく独特な余韻:

« 「正義のセ」 悪趣味だが、元凶探し | トップページ | 冬ドラマいろいろの話の続き(「アンナチュラル」「FINAL CUT」「海月姫」「BG」) »

2018年12月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          

BOOKS

  • マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下

    マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 下
     1600ページも費やして、この上下巻はまだ彼らのデビューまでしか書かれていない。 3部作計6巻のうち2巻に過ぎないのだ。 なんと気の遠くなるような作業なのだろう。  本書はビートルズを語るうえで孤高の一作となるはずだ。 虚飾をすっかり剥ぎ取った、20世紀最大の奇跡に潜む真実が、これを読めば理解されるはずである(当ブログ紹介記事より抜粋)。 本書下巻では、1962年のレコードデビューまでが書かれています。

  • マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 上

    マーク・ルイソン: ザ・ビートルズ史 上
     1600ページも費やして、この上下巻はまだ彼らのデビューまでしか書かれていない。 3部作計6巻のうち2巻に過ぎないのだ。 なんと気の遠くなるような作業なのだろう。  本書はビートルズを語るうえで孤高の一作となるはずだ。 虚飾をすっかり剥ぎ取った、20世紀最大の奇跡に潜む真実が、これを読めば理解されるはずである(当ブログ記事より抜粋)。 この上巻ではビートルズの祖先から遡ってリバプールで人気に火が付き始めたところまでが書いてあります。

  • ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白

    ポール・デュ・ノイヤー: ポール・マッカートニー 告白
    まず驚かされるのが、表紙のポールの写真です。 よくこんなのが採用されたな、というくらい、刻まれた年輪が顕著に分かる 「年老いたポール」。 飾り気のないその写真に、「素のポール」 をあぶり出そう、という心意気が見える。 そして実際、著者のその目論見は、成功しているように思えます。 何より大きいのは、「NME」「Q」「MOJO」 など音楽メディアで長年記者を務めてきた著者がポールと同じリバプールの出身者である、ということ。 さらにポールと同じファースト・ネームであること。 だからポールはまるで自分の分身に話しかけるかのように、時折同郷人にしか分からない言葉で気さくに著者に話しかける。 この本を読む者は、まずその 「不思議なリラックス感」 に包まれるはずです。  本の構成は大きく二つに分かれます。 前半ではビートルズからウィングス、ソロに至るポールのたどってきた長い長い歴史、後半ではポールの人格に迫る試みがなされていく。 そのインタビューは、一気に行なわれたものではありません。 著者がNMEの記者だった1979年のものから、明示はされていないがおそらく2013年、「NEW」 の発売前後が最新のものではないか、と思われます。 実際読んだ感覚では 「キス・オン・ザ・ボトム」 あたりが最新のような気もする。 その30年以上にわたる膨大なポールへのインタビューを、項目によって構成し直しているようです。 ですから、今年(2016年)亡くなったジョージ・マーティンについてのポールの見解であるとか、最新の情報が提示されているわけではない。 ポールの情報というのはこの歳になってもなお日々更新型ですから、その点については物足りなさが確実にあります。 さらに、30年以上というとポールのものの考え方にも変化変遷があってしかるべきだと思うのですが、30年以上をリミックスにかけているからその変化というものがつかめてこないもどかしさがある。 表紙を飾ったポールの 「老い」 という問題にも、この本はきちんと答えてくれているわけではない。 さらに言えば、ジョン・レノンの死について多くが割かれているのとは対照的に、2001年に亡くなったジョージ・ハリソンの死についての記述はない。 正直なところ、このような本を読み漁ってきた身としては、衝撃に値するような情報が書かれているわけではありません。 しかし前述したような、リラックスしたムードのなかでポールと語らっているような疑似体験を共有できる強みが、この本にはある。 この本全体に貫かれているのが、この心地よさなのだ、と思うのです。 その心地よさが乱れるパートがあります。 自身の失敗作、どうでもいい作品について語るときのポールは多分に感情的になりがちであり、イライラした様子を隠しません。 特に 「シークレット・フレンド」 を語るポールのくだりはポールファンなら一読に値する部分でしょう。 しかしそのイライラも、ポールの人間性が垣間見える瞬間としてこの本にとっては必要なパートなのです。 3000円以上と、この本は決して安くはない部類の本です。 ただその値段に見合うパフォーマンスは兼ね備えています。 この本と付き合った1か月足らずの間、心地よい体験をすることができました(アマゾンの自身のカスタマーレビューより)。

  • : レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]

    レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]
    全200ページ程度のボリュームのなかで、キャンディーズに関する特集記事は50ページ。 ただし、これが濃い。 全シングル曲、ほぼほとんどのアルバムの解説は当然として、彼女たちの芸能界における歴史から見た考察、コメディエンヌとしての彼女たち、DVD解説など多岐にわたり、キャンディーズが分析されています。 特に圧巻は、レア音源に関する記述。 ここまで調べている読み物には、個人的にはお目にかかったことはありません。 700円。

MUSIC

  • ザ・ビートルズ -

    ザ・ビートルズ: サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(スーパー・デラックス・エディション)(4CD+DVD+BD)
    ロック界、いや、すべてのポップミュージックにおけるアルバムの中で史上最高と称され、すでに世界文化遺産の域にまで達しているこのアルバム。 そのアルバムの発売50周年を記念して、スペシャルエディションがリリースされます。 なかでもブッ飛ぶのがこのスーパースペシャルボックスセット。 CD4枚組であらたなリミックスのステレオ盤1枚、モノ盤1枚、初期テイク集が2枚、さらにブルーレイ1枚とDVD1枚で5.1サラウンド、ハイレゾ音源、ドキュメント映像 「メイキングオブサージェントペパーズ」 のデジタルリマスター等々、卒倒するようなラインナップです。 18、000円プラス税と値は張りますが、史上最高の名盤だからこそこれは買い。 5月26日の発売までに予約をしておけば、アマゾンならば値下がりした時に値段がそのあと高騰しても最安値で購入できます。 ビーファンならずとも、これは注目ですぞ!

  • 山口 百恵 -

    山口 百恵: ゴールデン☆アイドル 山口百恵(完全生産限定盤)
    全シングルA・B面プラスボーナストラック(「あなたへの子守歌」)を、山口百恵名義としては初のブルースペックCDとしてリリース。 音はいわゆるドンシャリ系ではなく、アナログ盤に準拠した原音に忠実な印象です。 パッケージングはアナログシングル盤サイズで中袋、CDを納めるケースが完全にドーナツ盤をイメージしています(よく言えば斬新…笑、悪く言えばチャッチイ…笑)。 しかしその発想は買える(笑)。 ほぼ原寸大のシングルジャケットと裏の歌詞カードの複製ブックレット。 ただスキャニングは欲を言えばもう一歩。 当時シングル盤を中心に聴いていたかたなら、この編集盤はかなりの 「買い」 です。 しかしこのジャケット表紙の写真、スッピン風で個人的にはすごく好き。

  • デイヴ・グルーシン&リー・リトナー -

    デイヴ・グルーシン&リー・リトナー: Two Worlds / Grusin & Ritenour
    NHK朝ドラ 「花子とアン」 で美人のスコット先生が夜な夜な歌い、チビはなチャンがすっかり覚えてしまったイギリス民謡、「ザ・ウォーター・イズ・ワイド(流れは広く)」。 このアルバムでルネ・フレミングが歌っていたのを思い出しました。 ルネのソプラノはけっして大袈裟でなく上品で、私のとてもお気に入りのソプラノ歌手ですね。 このアルバム自体は全体的にクラシックにギターのリー・リトナーが絡むフュージョンぽいものなのですが、故・黒田恭一サン評するところの、「大人が聴く音楽」。 胸を締め付けるような哀しみと、すべてを包み込むようないたわりに満ちていて、私の人生のなかでも最上位に位置する愛聴盤です。

  • 桜田淳子 -

    桜田淳子: ゴールデン☆ベスト 桜田淳子~シングル・コレクション
    彼女の活動期に発売されたシングルをすべて網羅したベスト盤。 確かに後年のものほど馴染みがありませんが、選曲漏れがないので、彼女の存在とは何だったのか自体に思いが至るベスト盤です。 音も楽器の音像がよくてなかなかいいマスタリングをしている気がします。 2600円程度で推移しています。

  • ザ・ビートルズ -

    ザ・ビートルズ: ザ・ビートルズBOX(限定生産品)(USBメモリ)
    パソコンにUSB端子があり(たいていついてると思います)、パソコンで音楽が聴ける環境をお持ちの人ならば、聴くことができます。 現在のテクノロジーで最もいい音質で聴ける、ビートルズの音楽です。 ただし国内版にもかかわらず、訳詞とか一切なし。 ジャケットもブックレットもパソコンデータ。 純粋に音楽だけ楽しみたい人向けです。 また、曲間にコンマ何秒かのブランクが入ります。 「アビイ・ロード」 のメドレーも同様です。 しかし、音はさすがに、すごい。 大きな音量であればある程、目の前にビートルズが迫ってくる勢いです。 ツヤが違います。

  • The Beatles -

    The Beatles: The Beatles [USB]
    こちら上記の海外版。 内容的には国内版とほぼ一緒なので、値段が安いこちらのほうがいいでしょう。

無料ブログはココログ