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2019年4月 6日 (土)

「なつぞら」 第1週 「健気」 の裏にあるもの

 朝ドラ100作目の 「なつぞら」 には、その記念として歴代の朝ドラヒロインがキャスティングされるそうだ。
 私は熱心な朝ドラフォロワーではないので、あまりその有難味を実感できないと思うが、NHKのその企画は長い朝ドラの歴史を俯瞰するいい試みだと思う。 あまりに長すぎて芸能界から離れたヒロインもたくさんいるが、ぜひ復帰出演してほしいものだ。
 さっそく第1週では松嶋菜々子(「ひまわり」)、北林早苗(「娘と私」、朝ドラ第1作目だそうだ)、岩崎ひろみ(「ふたりっ子」)の3人が登場した。 特に北林早苗は1961年(昭和36年)から57年ぶりの朝ドラ復帰(確か当時は1年で1作だったと記憶している。 だから58年ではなく57年)。 今作の主人公・奥原なつ(少女時代・粟野咲莉)に同情してサツマイモを手渡す、老婆の役だった。
 それはなんてことはないチョイ役という印象を免れないが、主人公なつのあまりの 「健気さ」 が 「本当はこの子の、したたかな処世術なのではないか」、と思い始めた視聴者に対する、重要な役どころを担っていた気がする。

 その老婆とのエピソードは、なつが北海道に連れてこられ世話になる柴田家の娘から 「ずるい」、と言われたことから回想されたシーンだ。
 東京の大空襲で両親を亡くした自分と幼い妹の命を永らえるために、なつは 「今にも死にそうな」 芝居を打ち、その老婆からサツマイモを恵んでもらっていたのだ。
 ただそれは、「ずるさ」、と言うよりも、「生きるための強さ、したたかさ」、であるとも言えた。

 なつが北海道に連れてこられた理由は、柴田家の婿養子である剛男(藤木直人)が、戦友との約束によってなつの面倒を見ることになったからだ。
 両親が死亡したとはいえ、なつには兄と妹がいたが、どういうわけかなつひとりだけが北海道に引き取られることになっている。 妹は親戚に預けられた、となつは語っていた。 ところが兄は、孤児院に引き取られたまだ。 兄がなつと一緒に北海道に来なかった理由とは何なのか。 それは第1週では明らかにされることはなかったが、おそらく自分ひとりで生きられると見做されたのだろう。 兄はタップダンスが出来るなどの芸事を武器として、仕入れた食糧をマージン込みで売り捌いていた(第2週で、下の妹を待つためだ、という理由が判明した)。

 さて、なつが柴田家の娘・夕見子(少女時代・荒川梨杏)から、「ずるい」 と言われた理由とは何なのか。

 柴田家の営む牧場に連れられてきた当初から、この朝ドラヒロインは見る側にかなりの好印象を与える健気さを発揮する。
 「ありがとうございます」「すみません」「ごめんなさい」。 なにかと言えばこの言葉が率先して口をつき、剛男やその妻の富士子(松嶋)からは 「そんなに謝らなくていい」 と諭されるほどだ。
 さらに当時が舞台であるこの手のドラマにありがちな、意地悪いキャラである柴田家の祖父、泰樹(草刈正雄)の不興を買うまいと、自分のほうから 「ここで働かせて下さい、なんでもします」、と言い出す。

 なつは柴田家に連れてこられた翌日、朝4時という早くから 「きちんと」 起床し、酪農の仕事を覚えようと必死になる。 何も出来ないなりに放牧に出かける牛たちに 「行ってらっしゃーい! たくさんフンをしてねー!」 と声かけをする奮闘ぶり。 その健気さにほだされて、泰樹は孫の照男(少年時代・岡島遼太郎)にも教えたことのない搾乳の仕方を、早々になつに伝授する。 当然、照男は面白くない。

 夕見子が 「ずるい」、と指摘したのも、なつのその過剰な健気さがあまりに優等生過ぎて鼻についたからだ。
 しかしなつは、見る側からすれば、そんなに処世術に長けたずるい性格には思われてこない。 いちおう東京大空襲の心の傷を引きずっているし、なにかと言えばきょうだいのことを思い出して悲しい思いをしているからだ。
 このなつ、という主人公のキャラ造形というのは、まさしく朝ドラヒロインの 「困難に負けない」、という基本線を踏襲している。 だからこそそれが見る側に安心感を与えるわけだが、そのあまりの王道ぶりが周囲に振りまく不快感も同時に表現している部分が、すごい。
 剛男に諭されて、なつに対して素直に接しようとする夕見子だったが、やはりなつの 「いい子ちゃんぶり」 にイライラしてしまう。 学校に通わせてもらえるようになったなつが、いきなりクラスの男子どもからバイキン扱いされるのに、ケラケラ笑ってしまうからだ。 「そんなことないなら、言い返せ」、というわけだ。

 しかしこれらの 「健気さ」 には、やはり 「無理を押して」 という裏があった。 その精神的な抑圧は、兄・咲太郎(少年時代・渡邉蒼)へ手紙を書く、という行動を通じて、なつの心に顕在化し、急速に膨れ上がっていく。 そしてなつは、柴田の牧場を出る決意をするのだ。 ここまでが第1週。

 第1週の物語の流れを見ていて、このドラマはきちんと 「こうなったから、こうなる」、という 「筋としての説得力」 にかなりの神経を注いでいるドラマだ、と感じた。
 このところの朝ドラを私はけっして真面目に見ているわけではないが(特に前作の 「まんぷく」 はただの1回たりとも見なかった)、その物語のロジックは 「こうなったけど、こうなっちゃう。 だってそれが人の気持ちだから。 人の気持ちって、不可解なものだから。 正直に生きようとすると、こういう不可解なことになっちゃう」、みたいなものが多かったような気がしている(かなり独断と偏見が入っているのはご容赦)(「半分、青い。」 のことを言ってるのか?…笑)。

 朝ドラの王道的な愉しみかたから言えば、第1週の白眉はなんと言っても草刈正雄であったろう。 一見意地悪そうな、厳しい壮年の開拓者、といった風情の草刈が、なつの一生懸命をきちんと観察し、街に出たときに 「これまでの当然の報酬だ」、として一緒にアイスクリームを食べながら、なつに語るのだ。

 「ちゃんと働けば必ず報われる。 もしそうならなかったら自分の働き方が悪いのか、相手が悪いんだからさっさとそんなところはやめればいい」

 大意そんなことを話したと思うが、この言葉は、これからアニメーターという劣悪環境(たぶん)の中に身を投じていくこのドラマのヒロインにとっては、含蓄のある言葉に変貌する気がしている。 まあありていに言えば、伏線、である。

 ドラマはそんな重苦しいものばかりでなく、大森寿美男の脚本にしては笑える部分もちゃんとある。 特に久しぶりに妻の富士子と一緒の寝床についた藤木直人が松嶋菜々子に向かって 「ふーじこちゃ~ん」 と甘い声を出したのには笑った。 藤木直人って、そういうキャラだったっけ?
 草刈となつが街に出かけたときの菓子屋のおかみ、高畑淳子との丁々発止の絡みも面白かったし。 「真田丸」 での夫婦だったけど。 下世話な話だな。
 オープニングタイトルが全編アニメーション、というのも変わった趣向だ。 舘野仁美さんが監修をしているだけあってジブリの匂いがプンプンするが、仕上がり具合は全くのCG仕様で、セル画の面影は微塵もない。 その昔、神社のお祭りでセル画が売られていたことを思い出す(何のアニメだったかな)。 もうあんな商売は成立しないだろう。

 それにしてもアニメーションとかアニメーターとか、あの時代にそんな言い方ってあったかな。 マンガ映画とか動画とかただのマンガ、で一括りとか、そんな感覚だった気がするが。 アニメって言い方はあったけど、1974年の 「宇宙戦艦ヤマト」 の前にはそんな言い方してなかった気がする。 このドラマの舞台となる東映動画がやる映画の何本立てでも、「東映まんが祭り」 だったし。

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コメント

リウさんおはようございます。この朝ドラ、久々に泣けるやつです。10銭の話はたまらず・・・。これは「おしん」っぽいやつですかね~。見てなかったもんで分かりませんが。

世界名作劇場が一度、復活した時に「ポルフィの長い旅」という作品がありましたが
往年の声優達が出演以外にあまりウリがない作品になってしまいました…(泣。

>「娘と私」
父親である私が娘の嫁入りを見届ける最終回しか残っていない。(観たことある)
この時に「私」は母親の遺影を伴って参列しており、
「カーネーション」に最も影響を与えた作品の一つ。
後は「おはなはん」「なっちゃんの写真館」「ふたりっ子」「ちりとてちん」といった所。

北林早苗と岩崎ひろみが登場して、貫地谷しほりも出演決定。
「おはなはん」の樫山文枝はこの前、地方ドラマで貫地谷と共演して
「写真館」の星野知子は「ウェルかめ」の時にゲスト出演していたけど、どうだろう?

ドラマ大すきおやじ様
コメント下さり、ありがとうございます。

「おしん」はいまBSで再放送してますよね。 とくに少女時代編はこれ以上泣けない、というくらい涙ダバダバでした。 大学時代だったから、結構自由に見れてましたんで(笑)。

巨炎様
コメント下さり、ありがとうございます。

そういえばオープニングタイトルは「世界名作劇場」のノリですよね完全に。 アニメが絡んできたのは「ゲゲゲの女房」や「花子とアン」のときに若干ありましたが、ここまで全編アニメ、というオープニングはなかった気がします(全部見てないクセして)。
ただやはりここは、セル画の風味を出してくれたらよかった気もします。 NHKはセットの時代考証とかは堅実なのに、フォントの使い方とかとても雑なんで、このCGタッチのオープニングももう少し時代に即してくれたらよかったのにな、と思っています。

私にとって朝ドラのトップ3である「ちりとてちん」のしほりちゃんが出るのは嬉しいとして、「カーネ」の尾野真千子は出るのか? なんかだいぶ後味の悪い降板の仕方したからなぁ。
あとはドラマの役でどーしょーもない失敗ばかりして、「なんちゃーない」とケロッとしていた藤田朋子とか(笑)。 「はっさい先生」の若村麻由美も好きだったなぁ~。

>尾野真千子
あれでNHKと険悪になっていたのなら近代三部作
「足尾から来た女」「夫婦善哉」「夏目漱石の妻」はやらんでしょう。
特に「漱石の妻」におけるハセヒロとの夫婦バトルは壮絶極まりなく
比べれば、やはり「まんぷく」は物足りないかも。

夕見子視点を意識させつつ、回想でなつの内面を掘り下げる構成はなかなか良い。
もっとも情報の示し方が台詞中心で「カーネーション」程の見応えとはいきませんが。

https://i.imgur.com/ZUtomIj.jpg

直子や聡子視点で年長者を捉える事で
千代さんから優子に受け継がれた母性が糸子に欠落している様が浮き彫りになる。
朝ドラ主人公としては殆ど人格否定レベルの突き放しぶりですが
そこまですることで、『第二の母』ともいうべき玉枝さんが
晩年の糸子に与えた影響の大きさまで理解できるという流れ。
これは『糸子が優子の引き立て役になる等、ありえない』的先入観で
観ていたら絶対に理解できない代物でした。

仕草や言動に表れる感情の機微や本質的な性格、
それらが示す各人物の立ち位置と互いの関係性を意識しながら
映像を捉えていく感覚が「カーネーション」では要求されましたが
これに慣れると他の朝ドラはどこか説明臭く感じてしまいますね。

巨炎様
コメント下さり、ありがとうございます。

尾野さん、あっそうか、忘れてました(笑)。 だけど遺恨のもとの朝ドラはどうかなぁ? 無事に再登板してくれて過去はシャンシャン、という感じでしょうか。

「カーネーション」、脚本家による主人公ディスりまくりは凄まじかったですよね(笑)。 しかしそれが人間なんだよ、という、有無を言わせぬ物語としての迫力があった。 いやーなこと、たくさんある。 家族にしたっていやーに思うことは数知れずある。 でもやはり別れるときはその存在の重さを思い知る。

そこまで描けないドラマというのは、いくら感動するセリフがあってもひざポンのセリフがあっても、結局永く心に残りません。 「説明臭い」、という巨炎様のコメント、今回の朝ドラによく当てはまっていますね(笑)。 気になって感動できなくなりそうな自分がいる(爆)。

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  • : レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]

    レコード・コレクターズ 2011年 07月号 [雑誌]
    全200ページ程度のボリュームのなかで、キャンディーズに関する特集記事は50ページ。 ただし、これが濃い。 全シングル曲、ほぼほとんどのアルバムの解説は当然として、彼女たちの芸能界における歴史から見た考察、コメディエンヌとしての彼女たち、DVD解説など多岐にわたり、キャンディーズが分析されています。 特に圧巻は、レア音源に関する記述。 ここまで調べている読み物には、個人的にはお目にかかったことはありません。 700円。

MUSIC

  • ザ・ビートルズ -

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    デイヴ・グルーシン&リー・リトナー: Two Worlds / Grusin & Ritenour
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  • The Beatles -

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    こちら上記の海外版。 内容的には国内版とほぼ一緒なので、値段が安いこちらのほうがいいでしょう。

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